令和3年度運営評議会(令和3年11月4日開催)

1.日時

令和3年11月4日(木曜日)14時00分~15時30分

2.場所

WEB会議

3.出席者

(委員)

梅森 徹 委員、岡 正朗 委員、小田中 直樹 委員、小林 光俊 委員、杉村 美紀 委員、杉本 悦郞 委員、高柳 元明 委員、松尾 太加志 委員、南 砂 委員

(JASSO)

吉岡 知哉 理事長、藤江 陽子 理事長代理、吉田 真 理事、吉野 利雄 理事、萬谷 宏之 理事、竹内 俊郎 監事、新木 聡 政策企画部長、天羽 祥介 総務部長、佐藤 俊明 財務部長、掛川 千之 奨学事業戦略部長、丸山 敬司 留学生事業部長、井上 示恩 学生生活部長

(文部科学省)

藤吉 尚之 学生・留学生課長、高橋 一郎 留学生交流室長、今村 剛志 学生・留学生課視学官

4.議題

コロナ禍における学生支援について

5.議事次第

6.配布資料

7.議事要旨

資料に基づきJASSO側から説明を行った後、意見交換が行われた。概要は次のとおりである。
(○=委員、●=JASSO)

○コロナ対応として猶予制度を上限まで利用した方について、特例として上限を1年延長する施策を実施との話があったが、実際に返還困難者で、返還を猶予された人数はどのくらいか。それがJASSOに及ぼす財政的な負荷はどの程度か。また、貸与奨学金の総回収率は、返還困難者への猶予分は分母から除外して算出しているのか、それとも、返還困難者への猶予分を未回収分として算出しているのか。

●返還期限猶予制度におけるコロナ対応の特例が適用された人数は、昨年度と今年度を合わせて約670人である。したがって、全体の返還者が約460万人であることを踏まえると、ごく一部の人数であるといえる。また、総回収率を計算するときには、返還困難者の猶予分を除外して算出している。

○貸与奨学金について、以前、教職や研究職に就いた場合に行われていたような免除を今後、検討する予定はあるのか。

●教育研究職の返還免除については、JASSOが設立された平成16年度を境に切り替わっており、現在、第一種奨学金では、修士・博士で業績が優秀な学生を、学生本人からの申請と大学の推薦を基に審査し、返還を免除する仕組みがある。職種によって奨学金を免除するのではなく、学生の業績に着目して奨学金を免除する形になっている。今後の学生への経済支援については、今後、国において検討されていくと思うが、JASSOとしては状況に応じて、できることに取り組んでいく。

○修士・博士まで行くこと自体、経済力が必要であり、経済力が無いと学士ですぐ就職せざるを得ないという学生も多々いると思う。門戸が広がるとよいので、今後の検討課題としてほしい。

●学生に対する返還免除は非常に重要な仕組みであるため、精査しつつよりよいものにしていきたいと思っている。一方で、給付奨学金があり、制度が複雑になってきているが、できるだけ分かりやすく説明しつつ、改善していきたい。

○日本留学試験で、インターネット・ベースド・テスティング(IBT)を試行的に始めたということだが、不正等の問題はないのか。

●日本留学試験のコンピュータテストは令和5年度の開始を目指し、現在準備をしている段階である。今年度、不正行為への対応に問題が生じないか確認することも含めて、IBTの試行試験を行う予定である。その結果については、実施後に検証した上で、本番に向けた準備をする予定である。

○令和3年度の上半期の実績において、日本留学試験、日本語教育センターの収支の悪化がみられたが、今後の見通しをどうみているか。

●日本留学試験の応募者数減少や日本語教育センター及び国際交流会館において、来日留学生数が減っていることが原因で収支が悪化している状態であり、収入減に応じた事業の展開その他の対応を、各部署においてそれぞれ進めているところである。日本留学試験については、日本の高等教育機関に入る学生に対して、適切に成績を提供することが大事であると考えているため、収入減ではあるが、コロナへの対応を取りながら、確実に実施するということで進めていきたい。日本語教育センターについては、入学する学生は減っているが一定数の国費留学生が入学している。しかし、私費留学生は来日できていないため、例年に比べて少ない状況である。留学生に対する教育の機会を無くさないよう、オンラインでの授業を希望する学生については、最大限の対応をして進めているところである。国際交流会館については、来日する学生は減少しているが、近隣の大学に協力をお願いし、日本にいて入居を希望する学生にご案内し、入居していただいている。

○留学生を派遣する奨学金の制度で、外務省の危険情報のレベルの基準についての判断に関し、柔軟な運用ができるように対応していただいたことに感謝したい。

○JASSOは帰国した留学生のフォローアップ事業の運用を柔軟にオンラインでも行っているが、これからコロナが収束の段階に入っても、オンラインを活用した柔軟な運用をするとよいと思う。

○日本へ入国できない留学生に対しては、主にオンラインを活用して対応していると思うが、実習関係等に関してはリアルな対応をせざるを得ない状況になっている。現在は、感染拡大が収束しつつある状況であるが、今後の取組や見通しについてJASSOとして考えはあるか。

●コロナが収束しても、コロナ禍でのオンライン授業の経験を生かした展開やオンラインでの留学フェア等を継続していきたい。オンラインで行うことで、今まで留学フェアに参加できなかった学生も情報を得ることができ、裾野を広げることができたという成果を得ている。今後もそういった部分は残しつつ、情報提供を進めていきたいと考えている。

○大学の現場としては、できるだけ早期に、国費留学生に限らない留学生の入国への働きかけをぜひお願いしたい。オンラインで授業を受けることができても、実技や実験が伴う科目においてはオンラインでは難しい部分があり、留学先を変更したり、留学を取りやめたりする例も出てきている。留学フェアでのオンラインの活用は、全世界の学生に機会が提供できるという意味で、すばらしい取組であると思う。そのため、オンラインと現地開催をバランスよく組み合わせるとよい。現在計画中の日本留学試験のオンラインによる実施開催についても、できるだけ前向きにチャンスが広がっていけばよいと思う。留学生30万人計画が達成された後にコロナの影響で留学生数が減少し、今後が危惧される。大学も努力するが関係者が一致団結して取り組むことをお願いしたい。

●留学生を含め学生同士の交流が重要だが、オンラインでは授業はできても学生同士の交流が難しいのが難点である。特に留学関係は、できるだけリアルの部分を増やしていくことが重要であり、そのような方向で今後進めていきたい。

○可能であれば外国に対しても情報を発信してほしい。外務省や文科省も含めて政府としての考えで、ある程度見通しの立つことは、できるだけ早く情報を流すことが重要であり、お願いしたい。

○留学生に関しては、国費留学生も大変だが、特に私費留学生を多く抱えている大学が大変な思いをしていると聞く。学生にとって、留学はやはりリアルな体験や交流こそが何にも代え難いものである。日本は他の諸外国と比べても出入国に関するルールが厳し過ぎるという批判があるので、日本で勉強する目的で入国する留学生に対しては一段の配慮をお願いしたい。

●私たちも本当にそのように思っており、関係諸機関にもお願いしていきたい。

○留学生に関して、所属大学では、協定校からの大学院生だけで、授業料が免除されているので、留学生のほうからの要望はあまり出ておらず、うまくいっているほうかと思う。

○日本人学生が海外留学する場合の奨学金の件で、コロナの影響により留学先大学の開講時期がずれて年度をまたぐ形になったが、年度内でないと奨学金が出ないと伺った。本人の責めによるものでなく、コロナの影響によりやむを得ず年度が変わってしまうような場合に、柔軟な対応を考えていただけるのか。あるいは既にそうした柔軟な対応をしているのか。

●海外留学の奨学金(官民協働海外留学支援制度)は、留学できなかった場合、来年度までできるよう対応している。今は、コロナで留学自体が出来ていない人がほとんどという状況である。ご質問の件については、どのような対応が可能か、確認をしたいと考えている。

○コロナに限らず災害など、本人の責めによらず留学を延期せざるを得ないケースも多々あるかと思う。そのような状況でも、SDGsで掲げられているように誰も取り残すことなく、ご対応いただければと思う。

●コロナばかりに目が向いてしまっているが、留学先での政変等様々なことが起こる可能性があるので、臨機応変に対応していかなければいけない。当初はコロナ禍がこんなにも長引くと思わなかったため、後追いになっている部分があるが、今後も不測の事態の発生とその長期化も考えられるため、緊急対応ではなく、制度として考えていかなければならないと思っている。

○学生生活調査では、コロナ禍でどう学生が困っているのかという実態について、どこまで調査しているのか。大変困難な状況の学生もいると思われるため、できるだけ調査をし、政府等に情報提供をしていただきたい。

●コロナ禍の令和2年度の学生生活調査については、今年9月末に速報値を出したところである。今回の調査では、大学に加え、これまで試行的に行っていた専修学校(専門課程)、高等専門学校も対象に含めて実施した。学生がどのような生活状況か、必要な費用はどのくらいかしっかり見ていくために調査を活用し、ホームページ等で情報発信している。

○今年度における民間からの寄附金は1.9億円ということだが、これは昨年度の残額か。今後、昨年度並みに増やしていく予定なのか。

●寄附金については、昨年度はコロナの感染拡大という新たに生じた困難への対策として大規模な形で募集した。今年度も引き続き、コロナの影響が残っているため、1.9億円で大学への助成を行った。また、今後についてはコロナの状況を踏まえながら、検討していきたい。

○説明資料1の自己評価の方針について、コロナの影響を踏まえた評定の引き上げに該当したものは、実際には無かったのか。

●資料1、23ページの日本人留学生に対する支援のうち各種イベント実施に関しては、定量的基準ではD評定となるところ、コロナ禍の影響と対応内容を勘案してB評定とさせていただいている。

○最近重視されているSDGsの17の目標の中にQUALITY EDUCATION(質の高い教育をみんなに)がある。機構に対する貢献や寄附は、まさしくこのQUALITY EDUCATIONに一致するため、統合報告書を充実させる1つの手段になると考える。こういう点もアピールしながら、寄附の勧誘活動を行ってみてはどうかと思う。ディスクロージャー資料についても、機構の取り組む事業がSDGsにかなうものである点をアピールしてはどうか。

●私たちの仕事は、教育を全ての人にという、基本的な活動であると心得ており、おっしゃるとおりこれをアピールしつつ、寄附でも訴えていくことを今後検討していきたい。

○奨学金事業、留学生支援事業が予算的に大きな部分になると思うが、学生生活支援事業も、コロナ禍でも継続して企画が行われたという点で、SDGsが掲げる包摂性だけではなく、まさに学びの継続を維持するためのポイントとしてアピールしていくとよいと思う。また、ホームページのリニューアルにより、スマートフォン表示で閲覧できるようになり、学生にとっても見やすくなったと思う。もし今後可能であれば、ホームページにSDGsのロゴなどを載せたり、JASSOとしてSDGsの統合報告書を作成したりするなど、さらにアピールするとよいと思う。

●確かにSDGsを表に出すべきであり、少なくともホームページに載せていくことが必要であると思うので、今後考えていきたい。

○昨年から今年にかけて、コロナ対応でJASSOの職員の業務が増える一方、正規職員の数は増えず、残業が増えたのではないか。その状況を踏まえ、JASSOではどのような働き方改革を行っているのか。

●昨年度から本格化した給付奨学金は非常に複雑な仕組みであるため、様々な業務が増えている。かつ、コロナ禍で緊急支援の体制を取るため、職員には非常に負担をかけているというのが実情である。これに対しては危機的な状況であると考えており、人が少なくスペースも少ないという条件の中で、対応を考えているところである。

●新たな給付奨学金は非常に複雑な制度であり、その制度に職員が慣れていない。さらに、職員の通常業務をサポートすべきシステムへの対応の遅れもあり、職員の残業が増えている。職員が残業で疲弊してしまわないよう、業務量を定量に戻していかなくてはいけないと思っている。コロナ禍の中で様々な制度を新たに加えたため、職員のモチベーションをどのように上げ、落とさないようにしていくか検討を進めていくことにしている。

○システム化による業務効率化には、ある程度金銭的な負担がある。予算が足りず、JASSOが立ち行かなくなってしまっては困るので、国にシステム化のための追加予算を求めることなどを検討していただきたい。

●職員の働き方改革も含めて我々も努力する。

以上