質問コーナー

筆者紹介

山本 幹雄
【広島大学 教育室 ボランティア活動室 特任講師】
専門は、低温物性物理学、障害学生支援、教育支援
最近は、音声認識技術を活用した教育支援方法や、アクセシビリティ支援教育プログラムの開発にとり組んでいる。
広島大学では、「障害学生支援ボランティア実習」などアクセシビリティ関連授業を担当し、障害学生や支援学生へのアドバイスや技術指導を行っている。

山本先生近影

Q.質問

 障害のある学生の増加に備えて、新たに障害学生支援組織を作りたいのですが、どのような準備をしていけばよいでしょうか?

A.回答

 障害の内容や程度によって支援のニーズは様々ですが、関係する教職員や学生の理解と協力が大切であるという点は共通しています。縦横の連携を円滑にする全学的な視点での組織つくりが肝要です。


全学的なコンセンサスを円滑に得るために
(1)全学組織をつくる
修学支援では、試験の特別措置や施設改修、情報活用など、それぞれを担当する様々な組織との連携が必要になります。全学的な組織があることで、学内のコンセンサスを得やすくなり、このような連携もスムーズになります。
(2)支援のガイドラインをつくる
試験の特別措置や授業支援など、その妥当性を担保するガイドラインが必要になります。他大学の事例などを参考に、学内のニーズに合ったガイドラインを整備してはいかがでしょうか。

相談しやすい環境をつくる
一部の関係者に大きな負荷がかからないよう配慮が必要です。適切な相談窓口、相談の場を用意し、学生・教職員それぞれがいつでも相談できる環境を整備しましょう。

支援者派遣の仕組みをつくる
情報保障や教材支援、日常的な介助のために多くの支援者を必要とするケースが想定されます。学内ボランティア制度を整備するなど、支援者確保と円滑な派遣を行うための仕組みを作りましょう。

支援の拠点をつくる
支援拠点があることで、支援制度の運用が飛躍的に円滑になります。支援拠点の果たす役割としては、次のようなものが考えられます。
(1) 支援の相談窓口:障害学生、支援学生、教職員の相談対応
(2) 支援のコーディネート:関係者間の連絡調整、支援者の派遣など
(3) 支援のリソースルーム:支援機器や支援技術の利用促進など
(4) 人材育成の場:ピアサポート、障害学生・支援学生のスキルアップなど

人を配置する
支援コーディネーターなど、必要に応じて専任教職員の配置も検討しましょう。

広島大学の障害学生修学支援

広島大学 支援体制

全学支援体制
(1)障害学生就学支援委員会
本学では、副学長(教育担当)の下に、各部局から選出される支援委員と支援に詳しい教職員若干名からなる「障害学生就学支援委員会」が組織されています。委員会では、障害学生支援に関わる様々な取り組みの意思決定がなされます。
(2)支援検討WG
修学支援に関わる諸課題を迅速に処理するために、支援委員会のもとに、「支援検討WG」が組織されています。支援検討WGでは、障害学生支援に関わる様々な取り組みの企画・立案が行われます。
(3)支援の拠点「障害学生支援のためのボランティア活動室」
室長(兼任)、教員1名、情報支援コーディネーター1名、事務員1名で組織され、全学的な相談窓口として、支援のコーディネートを行っています。活動室には、障害に応じた支援機器や支援活動に必要な機材が揃えられ、多くの障害学生、支援学生、教職員がこれを利用しています。支援者育成のための授業や講習会もボランティア活動室を拠点として行われます。

基本方針とガイドライン
本学では、「全ての学生に同一で質の高い教育を保障し、同一の基準で成績評価を行うために、障害にあわせて情報伝達や評価方法等を工夫し、不利益が生じないようにすること」を基本方針としています。
また、「広島大学障害学生の就学等の支援に関する規則」に則り、

相談窓口

  • 全学的な相談窓口:障害学生支援のためのボランティア活動室
  • 部局内の相談窓口:支援委員が窓口になります

相談の場

  • 「入学試験前相談」:入学試験および就学上の配慮を希望する受験生に対して、特別措置内容などを検討するために、必要に応じて相談の場が設けられます。
  • 「合格後相談」:支援申請後速やかに、ニーズの把握と支援内容の検討が行われます。
  • 「関係者協議」:対応が難しいケースでは、支援委員が調整し、関係者(障害学生、授業担当教員、活動室スタッフ等)間で協議の場が設けられます。
  • 「受講体験聴取」:セメスター毎に、受講体験アンケートを実施し、必要に応じて意見や要望を聞く場が設けられます。

支援者の確保と育成
本学では、多くの支援学生が障害学生支援に携わっています。このため支援活動そのものが、支援学生の実りとなるよう配慮がなされています。

  • 「障害学生支援ボランティア実習A,B」
    教養教育科目として開講し、支援活動に対する単位認定を行っています。安定した数の受講生が見込めるため、育成と派遣がスムーズです。実習生の指導と支援活動のコーディネートは、ボランティア活動室で行います。
  • 「障害学生支援ボランティア登録」
    実習を履修しない学生に対しては、ボランティア登録制度があり、実習生と同等の活動を行うと「活動証明書」が発行されます。
  • 「有償ボランティア制度」
    トイレ介助や教育実習における情報保障、高度に専門的な授業の支援など、実習生では対応が難しい支援を対象として、有償ボランティア制度があります。

学生・教職員の理解を促進する活動

  • 「教職員のための障害学生就学支援のてびき」:全教職員に冊子を配布
  • 「研修会、講習会」:全学研修会、手話講習会、要約筆記講習会、ガイドヘルプ講習会などを毎年開催
  • 「オンラインアクセシビリティ講座」:全学生・教職員が受講可能なオンライン講座を配信。障害やアクセシビリティニーズ、その支援方法を学ぶ内容
  • 「アクセシビリティリーダー育成プログラム」:オンライン講座と実習A,Bを含むアクセシビリティ関連4講義および認定試験からなる人材育成プログラム

他大学へのメッセージ
障害学生支援のニーズは、障害の種類や程度、大学、学部学科の特色などに依存して多様です。適切な支援を行うためには、やはり関係者の理解と協力が必要になります。関係者間の協力を円滑にする組織つくりが肝要です。「障害学生修学支援ネットワーク」の相談事業を活用して、他大学の事例なども参考にしながら、大学の特色を活かした組織つくりを進めてはいかがでしょうか。

平成19年10月掲載