1.てんかん

どのような疾患か 
 てんかんは、様々な原因で起こる慢性の脳疾患で、けいれん等の繰り返す発作(てんかん発作)を主な徴候とします。てんかん発作にはいろいろなタイプがありますが、意識消失を伴う強直間代発作(大発作)が最も多く見られます。

どのような困難があるか
 てんかんは、タイプによっても異なりますが、通常は抗けいれん薬によってけいれんが起こらないようにコントロールされている、病状の見通しの良いものが大部分です。しかし、体調が悪い時、あるいは何らかの事情により抗けいれん薬の服用が中断されたりすると、突然けいれんが出現する可能性があります。講義中、実習中、課外活動中、自動車運転中等、発作を起こす場所や場面によっては、発作に伴う転倒や溺水、交通事故など、二次的な危険にさらされる可能性があります。大学での活動中にてんかん発作が起こるリスクがある場合には、本人の同意のもと、主治医の指示に従い、可能な範囲で大学が情報を共有し、安全な学生生活を確保することが重要です。

側臥位イメージ

どのような支援・配慮が必要か
 てんかん発作はその種類や重症度により症状は様々ですが、一般的には数分以内に自然に止まるものが多く、てんかん発作のために呼吸が止まったり、舌を咬んで大けがをすることは通常ありません。発作の時には、食物や吐物による気道閉塞(窒息)に最も注意しなければなりません。発作に遭遇したら、体を横に向け(側臥位)、顔も横に向けて、気道閉塞を起こさないように注意することが必要です。周囲の人は冷静に対応することを心がけ、怖がったり、騒いだり、あるいは身体をゆすったりしてはいけません。また、発作を起こした際は必ず医師の診察を受けさせてください。

2.気管支喘息

どのような疾患か
 気管支喘息は、気道の慢性的な炎症により、気管支が過敏な状態になり(気道過敏性の亢進)、発作性のせきや喘鳴を伴う呼吸困難(喘息発作)を繰り返す疾患で、ダニやホコリなどの空気中のアレルゲン(抗原)に対するアレルギー反応が原因のことが多い疾患です。また解熱剤などのある種の薬物によって発作を起こす場合があることも知られています。

どのような困難があるか
 気管支喘息の人は気道が過敏になっているため、ホコリなどのアレルゲンの吸引の他、運動、タバコの煙の受動喫煙、ストレス、過労等の誘因、気象の急激な変化等により発作を起こし、その呼吸困難により日常生活が制限されることがあります。

どのような支援・配慮が必要か
 講義室や食堂などをはじめとしたキャンパス内の室内環境を、喘息発作を誘発しないようなものに整備する必要があります。ホコリを減らす対策や、禁煙や分煙の徹底などが重要です。施設面だけではなく、キャンパス内の喫煙に対する考え方を、非喫煙者やこのような呼吸器系の障害のある人の立場に立って考えることが求められます。

喫煙に大きな赤の×マークイメージ

コラム
 夜中の急な喘息症状の悪化のために、担当の日に発表ができなくなってしまい、みんなに迷惑をかけ、落 ち込むこともありました。先生や友だちは、私の病気のことを理解してくれて、「調子はどう?」、「無理はしないように」などと声をかけてくれました。周り にサポートしてもらいながら、体調をコントロールしているうちに、症状も落ち着き、希望のとおりの職種に就くことができました。(教育学部、既卒、20代 女性、気管支喘息)

3.アトピー性皮膚炎

どのような疾患か
 アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が顔や関節などに多く現れ、慢性的に続くもので、この疾患を持つ人の多くはアレルギー体質を持っています。アトピー性皮膚炎の人の皮膚は刺激に対して敏感で乾燥しやすいため、種々のアレルゲン、汗、プールの塩素、シャンプー等の刺激や、心理的ストレスなどによっても症状の悪化が見られることも知られています。

どのような困難があるか
 慢性的に続くかゆみによる集中力困難をはじめ、顔面の慢性的な湿疹による審美的な理由によるコンプレックスなどに起因する心理的ストレスも、修学上の障害となることが十分考えられます。また、かゆみを抑えるくすりの服用により眠気などが生じ、作業効率が低下してしまう場合もあります。

どのような支援・配慮が必要か
 室内アレルゲンに対するアレルギー体質が明らかな場合には、室内の清掃や換気などにより環境中の悪化因子を除くことが必要です。また、課外活動や実習、体育的活動等に際しては、シャワー室の整備により、特に夏季は発汗後のスキンケアが可能となり、症状の悪化を防ぐ上で役立つ場合もあります。

シャワーによる発汗後のスキンケアイメージ

コラム
  物心ついた時からアトピー性皮膚炎を患っています。症状は良くなったり悪くなったりを繰り返します。症状の良い時は普通にお化粧などもできますが、汗をか く夏や乾燥する冬には症状が悪化します。皮膚が赤くなったり、湿疹のせいで眉が薄くなったりしていることがコンプレックスで、人の目が気になります。アト ピーは伝染病ではありませんが、「うつるんじゃないの?」という誤解から投げかけられた言葉がとても辛かったです。(大学3年生、女性)

4.食物アレルギー・アナフィラキシー

どのような疾患か
 食物アレルギーとは特定の食物を摂取することによって、皮膚や呼吸器、消化器、あるいは全身性に生じるアレルギー反応のことを指します。また、アレルギー反応により、じんましんなどの皮膚症状、腹痛、嘔吐等の消化器症状、喘鳴、呼吸困難の様な呼吸器症状など複数の症状が同時に出現した状態をアナフィラキシーといいます。アナフィラキシーはハチなどによる昆虫刺傷、薬品の摂取、ラテックス(天然ゴム)等の接触によっても起こることが知られ、重症例ではショック症状をおこし、生命の危険な状態に至ることもあります。

どのような困難があるか
 食物アレルギーがあると、学食などで誤ってアレルゲンとなる物質を食べてしまうこと(誤食)により、予期せずアレルギー症状が出現するリスクがあります。キャンパス内において食品等を提供する現場で使用食材の情報提供がないと、食物アレルギーを持った学生は、学内施設での食事が困難になってしまいます。また、アナフィラキシーは薬品、ラテックス(天然ゴム)によっても起こるため、専門領域によっては、実習や実験などにおいて原因物質に接触するリスクがあることを考えておく必要があります。

学食でメニューに食材の情報提供がなく困る学生のイメージ

どのような支援・配慮が必要か
 大学等では、学食など食品を提供する場で、使用食材の情報提供を徹底することが求められます。薬品、実験用手袋などのラテックス(天然ゴム)等を使用する学科等(実験系)では、アナフィラキシーが起こる可能性が考えられる学生を事前に把握し、原因物質との接触の回避を図ることが重要です。尚、食物アレルギーと診断されたり、アナフィラキシーの既往がある場合にはアドレナリン自己注射薬(商品名:エピペン)が主治医から処方され、本人が保持している場合があり、その使用については周囲の職員も含めて共通理解を持っておくことが必要です。

5.ネフローゼ症候群・慢性腎疾患

どのような疾患か
 ネフローゼ症候群とは腎臓の中で血液中から尿を生成する組織(糸球体)の異常により、尿中から多量の蛋白が体外に失われる疾患です。蛋白尿とむくみ(浮腫)などがみられ、放置しておくと体内の蛋白質が失われ(低蛋白血症)重症化します。
 通常、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)や免疫抑制剤などによる治療が行なわれます。腎疾患にはその他にも多くの疾患があり、その中には慢性的なものも多く、腎機能が著しく低下した場合には人工透析を定期的に行なうことが必要となるものもあります。

どのような困難があるか
 副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)や免疫抑制剤などを定期的に服用している場合には、感染症に対する抵抗力が低下している(易感染性)場合があるため、人ごみの中に入ることなどの集団生活に困難を生じる可能性があります。また、定期的な人工透析が必要な場合は講義や演習の欠席が多くなったりすることも考えられます。

どのような支援・配慮が必要か
 特に治療に伴うステロイド剤や免疫抑制剤の服用などにより、感染症に対する抵抗力が低下している(易感染性)場合、インフルエンザや麻疹などのキャンパス内での感染症の流行が起きると、健常者に比べ感染するリスクが高いので、教職員はそのことを十分理解しておき、本人には早めに情報を提供するなどの配慮が必要となります。また、透析などに伴う欠席などもあらかじめ本人から情報を得て、補講などの代替により便宜を図り、定期的な受診・処置をサポートする必要があります。

コラム
  外来は、うまく曜日をずらして病院に行くようにしました。病気のことは大学側に事前に話しておきました。担任の先生は理解してくださっていたようですが、 授業担当の先生全員に理解してもらうのは難しいようです。でも、体調の相談をして親身になって聞いてくださる先生がいるので、それはとても嬉しいです。 (看護学部3年生、女性)

6.インスリン依存性糖尿病

どのような疾患か
 膵臓からのインスリンの分泌が無いため、糖の利用ができない疾患です。症状としては無治療の場合、高血糖、尿糖が見られ、次第に多飲・多尿・体重減少が出現し、最終的には意識障害に至ります。治療としてはインスリン補充療法が行なわれますが、その方法としては、小学校高学年以上は自己注射による補充が一般的です。

どのような困難があるか
 インスリン依存性糖尿病の生活上の問題点としては、キャンパス内での自己注射の管理や、予期しない高血糖、低血糖のコントロール等に起因する障害発生の可能性があることです。

どのような支援・配慮が必要か
 コンパなど、普段の生活と異なるイベントがあったりする際の高血糖のコントロールや、体調不良時などエネルギー摂取量が普段より低下した際などに出現する可能性がある低血糖に対する対応が問題になります。基本的には成人では主治医の指示などに従って、いずれも自ら対応できますが、意識障害を伴う急激な低血糖などの不測の状況に対応できるように、教職員をはじめとした周囲の者は本人とよく話し合い、状態を把握しておく必要があります。

インスリン自己注射のイメージ

コラム 
  長期に休むこともなく、大学生活を送ることができたのは、周りの人たちの、病気への理解のおかげだと思います。病気とつきあいながらも、様々なことを経験 できました。特に部活を4年間続けられたのは、顧問の先生や先輩、同級生、後輩のおかげだと思っています。(教育学部4年生、男性)

7.悪性新生物

どのような疾患か
 組織の悪性腫瘍すなわち「がん」は、すべての年齢層に発生する可能性がありますが、小児期に白血病、脳腫瘍、悪性リンパ腫、神経芽腫、ウイルムスの腫瘍等治療が行なわれ、病的な症状がいったん消失しても(寛解)、再発のリスクを考慮して長期にわたり外来での治療や経過観察が必要とされる場合が多いと思われます。

どのような困難があるか
 例えば、白血病などにおいては初期の入院による化学療法により癌細胞が消失した状態(寛解)を経て、その後の外来通院における化学療法の継続に移行します。したがって、時に化学療法による体調不良のための欠席や薬の副作用による身体的あるいは精神的な問題などが生じる可能性があります。

どのような支援・配慮が必要か
 病状の理解、今後の病状の見通しの把握、学校生活における配慮事項など、個々のケースにより大きく異なるので、主治医、家族とも密接に連絡を取り対応することが望まれます。化学療法が行なわれていると、感染症に対する抵抗力が低下している(易感染性)場合があります。キャンパス内で感染症の流行が起きた場合には、健常者に比べ感染のリスクが高いので、教職員はそのことを十分理解しておき、早めに感染症流行の情報を提供するなどの配慮が必要です。先々、本人の病状が悪化する可能性がある場合には、修学に際しての心理的なサポートも不可欠となります。

※安心して学校生活が送れるように

病弱・虚弱の学生の多くは、本人が申告しないかぎり外見からは健康な学生と区別がつきません。また、周囲に同じ状況の学生が少ないため、体調不良や様々な制限・制約により学生生活がうまくいかなくなった時などに、心理的に孤独に陥りやすいです。主治医や本人と連携をとりながら、学生が安心して学生生活を送れる環境づくりをしましょう。

そのためには、緊急事態への一般的対応や、医療的対応のシミュレーションを事前に行なっておくことは必要不可欠です。

緊急的な対応が起こりうる病弱・虚弱の学生に対しては、本人の同意のもと、可能な範囲で主治医からの疾患に関する情報提供を診断書や意見書などの形で得られれば、保健管理センターの医師などが中心となって、個々の学生の緊急時の対応策を事前に把握しておくことができる場合もあると思われます。
なお、情報の取扱いに関してはプライバシーに十分配慮することが重要です。