困難さ・考えられる支援の観点

困難
 緊急時に自力で避難が困難な肢体不自由の学生も多い。
 車いす、あるいは杖を使用している学生が2階以上の階にある教室・研究室等から、火災地震時に自力で安全に避難することは事実上不可能と言っても良いほどの著しい困難がある。

支援・概要
 自助による避難が困難な学生を明らかにしておく。
 自助による避難が困難であるから、非常時においては、「まず安否確認をする」という前提ではなく、常に安否がわかる状態にあることが望ましい。すなわち、まさに避難しなければいけないそのときに避難支援者が側にいるようにする。それとともに避難支援者と大学等の当局とが連絡をとれるように支援体制を整備しておく。

 そのためには、本人の同意のもと、各学生の行動を把握しておく必要がある。各場面、例えば授業中、学内生活(校内)、日常生活(寮・下宿先等)等で誰が支援するのかを決めておく。その上で、災害の内容(例えば火災では階を下りるが、津波では階を上らないといけないかもしれない)、各学生の移動機能の状態、さらには各場面の条件(例えば建物の構造、階段の位置、肢体不自由学生が使用する教室・研究室等の位置など)によって必要な支援は異なることから、その具体的対応(誰がどのように支援してどのような経路で避難するか)を計画しておく。また、避難訓練の実施も必要である。

 特に教職員については、非常時に特段の支援を必要とする者がいることを理解しておく必要がある。

留意事項
 肢体不自由の学生の困難さは主に移動(避難行動自体)にある。したがって、学生数や地理的条件等、各大学の状況を踏まえつつ、災害時に特有の条件を考慮して具体的な制約とそれに対する具体的な対応について避難計画(マニュアル)を作成しておくことが必要である。

 火災や地震といった緊急時にはエレベーターは使用できない、あるいは階段昇降機は使用しにくいと考えておくことが必要である。その場合には、近い階段を使用して避難するが、その際いくつかのことを考慮しておく必要がある。

1.車いすをかかえて昇降するには最低4人の人手が必要である。
 このとき、階段を上るときも下りるときも、車いすに乗る障害学生の顔・腹側が常に上方向(天井)を向くように移動する(反対にすると、階段を降りるとき車いすから落ちてしまう危険がある)。
 なお、車いすを持ち上げるときは、外れやすい部分ではないことを確かめてから握る。車いすのホイール(車輪)やハンドリム部分(車輪の外側)は回転して危険なので持ってはならない。また階段の下側の介助者により荷重がかかるので、力のある人を下側に配置する。

階段で車いすを運搬するイメージ

2.介助者が少数(2から3名)の場合は、2名で障害学生を抱えて避難する方法もある。→1人が障害学生の背中側から両腕に手を入れて抱きかかえ、もう1人が障害学生の両脚を持って移動する(可能なら別の者が車いすを持っていく。)
 介助者が1名の場合は背負うこともやむを得ないが、車いすからの移乗が難しいことがあり、また足元がふらつきやすいので、十分注意する。背負うとき、可能なら障害学生も移乗に協力するとともに、しっかり抱きついてもらうようにする。

3.簡便な折りたたみ式の担架等の器具を使用して昇降することも有効。この場合には適切な複数の場所に担架を配置しておくことが良いだろう。

 したがって、各学生が各場面において避難の際にどのような支援が必要となるかを(器具については学内の適当な場所に配置して使用方法を周知した上で)シミュレーションをしておくことも必要である。
 また、常に避難支援者が側にいるようにするにしても、いざという緊急時にはその時身近にいる人々が協力して対応することが必要である。例えば、教室で一緒に講義を受けている学生と教員が協力して担架を用意して避難する、車いすを抱えて階段を降りる等である。そういう意味では、教職員・学生といった大学等の構成員の心構えの育成が大事である。
 さらには、緊急時に必要な支援の要望を的確に伝えることができるよう、障害学生本人の主体性を育てることも重要である。

【参照】


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