事例1

申し出者 本人(統合失調症)
申し出を受けた
部署
障害学生支援室員(教員、臨床心理士)
申し出の内容 1.診断と症状などを理解して全学的に以下の情報を周知してほしい。
幻聴、被害妄想、不安等の症状のため、授業を途中退席や欠席をする可能性がある。グループワークが困難なことがある。これらの困難を補うために教員に直接質問に伺うことがある。治療薬の副作用のため日中の眠気や手指の震え、平衡感覚の障害が生じる可能性がある。
2.学内で昼休みに一人で過ごす空間を提供してほしい。
3.(保護者より)認知行動療法を実施してほしい。
話し合いの内容 相談を受けた障害学生支援室員が、学生生活総合支援センター室長、障害学生支援室長及び学生教務課障害支援室員に報告して対応を協議した。
学生と話し合う機会も設けて、要望に対する大学の回答を伝えた。
提供した配慮 1.学生が全学周知を希望している情報は、障害支援室から全教員に伝えた。
2.一人で過ごす空間は、空きスペースがあったので、その利用を学生に案内した。
3.認知行動療法の実施については対応できないが、通常の学生相談における対応は可能。
解説 精神疾患の症状と、それによって生じる修学上の困難について、学生本人から大学全体へ周知が依頼されている。精神疾患の多くは外見からはわかりにくいため誤解されやすい。そのため正しい情報の共有は大切なポイントである。
統合失調症は慢性に経過する疾患なので、症状とある程度つき合いながら学生生活を送ることが多い。また、症状や学生生活上の困難は個人によって異なる。本学生が昼休みに一人で過ごす空間を求めているのは、人間関係から短時間でも距離をとること、休憩時間を確保すること、服薬のため等が考えられる。もし学内に適切な空きスペースが無かった場合は、合理的配慮の範疇でさらに話し合いを進め、代替手段について検討することになるだろう。
本学生のためだけに大学が認知行動療法を実施するのは、合理的配慮の範疇を逸脱しているため対応できないと判断されたと考えられる。

事例2

申し出者 本人(不安性障害)
申し出を受けた
部署
保健室担当者及び学年担当教員
申し出の内容 入学して間もなく、本人から、聴覚過敏があり、頭痛持ち、パニック発作を起こすため、発作が起きた時は途中で抜けて保健室で休みたいとの要望があった。教員には自分で伝えていると話した。その後、授業中にパニックになり、教員に付き添われ保健室に来た。学科長より保健室と教員との情報共有の話があった。
話し合いの内容 学年担当教員と保健室担当者、学生本人が話し合い、学科長に報告した。
提供した配慮 パニック発作時に教科の担当教員が様子を見る。必要に応じて保健室で休養するよう誘導する。
解説 関わる教員達が共通認識を持って対応にあたることで、不安や緊張は軽減した。学生本人は、これまで受療したことがなかったため、保健室の担当者が家族にも含めて医学的な知識を説明し、服薬や認知行動療法によって症状のコントロールを軽減することを説明した。
パニック発作や予期不安のために電車に乗れず登校できなかったり、発表が苦痛なあまり授業を欠席するなど、精神疾患のなかでも不安性障害は大学への適応に困難があることが多くみられる。語学やゼミなどで口頭発表や議論を求められる場面で症状が目立ったり、就職活動の面接で顕在化することがある。

事例3

申し出者 本人(性同一性障害(性別違和):Male To Female)
申し出を受けた部署 入試課と教育推進課
申し出の内容 専門科を受診しているが確定診断は受けていない。
1.学内での通称名の使用
2.女性の服装着用
3.健康診断(更衣、尿検査でトイレ使用)での配慮
話し合いの内容 入学手続きに伴い、本人から配慮を希望された。教育推進課、所属部局の部局長と教務委員長、学生支援課に加え、学生本人と保護者も交えて入学前に協議した。
提供した配慮 1.学籍は戸籍に登録されている本名とするが、授業等では通称名の使用を許可した。
2.女性の服装の着用は認める。
3.多目的トイレを使用してもらう。
その他:入学後に本人と担任が協議して、クラスメイトに開示した。また、所属教育組織の会議でも開示して同様の配慮を求めた。
解説 本事例は、専門科を受診しているが確定診断はまだなされていないが、これまでの学生生活(中学校や高校)も考慮して、希望された修学環境に関する配慮のほとんどが適切と判断された事例である。
性同一性障害については、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(最終改正:平成23年5月25日)があり、配慮の際には、そちらも参照すると良いだろう。
DSM-5病名・用語翻訳ガイドライン(初版)(日本精神神経学会作成)では、患者の理解と納得が得られること、差別意識や不快感を生まないこと、国民の認知度を高めることを期待し、「性同一性障害」を「性別違和」という呼称に変更している。
事例の対応を積み重ねながら、大学内での通称名使用許可のルールが整備されることが望まれる。

事例4

申し出者 本人(気分障害)と保護者
申し出を受けた部署 学生相談室及び学生相談委員(教員、学部代表委員)
申し出の内容 1.気分状態が不安定になった際、授業中に頓服薬を服用することを認めてほしい。
2.頓服薬の影響で授業中に眠気が出る可能性が高いが、承知しておいてほしい。授業によっては退室することが適当な場合もあると考えている。
3.欠席時の資料を後日受け取ることができるようにしてほしい。
4.語学授業において、個別に指名して発言を求める機会を極力控えてほしい。
話し合いの内容 学生相談室のコーディネーター(保健師)と学部教育の担当教員とが本人と面談した。それからの手続きとしては教授会の審議を経ること、配慮は各教員の裁量によるところもあるため、必ずしも本人の要望通りにならない可能性があることを伝え、本人は了承した。
提供した配慮 1.学部教育担当の教員から履修科目の教員あて、授業中の服薬の必要性と対応依頼について周知した。
2.授業中の服薬に伴い副作用で眠気が出現する点を承知してもらうよう依頼した。
3.学部教育担当の教員から各教員に欠席したときの配付資料を後日確実に受け取りたい旨を伝えた。
4.語学授業での指名は、病状に悪影響を与える可能性が高いため、控えてもらうように依頼した。
解説 気分障害は大学生にも多く見られる精神障害である。学生相談室や学部教育担当の教員に個別のニーズを理解してもらうことは、大切なプロセスと考えられる。具体的な支援内容については事例ごとに当該学生と話し合いながら決めることになる。学生は自分の病状をよく理解した上で、必要な支援を自ら申告することが望ましい。本事例では、服薬行動、副作用への対処行動、指名による不安や緊張を回避する行動、さらに情報保障が希望された支援内容である。類似の支援は、しばしば要望される。

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