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大学保健管理センター等の取組例

(注)平成21年9月16日〜17日に開催された第47回全国大学保健管理研究集会プログラム・抄録集のうち、一般研究発表の資料を転載したものです。当該資料作成時から時間が経過していることを申し添えます。


1. 名寄市立大学保健福祉センター

学生の新型インフルエンザ対策についての意識調査

【目的】インフルエンザパンデミックの際に、少しでも蔓延や被害を防ぐためには、人々が国や自治体の対策を理解し協力すること、手洗い等の一般的な感染症予防対策を習慣的に実施することが重要である。2009年4月にはインフルエンザA(H1N1)のパンデミックが現実のものとなったが、H5N1鳥インフルエンザのパンデミックが危惧されていた2008年6月に、学内で実施した鳥インフルエンザに関する講演会に際して学生の新型インフルエンザに関する意識調査を実施した。
【方法】講演会に参加した学生に無記名の質問紙法で調査を実施した。質問項目は2005,6,7年に実施されたインターネット調査(それぞれiMiリサーチ、gooリサーチ137、159)に準じた。結果をインターネット調査、および同時期に名寄市民を対象にした抽出調査の結果と比較した。
【結果】54名の学生から有効回答を得た。学生の意識調査については、市民に比べ毎年のインフルエンザに対し、予防接種、マスク着用、食事・睡眠・運動による体力づくりをしておらず、新型インフルエンザ流行拡大時の交通機関・集客施設利用等の行動は自粛しないとの回答がみられた。また、名寄市民やインターネットの調査に比べ、感染拡大時に正確な情報収集がむずかしいと答える傾向があった。
【結論】学生は季節性インフルエンザに対してきわめて無防備である上、新型インフルエンザに対する警戒感も薄いことが明らかになった。季節性インフルエンザ対策を伝え、確実に実行するように促すこと、いざという時には大学からの情報伝達方法が正確に周知されている必要性があることがわかった。一般的な感染予防対策に関する健康教育のほか、学内における情報伝達手段などの危機管理体制の整備を急ぐ必要があると考えられた。

2. 大阪教育大学保健センター

当センターでの新型インフルエンザ対応状況
 −危機管理意識の向上を目指して−

【目的】付属池田小学校での児童殺傷事件(池小事件)では、本学の学校安全に対する意識の薄さが問われ続けた。本学構成員は常に危機管理意識を持って学生や児童生徒の安全に十分配慮しなければならないことは言うまでもないが、池小事件での対応経験そのものを無駄にしないことも必要である。そこで今回の新型インフルエンザ対策にあたって当センターは自分達なりに池小事件を教訓にした対応を試みたので報告する。
【方法】当センターの新型インフルエンザ対応過程を一定項目毎に経時的に提示し、随所で池小事件での当センターの対応過程を参照にする。
【結果と考察】<事態の予測可能性>強毒性新型インフルエンザが既に懸念されていたため、本年1月、新型インフルエンザ対策用パンフレットを全教職員と学生に配布、マスク等の備蓄開始。3月、「フィジカルヘルス」にて新型インフルエンザ対応マニュアルの教示を受けた。池小事件では事態の予測可能性が問われた。<初期対応>4月25日、メキシコで豚インフルエンザ発生の第1報。27日、保健センター内で学生サービス課、人事課を交えてセンターの対応方針を説明。学内対策委員会の設立に向け調整。30日、第1回学内対策委員会開催、以後9回開催。池小事件では初期対応の遅れが混乱を招いた。<具体的対応と展望>教職員の海外渡航制限、休校措置(付属学校で発症があり、感染拡大防止に効果発揮)、留学生、寮生への対応等。池小事件では全体の展望が把握できず徒に疲労を重ねた。これらのことに基づいて若干の考察を加える。

3. 北海道大学保健管理センター

当センターにおけるインフルエンザ迅速検査に関する報告

【目的】我々は2002/2003年冬季より、学内の学生・職員を対象とし、インフルエンザ疑いのある者について迅速キットを用いてインフルエンザ簡易検査を行っている。過去7年間の学内の流行状況とその結果を利用したインフルエンザ・サーベイランスについて報告する。
【方法】医師の診察後、高熱、呼吸器症状などから、インフルエンザが疑われた学生・職員に対し、迅速キットを用いて検査を行った。
【結果】過去の当センターにおけるインフルエンザ迅速検査数は、各シーズンにおいて20〜158件、陽性率は27.6%〜47.3%(平均37.4%)であった。昨シーズンは検査件数が3桁を越え、特に5月は、119件と件数の約75%を占め、陽性率も52.1%(A型のみ)となった。今シーズンも116件となり、新型インフルエンザが流行した5月には陽性率18.6%(B型のみ)であった。また、陽性者が出た場合、当センター職員宛にメールを利用して発生を報告すると共に注意を促し、毎週大学病院と情報交換をすることで学内の発生状況を把握している。
【結論】日頃から、学内のインフルエンザの発生状況を把握することは、新型インフルエンザウイルス対策においても必要であり、予想される第2波に備え、更に重要性を増すと思われる。試薬コストなどの考慮や、周囲との連携が不可欠ではあるが、これらのことは、保健管理センターで出来る対策として有効であると考えられる。

4. 立命館大学保健センター

新型インフルエンザ(A/H1H1)の経験

 −今後の課題に向けての整理−
【目的】立命館大学における新型インフルエンザ(A/H1N1)の対応を検証し、秋季以降の対策の糧とすることを目的とする。
【方法】本学では、新型インフルエンザがたとえ発生しても1)学内で人から人への感染が確認されない限り休校とはしない、2)ただし行政からの要請がある場合は対応する、という方針でいた。今般の流行では、実際には行政からの休校要請を受けて以下の対応を行なった。
(1)びわこ草津キャンパス(滋賀県草津市):国内初の感染が5月16日(土曜日)に発表された4日後の20日(水曜日)に、本学の学生が県内初の感染者として発表された。滋賀県が県内すべての学校を休校とし、本学へもその要請があったため、社会的影響を考慮して1週間の休校を判断した。即日、管轄保健所と協力して濃厚接触者を特定し、健康観察・自宅待機とした。2次感染者はなかった。
(2)衣笠キャンパス(京都府京都市):市内で初の感染者(小学生)が21日(木曜日)夜に発表され、大学へ休校要請があった。22日(金曜日)より1週間の休校(金曜日)より1週間の休校としていたところ、25日(月曜日)に学生より感染の報告があった。21日に発症し、授業にも参加して600人以上の接触者があったが、すでに休校していたことが幸いした。
【考察】新型インフルエンザ(A/H5N1)の発生に備えて、2008年末頃から感染症対策委員会のもとに新型インフルエンザ対策ワーキンググループ(WG)を設置して、安否確認システム導入、備品・備蓄の推進、BCP作成などを進めてきた。残念ながら全く準備が間に合っておらず、今後に多くの課題を残した。6月末現在、上記休校措置を行なった際の問題を学内あげて抽出し、その解決策をマニュアル化する作業に取り掛かったところである。研究集会で紹介する。

5. 九州大学健康科学センター

九州大学における新型インフルエンザ啓発活動と対策の問題点について
【はじめに】九州大学では、3年前から新型インフルエンザに関する啓発活動を開始し、本年2月には行動方針を発表、対策行動計画の策定を行ってきた。今回、新型インフルエンザ発生で明らかとなった啓発活動と対策計画およびその実施上の問題点と対策について報告する。
【経緯】本学では、健康科学センターが中心となって2006年度からHPなどによる啓発活動とH5N1を想定した行動計画の原案作成を開始した。本年2月には新型インフルエンザ対策本部の設置と新型インフルエンザ対策行動方針を報道発表するとともに、学生・教職員へ対策マニュアルなどを配布し注意喚起を行った。その後、関係部課の担当者とともに行動計画の原案を修正し、各担当部課での詳細な検討を開始した。新型インフルエンザ発生後、新型インフルエンザウイルスの病原性および感染力が確認できないため、原案を元にH5N1に準じた各部局毎の対策計画の策定を要請した。その後、病原性等の情報集積による国の対策変更にあわせるかたちで、九州大学における対策も推移した。
【問題点】病原性などが明らかになるにつれ新型インフルエンザ対策方針は、国の方針に伴い緩和させることとなった。このことが若干の混乱をもたらしたことは否めない。この際に学生・教職員全員と大学間の双方向連絡システムが存在しないことが問題としてあげられた。
【考察】本学では、大学での集団感染が地域社会に広がり、感染が爆発的に拡大していく可能性を憂慮して対策を立ててきた。新たな感染症が発生しその知見が十分にない段階では、予防措置として厳格な対処が必要と考えられるが、学内外の十分な理解が必要だと考えられた。また、国の方針が病原性等により、短期間で変化する可能性があることから、大学−学生・教職員の双方向情報システムの構築が急務であると考えられる。

6. 追手門学院大学 保健室

新型インフルエンザ対策の検証と今後の課題について

【目的】新型インフルエンザ患者が多数発生した近畿地方では、多くの学校が休校措置などの対策を実施したが、大阪府北部に位置する本学も集団発生した高等学校は本学の隣接校であり、高等学校とはスクールバス乗り場が全く同じ、学生教職員の通勤通学経路がほぼ一致、付属高校の学生には当該高等学校に兄弟がいるなど感染が拡大する可能性が高かった。このような状況の中、新型インフルエンザ対策委員会を中心に実施した今回の各対策について検証し、今後の課題を検討する。
【方法】対策:(1)新型インフルエンザマニュアル(2)新型インフルエンザ対策委員会(3)休校措置(4)学生への周知(ホームページ・WEB掲示板・メール・新聞報道・電話連絡)(5)衛生材料・備品の確保(6)感染症罹患による出席停止取扱規程の整備(7)学内安全対策(スクールバス・授業・課外活動・臨時救護室の設置・学生教職員の健康監視など)(8)行政との連携等
【結果】休校措置開始日、スクール乗り場や校門で帰宅指導をした学生は数名であったが、休校その他休校に関連した電話対応に職員は苦慮した。本学に関連する新型インフルエンザの罹患情報は、就職活動中の女子学生1名、家族が感染した学生1名、兄弟が感染した付属高校生1名の計3名であった。しかし、2名の大学生は休校措置期間中の発症であり、休校措置以前から登校していなかった。本学でのヒト−ヒト感染と思われるインフルエンザ感染はなかった。
【結論】今回は可能な限りの対応を行い感染拡大の防止をはかることができたが、新型インフルエンザ対策マニュアルはまだまだ検討の余地があり、各対策を進めながら、その都度マニュアルの見直しが必要である。