配慮要請があれば、評価方法の変更や調整を検討しますが、教育目標や公平性を損なうような評価基準の変更や、合格基準を下げるなどの対応は行なわないのが基本です。
 評価において公平性は重要なポイントですが、障害のある学生にとって、他の学生と同じ条件で評価することが公平とはいえない場合があることに留意する必要があります。例えば、極端な不器用さがある学生の場合、マークシートで小さな円を塗りつぶすことに他の学生の倍以上の時間がかかるとしたら、この学生は試験の解答にあたり、他の学生と同じだけの「考える時間」が与えられていないことになります。このような場合は、試験時間を延長したり、チェック形式の解答を許可したりすることで、初めて他の学生と公平な条件での受験が可能になります。このように、学生の機能障害の状態を踏まえ、その学生における公平な評価のあり方について、個別に検討することが必要になります。評価方法の変更・調整においては、根拠資料を求めることが基本になります。

試験における配慮

 成績評価においては、試験であれば入学試験と同様の配慮を考えます。センター試験で認められる対応は、大学における試験でも同様に考慮されるべきであると考えます。「読むこと」や「書くこと」に困難がある場合の試験時間の延長に加え、パソコン筆記を認める、口述試験にする、レポートにするといった方法があります。文章を読むことが必要な場合、文章の印刷の仕方(文字の大きさや行間)を工夫するだけでも、読みやすくなる場合があります。試験時間や方法に特別な配慮が必要な場合、集中力の問題がある場合、試験中の行動が他の受講生に影響を与える場合(例えば、試験問題を音読しなければならない場合)などに、別室受験が必要になることもあります。
 これらを実施する場合には他の学生との公平性も考慮に入れなければなりません。どのような配慮が妥当かは、診断名だけで決まるものではありません。能力特性の検査結果等を踏まえて、それらの配慮が妥当なものであるかどうか、医師、心理士など、専門家の助言を受けるとよいでしょう。

レポート評価での配慮

 決められた範囲の情報を理解し記憶することに長けていても、自分で資料を収集し、まとまった量の文章を書くことが期待されるレポートが苦手な学生もいます。情報を整理し、他者に理解しやすいように文章化する作業は、高校時代にはあまり経験していない場合が多いでしょう。また、レポートを作成する能力はあっても、計画的にものごとを進めるのが苦手なために提出期限に間に合わないケースもあります。
 レポート課題では、どのような内容が期待され、どのような点が評価されるかを、できるだけ具体的に伝えるようにしてください。「レポートの書き方」のようなアカデミックスキルは、大学として初年次教育の一環で指導したり、学習支援の部署がワークショップや個別指導を実施したりするとよいでしょう。

評価方法の公開

 各授業でどのような評価を行なうかは、授業選択の上での判断材料にもなります。評価方法、評価基準をシラバスにできるだけ詳しく記述すると良いでしょう。これは、障害の有無にかかわらず、すべての学生にとって学習の指針になります。

評価における留意点

 成績評価においては、その授業で設定されている「学ぶべきもの」を学生が修得したかどうかが重要になります。決められた評価方法では、障害があることによって学んだことがうまく評価者に伝わらないというのであれば、評価者の側が歩み寄ることも必要です。文字を書くことに困難さがある場合、長文を限られた時間に書く形式の試験では、理解度や考え方の評価ではなく、書字能力の評価のようになってしまいます。これはその学生の能力の正当な評価とはいえません。公平さに配慮しながら、いかにその学生の学習成果を評価するか、授業担当者が本人や医師、心理士等と相談しながら最適な方法を見つけていくようにしてください。
 成績評価は公平性が重視されることから、合理的配慮の妥当性の判断は、授業担当者個人の判断ではなく、規定に則って組織的に行なわれるようにします。また、別室受験等が必要な場合、授業担当教員だけでは対応できません。障害学生支援部署が教務系の部署とも連絡を取りながら、試験室や監督者のアレンジを行なうような体制の整備が必要になります。
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成績表を見ているイメージ

成績評価の配慮におけるポイント

  • 障害名による対応ではなく、その学生の苦手なこと、得意なことに応じた配慮を行なう。
  • 成績評価の変更・調整は、根拠資料に基づいて行なうことが基本。
  • 評価方法に関してできるだけ詳しい情報を公開する。
  • 合理的配慮の内容は授業担当者、本人、専門家で協議し、妥当性の判断については組織的判断を行なう。

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