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第3回 同等の機会の提供とは

一緒に考えよう!合理的配慮の提供とは

「障害者差別解消法」施行に伴い、全ての大学等についても、不当な差別的取扱いが禁止され、合理的配慮の提供が求められています。では、どんなことが不当な差別的取扱いにあたるのか、合理的配慮とは何なのか、その基本的な考え方について、わかりやすく解説します。

第3回同等の機会とは

ファシリテーター
ファシリテーター

第3回は、大学の責任で同等の機会を提供していくことの重要性について考えます。本人が感じている社会的障壁を理解し、それを取り除く努力をするということが、具体的にはどういうことなのかについて、ワークショップ形式で、意見交換していきます。
ワークショップの参加者は、いずれも、大学等の障害学生支援の実務担当者です。

検討課題

  • ニーズの把握
  • 合理的配慮の提供に伴う負担(予算、人材等)
  • 今あるリソースの活用

参加者紹介

国立大学Aさん
国立大学Aさん
私立大学Bさん
私立大学Bさん
私立短期大学Cさん
私立短期大学Cさん
ファシリテーター

ファシリテーター:今回は、学生から私のところに相談があった事例について紹介します。聴覚障害(ろう)の学生の事例です。通常の授業はノートテイクを利用し、先生方にも、自分からお願いして、口元がよく見えるように正面を向いてはっきりと話してもらうようにしていただいていたそうです。ところが、ある授業でグループ学習が始まると、発言する人が複数で、話す順番が決まっているわけでもないし、議論が盛り上がってくると、ほとんど同時に複数で発言するなど、ノートテイクが議論の進行に追いつかない事態に陥りました。そこで、学生は大学に「グループ学習のときだけ手話通訳をつけてほしい」と申し出たのですが、「手話通訳者にかかる費用が過重な負担なので配慮は提供できない」と言われてしまいました。実は、こういう対応は全国の大学等で非常によくある典型的な事例です。手話通訳は、専門的な技術が必要とされますから、通訳者を配置するのにもそれなりの費用がかかるためです。学生からは、「このままではグループ学習の授業についていけない、どうしたらいいでしょう」と相談を受けました。さて、このようなケースで、まず大学がすべきことは何でしょうか。

ニーズの把握

Bさん

Bさん:グループ学習は、会話の内容をリアルタイムで知って、会話に参加できて、はじめてグループでの役割を果たせるものですよね。この学生は現時点でそれができていない。それができるようにしてほしい、というのが学生の希望ですよね。グループ学習での情報保障ってどこの大学でもよくある申し出だと思います。これを「過重な負担」として何もしないのは、大学は、合理的配慮の提供義務を怠っていると言われても仕方がないんじゃないかな。ゼロ回答じゃなくて、なんとか支援する方法はないか、検討してみることが大事じゃないかな。

Cさん:でも、うちの学校でも障害学生支援に使える予算は限られているので、手話通訳者をつける費用はなかなか出せません。入学式とかの学校行事くらいならなんとかなりますが、個別の学生の授業に毎回手話通訳をつけるというのは、ちょっと難しいです。

Cさん
ファシリテーター

ファシリテーター:第1回のコラムでも触れましたが、大学等における合理的配慮提供の目的は、障害のある学生に障害のない学生と同等に学習できる環境を保障することです。Bさんからも指摘があったように、グループ学習における情報保障も、ほかの学生と同じ情報を取得できるようにするためのもので、すなわち「同等の機会」を提供するための手段と言えます。では、手話通訳の費用負担が難しいという現実がある場合、大学等としては、どうすれば良いでしょう?

合理的配慮の提供に伴う負担(予算、人材等)

Aさん

Aさん:うちの大学には、学生の手話サークルがあって、中には、技術が非常に高く、地域の手話通訳試験に合格して活躍している学生もいるくらいです。そうした学生には、大学の支援学生にも登録してもらっています。通常のノートテイクよりも高い技術を求められるということで、謝金単価も高めに設定していますが、外部の手話通訳者をお願いするよりは、予算の面では助かってます。学生の自発的な活動として始まったものですが、今では大学の予算で手話講習会を開いたりして、手話のできる支援学生の数を増やそうという取組もしています。

Cさん:どうしても必要なら、手話通訳者の料金は、本人に負担してもらってはいけませんか。

Cさん
ファシリテーター

ファシリテーター:合理的配慮の提供は大学等に課せられた義務(国公立は法的義務、私立は努力義務)なので、予算面、人材面を含めて大学側が用意をするのが、本来は妥当です。情報保障の提供には一定の費用がかかりますが、これを保護者や本人に求めるのは、障害者差別解消法の趣旨にそぐわないと言えます。一部署で対応できなければ、大学全体で予算計上の道を探る姿勢が大事です。よく聞くのは、支援部署の予算だけでは賄えない場合に、学生が所属する学部が費用を負担するケースですね。ただ、学内でやりくりをしたとしても、小規模校などで、やはりどうしても費用負担は難しいという話も聞きます。ただ、例えば私立の場合で言うと、日本私立学校振興・共済事業団の私立大学等経常費補助金の中に、障害のある学生に対する具体的配慮の取組の授業等の支援の実施という項目があります。こうした制度を知らなかったとおっしゃる支援担当者もいらっしゃるので、一度、学内予算についてきちんと調べてみることも重要です。このように、大学側が負担することを前提に様々な可能性を探ってみて、それでもどうしても「過重な負担」になる場合には、本人とよく話し合って、例えば全15回のうち、重要な5回だけ手話通訳を配置するなどの方法もとれると思います。いずれにしても、単純に配慮の不提供あるいは本人負担という選択をする前に、まだ、検討すべき余地はあるんじゃないでしょうか。

今あるリソースの活用

Bさん

Bさん:なぜ手話通訳以外の選択肢について検討しなかったんでしょう。うちの大学では、グループ学習の授業には学生によるパソコンノートテイカーをつけています。グループのメンバーごとの発言に発言者の名前をつけてテイクしています。グループ学習のときって、ついつい早口になったり、ほかの人が話し終わらないうちに話し始めたりしてしまいがちですから、テイカーはその度に「待った」をかけて、順番にゆっくり話してもらうように理解を求める必要がありますが、そのうち学生たちも慣れてきて、発言するときには手を挙げて名乗ってから発言する等、自然にノートテイクを前提としたルールができていくみたいです。

Aさん:そういえば、うちの大学のあるゼミの教授が、ゼミ生全員にノートパソコンを持たせて、チャットでグループ学習をしたという話を聴きました。発言者はしゃべりながら自分の発言をチャット画面に打ち込むという方法です。パソコンが苦手な学生は、最初は苦労したそうで、話す内容を全部打ち込んでから読み上げたりするので時間はかかるけど、会話が記録に残るので、聴覚障害のある学生以外の学生にも好評だったそうですよ。それに、この方法だと、聴覚障害と視覚障害のどちらの学生も同時に参加できるんですよね。

Aさん
Cさん

Cさん:すごいですね!うちの場合は、難聴の学生で、聴覚からの情報もある程度活用できているのでFM補聴器を使っているんですが、FM補聴器用のマイクを発言者が順番に回して使えば、グループ学習にも対応できそうですね。

ファシリテーター:その際には、グループ学習の時間を長めにとるなど、授業進行上も工夫が必要ですね。ありがとうございました。グループ学習の情報保障の方法やアイデアが、手話通訳以外にもいろいろと出てきましたね。皆さんご指摘のように、手話通訳は費用がかかるから無理……というところで終わらせずに、学生が何に困っているのかによく耳を傾け、どうなることが学生の障壁の除去になるのか、ニーズの本質をよく理解して、学生本人や担当教員、場合によってはそれ以外の関係者(この場合はグループ学習に参加する学生たち)とも話し合いながら、今あるリソースの利用を検討することも大事なことです。合理的配慮の提供とは、そうした建設的対話の中から、学校が提供できる配慮を探し出していくことによって成立するとも言えるでしょう。

ファシリテーター

以上の点について、詳細は、以下の「紛争の防止・解決等のための基礎知識(1)大学等における基本的な考え方3-4」でも解説していますので、ご参照ください。

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