1.日時
平成27年3月13日(金曜日)15時~17時15分
2.場所
アルカディア市ヶ谷(私学会館) 5階大雪東の間
3.出席者
(委員)
天羽稔委員、一井眞比古委員、片峰茂委員、木苗直秀委員、國枝マリ委員、小林雅之委員、 西原政雄委員、南砂委員、吉田文委員
(JASSO)
遠藤勝裕理事長、杉野剛理事長代理、 山内兼六理事、米川英樹理事、甲野正道理事、嶋倉剛政策企画部長、 石矢正幸奨学事業本部長、鈴木美智子留学生事業部長、山田総一郎学生生活部長 ほか関係職員
(文部科学省)
渡辺正実学生・留学生課長
4.議題
日本学生支援機構事業の現状と課題
5.議事次第
6.配付資料
7.議事
資料に基づきJASSO側から説明を行った後、意見交換が行われた。概要は次のとおりである。
(○=委員、●=JASSO、■=文部科学省)
○奨学金事業の予算について、平成25年度から平成26年度にかけて有利子奨学金の貸与人員数が92万人から86万人となっている。6万人を減らしたことは適正なのか。
●有利子奨学金については、貸与を希望する学生全員に貸与できている状態である。有利子奨学金予算の減少については希望者が頭打ちになっているものであると考えている。一方、無利子奨学金については予算を増やしているが、結果的に全体としては減少した形となっている。
■補足すると、有利子奨学金の希望者が減少している理由について、JASSOとも相談しながら分析を進めている。約6万人の減少のうち、新規貸与者の約2万人は無利子奨学金が増えていることでおそらく説明はつく。ところが、既に貸与を受けている学生のうち、1年生から2年生へ、2年生から3年生へ進級する時、この2学年で前年度と比較すると減少している。進級のタイミングで学生が退学しているのではないかということも含めて、現在調べているところ。必ずしも退学が要因とは言えないが、約3万人の在学中の学生が有利子奨学金の貸与を辞めているという現状があるため、その理由について詳しく調べてもらっている。
○障害学生数の増加について、増えてきているのではなく顕在化したとの発言があったが、私も同感である。文部科学省はこれにどのように対処しようとしているのか。国公私立関係なく、対応として具体的な方向性はあるのか。
■例えば、与党でも、障害者に対してどのような対策がとれるのか、高等教育段階だけではなく、初等中等教育段階も含めて議論が進められている。障害者差別解消法も施行されるため、我々も平成28年度に向けて組織や体制、予算等、しかるべく対応をしなければならないと思っている。まもなく政府で基本方針が固まり、まず国立大学が合理的配慮を行うための措置について議論を開始するが、文部科学省も一緒に議論をしながら、その他、公立大学、私立大学に対しても、何らかの支援をできるようにしたい。特にJASSOにおいては、各大学の先進的な事例をご紹介いただいているので、そういったことも併せて、文部科学省としてもまずは合理的配慮を普及し、必要な支援のための予算について少しでも措置できるよう努力してまいりたい。
○合理的配慮とは何であるのかは非常に難しい問題。おそらく各大学で考え方も異なり、先進的な事例を実施している大学もあれば別の方法で取り組んでいる大学もある。どこをゴールと考えているか。ガイドラインのようなものを作ることなのか、それとも、事例の紹介なのか。
●ご指摘のとおり、合理的配慮については各大学が非常に悩んでいるところ。これについては、文部科学省と相談しているところであり、ガイドラインのようなものを作成していただき、それをJASSOが紹介するような形を考えている。来年度実施する体制整備支援セミナーで、ある程度のガイドラインのようなものをお示しすることができればと考えている。
○障害者差別解消法が施行されると、様々な訴訟が起こると思うが、判例等が出てこないと、本当の意味でのガイドライン作成は難しいのではないか。
●おっしゃるとおり。今後十分に詰めることが必要と考えている。
○合理的配慮については、どのように実施していくかについて、個別に非常にきめ細やかに議論しないと、モデルや目標を掲げるのはなかなか難しいという印象。文部科学省においても、初等中等教育の中では発達障害や学習障害に対する担当がきちんとあるのに、高等教育にはない。初等中等教育の年代で克服される部分が実はかなりあるはずなのに、できていない結果が高等教育に影響して来ている、あるいは高等教育になってから顕在化しているという事実もあると考えられる。高等教育に止まらず、社会全体の問題にもなっている実情なので、これからの高等教育の中で検討が必要だが、実はこの問題をどうするのかということは、JASSOの問題というよりは、国全体の教育行政の中で考えていかなければならない問題だと思う。
○「トビタテ!留学JAPAN」は留学をする大学生に奨学金を給付する制度だが、学生は既に中等教育の段階で自身の方向性を決めている。メディアの活用が非常に重要と考えており、高校に制度を周知し、中等教育と高等教育が連携すれば、本プログラムが非常に有効に活用されるのではないか。
●ご指摘のとおり。JASSOとしては、教育の機会均等という観点で、意欲と能力がありながら、経済的な理由により進学等をあきらめる若者が出ないように、広報に重点的に取り組んでいる。
●奨学金についての中等教育段階の広報としては、奨学金を希望する方向けに、奨学金制度の概要を紹介する「奨学金ガイド」や「奨学金ガイドブック」を作成しており、高校3年生に配布している。更に高校生向けに奨学金の概要や手続きに関するビデオを作成し、全ての高校にDVDを配布している。JASSOのホームページでもご覧いただける。
○今のインターンシップを見ていると、単位認定をしていない大学もあれば、企業側もなかなかインターンシップに付き合いきれていない場合もある。大学、企業共に積極的に関与することが必要。現在は平均1週間程度のインターンシップが多いが、最低でも1ヶ月から3ヶ月程度の期間で、中身の充実した、単位認定ができるものにすべきと考える。これは学生のためだということをもっと勢いづけるために、是非JASSOが中核的役割を担っていただきたい。
●産業界のニーズに対応した補助金事業については、平成26年度から私どもが全国推進組織となり実施しているが、全国推進組織として開催しているインターンシップ等推進委員会の委員には経済3団体からも加わっていただき、中長期の問題等を議論している。今後、この事業をJASSOが続けていき、徐々に委員ご指摘の方向に持っていくことができればと思う。
○「トビタテ!留学JAPAN」はJASSOの有利子奨学金の家計基準を満たした学生でないと応募ができない。意欲があり、奨学金があれば留学をしたいと思う学生に対して、それで配慮が十分なのか。
■「トビタテ!留学JAPAN」は民間企業から寄附を頂いて実施しているプログラムであり、寄附を頂くに際しては税制上の優遇措置を設けている。つまり、税収が減る中で支援をしていくということもあり、経済的に本当に苦しい学生をまずは支援すべきではないかという議論があった。ただし、ご指摘のとおり、より優秀な学生を少しでも海外に送り出したいということもあり、今後、前向きに進められるよう、文部科学省としても対応していきたい。
○それであれば余計に、先程のご意見と同様だが、経済的に恵まれない方たちにも、中学・高校の頃から、やがてこのような奨学金をもらって留学できるのだという情報提供というか、夢を持たせてあげたいと思う。
■今まさに「トビタテ!留学JAPAN」の高校生向けのプログラムを開始したところ。こういったことも通じて、高校生段階からも本プログラムの普及を図ってまいりたい。
○広報は、まだかなり取り組む余地がある。文部科学省の「学生への経済的支援の在り方検討会」の議論においても、JASSOは一生懸命広報をやっているものの、実際はうまく伝わっていないことが見受けられた。これは広報のやり方が下手というだけではなく、奨学金の仕組みが複雑になり過ぎていることが理由の一つ。学校の授業でローンの借り過ぎへの注意は与えるが、教育は有効な投資であるという教育がほとんど行われていない。今は奨学金の返還にかかる話が前面に出過ぎているため、物事のプラスとマイナスの面をうまくバランスをとって広報していくことは非常に重要。また、JASSOは非常に優れた海外調査を実施しているが、その結果が十分表に出てきていない。国際的に見るとJASSO奨学金の回収率は非常に高いし、猶予期間が10年というのは非常に寛大な制度である。ドイツ以外のどこの国でも無利子をやめようという話が大部分で、無利子だと言われているオーストラリアについては、インフレスライドで上がっていく仕組みなので実質無利子なのであって、JASSOのように全く利子がついていないのとは全く異なる。日本の奨学金はよくできている制度だが、そういったことをなかなか宣伝しないことはもったいないことだと思う。
●おっしゃるとおり、しっかりとした、これだけの制度を広く国民の皆さまに理解していただくためには、前向きの広報体制が必要だと思う。奨学金事業の現場では先程のリーフレット等を充実させながら、一般の方に対する広報は、広報専任の課長や担当者を置き、マスコミ対応も含めて実施している。一般的な企業の広報に比べたら至らない点も多いと思うので、色々とご教示いたただければと思う。
○イギリスの文部科学省に当たる機関に奨学制度等に関する調査に行った際、広報ビデオを見る機会があった。奨学制度の重要性について、単に理屈で攻めるのではなく、最初はオオカミを登場させるなど、ローンを借りると恐ろしいというイメージの話が続くが、後半になると、これだけいいことがありますという明るい話になり、高校生向けによく作られていたと思う。今まではとにかく説明が多すぎて伝わっていないので、その辺りを考えていただければと思う。
○ローンの問題が出ると若者が夢を持てないような状態になるため、若者に対して夢を持たせるためにも、ごく一部でもいいので、給付型のようなものを創設して、何らかの形で突破口にできないか。高等教育にできるだけ優秀な学生を進学させるという意味で、そんなに数は要らないと思う。
●給付型については、国の政策という面が大きいが、私どもとしても、給付型というものが機会均等に資するということで、実現されることを心から願っているところ。若者の夢という話があったが、昨今の広報の状況を見ると、若者の貧困という文脈でJASSOの奨学金が捉えられていて、貧困の原因になっているのが奨学金だという言われ方をされている。奨学金は本来、貧困から脱出するための手段であるということを今後アピールしていくことが必要である。
○海外留学支援制度の短期派遣の応募資格について、従来は「日本の大学に在学する者」という資格であったものが、ここ二、三年前からは「日本国籍を有する者又は日本への永住が許可されている者」という限定がついてしまった。それにより、日本の大学に在学している外国人留学生がこの対象から外れてしまっている。日本の税金を使うため、日本国籍を有する者を、という説明はされているが、日本に教育を受けに来ている学生については、国籍にかかわらず、同じような条件を与えてあげたい。短期の受入れについてもここ二、三年でプログラムが通りにくくなっているのが実情である。まずは送り出しが先決だというのも一理あるとは思うが、相互交流の部分をもっと確実にしたい。特に欧米の大学院の場合はパートタイムの学生や社会人の学生も多く、短期であれば日本に留学したいという人が非常に多い。なるべく受入れと派遣とを充実させるべく、様々な形でご支援をお願いしたい。
●海外留学支援制度には、受入れと派遣に加え、大学からの要望を受け、平成24年度にはなかった双方向協定型というカテゴリーを創設したところ。本制度については、それぞれの大学でどちらのカテゴリーに合致しているかを判断し、選択していただくことになっている。JASSOとしても、短期の受入れ・派遣については、様々な形で予算をつけていただいているため、引き続き積極的に運営してまいりたい。
○留学生の支援について、今、新しい局面に来ていると思う。国際交流会館は事業仕分けで廃止が決まったもので、とりかえしはきかない。13万人いる留学生のうち2,000人の宿舎を支援することの意味について明瞭な答えはないかもしれないが、新たに渡日した留学生の当面の宿舎については、国がもう少し責任を持ってもよいのではないかという印象がある。
○今年は「まち・ひと・しごと創生元年」と言われており、これから自治体ごとに総合戦略をつくっていく中で、大学は地方にとっても非常に大きな存在だと思う。自治体が計画を練っていくのに対して、大学がどのようにそれに参画していくのか、あるいはJASSOが何らかの形でサポートするということが考えられているのかについてお伺いしたい。例えば、地方大学等へ進学する方、地元企業へ就職する方や都市部の大学等から地方企業へ就職する方等に対しては、その地域自身が基金を別途設けて、奨学金を一部あるいは全額免除する仕組みを導入しようとしている。これに、単に地元に還流するというだけではなく、様々な要素をうまく込めれば、一部給付型も可能になるのではないか。また、「トビタテ!留学JAPAN」についても、新たに地域人材コースができたということで、先ほどの地方版の総合戦略を練る際にはこの制度を織り込んで、各自治体が「トビタテ!留学JAPAN」に取り組んでいくことを、私は銀行サイドからプッシュしていくつもりだが、大学サイドからもプッシュするような動きになってもらいたい。
●おっしゃるとおり、いずれも地方創生絡みのプロジェクトである。「トビタテ!留学JAPAN」の奨学金の給付等の実務は、全て私どもJASSOで担当しているので、それが枠組みとして膨らんでくればと思っている。それから、先ほども給付型を突破口にという話があったが、実はJASSOの奨学金の枠組みの中には、大学院において無利子奨学金の貸与を受け、在学中に特に優れた業績をあげた学生に対しては、大学の推薦等を受け、私どもの認定委員会で委員に御審査いただき、奨学金を免除する制度がある。これは結果、給付型になっているが、進学時に返還免除の候補者として認定できる仕組みを導入する予定である。これが突破口になるかどうかだが、今後、拡大していけば一つの形になってくるのではないかと思う。
以上