独立行政法人日本学生支援機構のサイトです。

「学生生活支援」カテゴリのコンテンツです。

独立行政法人日本学生支援機構のサイト

ここからヘッダーです。サイトタイトルや閲覧に役立つ補助的機能を含むリージョンです。

紛争の防止、解決等のための基礎知識(1)大学等における基本的な考え方3-4

3.不当な差別的取扱いとは

【不当な差別的取扱い】

障害のある学生(以下、障害学生)に対して、正当な理由なく、障害を理由として、
・財・サービスや各種機会の提供を拒否する、
・財・サービスや各種機会の提供に当たって場所・時間帯などを制限する、又は
・障害のない学生に対しては付さない条件を付ける
(「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(以下、「基本方針」)、「第二次まとめ」)

【不当な差別的取扱いが禁止される場面】

不当な差別的取扱いは、入学前相談、入試、授業・ゼミ・研究室の選択、試験、評価、単位認定、実習・留学・インターンシップ・課外活動への参加等、修学や学生生活のあらゆる場面で発生する可能性があります(「第二次まとめ」)。

【「不当な」の意味】

「不当な」というのは、当該取扱いに正当な理由がある場合には、本法(障害者差別解消法)により禁止される不当な差別的取扱いには該当しないとの意味内容をもった文言です(「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律Q&A集<地方公共団体向け>」)。

【正当な理由の判断】

正当な理由に相当するのは、障害学生に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合です(「基本方針」)。
正当な理由に相当するかどうかは、個別の事案ごとに、障害学生や大学等や第三者の権利利益(*)の観点から総合的・客観的に判断します。事故の危惧がある、危険が想定されるなどの一般的・抽象的な理由に基づく対応は適当ではありません(「基本方針」、「第二次まとめ」)。
大学等は、「正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい」でしょう(「基本方針」)。

*権利利益の例:安全の確保、財産の保全、教育の目的・内容・評価の維持、損害発生の防止等

事例講評

不当な差別的取扱いの事例では、合理的配慮の概念を考慮に入れるべき場合もあります。このような場合に該当する事例を以下では2点取り上げます。

まず、ある障害学生が入寮を希望した際に、寮でヘルパーを利用することを求めたため、入寮を断られた事例があります。この事例で、大学側が入寮の拒否を正当化するために用いた理由というのが、寮内へのヘルパーの立入が許可できないことと、この学生が掃除や行事参加など寮生としての役割を果たすことが難しいことでした。この点、大学側が寮内へのヘルパーの立入を許可することや、掃除や行事参加を免除することは、合理的配慮の問題として理解することができます。ただし、もしも過重な負担があるようであれば、大学側はヘルパーの立入許可や掃除免除といった配慮を行なう義務を負いません。また、過重な負担という正当な理由があれば、大学側が学生の入寮を断ったとしても不当な差別的取扱いにはあたりません。

別の事例として、聴覚障害のある学生が、卓球とバレーボールの授業を履修したいとの希望を有していたにもかかわらず、障害を理由にこの履修を認められなかった、というものがあります。この事例で、大学側は合理的配慮の提供可能性を検討しましたが、「体制の不足」等を理由に当該授業の履修を認めませんでした。もしもこの「体制の不足」が過重な負担にあたるのであれば、大学側は当該授業の履修に関する配慮を提供する義務を負わず、また大学側が障害を理由に当該授業の履修を認めなかったことは正当な理由があるため不当な差別的取扱いに該当しません。

なお、以上の2つの事例において実際に過重な負担があった(正当な理由があった)かどうかは、必要な情報を欠くため、この講評では評価していません。

4.合理的配慮とは

【合理的配慮】

・障害のある学生が、他の者と平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、大学等が行う必要かつ適当な変更・調整で、
・大学等において教育を受ける場合に個別に必要とされるものであり、かつ、
・大学等に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担(以下、過重な負担)を課さないもの
(「第一次まとめ」「第二次まとめ」)

【合理的配慮の対象事項】

合理的配慮は、教育に関する事項(入学、学級編成、転学、除籍、復学、卒業 授業、課外授業、学校行事への参加等)のみならず、学生の活動や生活面に関する事項(通学、学内介助(食事、トイレ等)等)に関しても提供されなければなりません。

【過重な負担の有無】

大学等は、ある配慮が過重な負担となるか否かは、個別の事案ごとに、以下の諸要素を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断します(「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(以下、「基本方針」))。

・事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
・実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
・費用・負担の程度
・事務・事業規模
・財政・財務状況

大学等は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましく、他の実現可能な措置を検討・提案する必要があります(「基本方針」、「第二次まとめ」)。

【本来業務付随、同等の機会、本質変更不可】

以下の3つの要素は、過重負担の文脈において判断されるべきであるか、あるいは過重負担の文脈とは独立して判断されるべきか定かではありませんが、いずれにしても、ある配慮が合理的配慮だといえるためには、これらの要素も満たす必要があります(「基本方針」)。

・本来業務付随(事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること)
・同等の機会(障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること)
・本質変更不可(事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと)

【性別と年齢】

障害者差別解消法は、「障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて」合理的配慮を提供しなければならない、と定めています。合理的配慮を提供する際には、障害の状態に加えて、性別や年齢を考慮に入れることも必要です。

事例講評

障害者差別解消法の下で、大学等は合理的配慮を提供する義務を負っています(私立の大学等の場合は努力義務)。ただし、大学等は、過重な負担を伴う配慮を提供する義務を負わず、本来業務付随、本質変更不可、同等の機会という要件を満たさない配慮を提供する義務も負いません。また、大学等は、障害者の意向を尊重した配慮を提供する必要があります。以下においては、これらの概念を見ていきたいと思います。

過重な負担

まず、過重な負担の例を2つ紹介します。ひとつは、公共交通機関および自転車による通学のみを認めている大学で、両下肢機能障害の学生が自動車による通学と大学敷地内の駐輪場の利用とを希望した事例です。この事例で、大学側は自動車通学を認めたものの、「大学敷地内に貸出可能な駐車場がないこと」などを理由に、大学敷地内の駐車場の貸出を認めませんでした。ここでは、「大学敷地内に貸出可能な駐車場がない」という「実現(不)可能性の程度」の観点から、過重な負担が判断されています。

もうひとつは、聴覚障害のある学生が、手話通訳や同時通訳を可能にする機材等の導入を希望した事例です。この事例では、「可能な限り本人が希望する授業・学会等へ参加の際は手話通訳者や同時通訳が可能な機材等の導入をするようにしているが、金銭的な理由により、全ての対応は難しい」とされました。ここでは、「金銭的な理由」という「費用・負担の程度」の観点から、本人の希望に全て対応することは過重な負担になる、と判断されています。

本来業務不随

本来業務付随に関する例としては、ある企業の採用内々定を受けた学生が、同社から色覚検査と操作技術のテストを求められた後に、内々定を取り消されたため、同社への採用内々定の履行を求めることを大学側に要求した事例があります。大学側は、これを「大学が行使しうる内容を超えた要求」としました。この事例をどう位置付けるべきかは難しいですが、大学側は採用内々定の履行を企業に求めることが大学の本来業務に付随しないものと判断した、と解することもできるでしょう。

本質変更不可

本質変更不可の例を3つ紹介します。第1に、得意科目で習得した単位を、不得意な語学系科目・情報系科目の単位として認定してほしい(卒業要件を変更して単位認定をしてほしい)という学生の要望が、「本学のディプロマ・ポリシーに関わることであるため」、認められなかった事例があります。この事例では「ディプロマ・ポリシー」の観点から教育の本質部分が判断されています。

第2に、文系学部の受験を希望する学生が、聴覚障害のためにリスニングが難しいことから外国語科目に関する支援を問い合わせた事例です。この事例で、大学側は「リスニングやスピーキング以外の手段で学ぶということでは、学部の教育目標の到達を保障でき」ず、リスニングやスピーキングはカリキュラム上は避けて通れないため、代替措置等の個別支援は不可能である、と判断しました。ここでは、「学部の教育目標」(カリキュラム・ポリシー)の観点から教育の本質部分が判断されています。

第3に、ワクチンの接種による後遺症により、学習障害や記憶障害があるため、試験科目や問題の変更をして欲しいとの申出に対して、大学側が「試験科目や問題内容を変えることは、本学の教育内容を踏まえた入学試験として提供できないと」判断した事例です。この事例では、「本学の教育内容を踏まえた入学試験」(アドミッション・ポリシー)の観点から教育の本質部分が判断されています。

本質変更不可に関しては、大学等は、何が変更可能であり、何が変更不可能であるかを明確にしておく必要があります。この点も含めて、「第二次まとめ」が、大学等が取り組むべき主要課題を以下のように記していることが重要です。

「3つの方針(アドミッション・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、ディプロマ・ポリシー)やシラバス等の公開・明確化により、教育の本質を可視化することで、大学等の選択に必要な情報を入学希望者等に提供するとともに、合理的配慮の提供において変更可能な点と変更できない点を明確にすることにつなげる。」

「学外実習において、参加要件を設定する場合は、障害があることをもって参加を妨げることがないようにするとともに、成績評価においても能力要件を定めるなど、適切な単位認定ができるようにする。また、実習機関の利用者の権利利益を損なわないよう留意しつつ、実習授業の目的・内容・機能の本質的変更をしないような配慮のあり方を検討する。その際、大学等はこれらの機関と密接に情報交換を行なうことが重要である。」

「レポートや発表等、試験以外の課題においても、課題の目的や評価基準を明確に示すことが望ましい。また、その目的を損なわないようにしながら、学生の学習成果を適切に評価できるよう、提出や発表の形式については柔軟に変更できるようにする。」

同等の機会

教育の本質が変更される場合には、学生間の同等の機会が損なわれるという問題も同時に発生することがあります。たとえば、得意科目の単位を不得意科目の単位として認定することを求めた上記事例は、本質変更不可の問題とともに、学生間の同等の機会を損なうという問題も惹起させるでしょう。

意向の尊重

障害学生の意向を尊重する例としては、全介助が必要な学生が、1.男性、2.直接雇用、3.一人専属、4.学生を抱えきれる体力の4条件を満たす介助員を希望した事例があります。この事例で、大学側は次のように対応しました。「関係者、学生及び保護者との話し合いを繰り返した。直接雇用かどうかについては、大学の判断とさせて欲しいこと、一人専属については、業務委託先の人員の状況に依存するため、意向は尊重するが実現できないこともある旨伝達したが、なかなか同意が得られなかった」。この事例では、学生の意向は尊重されていますが、(過重な負担により)完全には採用されませんでした。

障害学生は、他の学生からの視線との関係で、自身の意向を表明することがあります。たとえば、特別扱いをされていると思われたくない学生の事例として、次のものが挙げられます。発達障害のある学生が、書くことと聞くことを一度にすることに困難さを感じており、教員にパワーポイントを出来るだけ紙の資料にして渡してもらうよう依頼しました。この依頼は聞き入れられましたが、教員はこの資料を他の学生がいる前で渡したため、この学生は、自分が特別扱いされているように思われるのではないかと不満(不安)を抱きました。そして、この学生は、教員に資料を渡す際に封筒に入れることを求めたところ、この意向は尊重され採用されました。

また、自分の障害あるいは体調・体形・容貌を知られたくない学生の事例として、次のものがあります。すなわち、摂食障害があるため、体重の増減が激しく体形をかなり気にする学生が、健診時には周囲の人に体重がわからないように計測をするよう求め、また演習時に水着になる点についても配慮を求めました。大学側は、健診時には、体重の表示パネルが他の学生の目に触れないよう配慮するとともに、演習時には、カリキュラム上避けられないデッサン等の時以外は、上着を羽織らせる等の配慮をしました。

これらの事例が示すように、大学側は、学生の意向を尊重して、他の学生からの視線に配慮したり、プライバシーを守ったりしながら、合理的配慮を提供することが求められています。その際に注意しておくべきことは、他者の視線やプライバシーに考慮を入れると、提供しうる合理的配慮の範囲が狭まってしまうこともあるということです。たとえば、「できるだけ障害について知られたくない」「特別な下着を装着していることを知られたくない」という学生の意向があったため、級友のサポートや学生ボランティアの支援が難しくなった事例があります。

留意点

以上において、「実現可能性の程度」と「費用・負担の程度」からみた過重な負担の事例に加え、本来業務付随、本質変更不可、同等の機会、意向の尊重に関する事例を取り上げました。ここで最後に指摘しておきたいことが3点あります。

まず、大学等は、ある配慮が過重な負担にあたるか、本来の業務に不随するか、本質を変更してしまうかなどを、主観的・抽象的・一面的ではなく、客観的・具体的・総合的に判断することが必要です。この点、上記の各事例において客観的・具体的・総合的な判断がなされたか否かは、必要な情報を欠くため、この講評では一切評価していません。

次に、本来業務不随や本質変更不可や同等の機会に関する問題は、「事務・事業への影響の程度」の観点から過重負担の文脈で判断することができるかもしれません。もっとも、このことは形式的な問題です。いずれにしても重要なのは、客観的・具体的・総合的な判断がなされているかどうかです。

最後に、学生のプライバシーは、合理的配慮のみにかかわる問題ではなく、そもそも大学側が個人情報保護の観点から守らなければならないことでもあります。たとえば、教員がある学生に摂食障害があることを授業中に他の学生の前で話してしまい、授業への参加ができなくなったと保護者より申立があった事例もあります。この事例では、大学側と保護者との間で話し合いが行なわれ、担当教員の変更がなされました。

ピックアップ

  • イベントカレンダー
  • 教職員のための障害学生修学支援ガイド