令和5年度運営評議会(令和5年11月20日開催)

1.日時

令和5年11月20日(月曜日)10時00分~11時30分

2.場所

WEB会議

3.出席者

(委員)

石崎 規生 委員、小原 芳明 委員、小林 光俊 委員、白澤 麻弓 委員、杉村 美紀 委員、中尾根 康宏 委員、仁科 弘重 委員、古沢 由紀子 委員

(JASSO)

吉岡 知哉 理事長、蝦名 喜之 理事長代理、吉田 真 理事、吉野 利雄 理事、萬谷 宏之 理事、竹内 俊郎 監事、西川 由香 政策企画部長、尾島 健一郎 総務部長、内藤 秀人 財務部長、吉村 務 奨学事業戦略部長、丸山 敬司 留学生事業部長、山本 有香 学生生活部長

(文部科学省)

吉田 光成 学生支援課長、下岡 有希子 参事官(国際担当) 留学生交流室 企画官(命)室長、松本 向貴 学生支援課 専門官

4.議題

第4期中期目標期間実施事業の総括及び次期(第5期)中期目標期間の事業について

5.議事次第

6.配付資料

7.議事概要

資料に基づきJASSO側から説明を行った後、意見交換が行われた。概要は次のとおりである。
(○=委員、●=JASSO)

○返還金の回収について、非常に困難が伴う事業であることを考慮するのは妥当であると考える。返還者構成の変化というのは、滞納期間が長い方の割合が増えているということか。

●近年、少子化等の影響もあってか、新たに貸与奨学金を受ける方の人数は減少傾向にある。したがって、相対的にかつて借りた方の割合が増える構造になっており、全体の回収率を上げていくことの困難さが増しつつある状況である。

○高校生や大学生に対する奨学金制度の周知は、非常に大事である。JASSOウェブサイトの利用件数が非常に増えているのは大変良いことであり、制度の認知度が上がったと考えられるが、スカラシップ・アドバイザーの高校・大学への派遣状況やオンライン版ガイダンスの実施状況についても件数を伺いたい。

●令和4年度は、スカラシップ・アドバイザーの派遣が309件、オンライン版ガイダンスの実施件数が182件、合計491件という実績であった。

○スカラシップ・アドバイザーの派遣やオンライン版ガイダンスは、コロナ禍が明けた令和5年については、対面や派遣を増やしていくといった方針はあるのか。

●オンライン版ガイダンスの申込みも引き続き受け付けているが、派遣の件数を伸ばしていきたいと考えている。

○奨学金事業は元手が必要な事業であると理解しており、回収率を引き上げることは非常に重要である。回収事業は社会的な評判を気にせざるを得ない面もあるかもしれないが、サステナビリティの観点から是非しっかりやっていただきたい。その関係で、本当はもっとやりたいが、予算制約の関係でなかなかできないと感じている分野はあるか。

●奨学金の申込みや管理は、現在インターネットで行っているが、学生や学校がもっと使いやすいシステムにできればと考えている。経費や対応する人員等の関係で少しずつしか改修できておらず、抜本的な改善には至っていない状況である。また、周知の面でも大々的な広報はなかなか難しく、工夫しているところである。

●職員の働き方について、JASSOは学生支援を行っているものの、対面するのは学校関係者であり、学生と直接接する機会がない。人員上の余裕があれば、学校や役所等との人事交流、研修派遣を行う余裕も生まれてくる。また、奨学金制度の変化に合わせてシステムを繰り返し補修しており、組織についても同様である。これらについても余裕があれば、少し戻って考え直したり、作り直したりといったことが可能になるだろう。そのための人と費用があれば、次のステップに行けるのではないかと考えているが、現状への対応で手いっぱいというところである。

○貸与奨学金の規模が若干減っているとのことだが、給付奨学金は希望者が増えているのではないか。給付奨学金は経済困窮者を中心に支援する制度になっているため、状況がどうなっているのかについて教えていただきたい。

●事業費ベースでいうと、貸与奨学金で一番事業費の多かった平成25年度には、第1種の無利子と第2種の有利子を合わせて約1兆2,000億円の予算規模であった。その後は徐々に減少し、給付奨学金が導入されたこともあり、令和5年度は第1種と第2種を合わせて約9,000億円となっている。これはピーク時に比べて3,000億円の減となる。第1種は増減がありつつも平成25年度と概ね同程度の規模である一方、第2種は当時の9,000億円から6,000億円に減っている。また、給付奨学金は、令和5年度の予算ベースで2,600億円であり、支給実績は多少異なるものの、概ねその予算規模を確保しているという状況である。

○給付奨学金を受けていた人はそれまで第1種の対象だったと思われるが、第2種が9,000億円から6,000億円に減っているというのは、給付奨学金が増えたことと連動しているのか。

●事業費の推移としては、平成20年代の後半に無利子奨学金の事業規模を拡大して有利子を縮小するという流れがあった。具体的には、平成25年度の第1種が2,900億円で第2種が9,000億円程であったところ、令和元年度には第1種が3,700億円、第2種が6,700億円になった。その後、令和2年度の修学支援新制度導入により、給付奨学金が拡大され、第1種がその分減少したという経緯を辿っている。

○奨学金の受給に関する機関要件と、JASSOとの関係を知りたい。

●修学支援新制度の機関要件については、JASSOというよりも文部科学省で具体的な設定や確認が行われている。機関要件を満たした学校が修学支援新制度の対象となるため、JASSOはそこに進学する学生を給付奨学金の対象として、申込みを受け付けて審査をするという立場である。

○通っている大学、あるいは志望している大学が機関要件を満たさなくなったため給付奨学金を受けられなくなったケースはどの程度あるのか。

●機関要件に合わなくなったとしても、それまでに既に給付奨学金に採用された方は、引き続き修業年限まで対象となり、途中で打切りにならない制度設計となっているため、そういった例はない。

○貸与及び給付奨学金の設置者別(国公私立別)や地域別の詳細なデータは作成しているか。

●作成しているが、手元に数値がないため後日データをお送りさせていただく。

○次期中期計画策定に向けた方向性の中で、情報の収集・分析やリクルーティングが政策上の課題として挙げられているが、留学生支援事業や学生生活支援事業においては、新しい動きを政策立案に活かしていくと良いのではないか。例えば、今年の日本留学フェアはベトナムに大きく注力しているようだが、これは大変良い例で、今、世界中の国がベトナムとの留学交流に着目して動き始めていると聞いている。こういった戦略的な動きが見られると良いと考える。

●リクルーティング関係として、今年度は韓国とベトナムの海外2箇所で対面の日本留学フェアを実施することとしている。ベトナムについては、今年度が日本とベトナムの国交樹立50周年であることや、現地の学生からの要望も非常に強かったこともあって選んだ。さらに様々な情報を得ながら、留学フェアやその他の情報収集・情報提供についても検討を重ね、実施をしていきたい。

●我々は伝統的にアジアとの交流が非常に強く、それも重要なことだと考えているが、国際交流基金との協定も活かして、より広く世界全体に向けて情報を発信、収集する方法についても検討していきたい。また、かねてよりJICAとも連携しているため、視野を広くもって進めていきたい。

○他機関との連携について、JICAも日本における外国につながる人々の教育に力を入れ始めている。また、日本学術振興会の海外オフィスにおいては、学術交流や元日本留学生のネットワークづくりをやっていると見聞きしており、連携を取れると良いと考える。

○円安の影響で、日本人学生の派遣、外国人留学生の受入れ共に厳しい状況になってくるが、JASSOの事業全体としても同様なのか。

●昨年度は、日本人学生の海外留学のための奨学金制度である海外留学支援制度において、円安の影響が大きく出た地域に留学している学生に対し、文部科学省の政策に沿う形で一定の補助を行った。円安はまだ続いており、今年度は、今のところ同様の措置は行っていないが、渡航支援金という支援は行っているところ。また、留学生の受入れについては、円安によりアルバイトの単価が安くなっていること等が原因で、留学そのものの見合わせや、留学先を他国に変更することがあると大学や日本語学校等から聞いているところ。実際にこれまで急増していたベトナムからの留学生数の伸びが鈍化しており、影響は出ていると感じている。

○現在、特に地方都市においては、高度人材に加えて中核人材が不足している。したがって、人材確保の観点からアジア人留学生を大いに受け入れて支援していくことも、今後の方向性として重要だと考える。国際交流基金やJICAとの連携も含めて進めていくということであったが、これからのグローバル化の中で、ますますそういったことが重要になってくるであろう。

●アジアには、東南アジア4か所、韓国1か所に海外事務所を設けている。海外での日本留学フェアも開催しており、留学前からの大きなテーマである、日本の学校を卒業した後の就職については、相談も来ている。政府においても高度人材の就職はテーマとして掲げられているため、経済産業省やJETROとも連携を取っているところである。そういったことも踏まえ、高度人材や中核人材となるような留学生の受入れ、そして日本での定着に向けて一層力を入れていきたい。

○障害を持った学生について、具体的にはどのような支援を考えているのか。

●障害学生数は2006年から2022年の間に10倍となり、5万人が在学していることが調査で分かっている。この調査結果等も踏まえ、大学等で障害学生支援を専門とされている方々に向けたセミナー等を通じた支援を重点的に行っている。また、大学等における障害学生支援の体制整備等を支援するため、具体的な事例を集めて「合理的配慮ハンドブック」を作成、公表してきた。このような大学等で活用できるツールの周知を図ることにより、令和6年4月からの合理的配慮の義務化を見据えた障害学生の支援を継続していきたいと考えている。

●現在、発達障害の学生が非常に多くなっている。発達障害の学生については、自ら状況を明かさない学生も多数いるものと聞いており、学校で全てを把握することが難しいというのが大きな課題となっている。こうした課題に対応するためにも、大学等が学生をしっかり支えていく取組ができるように、支援を重点的に行っていきたい。

○障害学生支援に関する啓発セミナーや実務者育成のためのプログラムは、大学にとって非常に重要であり、内容も年々充実してきている。また、オンライン配信になったことで、全国の様々な大学に行き渡るようになったのもとても良いことである。これらを更に大学に行き渡らせるためには、どのくらいの大学に視聴されているかの把握や、全ての大学に、一度ではなく定期的な視聴を促すこと等も考えられるが、どのような取組を実施しているのか。

●JASSOとしては、障害学生に的確な対応ができるよう、各大学等の体制整備が重要と考えている。そのためには、障害学生の受入れに対する経営層の意識を高める必要があるため、率先して上層部の方へセミナー等への参加を促すようにしている。また、ガイダンスやセミナーへの参加が特定の学校に偏らないように、未参加の大学等に対して働きかけを行っている。

○セミナーを受けている大学の割合や、障害学生支援の取組状況に関する地域間の比較ができるデータを出していくと良いのではないか。また、例えば科研費に関しては定期的に研究倫理についてのeラーニング等を受けるが、同様にJASSOの各種セミナーを全国の大学が漏れなく受けていけるような仕組みづくりに取り組むのも良いと考える。

●オンラインやオンデマンドは非常に有効であり、これから主流になっていくと考えている。大都市圏のみでなく地方にも浸透させていく手段は、ご提案いただいたものやその他にもあると考えられるため、引き続き検討していきたい。

●研修の義務化は有効だと思われるが、JASSOとして実施できるかというとなかなか難しい。地域を問わず多くの大学等にJASSOのセミナーを受講いただき、もって障害学生支援の取組を推進していくという方向性が重要だということは認識している。

○多様な学生を相手にしているという視点は学生サービス全般において必要だと考える。障害学生支援に特化した取組自体は大変重要であり、これからもその重要性は失われないと考えているが、全般的、普遍的な面でも障害のある学生への支援やSDGsといった視点を持って取り組み、その両面から支援していくことが、全体的なダイバーシティ促進につながっていくと思料する。今後、事業計画を進めていくにあたり、全ての事業において多様な学生を対象としているという視点をJASSOから発信することは、大学が変わっていくきっかけにもなるのではないかと考えており、是非お願いしたい。ホームページを見ると、LGBTに関するセミナー等、様々な視点で学生支援に取り組んでいると思われるが、現時点でどのような取組があるか。

●それぞれの大学等において事態が変化していくのに対し、我々も敏感に対応したいと考えている。例えば、マイノリティに対する取組として、まずはグッドプラクティスを紹介していくといったことが可能だと考える。

●平成30年には、高等教育機関に対しての初めてのLGBTに関する基礎的な発信を行った。今回、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律の成立に伴い、12月に開催する学生生活にかかる喫緊の課題に関するセミナーは、「性的指向・ジェンダーアイデンティティの多様性-大学等における理解増進と支援の充実に向けて-」をテーマとしてオンラインで発信する予定である。今後、多様性等についてのJASSOの取組は、ますます増えていくと考えており、委員の先生方にも様々なご支援をお願いしたい。

○寄附金は、お金をいただくだけではなく、活動への理解を得ることも重要だと考えるところ、令和2年度、令和3年度に比べて、令和4年度の寄附金額が少し減っている理由が何であるかを知りたい。また、集めた寄附金は、災害支援金の他にどのように使われているのか。

●令和4年度の額面は減っているが、寄附をいただける方の人数は特に減っているわけではない。ご指摘のとおり、寄附金事業には、ある種の広報的な側面、支えていただくといった側面があるが、例えば、奨学金を返し終わった方からは一定数の寄附をいただいている。

●寄附者の数は、何万人というわけではなく数百人であり、また、年によって遺贈が多い年や大口の寄附をいただける年があるため、各年度を通じて同じような金額というまでには至っていない。JASSOとしても、できるだけ寄附金を活用した事業をPRし、寄附をいただけるような機運を醸成していきたい。また、寄附金の使途については、災害支援金の他に、各大学における感染症対策助成事業などに活用している。加えて令和5年度は、社会的養護の対象である児童養護施設の高校生が大学を受験する際の、受験料を補助する仕組みを整え、現在、受付を行っているところである。

●イメージとしては、奨学金を返還し終わった方が立身出世し、寄附を続けてくださるというのが一つの理想的な形だが、日本には寄附文化が根付いていないというのもよく言われるところでもあり、なかなか難しく、奨学生あるいは元奨学生のネットワークの構築を課題と考えている。

○コロナ禍において、オンラインの活用が増えたが、今後も大いにオンラインを活用し、様々な角度から、各学校や高校生、あるいは国際社会に対しても情報を発信していただきたい。

●オンライン等の活用については、できる限りのことをしていきたいと考えているが、オンラインにしても、例えばホームページにしても、まずはアクセスしてもらう必要があり、最初の一歩が難しい。新聞広告やテレビを見ない層に対しては、やはり学校を通じたルートが最も確実だと思われるため、学校の先生や担当の部門等との連携を緊密にしていきたいと考えており、よろしくお願いしたい。

○JASSOの3事業はそれぞれ独立して業務を実施していると思われるが、いずれもSDGsの大事な柱である「誰一人取り残さない」という包摂性、多様性を重視した、インクルージョンを目指す取組と受け止めている。このような国際的な指標とも関連付けられるような事業を展開している点をアピールしていくと良いのではないか。また、3事業のシナジーをうまく表に出していけるような広報戦略もあると良いと考える。

●3事業の連携について、留学生支援事業においては、学生生活支援事業と連携しながら、全国キャリア教育・就職ガイダンスの中で留学生の就職についてもコーナーを設けてセミナーを開いている。また、奨学金事業において実施している貸与型の奨学金の中には海外留学に関するものもあるため、留学生支援事業として実施している海外留学のための説明会の中でも、奨学金事業部門の職員から説明を行うなど、連携を取っている。ご指摘の点については、今後もさらにシナジー効果も意識しながら、進めていければと考えている。

●SDGsの一番基本である「誰一人取り残さない」という部分を支えるのは教育であり、SDGsを広めていくことも教育なしにはあり得ないと考えている。この教育を支えていくのが我々の仕事だと考えており、JASSOの事業はSDGsに深く関連していると認識しているため、そのような姿勢で進んでいきたい。

○企業や大学では、事業を展開する際にSDGsのロゴ等による視覚的なアピールを行っているところが多い。寄附を集めていく話があったが、現在多くの方がSDGsに関心を向けているため、JASSOの事業がSDGsと関連があることを対外的にアピールしていくと良いと考える。

以上