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第11回 障害学生支援体制構築について(札幌学院大学)

質問コーナー

著者紹介

新國(にっくに)三千代
【札幌学院大学 人文学部こども発達学科教授】
北大理学部計算機センター、北大情報処理教育センターを経て、1991年4月札幌学院大学社会情報学部に赴任。2006年4月からこども発達学科新設に伴い異動して現在に至る。専門は情報科学。2005年4月~2009年3月図書館長。2007年4月から電子計算機センター長。2008年4月から日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)運営委員会委員。2009年4月から日本学生支援機構の障害学生修学支援ネットワーク事業運営委員会委員。

札幌学院大学 新國先生写真

松川敏道 
【札幌学院大学人文学部人間科学科准教授】
障害者施設で勤務したのち、北海道医療大学看護福祉学部助手を経て現在に至る。専門は障害学。2006年10月から札幌市地域自立支援協議会会長。2009年4月から社会福祉法人あむ理事長。2009年9月から札幌市福祉のまちづくり推進会議委員。

札幌学院大学 松川先生

Q.質問

 障害学生支援体制構築には専門の委員会は必要でしょうか?

A.回答

 大学主導で障害学生支援体制を構築していく場合は、まず専門の委員会を設置するという形が一般的かもしれませんが、専門の委員会を設置しなければはじまらないというわけではありません。必要な支援体制をどのように作るかということについては、大学の規模やこれまでの支援実績などで異なってきますし、また異なって良いものだと思います。
学生のボランティア活動から始まったところではその活動を軸に大学が側面から支援する形で支援体制が作られる場合もあります。
さらに、既設の委員会が担う場合やクラス担任を中心に徐々に支援の輪を広げて支援体制が作られていくという場合もあります。
 また、専門委員会の役割として、支援のポリシーの決定や提示があげられていますが、障害学生が初めて入学する大学においては、最初の段階でそれを検討するのはそれほど簡単なことではないように思えます。

 本学の10年間の支援の取組を振り返って感じることは、障害学生支援体制の構築において最も重要でかつ大変なことは、教職員や障害学生、支援に関わる学生が障害や支援についての理解を深め、連携して協力し合えるような体制(環境)をつくることのように思います。これがうまく形成されないと、現場において効果的な支援を行なうことが難しくなります。従って、専門委員会やポリシーはそれをバックアップする機能として働くものであることが期待されます。
と考えていきますと、必要とされたときにそれらを作るということであっても、“遅きに失する”ということはないと思います。因みに、本学の場合は10年目にして全学的な障害学生支援に関する公式の組織ができ、ポリシーについての検討が開始されることになりました。

札幌学院大学バリアフリー委員会の取組

 札幌学院大学の障害学生支援は、学生が主体となって運営している「バリアフリー委員会」を中心とする体制で行なわれています。
現在120名の学生と十数人の教職員からなるこの組織の萌芽は、1999年に聴覚障害をもつ学生の入学を契機にしています。当初、ノートテイクによる情報保障はたった一人の学生によってはじまり、次第に支援する学生と教職員の数を増やしながら、情報保障や介助の実施・支援に必要なスキル向上のための学習会の開催など、活動の多くを学生たちが自主的に企画し実施するという現在の体制ができました。
「バリアフリー委員会」につきましては、日本学生支援機構発行の『大学と生活』12号(2009)で紹介していますが、学生代表と副代表の下にテイク統括部(テイカー養成と配置)、介助部、学習部、広報部、交流部等の6部が置かれ、その企画から実践までを学生達が主体的に担っています。一人の学生のニーズからはじまった支援の輪が強固な学生主体の支援体制へと結実したと言えますが、これは大学が主導するかたちでは生まれ得なかったかもしれません。むろん、このような学生の主体性を重視する支援体制には種々の課題と限界があることもたしかであり、札幌学院大学では副学長と教員部長等からなる全学的組織を今年度新たに設置し、障害学生への支援体制をさらに強固なものにしていく予定でいます。

 しかし、それでもなお学生が主体となって取り組む活動の意義には重要なものが含まれていることを彼らの取組から痛感させられています。
それは、障害学生支援の場が「共に学ぶ」「共に生きる」ということについて学生達(障害学生と支援学生)に問いを投げかけ、それを彼らに考えさせ乗り越えさせる場になっているからかもしれません。
たとえば、障害学生が講義に遅刻してくるという問題についてどう考えるか。これは単にルールを決めるとか、技術的な問題で解消できることではなく「障害者である前にふつうの学生なんだ」ということと「ふつうの学生であるまえに障害者なんだ」という両面価値的な困難な問題を含意します。障害学生である故に支援が必要で、その支援を提供する側とその学生がかかわるとき、支援を受ける学生は常に弱者の側に立たされる、換言すれば「ふつうの学生なんだ」ということが双方にとっても周囲にとっても“見えにくい”ままに、アンバランスな力関係の中で支援が行なわれがちということをどう考えるか、ということにまで踏み込まざるをえない問題であり、どう解決するかはやはり簡単ではありません。

 おそらくどう解決するかというよりも、どう考えるかという「対話」からはじめるしかなくそれが重要なのだと思いますが、バリアフリー委員会はこのようなことを障害学生と支援学生が相互に歯に衣着せず本音を率直に言う場を生みだしています。むろんそこから何も結論が生まれなかったり、結局モヤモヤ感だけが残ったりということはしばしばですが、しかしそれは「同じ」と「違い」を知り、相互の立場を理解し尊重することに気づき、そして「共に学ぶ」ことや「共に生きる」ことについての何かを見出していく過程なのだと思います。
このようなことは、誰かに教えられるとか支援のシステム構築によって経験できることではなく、やはり学生達自身が試行錯誤を繰り返し、悩み考え、あるいはまた相互に生まれる葛藤を包み隠さない関係づくりのうえに成り立つことです。さらには、大学内の講義保障ということにとどまらず、言い過ぎかもしれませんが多様性を認める社会のあり方にもつながる可能性もあります。

 とは言え、障害学生の権利保障という観点では、本学が取り組まなければならないことは山積です。少しの歴史をもつバリアフリー委員会の取り組みを大切にし、またそこに学びながらさらなる充実を目指していきたいと考えています。

平成22年04月掲載

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