5.体制の整備

「二次まとめ」では、大学等における実施体制として、以下の3点を挙げています。
1.事前的改善措置、2.学内規程、3.相談体制の整備

【事前的改善措置】

不特定多数の障害学生のニーズを念頭に、予め、施設・設備のバリアフリー化や、学内規程、組織等を含むハード面・ソフト面での環境の整備を行なうこと

【学内規程】

国立大学・国立高等専門学校――国等職員対応要領の策定・公表(法的義務)
公私立大学等――同様の要領の作成・公表が望まれる(公立大学は努力義務)
これに限らず、障害学生の受入れ姿勢・方針を始めとする障害学生支援に関する様々なルールの作成・公表が望まれます。

【相談体制の整備】

1.委員会――大学等における障害学生支援に関する意思決定を行なう機関
2.障害学生支援室等の専門部署・相談窓口――支援の申し出や問合せに一元的に対応する部署・窓口
3.専任の教職員――障害学生支援を主な職務とする専門性のある教職員やコーディネーター、カウンセラー、手話通訳等の専門技術を有する支援者等
4.第三者組織――障害学生と大学等の間で提供する支援の内容の決定が困難な場合に、第三者的視点に立ち調整を行なう組織

事例講評

大学等において障害学生支援を進める上で、支援を行なうための器づくりは重要な前提となるでしょう。また、障害学生支援は組織としての取り組みであることから、各大学等の組織に合った体制整備を行なうことが大切です。
例えば、高専と大学では、教育の仕組みや方法が異なる点は少なくないため、障害学生支援の体制整備にあたっても異なる点が多いと考えられます。また、大学においても組織規模(学生数等)は様々であり、それによって必要となる窓口の整備や人員配置も異なるでしょう。これは、規程づくり等においても同様です。
また、各学生に対する個別的な合理的配慮だけでなく、組織としての事前的改善措置も重要な要素になります。中長期的な視点をもって、障害学生支援の地盤ともいえる環境整備をどのようにすすめていくのかということは重要な課題になると考えます。
各大学等の事例をみてみると、それぞれは個別ケースへの対応事例ではあるものの、組織としての事前的改善措置や相談体制など、組織的な体制整備が課題となっているケースが少なくありません。特に、事前的改善措置にあたっては、キャンパスのバリアフリー化が多くの大学で課題となっていることがわかります。ただし、バリアフリー化にあたっては予算の課題は少なくありません。様々な制約があるなかで、どのように優先順位をつけて実施していく必要があるのか、障害のある学生や関係部署との調整によって、段階的にすすめていくことが重要になるでしょう。
また、相談体制については、まだ多くの大学等で障害学生支援の専門部署が設置されておらず、その必要性が感じられる一方、すでに相談体制がある大学等においても、その部署の学内での位置づけに課題があることがわかります。例えば、保健管理センターや学生相談部署との連携の課題、支援専門部署と学部教員等との関係性など、機能的な整理が求められます。ここであげられたケースでも、関係部署が連携して対応しているケースがありました。また、外部の組織とも連携しているというケースもあり、様々なリソースとのつながりの必要性も重要な要素と考えられます。
さらに、体制整備においては、支援に関する規程やガイドライン等の制定も重要でしょう。ただし、協議に時間がかかることは避けること、決定事項を柔軟に変更できる状況にしておく必要があることなどに留意する必要があると考えます。さらに、多くの大学において、専門的な人材の配置や紛争防止等の第三者組織の設置も今後の課題となるのではないでしょうか。
組織的な障害学生支援体制を整備することは重要ですが、一方で、最初から完璧な体制を組まなければいけないという先入観により、体制整備がすすまないということは避けなければなりません。学生によっては、なるべく早い対応が必要になる場合もあり、体制整備がなされていないということが、支援を提供しないという理由にはなりません。
体制整備において重要なことは、状況にかかわらず必要且つ適当な支援を円滑・柔軟に提供するということ、そして、それらを実施する背景も常に変化するということを想定しておくことではないでしょうか。最初に整備した体制もまた、必要に応じて再構築していくという柔軟な姿勢が必要になると思います。一方、このようなことは、実際に支援を実施しなければわからないことも少なくありません。仮に不十分な点があったとしても、出来ることからすすめていくことが大切であると考えます。