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(1)概要

学生の中には様々な慢性疾患や難病等に起因する機能障害があり、継続的な医療や生活上の規制が必要となり、他の学生と平等に修学プログラムに参加するために、修学上の合理的配慮が必要となる場合があります。このような合理的配慮を必要とする学生について、日本学生支援機構の「教職員のための障害学生修学支援ガイド」や「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」 では、「病弱・虚弱」というカテゴリーを用いていますが、このハンドブックでは必要となる合理的配慮の内容を個別に明確にするため、慢性疾患、難病その他の機能障害等として述べていきます。

これらの学生は、大学等入学前に特別支援教育(病弱)の下で教育的配慮を受けてきた者はむしろ少数で、多くは通常の教育課程に在籍してきたり、あるいは大学等入学後に疾病が発症して症状が顕在化したり、事故の後遺障害に伴う機能障害があるなど様々な場合が想定されます。具体的には、慢性の呼吸器疾患、心臓疾患、腎臓疾患、糖尿病及び神経疾患、消化器疾患、アレルギー疾患、悪性新生物、その他の難病等が想定されますが、個別の状況は多様で、同じ診断名がついていても、合理的配慮のニーズは必ずしも同じではありません。

(2)修学において起こりがちな困難さの例(制限・制約)

  • 症状に起因し、疲労しやすかったり体力的に1コマの授業を通しで参加したり、定期的に出席することが困難な場合があります(共通)。
  • 長時間にわたり同じ姿勢で着席し続けることが困難なことがあります(関節リウマチ等)。
  • 定期的な病院受診が必要なため授業に定期的に出席することが困難な場合があります(共通)。
  • 大学等の学修に必要な基本的な技能である筆記、コンピューターの操作、実験の手技などに制約が生じる場合があります(共通)。
  • 運動制限のため実技によっては参加できないことがあります(共通)。
  • 感染症に弱い場合があります(ステロイド剤や化学療法による治療中等)。
  • 細かい実験手技や、正確な測定、グラフ作成、又は描画等ができないことがあります(共通、関節リウマチ等)。
  • 研究室や実験室等で、特定の吸入剤やアレルゲンを使用している場合に実習や実験に参加できない場合があります(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、ラテックスアレルギー等)。
  • 学食や非常食にアレルゲンとなる食品が含まれている場合に他の学生にはない制約が起きることがあります(食物アレルギー、アトピー性皮膚炎)。
  • 決められた課題を行なう上で、自分の能力に対する自信が欠如していることがあります(共通)。
  • 薬の副作用により身体的・精神的な問題が生じることがあります(共通)。

(3)合理的配慮の例

授業

  • 授業中の支援機器使用の許可(授業の録音、板書の写真撮影等)
  • 体調不良による姿勢の変換(横になりやすいスペースの確保)や講義室の中途入退室の許可
  • テレビ会議システム等を利用した授業やゼミへの参加の許可
  • メール等での講義資料の配信や課題レポート提出の許可
  • 課題内容や課題提出量の変更・調整
  • 出席に代わる課題レポート等の代替案の提案
  • 車椅子で移動可能な講義室の使用
  • アレルゲンとなる食品等に配慮した食材等の選択
  • 化学物質等の接触により頭痛や動悸、めまいが現れないように、化学物質の揮発を最小限に抑え、換気をこまめにするなど、配慮された講義室の整備

試験時(入試を含む)

  • 他者からの病気の感染予防のための個室や体調に配慮するための医務室等での受験
  • 試験会場に行くことができないときの代替措置(校外での試験実施、例えば入院中の場合には院内での試験又は課題レポートの提出等)
  • 試験開始時間を遅らせたり、時間延長したりするなど、流動的な試験時間の調整(体調により長時間の試験に耐えられない場合、休息時間を含める)
  • 再試験や追試験による対応(再試験や追試験の条件等の学内における規定の見直しが必要な場合がある)
  • 他の障害を併せ有する場合は、同時に代替機能が必要となります。

その他

  • 校内移動時等や講義内容記録のためのボランティアの確保。加えて、移動に時間がかかるキャンパスの場合は、使用する講義室の配慮、移動の時間を遅刻としない配慮も必要です。
  • 校内での急激な体調の変化や発作等への対応に関する相談窓口の提供
  • 急激な病状の悪化が予想される場合は、健康管理センターにおける対応時間の案内、また、緊急対応マニュアル(フローチャートや主治医連絡先等)を準備しておくと職員も本人も安心できます。
  • 医療的ケアの提供

(4)指導方法の例

  • 病気の学生は、自身が支援の対象であることを十分に認識していない場合があるため、困っていることや必要な配慮について、学内の相談窓口等に積極的に相談してもよいことを伝えることで、心身の過剰な負担が軽減されることがあります。
  • 発表資料の作成や試験の準備の際には、余裕を持って早めに準備を始めるよう指導することで、身体への負担を和らげることができます。
  • 定期的な外来受診を必要としている場合、診察時間について医療機関ごとに曜日時間帯が定められていることが多いです。授業の組み方を工夫することや、主治医と相談し、診察時間が変更されることで、授業への影響が少なくなる可能性があります。
  • 病気を有していることは周囲からは分かりにくく、本人も公言したがらないことが多いです。教職員に加え、限定した範囲の友人だけでも病気のことが伝わっていると、体調悪化時に早めに相談・依頼をしたり、回復後の学生生活での理解・協力が得やすくなります。
  • 就労後に体調を維持しながら働くためにも、学生時代から病気に関する説明をしたり、必要な配慮について申し出られるように指導します。
  • 学生生活では生活リズムが不規則になりやすかったり、一人暮らしを始めることで、家族が行なっていた病気の管理が本人に任されるケースも増えるため、自己管理の重要性について再確認を行ないます。

執筆者:竹田 一則・武田 鉄郎・平賀 健太郎・深草 瑞世

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コラム 高次脳機能障害の学生生活

A君は経済学部3年の学生です。昨年、交通事故で頭部外傷を受けたので3年は2度目になります。左半身の麻痺がありましたが、これは軽くてほとんど良くなりました。大学に戻って来ることができたのは認知機能の障害が比較的軽くて済んだという理由もありました。

記憶障害はない訳ではないという程度で、何でもメモを付けるのが習慣化していたことから、教室での座学は続けられそうでした。しかしゼミになるとそうでもなく、他人の発表になると途端にあくびをしたり窓の外を向いたりするばかりか、ちょっとしたことで口論を始めてしまいます。ゼミの内部では高次脳機能障害があることについて教官から説明があり、みんなで受け入れることで落ち着つきました。しかし、その先にある就職を考えると更に難問が待ち構えているようで、雇用関連機関にあらかじめ相談しておいた方がよいかと思われました。


執筆者:中島 八十一