平成29年度第2回運営評議会(平成30年1月31日開催)

1.日時

平成30年1月31日(水曜日)10時~11時55分

2.場所

アルカディア市ヶ谷(私学会館) 6階 霧島の間

3.出席者

(委員)

郡 健二郎 委員、小林 光俊 委員、高柳 元明 委員、牧田 和樹 委員、南 砂 委員、毛利 衛 委員、横尾 敬介 委員

(JASSO)

遠藤 勝裕 理事長、大木 高仁 理事長代理、米川 英樹 理事、吉田 真 理事、大谷 圭介 理事、御厩 祐司 政策企画部長、皆川 秀徳 財務部長、藤森 義夫 奨学事業戦略部長、鈴木 美智子 留学生事業部長、頼本 維樹 学生生活部長 ほか関係役職員

(文部科学省)

井上 諭一 学生・留学生課長、齋藤 潔 留学生交流室長

4.議題

・奨学金事業における新制度等の進捗状況について
・海外留学支援制度について
・キャリア・就職支援について
・広報活動の推進について
・寄附の促進・活用について
・平成30年度予算案について

5.議事次第

6.配付資料

7.議事要旨

資料に基づきJASSO側から説明を行った後、意見交換が行われた。概要は次のとおりである。
 (○=委員、●=JASSO、■=文部科学省)

○給付奨学金については、学校毎に工夫をして推薦基準をつくるということだが、ある学校の基準では推薦され、別の学校の基準では推薦外になってしまうことはないのか。

●一律の学力基準では救えない子供たちを、学校の特色を生かして推薦していただきたいという趣旨で学校毎に推薦基準を設けている。そのため、学校毎に違いは生じ得るが、学校側にもご理解いただけているのではないかと考えている。

○平成29年度より導入されたスカラシップ・アドバイザーは、社会的にはどのような立場にあるのか。

●スカラシップ・アドバイザーは、ファイナンシャル・プランナー協会、金融財政事情研究会等の組織で認定されたファイナンシャル・プランナーのうち、一定の資格を持つ方の中から希望者を募り、スカラシップ・アドバイザー養成に向けた研修を受けていただいた。奨学金や学資の支援計画等に非常に関心を持っていて、相応の見識を持っている方たちにお願いをしているところ。

●金融機関に勤務する方が多いが、例えばファイナンシャル・プランナーの資格を持つ学校の先生や一般企業のサラリーマン、定年退職者が応募し、スカラシップ・アドバイザーになるというケースもある。特段、社会的な特典や立場を付与していないが、スカラシップ・アドバイザーとして活動していただくときには、謝金をお支払いする。

●ファイナンシャル・プランナーの組織からは、自分たちの専門性を生かして若い人たちの将来に関わる活動ができることに対して、感謝していただいている。

○高い志を持って若い人を育てる立場なのだから、もっと日の当たるように、非常に日本社会らしい、すぐれた精神を持つ立場だということをPRしていただきたい。
スカラシップ・アドバイザーが説明をする対象はどのような者なのか。

●まずは生徒たちに対し、お金について自分の問題として考えてもらうため、進学や学生生活にかかる費用、卒業後の手取りの仕組み等について説明することを想定している。また、保護者の方は関心が非常に強いので、保護者も対象に説明する想定である。進学のことについて本人と保護者で話し合ってほしいという趣旨である。

○スカラシップ・アドバイザーを派遣した学校で実施したアンケートでは、具体的にどのような意見があったか。

●今までこのような説明を聞いたことがなかったという率直なご意見が多く、比較的好意的なご意見をいただいている。学校の現場の先生方からは、奨学金の手続について説明してほしいというお声も寄せられているが、JASSOとしては、手続の説明は学校側にお願いしたいと考えており、まずは生徒たちに進学にかかるお金について考えてもらうという趣旨を徹底したい。

●アンケートに提案も書いていただき、改善につなげていきたいと考えている。

○我々、全国高等学校PTA連合会では年に1回全国大会を開催し、約4,000校の加盟校から約1万人が参加する。その分科会において、スカラシップ・アドバイザー啓発のために講演いただけないか提案したい。

●全国高等学校PTA連合会との連携については、後ほどよくご相談させていただきたい。

○スカラシップ・アドバイザーは、人生設計やお金のことだけでなく、学生の事情、家庭教育の状況、日本で必要となるような学費の問題等を幅広く理解している方であると認識した。学外の専門家であるため学校側も受入れ体制を整える必要があるが、高等教育機関に進む方々のために先生方と密に連携し、意見交換をしながら派遣していただきたい。また、スカラシップ・アドバイザーの方にとっても、やりがいのある、社会的な地位を確立することが重要である。

●スカラシップ・アドバイザーと学校との連携ということに関して、派遣数ばかりに気を取られるのではなく、研修や教材が実のあるものになるよう、高等学校の先生方にチェックしていただき、建設的に批評していただくよう心掛けていきたいと考えている。

○近々始まる大学、高等教育の無償化も重要だが、ポスドクの研究者に対して支援することも是非視野に入れていただきたい。大学を出た後も研究をするという意欲を支えるため、身分をしっかりと保証するような制度を実施してほしい。

■ポスドクについては、JASSOに関する法令の規定上、範囲外となる。ポスドクの場合は、日本学術振興会の特別研究員制度等をご活用いただいているが、残念ながら、日本よりも海外のほうがRAやTAの制度が非常に充実しているので、それらの制度を活用して海外に行くという方法もあるかと思っている。
また、JASSOの貸与奨学金では、大学院の上位30%の業績優秀者を対象とした返還免除制度がある。上位10%が全額免除、残り20%が半額免除となる。今年度の免除者が約870人であったが、来年度から1,200人まで拡充する。博士課程の返還免除枠がおおよそ1.5倍になるので、ポスドクに至るまでの道のりの支援として、ご認識、ご活用いただきたい。

○公立大学の立場から、お願いしたいことがある。授業料の減免率は国立は12.2%であるのに対し、公立全体で見ると、4.4%、しかも0%の大学もあり、年を経るごとにその差が開いてきている。公立大学は設置団体である自治体から地方交付税交付金の一部としてお金が回ってくることもその一因だろうが、ぜひ学生に対して平等に、同じような比率の予算措置でお願いしたい。このことは、現在検討されている高等教育の無償化の制度設計においても重要だと考える。
特に、報道されているように、学生の保護者の収入は700万円を境に、低額な方は公立大学に、高額な方は国立大学に進学する傾向があるという歴然たる統計がある。公立大学も平等にやっていると言われるものの、公立大学に情報が行き渡るのが遅い。ぜひその辺もよろしくお願いしたい。 

■授業料減免について、国立大学のほうが予算措置は手厚く、公立大学は地方財政措置のため首長の判断により扱いが違うという面はあるが、JASSOの奨学金については個人への支援となるため、貸与も給付も平等である。また、昨年閣議決定された新しい経済政策パッケージに基づき、消費税を財源として、住民税非課税世帯及びこれに準ずる世帯の方で学習意欲のある者については、授業料の減免と給付奨学金が措置されることになろう。これにより、特に低所得者への支援という意味においては、一律に平等な措置が達成されるのではないか。

○大学院の成績優秀者の授業料免除では、高い金額が免除される。しかし、大学院で優秀な教官のところに入れば、業績の判定に有利という面があるため、大学院生本人よりも、その研究室の指導教官が優秀なのかどうかで決まりかねない。大学院生の優秀者に対して免除するというような本来の目的から外れていないかと懸念している。

■免除の制度には大きく分けて授業料の免除と奨学金の返還の免除があるが、授業料免除において、誰をどのような方法で選ぶかは、大学に委ねられている。ぜひ予算の枠内で各大学にできるだけよい方法をとっていただきたい。
一方、奨学金の業績免除については、全国の大学で一律に、今年までは上位30%という枠を割り振った上で各大学に選んでいただいている。選び方はそれぞれあろうかと思うが、できるだけよい方法をとっていただけるように、我々も情報を集めたい。

○留学に対する学生の意識の変化について伺いたい。企業で見ていると、社会に入ったばかりの若手も留学や海外派遣に対してはネガティブなようである。

●若い世代は昔に比べて内向き指向が強いと指摘されており、その要因として、人口減に伴い留学希望者が少なくなっていることや、十数年前に比べて家計水準が落ちているために留学の意欲が湧かないのではないかと言われている。また、全体的な傾向としては、長期の留学が低減しているが、短期留学は伸びており、JASSOの海外留学支援制度においても、この数年間同様の傾向が見られる。色々な調査、立場からの議論があるが、JASSOでは文部科学省とトビタテ!留学JAPANというプログラムをつくり、若い世代に留学するよう促す取組を行っている。参加していただいている大学生、高校生を見ると、とても意気盛んである。

■JASSOの調査によると、短期留学生の数が増える一方で、長期留学生の数は、長い間2,000人を切る状況にあり、トビタテ!留学JAPANのキャンペーンを開始した当初の平成25年年頃は1年以上の長期留学に行く人数が1,500人前後だったが、今年の調査で久しぶりに2,000人を超えるなど、長期留学も直近2~3年の間にかなりの割合で増えている。OECDの統計で見ると、統計のとり方の関係で3年遅れぐらいでデータに反映されることもあり、ずっと減少しているが、おそらく来年ぐらいから増加するのではないかと思っている。

○トビタテ!留学JAPANの制度を利用した留学生による、口コミのような発信の効果もあるのか。

■それも非常に大きい。短期留学に行った方が長期留学に転じる傾向もあるように思う。

○長期と短期、理系と文系等、様々な留学の形があるだろうが、JASSOからはどの程度の金銭的な支援があるのか。

●海外留学への支援は3種類ある。1つは大学院学位取得型の留学で、月額8万9,000円から14万8,000円の奨学金に加えて、授業料を最大で250万円支給している。2つめの今年度から開始の学部学位取得型では、月額5万9,000円から11万8,000円の奨学金に加えて、授業料を最大で250万円支給する。最後に協定派遣については、月額6万円から10万円の奨学金を給付する。いずれも、奨学金の月額は派遣国・地域で異なる。
理科系と文科系の割合について、長期の大学院学位取得型に関して述べると、今年は受給者100人中、人文社会科学が78人、自然科学が22人であった。また、修士課程が約4割、博士課程が約6割である。

○日本の留学生を6万人から2倍、すなわち12万人に増やすという方針が出されているところである。グローバル化が進む中、海外の大学と連携をしてできるだけ多くの学生に海外経験をさせる大学が増えていると感じるが、協定派遣型の予算人数については、29年度から30年度にかけて1,000人減になっている。この理由は予算的な問題なのか、それとも希望者が増えないということか。

■協定派遣の奨学金は月額6万円から10万円であり、遠い地域に行くと、短期でも奨学金が足りなくなることもある。そのため、短期留学をプログラムしている学校の手が挙がりにくいという問題があった。
今般、特に経済的に苦しい学生に対し、渡航の一時金として16万円を加算することとなり、財源の都合上、採用人数を絞り込んだ。しかし、学校で計画されているような短期留学のニーズを拾い上げることで申請が増えれば、将来的な人数の増加にも繋がるのではないかと考えている。

○留学生数を30万人にすることはすばらしいことだが、一方で、日本の大学は、18歳人口が減少し、とりわけ私立大学は定員割れや財務状況の悪化により、補助金が少なくなるような状況にある。良質な教育を留学生に提供しようという大学が増えるのは結構なことだが、定員を埋めるために留学生の受入れを安直に考えるような大学もあり得るので、学生を守るためにもJASSOが注視していただきたい。

●留学生に限った話ではないが、少なくとも何かしら問題があった場合には、それなりの対応をJASSOとしても行っている。

●海外から留学生が来るとき、色々な業者が媒介している場合があるが、留学生が斡旋業者からの情報に騙されたということも聞いている。JASSOは海外事務所が5か所あるので、大使館等と協力し、正しい情報を留学生に伝えようと対処している。

■政府としても30万人という計画の目標数の達成にかなり近づいているので、数だけではなく、学生や受け入れられる学校の質をしっかりと見ていこうと議論している。我々とJASSOの間でも、奨学金事業等も通じて、教育の質もきちんと見ていこうとしている。

○留学のうち、学部学位取得を支援する方向に向かっているのは、これからの日本としても大切である。大学院生では個人の目的や専攻に沿って留学するが、学部学位取得型では、18歳前後の将来像が決まっていない人が海外に行くこととなり、大きな刺激を受けることが期待される。国として、日本社会の将来像や外交面を考えて、どういうところに学生を派遣するかという議論はなされているのか。

■学部段階でどういった問題意識で留学するかというのは非常に重要である。国としても学部、大学院ともに、どういった分野、国へ戦略的に送り出すか議論している。
若いころに経験をすると、その後のキャリア意識が変わってくるということがある。例えば、学部学位取得型で留学される方の多くが高校時代に留学をされていたということもあり、トビタテ!留学JAPAN等でも、高校生の段階で留学したいという方の申請はかなり増えている。将来的に役立つ人材としてPRもしていきたいため、高校段階でもスーパーグローバルハイスクールといった課題解決型の取り組みを行っている学校と連携しながら、学部段階の留学につなげていきたい。

○平成29年度の学部学位取得型の利用者を見ると、アメリカやカナダといった英語圏への留学が多い。これからの日本の将来を考えると、英語圏はもちろんだが、他の地域に派遣されて、言語、文化を取得して、日本に帰ってこられる方は、大きな貢献をするだろう。しかし、平成29年度の応募者55名、採用者33名では、あまりにも競争率が低過ぎる。平成30年度の予算人数では78人に増やすのだから、すぐに応募者を増やすようにして、大きい母集団の中から日本に期待されている方が選ばれて、様々なところに行けるのだというイメージをぜひつくっていただきたい。学部レベルへの支援は、これからの日本に必要だ。

●学部学位取得型は、平成29年度から開始した事業であるが、本年度については予算が措置されてから募集を開始することとなった。留学先の大学は秋始業が多い中、応募資格を既に入学許可を得た者に絞ったことで間口が狭くなった。
平成30年度以降については、応募は既に締め切ったが、倍率は大体2.4倍程度と聞いている。留学先が英語圏に偏っているということは、我々としても承知しており、文科省と協議しながら改善策を考えたい。

○インターンシップについて、大学3年生ぐらいの時からインターンシップに振り回されてしまい、学生生活の後半は学業との両立が難しい現実もある。インターンシップを推進するに当たって、学業と両立できるよう対策は何かとっておられるのか。

●インターンシップにおける様々な現場での経験を通じて、大学等の時分から社会人になる心構えを学んでいただきたい。そのためにもJASSOは、学校での取り組みについて情報を収集し、公表していくという役割がある。
一方で、ご指摘の通り、学業との両立が困難となっていることについて、有識者の間でも議論されている。これまで大学3年生、4年生がインターンシップに参加することが多かったが、今後は特に1年生、2年生からしっかりとキャリア教育を施し、学修環境等を阻害しないよう留意しつつインターンシップを通じて社会に出ていってもらうことを検討している。今後とも、各学校の担当者や経営関係者に必要な情報を伝えていきたい。

○私はインターンシップに賛成だが、青田買いの大きな温床になることを懸念している。優秀な学生とそうでない学生との差がますます開いてしまうようなことにならないように、配慮が要るのではないか。

■本来、インターンシップは、キャリア教育の中で重要な位置を占めるものである。経済界の皆様にも、できるだけ大学とよく相談をしてインターンシップのプログラムを練るようお願いしている。しかし、企業の採用活動の一環としてインターンシップを活用し、中には広報活動と変わらないようなものも多く出てきているのが実態である。大学のキャリアセンターはその状況をよく認識していて、学生にはいろいろアドバイスをしてはいるが、やはり社会全体で、高等教育という重要な時期の学修環境を守っていくことが必要であり、学生自身にも自立的に判断して行動していただく必要がある。引き続き経済界と協力して、学修環境とマッチしたインターンシップ活動が行われるよう努力していきたい。

○皆さんのご指摘の通りの問題点は確かにあると思う。経済同友会では2年弱前から、会員企業と個別の大学の合意のもと、大学1年生、2年生の長期休業期間に、就職活動とは無関係に学生が社会や企業を経験する取組を行っている。企業側にとっては負担となるが、今後の教育の問題、人口構成の問題に対して、企業もある程度協力しなければいけないということで、少しずつ実施企業が増えている。当初は2、3社だったが、1年半経った現在、実施企業が25社程に増えてきた。現在、実践途中であるが、実例が12件ほど出てきているので、さらに来年度も広げていこうとしている。
経済同友会の会員企業には、一括採用はもう古い価値観だという意識があり、この価値観が様々な問題を起こしているのではないかという議論がなされている。

○インターンの国際化も必要だ。例えば企業の海外支店でインターンを受け入れ、渡航費用を学生と企業で折半するような形で行ってはどうか。今の若い人たちは、何か目的を持って海外へ行こうとするので、今後、そのような企業を支援する枠をつくっていただけないか。また、インターンと学業の両立に関しては、私たち大学に携わる者としても非常に危惧をしている。国家にとって真剣に考えるべき問題だ。

■文科省では、基本的に学問研究のために海外に行く者を支援しているが、トビタテ!留学JAPANでは、企業の皆さんからの寄附を財源にしていることもあり、インターンの目的や社会奉仕活動の目的でも海外に行けるという自由度の高い制度を運営しているところ。

○報道について、週刊誌やネットでの誹謗中傷に対して、粛々と抗議するのは非常に重要なことである。誤った見出し等、抗議すべきところについてはきちんと対応すべきだが、抗議に必要以上のエネルギーをかけるのではなく、敢然とした態度をとりながら、やるべきことをきちんとやるという態度で臨む以外ないだろう。

●ご指摘のとおり、報道に対してその都度、神経質になるというよりは、あるべき姿をしっかりと伝えていくということが必要である。今回の運営評議会で初めて広報を1項目として取り上げたのは、広報に重点を置いていきたいという気持ちからである。
誹謗中傷等の報道に対して、毅然とした態度をとる目的は2つある。1つは、経済的に苦しい子供たちがJASSOの支援を受けて、高等教育機関を受ける意欲をずっと持ち続けてほしいということだ。誤った報道によって、経済的に苦しい子供たちの進学への意欲が削がれることがあってはならない。もう1つは、子供たちを支えるために、我々役職員が意欲を持って仕事をできる環境をつくりたいということである。
JASSOからの情報提供にあたっては、様々なツールを使っており、去年は林家たい平さんにお願いして、ユーチューブに若者向けの動画をアップした。そのような前向きな報道と同時に、間違ったことを伝える後ろ向きの報道への抗議を行っていきたい。

以上