質問コーナー

著者紹介

石田 久之
【筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター・教授】
筑波技術大学で、視覚障害関連の授業を担当すると共に、視覚障害学生の障害補償に関する各種訓練(点字触読訓練など)を行なっている。また、高等教育における障害学生の修学支援の調査研究に取り組んでいる。

筑波技術大学 石田先生

石原 保志
【筑波技術大学 障害者高等教育研究支援センター・教授】
専門は聴覚障害教育学。筑波技術大学で、聴覚障害関連の授業を担当すると共に、聴覚障害者の就労や言語・コミュ
ニケーションの研究に取組んでいる。

筑波技術大学 石原先生

Q.質問

 聴覚障害学生、視覚障害学生の就労に際して、どのような支援をすればいいのでしょう。

A.回答

企業等に対する大学の障害学生求人窓口(担当者)の明示
  近年は、障害者の法定雇用率未達成事業所(企業、官公庁など)に対する行政指導が厳しく、未達成事業所が実名公開されるなどの背景から、障害者雇用に積極的な事業所が増えています。大学側が障害学生求人窓口を明らかにすることによって、障害学生を探している企業等と障害学生の求職を結びつけ、また窓口を通して障害に関する配慮等の知識を企業等に提供することができます。

障害学生に対する就職活動の方法に関する情報の提供
 就職を希望する地域のハローワーク、学生職業センターに障害学生としての求職登録をすること、またハローワークや民間の人材紹介会社等が主催する障害者対象面接会が各地で行われておりWebから情報を得られること等の情報を学生に提供することは、学生が自分自身で就職活動することを容易にします。

教員の推薦
 学校(教員)の推薦は一般的に学生の評価を高めますが、特に障害学生に関しては雇用側に安心感を与えます。また初めて聴覚障害学生、視覚障害学生を採用しようとしている企業等の中には、障害に関連して適切な職種、配置などに関する相談のニーズを有している場合があり、適切なアドバイスが出来る教員と企業等とのパイプをつくることができます。

自立支援
 最後にあえて書きますが、障害学生の自立支援も忘れてはならないことです。大学という、ある種、保護された教育の場と、競争の原理が働く社会とは、多くの面で異なっています。学生は、大学の場に留まるわけではなく、何年かで卒業していきます。大学が社会への出口であることをしっかりと理解させ、自己の障害、できること、できないこと、必要なサポート、そのサポートの受け方などを、正しく身に付けさせることが、とても重要であると考えています。

筑波技術大学における聴覚障害学生、視覚障害学生に対する就労支援

 聴覚障害学生、視覚障害学生のための我が国で唯一の高等教育機関である筑波技術大学では、以下の活動を通して学生の就労を支援しています。

1.就職活動に対する支援

1)企業向け大学説明会
  毎年度1回、障害学生の求人をしている企業等の人事担当者約100名を対象とした大学説明会を実施し、本学の教育の特色、障害の特性等について説明するほか、名刺交換会を通して企業等の人事担当者と本学教員との間のパイプづくりをおこなっています。企業側のニーズと学生の希望のマッチングをはかり、この結果何割かの学生が学校推薦で就職するほか、企業等の障害啓発を促しています。

2)就職ガイダンス、就職模擬試験
 卒業の前年度に行われるガイダンスを通して、就職活動の手順と方法、障害者対象面接会の案内、面接のスキル等について学生に案内しています。また就職模擬試験を実施し、この結果をもとにSPI対策やエントリーシート、履歴書の書き方について指導しています。

3)面接指導
 個別コミュニケーション指導の一環として、聴覚障害学生のうち希望者を対象とした個別の面接指導をおこなっています。聴覚障害教育の専門性を有する教員または聴覚障害者との対話経験がない事務職員との想定問答を通して、学生一人ひとりのコミュニケーション特性に応じたコミュニケーション方法の選択、筆談や手話通訳を通したコミュニケーションの方略、面接における基本的なマナーについて指導します。

4)会社説明会
 毎年度、複数の企業等からの要請に応じて本学を会場とした会社説明会を実施しています。

5)個別企業対応
 求人のため来学する企業等に対しては就職担当の教員と事務職員が随時対応しています。また各学科の就職担当の教員が企業等を訪問し新たな職域とインターンシップ先の開拓に努めています。

2.就労レディネスを高めるための支援

1)インターンシップ
  インターンシップは、就労に関する学生の意識を高めるだけでなく、障害のない学生と比較して概してアルバイトの経験が少ない障害学生が働く場を垣間見、体験する絶好の機会となります。インターンシップ先に就職する学生も多く、この場合は職場側の障害啓発と学生受け入れに対する準備を促す効果も期待されます。

2)聴覚障害学、視覚障害学
  第1年次から必修、選択を含め障害学に関わる複数の科目が開設されており、聴覚障害者、視覚障害者の社会生活に関わる福祉、法律、情報保障等の具体的情報を提供しています。また卒業生調査や相談事例から得られた職場適応上の困難点、改善策を紹介し就職先の選択や就労に際しての準備に関わる指針を与えています。

3)卒業生講演会
  毎年度、卒業生を招聘して講演会を行っています。

3.職場適応を促すための支援

1)コミュニケーション指導
  聴覚障害学生にとって職場におけるコミュニケーションは大きな課題となります。本学では個別コミュニケーション指導を通して、状況に応じた各種コミュニケーション方法の選択、併用の技術に関する指導をおこなっています。

2)聴覚障害学生雇用ハンドブック
  職場における障害啓発を促すためのガイドブックを作成し、企業向け大学説明会等で配布しています。

3)出張講座
  卒業生を対象とした各種講座を東京、大阪を中心に実施していますが、この中で職場適応に関する講座を毎年、おこなっています。

4)相談対応
  卒業生または卒業生を雇用する企業等からの相談に対しては、支援センターおよび学部が分担して対応し、状況によっては教員が対応のため企業等を訪問しています。

5)卒業生調査
  卒業生を対象とした一斉調査を平成10年度、19年度に実施し、学生の就労支援および卒業生の職場適応支援の基礎資料としています。

4.自大学での障害者の採用、雇用率の達成

  障害者が働いている場を見ることは、多いとはいえません。職業自立を目指しているが、さて、実際に働くとなると、どういうことができるのか、どの様に周りの仲間とやっていくのかなど、具体的なイメージを持つことができない障害学生もいます。そんな時、大学職員として生き生きと働いている障害者がいれば、大きな励みになるのではないでしょうか。ちなみに、筑波技術大学の実雇用率は14.66%です(平成19年6月1日現在)。障害学生への直接的な支援だけが、就職・就労支援ではないと思います。
平成20年3月掲載