視覚障害のある受験生は、点字や拡大文字等を利用するため、通常の試験問題を読んだり、通常の解答方法で解答したりすることが困難です。また、読み書きに時間がかかるため、一般の受験生と学力的に違いが無くても同じ制限時間内に、同じ問題量をこなすことは困難です。そのため、入学試験においては適切な受験上の配慮を行なうことが必要となります。

(1)受験上の配慮申請

必要な支援・配慮事項

  • 募集要項や各大学のウェブサイトを活用し、受験上の配慮申請の書式と必要な添付書類のリストを簡単に入手できるようにする。なお、受験上の配慮申請に関する情報は、アクセシビリティに配慮すると同時に、探しやすい場所に配置する。
  • 受験上の配慮申請の書式はシンプルで書きやすいものを用いる。
  • 受験上の配慮申請の必要性を証明する文書は、身体障害者手帳のコピー、出身学校長や専門家による所見等とし、柔軟に対処する。医師による診断書を求めるのは、それらの文書では不十分と判断された場合のみとすることが望ましい。
  • 入学試験の出願手続き期間より受験上の配慮申請の締め切りが早い場合、募集要項とウェブサイトでそのことをわかりやすく注意喚起する。
  • 受験上の配慮申請の締め切りが必要以上に早まらないように留意する。
  • 高校時代に受けていた支援内容や大学入学後に希望する配慮事項については、受験生の負担を考慮し、入学試験に関わる配慮希望の申請時点ではなく、合格後に提出を求めるようにする。

(2)入学試験の事前面接

必要な支援・配慮事項

  • 各大学における障害学生の支援に関するポリシーや現状をウェブサイトで公開し、受験生の大学選択に必要な参考情報を提供する。また、オープンキャンパス等を活用し、障害のある受験生のニーズを把握したり、各大学における障害学生支援の現状について、説明をする時間を設ける。
  • 受験生や保護者・出身学校の教員にとって時間的に負担感が大きいため、受験生からの希望がなければ原則として入学試験の事前面接は行なわない。
  • ただし、障害があることを理由に受験を拒否することはできないが、支援体制が不十分であると大学が認識している場合には、支援体制の現状と改善の見通しについて、受験希望者と十分な話し合いを行なうことが必要である。

(3)入学試験における受験上の配慮

必要な支援・配慮事項

  • 点字使用者は、点字による出題・解答、試験時間の延長1.5倍、別室受験が基本となる。
  • 墨字を利用する弱視者は、ルーペや拡大読書器などの補助具の使用、拡大文字による出題、解答方法の変更、試験時間の延長1.3倍、別室受験が基本となる。
  • 高等学校段階以降等における中途失明者については、点字・拡大文字ともに適切な速度での読み書きができない場合があるため、パソコンと画面音声化ソフトを用いた受験等の適切な配慮を個別に検討しなければならない。
  • 点字問題の作成及び点字による解答の墨訳(普通文字への翻訳)にあたっては、点字についての高い専門性、正確性、セキュリティの保持が求められることから、信頼のおける学外の専門組織に依頼をする必要がある。それらの条件を満たす組織として、平成3年より「全国高等学校長協会入試点訳事業部」が設立され、全国の大学で入学試験当日に点訳・墨訳を行なっている。(※1)
  • 弱視者用の問題は、各大学で作成するのが通例である。見え方により、希望する文字のサイズやフォント、印刷用紙の大きさが異なり、下線部や空欄の位置を強調するなどの配慮が必要であるため、受験生の個別のニーズを事前に細かく確認しておく必要がある。(※2)
  • 問題の訂正等で板書をする際には、視覚障害受験生が確実に確認できる方法で情報提供をする必要がある。

脚注

(※1):全国高等学校長協会入試点訳事業部

昭和63年頃から、増大する入学試験点訳の要望に対応するため、入学試験点訳業務を遂行する専門機関の設置が、盲学校と大学の双方から望まれるようになった。また、その専門組織には、少なくとも次のような条件が必要であると考えられた。

 このような条件を満たし、かつ早期に実現可能なものとして、全国高等学校長協会を母体とする入学試験点訳組織構想が生まれた。そして、平成元年に全国盲学校長会及び全国高等学校長協会特殊学校部会において設立趣意書が認められ、平成3年度入学試験からこの組織による点訳業務が開始された。
 なお、平成7年3月7日の参議院予算委員会で視覚障害者の点字による入学試験に関する質問の答弁中、与謝野馨文部大臣(当時)から入試点訳事業部の活動について理解していることが表明されている。
 現在、入試点訳事業部では、各大学の入学試験に加え、点字使用者の大学入試模擬試験、各大学の定期試験の点訳も行なっている。

(※2)入学試験に関わる弱視者の受験上の配慮の例

(1)試験問題・解答用紙の拡大
 試験問題・解答用紙を1.4倍に拡大する方法は現在最も一般的なものである。ただし、大学の中には問題の一部に新聞記事など文字サイズが小さいものをそのままの形で採用するところもある。その場合には受験生の読みやすさに配慮し、1.4倍以上の拡大率にするなどの配慮を検討する必要がある。
 解答用紙や小論文などの原稿用紙の、罫線やマス目が見やすいか、マスの大きさが十分かなどについては、受験生と大学側とで、事前にサンプルを確認しながらの入念な打ち合わせが必要である。

(2)ルーペ・拡大読書器の持参使用
 弱視者の中には、小さな文字や図表等を見る際に、ルーペを必要とする人もいる。また、試験問題の拡大率をかなり上げる必要がある、もしくは白黒を反転させた方が解答しやすいなどの理由により拡大読書器の使用を希望する人もいる。このような受験生からルーペの持ち込みや拡大読書器の使用の希望があった場合は、それを認めることが必要である。

(3)解答方法の変更
 弱視者の中には、決められた範囲をきれいに塗りつぶすことが困難なため、マークシート方式の解答ができない人もいる。この場合、文字解答方式(別紙に問題番号や解答の記号を書く方法)にすることが一般的である。その他、マークシート方式の解答用紙の該当番号欄にチェックする方法もある。これらの解答をさせた場合は、試験終了後、大学教職員が文字解答をマークシートに転記したり、チェックされている部分の塗りつぶし作業を行なう必要がある。

(4)時間延長・別室受験
 一般的な方法は、大学入試センター試験で行なわれている1.3倍の時間延長と別室受験である。しかし、視力や視野の状態を考慮し、点字受験の場合と同じように1.5倍の時間延長を認めるケースもある。

(5)座席の指定・照明器具の使用
 受験生の見え方により、窓側もしくは廊下側の座席の希望、机上で照明器具を使用したいという要望がある。このような申し出があった場合は、適切に対応することが必要である。

(6)写真、漫画、イラスト
 写真や漫画、イラストなどには十分な配慮が必要である。そのような内容が含まれている問題から、弱視者が解答に必要な情報を限られた時間内に読み取ることができるかについて、確認が必要である。

(7)その他
 受験生の眼疾患の状況によっては、長文問題の空欄・下線部・傍線部などを見つけにくい場合がある。そのため、それらの始点に赤で印を付けて見つけやすくする配慮をしたり、1行ずつ文章を読みやすくするために黒い下敷きの持参使用を認めた事例もある。また、拡大読書器の利用の場合、問題用紙と解答用紙を拡大読書器の読み取り部に入れ替えながら解答するのに時間がかかるため、問題用紙に直接解答を書き込む方法を認めた例もある。
 点眼薬(目薬)等を試験時間中に使用する必要のある視覚障害者は少なくないため、理解が必要である。
 中途失明者は、点字や墨字の扱いができないケースがあり得るため、その場合は、セキュリティに配慮した上で、パソコンでの出題及び解答の方法を取り入れることも考えられる。


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