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第6回 障害学生支援体制構築のポイント(関西学院大学)

質問コーナー

著者紹介

高畑 由起夫
【関西学院大学 総合政策学部 総合政策学科 教授総合政策部ユニバーサルデザイン教育研究センター長】
2004年度にユニバーサルデザイン教育研究センターを設置
し、具体的な学習支援の開発と実践に着手した。総合政策
学部の理念である〈人と人との共生〉〈人と自然との共生〉
を基に、学内の取組を進めている。特に3名を1チームとす
るPCノートテイクを導入し(PC入力担当者2名と筆記担当者1名)、日々実践に取組んでいる。

高畑先生写真

Q.質問

障害学生支援を一から立ち上げてきた経緯(ポイントになる点)について教えて下さい。

A.回答

 まず、私たちが支援を立ち上げた頃は、現在に比べて情報も少なく、どこで情報を得ればよいか、探し方もよくわかりませんでした。この点で、「情報がなく、どうしてよいかわからない大学/学部」に必要な情報を提供するシステムの構築について、学生支援機構に期待したいと思います。

 さて、具体的な経緯をふりかえると、はじめに担当部署についての制度設計が必要だと思います。どの大学でも基本的に同じかと思いますが、関西学院大学では学部ごとに教育については教務部が、学生生活は学生部が担当する「縦割り」体制をとります。しかし、障がい学生への支援において、こうした縦割り体制ではしばしば齟齬が生じます。勉学や学生生活、そして就職まで総合的に対応する体制(とくにコーディネーターの存在)が必要です。実を言えば、本学でもこうした体制はまだ整っていません。

 次に、“現場対応”に徹することが必須です。障害の種類・程度で対応が異なるため、“現場=教室”で利用学生(障がいがある学生)の状況をモニタリングする必要があります。教室では、頭の中で想像していたよりもはるかに多くの課題が見つかります。第三者的な視点から、教員や利用学生本人、サポートの学生スタッフも気付つかない課題に気づき、工夫しなければなりません。“教育現場”に散見する“ヒント”をとりあげながら、利用学生や学生スタッフから意見を吸い上げる(=ボトムアップ)体制を構築して、現場を“学び=研究”の場とすることが理想かと思います。

 最後に、ステークホルダー(大学、学部、教員、利用学生、学生スタッフ、一般の学生、あるいは学生の保護者の皆さん)すべての方に、「なぜ障害がある学生への支援が必要なのか?」理解していただくための理論構築が必要であるとともに、一般の学生の方にとってもわかりやすい授業にしていくための不断の努力が大切かと思います。

障害学生修学支援に関するコラム

 関西学院大学総合政策学部は、「人と人との共生」および「人と自然との共生」を目指し、1995年に神戸三田キャンパスに開設されました。2001年度に肢体不自由の方が入学されたのを皮切りに、全盲の方1名、難聴の方2名を主な対象に、支援をおこなってきました(このうち3名の方がすでに卒業されています)。

 これまでの主な支援は、(1)聴覚障がい学生へのPCノートテイク法と(2)ビデオ教材への字幕付け、そして(3)視覚障がい者のための点訳システムの開発等です。大学としての制度も、情報やノウハウもまったくない中で、試行錯誤を続けてきましたが、あらためて感じるのは、障がい学生への修学支援は「総合政策」そのものである、ということです。その点について、少しご説明したいと思います。

 総合政策では、問題発見・問題解決において、多面的なアプローチが提唱されています。そこで、「聴覚障害」をとりあげて、「障害を持つ学生に、どのように支援体制を整えるか?」、「専門が異なる教職員は、現実の問題解決にどのようなアプローチをとることが期待されるか?」考えてみましょう。

(1)自然科学のレベル:まずもっとも基礎的な研究として、自然科学=原因の究明や治療法等があげられます。例えば、聴覚の仕組みは非常に複雑なため、難聴の原因や程度も様々で、治療法や補聴器の効果等も異なるそうです。さらに、「コミュニケーション」の研究も重要です。我々はビデオの字幕作成に音声認識ソフトを使っています。こうしたソフトの開発等は日本語の発音、音韻・文法構造、単語の連関性等について基礎的研究なしには不可能でしょう。

(2)応用科学のレベル:次が、具体的な支援法(ノートテイク法等)や機器、ソフトの開発が挙げられます。例えば、総合政策学部ではいくつかの試行錯誤の結果、ノートテイクではPCノートテイクと手書きサポートを組み合わせた形でやっています。もちろん、これがベストということではなく、さらに良い支援方法を検討していきたいと思っています。

(3)社会科学(法、経済、社会、政策)のレベル:支援法が確立しても、それを実施するための制度的枠組みが必要です。個々の大学で支援体制が追いつかなければ、複数の大学がグループを作ったり、学外の専門機関からのノウハウや人材の提供を受ける体制作りも必要かもしれません。財政的裏付けも重要で、支援策の対費用効果も考えなければなりません。法的には、海外でのADA法などのような整備も必要です。一方で、教材についての著作権法の検討や、(ノートテイカーの守秘義務等の)情報管理も考えなければなりません。さらに具体的には、一般の学生からスタッフを募集・講習をおこなうとともに、現場でのサポートをコーディネートする体制、そして講習の内容やシステムも整備する必要があります。

(4)哲学・価値観・倫理等のレベル:最後に、修学支援を支える理念・思想的基盤を考えなければなりません。障がいがある学生への支援は、究極のところ、「人と人との共生」につながること、そして、障害を持たない学生にも、「すべての人をユニバーサルに受け入れることができる環境を良いものとする価値観」を身につけさせ、「こうした大学環境こそが、本来のあるべき大学(さらには大学外の一般社会)の姿である」という自覚を持たせることが究極のテーマと言えるでしょう。

 このように問題点を階層的な視点で整理していくうちに、それぞれの教員の方々にはそれぞれご専門にあわせて、この難しい課題に取り組んで頂くことを期待したいと考えております。同時に、学生も含めて、障がい学生への修学支援がすぐれて今日的課題であること、そして“教室”において理論と実践を体験できる機会にほかならないことに気付いていただきたいと思います。
平成20年3月掲載

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