【平成30年6月1日更新】
平成30年5月27日付の東京新聞朝刊における特集記事「日本学生支援機構の今」において、当機構の奨学金が取り上げられましたが、その中に事実と異なる記述がありました。当機構では、同紙編集部に書面で抗議したところであり、その内容について解説いたします。
記事の抜粋1
機構は(中略)債権回収会社に督促を依頼したりしている。(NPO法人「POSSE」の)岩橋さんは「頑張って取り立てている、という世間へのアピール。特に債券を買う投資家の目を気にしている」とみる。
当機構のコメント1
- 奨学金の回収業務は、投資家にアピールするために行っているものではなく、憲法第26条及び教育基本法第4条に定める「教育の機会均等」の観点から、経済的理由で修学困難な学生等に対して新たにお貸しする奨学金の原資を確保するために行っているものです。
- 当機構の奨学金のうち、第二種奨学金(有利子奨学金)については、必要とする全ての学生等に対して貸与できるよう、元奨学生から回収した返還金に加え、政府資金(財政融資資金)を原資としております。
- この第二種奨学金は、有利子とは言え、学生支援のため在学中は無利子とし、卒業後に返還を開始する時点から利子をいただくこととしております。一方、政府資金は、原則として無利子での運用が認められておらず、在学中は無利子で優遇する第二種奨学金の原資にはなりません。そこで、当機構では、在学中の貸与に充てるべく、債券の発行及び民間金融機関からの借入を行っております。これらは、卒業時に政府資金への借り換えを行うことによって償還される、いわば「つなぎ」資金であり、元奨学生から回収する返還金とは直接関係ないものです。
- また、当機構は、債券や民間借入金の利子を金融機関等に支払わなければなりませんが、その全額は政府により税金(利子補給金)で補填されております。以上のような基本的枠組みを踏まえれば、当機構が投資家の目を気にして回収に躍起になっている、とのご指摘は誤っていることがご理解いただけるものと考えます。
- さらに、債券や民間借入により調達した資金の全額は、学生支援(第二種奨学金の在学中の貸与)に充てられることから、当機構が発行する債券の購入は、「教育の機会均等」に寄与するとともに、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)※1の達成に貢献する「ESG投資」※2として、既に投資家に高くご評価いただいているものと認識しており、当機構が投資家の評価のため回収に躍起になっている、とのご指摘も当たりません。
- ※1持続可能な開発目標(SDGs):2015年9月の国連持続可能な開発サミットにて採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が掲げる、加盟各国が2030年までに達成すべき17の目標(「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供」等)と169のターゲット(「2030年までに、すべての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする」等)。
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※2
ESG投資:環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業を重視・選別して行う投資手法
- 奨学金事業に関する資金調達の仕組みなど、上記に関する詳しい内容については、以下の広報資料をご参照ください。
- IR資料(日本学生支援債券用)
記事の抜粋2
聖学院大の柴田武男講師(金融市場論)は「債券を発行したら、財務の健全性をアピールしなければならない。だから100%回収を掲げ、コスト度外視で取り立てを強化している」と指摘する。
当機構のコメント2
- 奨学金の回収目標については、文部科学大臣から示される中期目標において「当年度分の回収率96%」「総回収率83%」※等とされ、これを受け当機構ではその数値を中期計画に掲げ、返還困難な方へのセーフティネット(毎月の返還額を2分の1又は3分の1に減額して返還期限を延ばしたり、一定の間返還を猶予したり、心身の障害等により返還を免除したりする制度)を設けるなど、教育的配慮の下で業務を行っております。「100%回収を掲げ」云々とのご指摘は、事実に反します。
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※当年度分の回収率:当該年度に返還期日が到来する債権の回収率
総回収率:前年度までに返還期日が到来したものを含め、当該年度に返還されるべき債権の回収率
- さらに、奨学金の回収を含む当機構の業務費用については、毎年の予算編成において真に必要な額が国費で措置されており、「コスト度外視」で業務を行っているわけではありません。
- そもそも、「投資家の目を気にしている」との主張や、「財務の健全性をアピール」しようとしているとの主張と、「コストを度外視している」との主張は、矛盾しているのではないのでしょうか。債券を発行するかどうかにかかわらず、「財務の健全性」を確保し、その状況について国民の皆様等への説明責任を果たしていくことは、当機構のように国民の税金で運営される独立行政法人として当然のことです。