視覚障害学生にとって、周りの人の理解と支援は最も重要です。ここでは、教職員や友達の理解を促す方策、及び視覚障害学生の修学を支える人的な環境整備について述べます。

(1)教職員の理解

 教職員、とりわけ教員の理解は視覚障害学生にとって最も大きな支援となります。しかし、障害学生の受け入れを自分の関与する課題と捉えていない教職員や、視覚障害学生の能力やニーズを具体的に理解しようとせずに、過大な負担感を持つ教職員もいます。逆に、思い込みの親切心から、座席を勝手に指定してしまったり、試験や成績評価で特別扱いをする教員もいます。このような誤った態度に陥らないようにするためには、次のような対応策が有効です。

必要な支援・配慮事項

  • 障害学生支援の基本的な考え方、すなわち1.修学における平等な扱い、2.必要に応じ適切な配慮を行なうこと、3.本人との話し合いの重要性等について、入学時や定期試験の前などの節目ごとに、関係教職員に文書等で注意喚起する。
  • 視覚障害学生の入学前相談に、該当学部・学科の教員や事務担当者に出席してもらい、学生のニーズを共有し、具体的な対応策を検討する。
  • 当該学生との話し合いをもとに、障害による特別なニーズや授業等における具体的な配慮事項を文書にまとめ、会議等で配付する。加えて、当該学生がその文書を持って各授業担当者と個別に話し合う機会を設ける。非常勤講師については常勤の教職員が仲介し、学生の理解及びニーズへの対応の必要性等を周知・徹底する。なお、弱視学生については、外見では障害学生であることがわかりにくいため、授業担当教員に彼らの障害状況や支援ニーズが伝わりにくい場合がある。そのような場合には、担当教員とのやりとりを弱視学生だけに任せるのではなく、教職員を介したやりとりを行なう。
  • 課外活動や学生生活等に関する相談、心理的なサポート等が必要な場合もあるので、学生相談室等と連携して支援を行なう。
  • 当該学生が所属する学部・学科に障害学生支援の担当者を置き、「障害学生支援室」等の全学支援組織との定期的な情報交換を行なう。
  • 点字による定期試験の対応、担当教員からの質問・相談への対応など具体的な課題については、「障害学生支援室」等の全学支援組織が組織的に対応する。

(2)周りの学生の理解

 視覚障害学生にとっては、周りの学生のさりげない支援が大きな力になります。しかし、大半の学生はそれまで視覚障害学生と関わった経験がないため、十分な理解ができていません。そのため、支援をしたいと思ってもその方法がわからず、実行に移せない学生や、思い込みの親切心から的はずれな支援行動をしてしまう学生もいます。そこで、周りの学生の理解を促すために、次のような対応策が有効です。

必要な支援・配慮事項

  • 学生向けの配付物に、障害学生支援に関する大学の取組や、障害学生と関わる際の留意事項などを記載する。
  • 障害理解を目的とした授業を開講する、または講演会等を開く。
  • 視覚障害学生が入学した際には、当該学生の具体的な支援ニーズを示したプリントを配付し、自己紹介の機会を設ける。ただし、その場合は、当該学生の希望を事前によく確認する。

(3)学内各部署との連携

 視覚障害学生の支援は、当該学生が所属する学部・学科と、全学の障害学生支援組織が中心となって進めていきます。ただし、一部の専門部署だけで支援を行なえるわけではありません。入試課、学生課、施設課、保健管理センター、その他の各部署が障害学生の存在及び支援ニーズを把握し、必要な情報を適宜共有しながら連携する体制作りが重要です。
  なお、視覚障害学生が何か困ったことに直面した際、どこに相談すればよいかがわからなかったり、相談に行ってもたらいまわしにされる、といった例がよくあります。そこで、障害学生が困った時に気軽に相談できる窓口をつくり、その窓口から適宜該当部署へつないでいくという体制も重要です。

必要な支援・配慮事項

  • 障害学生の支援に関する相談窓口を設け、障害学生本人、教職員、周囲の学生などからの相談を受け付ける。寄せられた相談の内容は、学内の該当部局へ適宜連絡し、迅速な対応を図る。なお、相談窓口の所在情報については、障害学生に必ず周知しておく。
  • 施設担当部署と連携し、学内での工事情報を事前に障害学生へEメールなどで知らせるシステムを作る。
  • 障害学生への連絡用メーリングリストを構築し、施設部、学務部、学生部等がそのアドレスを共有して、工事情報、台風等による休講情報、その他の関連情報を提供する。
  • 心理的なケアや医療的なケアが必要な場合もあるため、学生相談室や保健管理センター等と密接に連携する。

(4)学習支援者の配置

1.学習補助者
 授業資料のテキストデータ化や対面朗読、その他、授業の予習・復習等の支援を行なうための支援者を配置することが必須です。支援者は、可能な限り専門職員を大学の予算で配置することが望ましいと考えられます

 また、一般の学生が、ボランティア活動の一環としてこのような支援の一部を担う事例も増えています。ただし、学生ボランティアを活用する場合には、質の高い支援を必要なときに安定して提供できるようにすると同時に、視覚障害学生との対等な関係が保てるように、大学が責任をもって管理・運用する必要があります。なお、支援学生は、「学習補助者」「ピア・チューター(peer tutor)」「アクセシビリティ・リーダー」などと呼ばれています。

必要な支援・配慮事項

  • 視覚障害学生の学習支援に関心のある学生を募集する。
  • 視覚障害学生支援者の養成と支援技術のスキルアップのために、講習会を開催する。講習会には、上級生の支援学生や視覚障害学生にも参加してもらう。
  • 支援学生の組織化、支援コーディネートの体制作りなどを行なう。
  • 謝金制度や支援活動証明書の発行など、学生の支援活動のバックアップ体制について検討する。(なお、謝金の有無や支払いの方法等については、各大学の支援ポリシーにより状況は様々であるが、支援の質を確保できるように配慮する必要がある。)
  • 一部の支援学生に負担が集中しないように配慮する。
  • 専門職員は、テキストデータ化等の支援業務に従事するのに加えて、学習補助業務全体を把握し、関係部署との連絡・調整を密にしながらコーディネート業務全般を担う。

2.ティーチング・アシスタント
 視覚障害学生は、担当教員の理解と協力が得られれば、ほとんどの授業を支障なく受けることができます。ただし、授業の形態や内容によっては、その授業の内容を熟知している上級生等がティーチング・アシスタント(TA)として個別の支援を行なうことが望ましい場合もあります。

必要な支援・配慮事項

  • 実験・実習・演習等の実技を伴う科目では、周囲の状況説明、配付資料に関する即時の情報提供、レポート課題のための資料整理・作成補助等を行なうために、TAの配置が必要となる。
  • 語学のLL教室などはどの学生にとっても慣れない場所であり、クラスメイトには視覚障害学生を気遣う余裕がないため、個別のTAを配置する。
  • 体育実技では、視覚障害学生は模倣が難しく教員の指示を十分に理解できないため、TAが個別にサポートする。また、種目によっては個別のカリキュラムが必要となる場合もある。
  • 情報処理実習では、視覚障害者の情報処理技術を指導できる人材が必要である。適切な人材をTAに採用し、学内で別メニューでの指導を行なった事例や、外部の専門機関に障害学生が出かけて指導を受け、それを実習の単位として認めた事例がある。

(5)大学間の連携

 過去に視覚障害学生の受け入れ経験がない大学は少なくありません。また受け入れの経験はあっても、常に視覚障害学生が在籍している訳ではないために、支援のノウハウがうまく引き継がれないケースもあります。一方で、多くの視覚障害学生を受け入れ、多様な支援を経験している大学もあります。中には、理数系など特定の学部・学科での受け入れ実績が豊富な大学もあります。そこで、各大学が必要に応じて支援の経験に基づいた情報を交換しながら、より充実した支援の提供を目指すことが望ましいと考えられます。

必要な支援・配慮事項

  • 支援の方法等で困った時には、日本学生支援機構(JASSO)が運営する「障害学生修学支援ネットワーク事業」の拠点校に相談する。
  • 支援経験の豊富な大学の担当者が、視覚障害の理解・啓発のための講話や、支援学生養成のための技術講習を他大学で行なった事例がある。
  • 弱視レンズ(ルーペ・単眼鏡)の貸し出しや、点訳教材の提供等を行なっている大学がある。

(6)学外の社会資源の利用


 学内の支援者だけでは十分な対応ができない場合には、学外の専門機関・団体等の協力を受けることになります。
 まず、入試や定期試験の問題の点訳・墨訳は、学外の専門組織に依頼する必要が生じる場合があります。また、語学の教科書等の点訳を学外の点訳組織に依頼している大学もあります。弱視の場合には、拡大写本ボランティアを活用しているケースもあります。
 また、支援機器類の導入方法、実習・実技等の実施にあたっての工夫の仕方、中途失明者の支援など、専門性を要する事項については、近隣の視覚特別支援学校(盲学校)やリハビリテーション施設等の助言を得ながら検討することが必要です。
 その他、課外活動に参加する際の移動支援においては、同行援護等の福祉サービスを活用したり、福祉事務所や誘導ボランティア等との連携も必要です。
 なお、在学中に失明したり、視機能が低下した場合には、視覚障害教育・福祉の専門家の支援が必須です。休学や退学を決める前に、心理的なケアを行なうためにカウンセラーの協力を得たり、視覚特別支援学校(盲学校)や福祉施設等の専門家に相談をしてください。

必要な支援・配慮事項

  • 入学試験や定期試験の点訳・墨訳は、内容の正確さ、専門性、厳密・公正・秘密の保持等の観点から、信頼できる組織に依頼する。
  • 大学が、教科書等の点訳を点訳ボランティア(組織または個人)に依頼する際には、契約を結び、点訳費用を支払って依頼する。なお、参考図書などの点訳は視覚障害学生自身で点訳ボランティアに依頼することもある。
  • 支援に際して視覚障害に関する高度の専門性が必要な場合には、近隣の視覚特別支援学校(盲学校)やリハビリテーション施設等に相談する。

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