質問コーナー

筆者紹介

竹田正樹
【同志社大学 ノーマライゼーション委員会委員長(社会学部教授)】
専門は、運動生理学に基づいたスポーツ選手や中高齢者、疾患者の運動トレーニング理論に関する研究。
大学では、怪我等による肢体不自由の学生にリハビリテーションを行う授業なども担当。

竹田正樹先生

Q.質問

 肢体不自由者(下肢機能障害、車椅子使用)が今年の4月から入学します。
はじめて肢体不自由学生を受け入れるのですが、どこから準備をしていいのか戸惑っています。我が校はスロープやエレベーターの配置が遅れています。

 また、授業のための教室移動に関しても介助を依頼されていますが、職員はもとより仮に謝礼を支払うにしても経験のある学生もいません。技術修得のためにはどこに依頼すればいいでしょうか?

A.回答

 新たに新入生を迎える場合は、入学前のできるだけ早い段階で実際にキャンパスまで来てもらうことが肝要です。
 本学の場合、入学試験の出願段階からフォローし、事実上入学が内定したらすぐに、障がい学生支援担当者や入学学部の担当者らとともにヒアリングを行い、同時に入学後のキャンパスライフを想定して、実際に車椅子で学内を移動してみます。
 たった2~3cmの段差が「障害」になることも多く、まずは授業教室の導線を確保することが重要です。上肢にも障害があるなど障害の程度により、エレベーターのボタンが押せない(押す力がない)など、思わぬ不備が見つかるものです。
 また、客観的にリフトや自動ドア、大規模のスロープの設置が必要だとしても、工期や費用面で入学前の整備が困難なことも出てきます。このような場合でも、優先順位をつけて可能なものから順次整備するようにしています。
 ただ、バリアフリー化に向けて後追いで改修を施すと、それに要する費用はよりかさむことになります。この経験から本学では新たに建物を建設する場合、車椅子使用の学生の有無に関わらず、

などが実現できるよう施設部に対して配慮要請を行っています。
 車椅子利用の学生に対する支援は、施設等の「物理的障壁」をクリアすることで解消されるケースが多いのは事実です。しかし、障害の程度に応じて車椅子介助が必要な場合も出てきます。近年は車椅子介助に関する本も多く出ていますが、地域の社会福祉協議会などから講師を招いてまずは担当者等が中心となって介助方法を学ぶこともできましょう。
 最近は多様な車椅子がありますので、介助方法も微妙に異なりますから、サポート学生を前に該当の障がい学生に講師になってもらうことも一案ではないでしょうか。

同志社大学における肢体障害学生支援

支援の概要

車椅子スロープイメージ

<キャンパス内>
1.車両入構および学内車両駐車
2.車椅子介助(教室移動)
3.トイレ介助

<教場>
4.障害に配慮した体育実技の科目設置
5.代筆
6.車椅子用机の配置
7.必要に応じた座席位置の配慮や教室変更、掲示板への配慮

などがあげられます。
 とりわけ、2、3、5については、人的なサポートが欠かせません。サポートスタッフの確保が必要になってくるということです。
 本学ではこれらの支援が必要な学生が増加している背景車椅子手押しイメージもあり、責任を持って取り組む必要性に鑑み、本年度から当該の支援活動の有償化に踏み切りました。
 とは言え、障がい学生支援コーディネーターが「かすがい」となって制度利用学生とサポートスタッフの間に立ち、当事者同士の気持ちのつながりをより一層高めていくことが欠かせないことは言うまでもありません。
 また、4については、今出川・京田辺の両キャンパスにリハビリテーション・クラスが設置され、科目担当者は専任の保健体育教員と医師とのペアになっています。登録者数はそう多くないのが通例ですので、障害や疾患(内科的・外科的)に応じて、運動の種類と運動量が処方されています。
 上記の支援以外に、時間の経過とともに体が固まるのを防止するためのストレッチ・スペースを確保してマットを用意しているケースもあります

車椅子手押しイメージ

学内の啓発活動

 「障がい学生支援制度」の教職員や学生に対する周知を趣旨として、毎年2種類の冊子を発行しています。

 1.学生向けのものは同制度の「案内パンフレット」として、3月上旬に入試合格者のうち第1次入学手続者全員に郵送しています。第2次入学手続(最終)を前にした新入生に対しては、本学の受け入れ態勢を早期に把握してもらい、4月からの大学生活が順調にスタートを切れるよう申し出の機会があることを周知すると同時に、健常学生に対しては「サポートスタッフとして、授業の空き時間を利用してあなたの力を役立ててみませんか?」という、双方へのメッセージを込めています。

 2.また、教職員向けの冊子は同制度の「教職員のためのガイド」として、非専任を含む全教職員に配布し、教員、職員それぞれが配慮いただきたい事項を簡略にまとめています。
 これで万全などとは申せませんが、本学の取り組み姿勢が広く認知されることに一定の効果を発揮していると確信しています。
 その他、学生に対しては大学HPや立看・チラシなどあの手この手で、制度の概要やサポートスタッフ講座等の事業の周知を、また学生手帳にもキャンパス内の身障者用施設MAPを掲載しています。
 教職員に対する啓発活動という意味では、毎年様々な障害を切り口に毎年講演会を行っていますが、今後はとりわけ教員に対するFD活動の一環としてのアプローチが必要と考えています。

各大学へのメッセージ

 「肢体不自由」と言いましても、その原因は中枢神経系の障害(脳性、脊髄性)と筋肉や骨・関節などによる運動器官の障害に大別でき、その結果上肢・下肢や体幹の機能に障害があるというように、その内容は様々で一様ではありません。
 また障害が重複している場合も少なくありませんから、必要となる支援も自ずと多様なものになってきます。一大学が蓄えているノウハウはそう多くないはずです。
 いたずらに抱え込むのではなく、ぜひJASSOが展開される「障害学生修学支援ネットワーク」による相談事業を活用されることをお薦めしたいと思います。

平成19年5月掲載


参考リンク