令和元年度第1回運営評議会(令和元年6月27日開催)

1.日時

令和元年6月27日(木曜日)9時55分~11時45分

2.場所

主婦会館プラザエフ 地下2階 クラルテの間

3.出席者

(委員)

梅森 徹 委員、小田中 直樹 委員、小林 光俊 委員、杉村 美紀 委員、萩原 聡 委員、南 砂 委員

(JASSO)

吉岡 知哉 理事長、大木 高仁 理事長代理、米川 英樹 理事、吉田 真 理事、大谷 圭介 理事、御厩 祐司 政策企画部長、佐藤 俊明 財務部長、前畑 良幸 奨学事業戦略部長、吉野 利雄 留学生事業部長、井上 示恩 学生生活部長 ほか関係役職員

(文部科学省)

塩崎 正晴 学生・留学生課長、齋藤 潔 留学生交流室長

4.議題

・今後の日本学生支援機構の在り方について
・高等教育の修学支援新制度について

5.議事次第

6.配付資料

7.議事要旨

資料に基づきJASSO側から説明を行った後、意見交換が行われた。概要は次のとおりである。
 (○=委員、●=JASSO、■=文部科学省)

○高等教育の修学支援新制度の所要額は約7,600億円と試算されているが、対象となる学生の人数はどれぐらいになるか。

■試算上、対象となる学生は最大で約75万人である。なお、試算の約7,600億円の内訳は、授業料減免が約4,100億円、給付型奨学金が約3,500億円である。

○約75万人が修学支援新制度の対象になると、JASSOの業務量は大幅に増加するだろう。持続可能性も考えながら適切な対応をお願いしたい。

○修学支援新制度において、約75万人もの対象者を審査するには人力だけでは困難と思われるが、例えばICT技術の活用等は予定されているか。

●ここ数年、奨学金制度の変動や規模の拡大を受け、業務の外部委託を進めている。ただし、委託に当たっては業者任せにするのではなく、業務フロー、エラーへの対応方法をJASSOから指示しなければならない。その上で、規模の大きな業務に対して、どのように委託業者を活用するか、そして、その委託業者を監督するためには奨学金の手続きについて熟知した職員をどのように配置するかを検討し、体制を整える必要がある。修学支援新制度における業務は前例のない業務であるため現在の組織体制では対応できず、タスクフォースを設けてトラブルシューティングをしながら業務フローを整備している。

○職員の判断が必要な業務であるため全てを機械で行うことは無理だとしても、日進月歩で進んでいる分野であり、新しい技術を用いた事務の合理化を進めていただきたい。

○奨学金事業だけでなく、留学生支援、学生生活支援とJASSOは幅広い事業を運営しているが、修学支援新制度に基づく事業は、社会保障の面でも意義のある大切な事業だと感じている。新制度を円滑に実施するため、学校団体等を通じて学校との情報交換を密にする必要がある。また、JASSOだけではなく、文部科学省、地方自治体とも連携して協力体制を築けるよう、文部科学省に検討いただきたい。

○高等学校に対して、修学支援新制度についての手続きやスケジュールを、広く周知してほしい。給付型奨学金の推薦については、教員が生徒のレポート等で学習意欲を確認するだけでなく、事務を担当する職員も関係書類を扱うため、校内で多くの教職員が手続きに関わる。手続きに携わる教職員が等しく理解して事務を行うことができるよう、できる限り資料等をわかりやすくし、奨学金制度の現状を正しく周知することが重要である。

●高等学校の現場からは、奨学金関係業務を教職員が行うべきなのかという批判を強くいただいている。高等学校の教職員には大変ご苦労をおかけしている。今年の対応として、5月の末から6月にかけて、30の都道府県で高等学校の教職員向けに約3時間の研修会を行い、その場で出された全ての質問に対応した。研修会に出席した教職員には制度についてご理解いただけた。研修会の実施状況が問合せ内容に大きく影響するので、力を入れて実施する必要があると考えている。予算の問題はあるが、高等学校の教職員ができるだけ奨学金事務に携わらないような仕組みを作ることは今後の大きな課題である。文部科学省と相談しながら、高等学校に限らず、大学等も含めた現場の負担軽減に向けて検討していかなければならないと認識している。

○奨学金は生徒の進学に関わるものではあるが、できるだけ高等学校の事務負担を軽減していただきたい。

●奨学金によって少数の優秀な学生を育てるという意識が共有されていた頃は、生徒を送り出す学校、大学とJASSOが一丸となって奨学金事業を実施する傾向があった。しかし、第二種奨学金が創設されて奨学生が増えるにつれ、特に大学団体から事務の負担増加に対する批判が聞かれるようになった。現在も修学支援新制度の導入によって、高等学校から同様の批判を受けている。

○大きな課題である奨学金の回収率を高めるために、大学側も協力して奨学生に十分な指導をするように努めたい。また生徒の返還意識を高めるため、オープンキャンパス等で新制度の内容とともに説明する取組についてもJASSOから呼びかけていただきたい。

○コールセンターへの問合せ件数が多いとのことだが、保護者や生徒からだけではなく、奨学金の手続きについて生徒から質問を受けた教職員が答えられずJASSOに問い合わせている場合も多いのではないか。多くの質問を受ける項目については、FAQとして公開する、ホームページ上でまとめて回答するといった対策が必要ではないか。特に今後は新制度が導入されるため、コールセンターへの問合せ件数を減らすためにも、的確な情報を提供していただきたい。

●電話による問合せへの対応については、保護者、生徒からの個別の相談に直接回答するコールセンターがある。外部に委託しており、現在、応答率は高い状況である。高等学校の教職員への対応については、機構職員と派遣職員で対応している。学校からの問合せが予想以上に増えており、応答率は低い状況にある。今後、文部科学省と相談しながら改善を図っていかなければならない。

●コールセンターでは、従来は返還者向けの対応のみだったが、現在は貸与に関する問合せにも対象を拡大し対応している。問合せに答える業務全体をどのように運営するか構想を練る必要がある。学校の現場にご迷惑をおかけしないよう、業務を実施しながら考えさせていただいている。

○コールセンターの機能の充実を図るだけでなく、応答率が低い現状では、ホームページ等の他の手段を充実させることも重要だ。

●スマートフォンでもJASSOのホームページが見やすくなるよう改修した。また、ホームページのFAQが見つけ難いという意見を受けて、奨学金に関する質問にAIが自動で回答するチャットボットの導入を準備しており、電話をしなくても疑問点を解決できるようにしているところである。

○問合せに対する個別対応には限界がある。個別対応と働き方改革との板挟みになることもあるだろう。進学意欲のある者が必要な情報に適正にアクセスできる仕組みを整えなければならないと考える。長い文章が読まれなくなっているという状況ではあるが、そのような社会状況を前提にして対応策を考えなければ、根本的な対応にはならないのではないかと危惧している。

●問合せに答える業務は切りのないものであるが、改善の余地はある。問合せ件数が増えて対応に苦慮しているこの機会に、効率性を高める工夫を追求したい。

○近年、子供に教育を受けさせたいが、学費の高騰等により難しいという保護者からの訴えを多く聞く。学費の問題については国が給付型奨学金制度を整えてきたので、次の段階として、留学生も含む学生に対して進学や留学への希望が制度の利用につながるような根本的な社会のスキームをつくり上げる必要がある。

○本学は留学生への講義を英語で行うか、日本語で行うか悩んできた。英語で講義をしても日常生活では日本語を使うこと、優れた留学生は卒業後に日本の企業に就職することが望ましいことを考慮すると、留学生が日本語を学ぶことは重要である。本学でも日本語教育を行っているが手いっぱいであるため、今後ともJASSOに中心的な役割を担ってもらいたく、大学としても情報交換等を含めて協力させていただきたい。

○日本留学試験の応募者数がV字回復しただけでなく、試験実施都市にタイのチェンマイが加わった。元留学生が多くいる地域を試験実施都市として検討した結果かと思うが、良いことだと思う。渡日前入学許可制度とあわせて周知をしていくと良いのではないか。
また、中国から日本への留学生が増えているが、留学生の人数を増やすだけではなく、質を担保することが大きな課題である。日本留学試験は、日本語能力と日本についての基礎知識を測ることができるため、大学が留学生を審査、選考する際に役立つとともに、留学生30万人計画を留学生の質の面から考える上でも重要な役割を果たすと考える。

●現地の元日本留学生の会から強い要請を受けて、昨年度からチェンマイを日本留学試験の実施地に加えた。他地域においても同様の要望があるため、可能な地域から実現していきたい。
中国からの留学生数は増加しているが、留学生全体に占める割合は、10年前の60%から、直近では38%と低下している。大学の世界展開の成果として多様な地域から留学生が来ているが、委員のご指摘の通り、増加する中国からの留学生の支援についても考えていきたい。

○国際交流の面で、政府を代表する団体としてJASSOが果たす役割は大きいと感じている。NAFSA、APAIE、EAIE等の世界各地で毎年開かれる国際交流の会議にもJASSOからいつも出席いただいており、今後も引き続き文部科学省のもとで日本の国際交流事業を応援していただきたい。

○日本社会が急激かつ全国的に国際化している。今年4月の法改正で労働者が多数入ってくるようになるだろう。日本の社会を国際化させた大きな推進力となったものとして、留学生政策と並んで地方自治体が実施するJETプログラムが挙げられる。各国大使館や文化交流団体の外国人の職員の中には、JETプログラムを機会に来日し、日本を気に入って根づいた人も多い。このように、制度によって国際社会の形成は後押しされるが、JASSOが取り組む日本語教育も、国際社会を形成する1つの後ろ盾となるのではないか。

○学生生活支援事業においては、教育的効果の高いインターンシップの推進と産学連携がJASSOの令和元年度計画で掲げられているが、外国人留学生からも、日本でのインターンシップに参加できないかよく尋ねられる。勉学だけでなく、インターンシップを留学生受入事業に取り入れることができると、留学生の日本国内での就職率を5割に向上させるという「日本再興戦略2016」に定められた目標の達成にも貢献できるのではないか。

●JASSOは、インターンシップ専門人材セミナーを通じて質の高い知識の普及を目指している。文部科学省、関係団体と協力して毎年度実施しているので、今期中期目標期間でも関係方面からご協力いただきながら各大学等の理解を深めていただくように努めてまいりたい。

○大学の現場では、様々な障害のある学生の認知件数の増加や障害者差別解消法の施行を受けて障害学生支援に本格的に取組み、試行錯誤している。以前に比べて、学生が障害について話すようになり、サポーターボランティアも増え、大学全体として障害のある学生を支える方向に変わってきている。一方で、障害学生支援には非常に専門的な知識が要求される上に、認知件数が増加したことで担当部署には余裕がない。JASSOはこれまで事例集やマニュアルを提供してきているが、今期中期目標期間以降も引き続き現場にフィードバックしていただきたい。

○寄附金受入れ額が大幅に伸びているが、今後さらに伸びる余地がある。企業から教育に対する支援は、かつてはCSRに基づく受け身的、義務的に行われる場合が多かったが、近年ではESGを重視した金融行動が評価されることから、SDGsへの貢献を企業がアピールするようになった。JASSOの事業がSDGsの4番目の目標である「質の高い教育をみんなに」と関わりがあることをアピールし、寄附金受入れを増やしていただきたい。

○障害学生支援のようにインクルーシブ教育に関わる学生生活支援事業、奨学金事業、さらに留学生支援事業から成るJASSOの事業全体が、SDGsの「誰一人取り残さない」という理念に直結する。SDGsとの関わりをアピールし、JASSOの事業をより広く知ってもらえるとよいと思う。

●SDGsに関わる取組も行っていきたい。

○個人情報の漏えいは信用の問題に関わる。取り扱う情報が今後増えるため、個人情報の保護に関わるコンプライアンスの遵守を一層徹底するべきだ。

●個人情報の取扱いはJASSOの信用に関わるため細心の注意を払っているものの、事故は無くなってはいない。ダブルチェック、トリプルチェック等の防止策に取り組むよう厳しく監督していく。

○奨学金等の重要な事業を扱っている中、市谷事務所の老朽化によって事業運営に問題が生じないよう、施設を改善する必要があるのではないか。また、留学生宿舎についても、老朽化によって利用率や留学生の日本に対するイメージに影響を及ぼすことも考えられる。施設についても気を配っていただきたい。

●施設の老朽化への対応は多額のコストを必要とするものであり、解決が難しい状態である。事業に関する個人情報やデータは事務所の老朽化の影響を受けないように管理しているものの、留学生宿舎も含めて今後とも対策し、国に対して引き続き要望していきたい。

●大学に勤めていた時にも、大学は次の世代を育てるという使命を負っていることを強く感じていたが、JASSOは社会全体が次の社会を作ることを促すような組織だと考えている。SDGsとの関連について委員からご指摘を受けたが、日本社会だけではなく次の人類社会を担う課題を背負っていることを痛感している。しかし、JASSOだけでできることは非常に限られている。個々の大学が実施していることを連携させるために、ある種のメディアとしてネットワークを形成し、それを通じて得られた知恵をフィードバックしていくような仕組みを実行することがJASSOの役目であると考えている。そのためにも、皆様のご意見を活かしていきたい。

以上