令和4年度運営評議会(令和4年11月25日開催)

1.日時

令和4年11月25日(金曜日)14:00~15:10

2.場所

WEB会議

3.出席者

(委員)

石崎 規生 委員、伊東 千尋 委員、小田中 直樹 委員、小原 芳明 委員、小林 光俊 委員、白澤 麻弓 委員、杉村 美紀 委員、古沢 由紀子 委員、山田 博章 委員、渡邉 光一郎 委員

(JASSO)

吉岡 知哉 理事長、矢野 和彦 理事長代理、吉田 真 理事、吉野 利雄 理事、萬谷 宏之 理事、竹内 俊郎 監事、新木 聡 政策企画部長、天羽 祥介 総務部長、西尾 修 財務部長、掛川 千之 奨学事業戦略部長、丸山 敬司 留学生事業部長、井上 示恩 学生生活部長

(文部科学省)

藤吉 尚之 学生支援課長、下岡 有希子 参事官(国際担当) 留学生交流室 企画官(命)室長、松本 向貴 学生支援課 専門官

4.議題

コロナ禍を経た第5期に向けた学生支援について

5.議事次第

6.配布資料

7.議事要旨

資料に基づきJASSO側から説明を行った後、意見交換が行われた。概要は次のとおりである。
(○=委員、●=JASSO)

○説明資料3の「教育未来創造会議」で検討されている卒業後の所得に応じて柔軟に返還できる出世払いについては、未返還分の取扱いをどのようにするのか含めて検討していくべき。支払いに応じた者が損をするという制度にならないようにしていただきたい。また、修学支援新制度に関する検討について、理工系及び農学系の学部で学ぶ学生等への支援の改善が検討されているが、根拠を具体的に示していくべき。加えて、学生を保護する視点から機関要件の厳格化を図るとされているが、そもそも収容定員充足率や就職率は学生に責任のない事柄であり、むしろ学生を保護する視点であれば、収容定員充足率等に関わらず支援すべきであろう。きちんと根拠を示して議論いただきたい。

●本日は文部科学省にもオブザーバーで参加いただいているので、ご意見は伝わっているかと思う。

○奨学金制度の広報体制を一層強化していただきたい。特に給付奨学金制度は新しく、思いのほか知られていない状況がある。コロナ禍以前は、地方の教育委員会が進路担当の教員に対して奨学金制度を説明する際に、JASSOの職員を派遣していたと聞き、このような取組は非常に現場に情報が届きやすいと感じていた。一年ほど前に、コロナ禍のためほとんど実施されていないと伺ったが、その後どうなっているか。また、NPOが主催するオンラインの奨学金勉強会で、参加者(高等学校の生徒・保護者)が直接JASSOの職員に質問できるような説明会を見たことがあるが、そのような取組も進めていただきたいと考えており、そういった予定があるのか併せて伺いたい。さらに、今後、物価高に対する対応もされていくとのことだが、各大学から支援の相談が増え始めているという状況はあるか。

●奨学金制度の広報については従前から課題と認識しており、高等学校に関係資料を送付する等、周知に努めているところである。給付奨学金については今年で3年目となるが、高等学校で予約採用の申込みをして候補者になる方は年々増えており、昨年度初めて10万人を超えた。高等学校に在学する生徒数は約100万人であるため、これはその1割ほどにあたる。一方で、ご指摘のとおり、まだ情報が届いていない部分もあり、そこにどう行き届かせるかが課題と捉えている。高等学校等に説明者を派遣するスカラシップ・アドバイザー派遣事業については、以前はファイナンシャル・プランナーを派遣し、奨学金制度について説明いただく形式としていたが、コロナ禍以降はオンラインで動画を視聴していただく形式が中心となっている。今年度は派遣型を希望する学校も増えてきており、いずれも活用しながら実施していければと考えている。各大学からの相談状況について、具体的な件数は把握できていないが、家計が急変したことによる奨学金の申込件数は、令和2年度は多かったが令和3年度以降落ち着いてきている。引き続き広報を行うことで、必要な方に情報を届けていきたい。

○今の学生支援の制度はどちらかと言うと経済的に困窮している学生に重きが置かれており、制度の対象から外れている中間層がかなりいる。この層が非常に厚いため、中間層への支援についてしっかりと議論する必要がある。また、現状では、学部で支援が得られても大学院ではなくなってしまい、進学を諦めざるを得ない状況がある。また、理工系の学生の場合は大学院を目指さないとなかなか職に就くのも難しく、先端技術が進んでいく中で世界との競争ということを考えると、大学院への進学率を一層高めていく必要がある。それらの点についても引き続き検討いただき、早いうちに大学院生への支援が充実するよう尽力いただきたい。

○説明資料3の3ページにある「世帯収入別の高校卒業後の進路希望」の表を見ると、高等学校卒業後に短期大学・専門学校等への進学を希望する割合は「世帯収入が400万円未満」がかなり高くなっており、どちらかと言えば経済的に厳しい家庭の学生が専門学校で学ばれているように見受けられる。それから、就職のミスマッチで一度離職したが専門学校で実学を学んで再就職を希望する学生に対する支援についても積極的に議論いただきたい。また、岸田首相の所信表明にあるように、学び直しへの支援を中心に、人への投資に力を入れるということで、五年間で一兆円の投資を行うとされており、大いに期待している。多様性を重視することは非常に大切なことであるため、国民全体の底上げ、特に家庭経済の厳しい学生に対する給付型の奨学金を含めた様々な支援体制をさらに充実させていただきたい。

●修学支援新制度の中間層への拡大と大学院生に対する支援については、いずれも文部科学省の検討会議で在り方を検討していると承知しており、JASSOとしても検討に参画していきたい。社会人への支援について、現在の給付奨学金は高等学校等を卒業後2年以内の学生が対象とされているが、貸与奨学金は年齢の制限がないため、出世払いの議論においてもその点を念頭に置かれているのではないか。引き続き、今後の議論の行方を注視していきたい。

●日本の大学生は、高等学校を卒業して、場合によっては1~2年浪人して大学へ入り、大学を卒業して会社に入っていく、というイメージが一番基本としてあった。これからは、リカレント教育や一旦社会に出て戻ってきた学生をどう支援するか、特に専門学校等の役割も踏まえてどのような支援を行っていくかについては議論すべきところであろう。

○コロナ禍、ウクライナ情勢をはじめとした世界的な不安定さ、それに為替、円安の影響は、留学生を送り出すといったグローバル人材育成にかなり大きな影響を及ぼしており、いろんなものを再構築する必要がある状況にあると捉えている。教育未来創造会議の第一次提言でも、今の情勢把握をした上で課題出しがされているし、JASSOがその方向性を捉えた取組をされていることに敬意を表したい。グローバル人材の育成において、今後JASSOの役割はますます重要になってくるであろう。それに対し、JASSOの活動が広く社会やステークホルダーに認識されているかというと、まだまだ不十分なように感じる。大学生や高校生への働きかけとしては、インターネット上での情報提供が特に有効と思われ、トビタテ!留学JAPANでは、発足時にSNSへ多くの動画を流す等により、かなり認知度を上げたという例もある。トビタテ!留学JAPANも第2ステージに入るが、そういった形での取組も展開できればと思っている。また、中央教育審議会の教育振興基本計画部会において、高校生の交換留学に実績を持つAFS日本協会より取組についての説明を伺ったが、そういった団体と連携を図ることができれば、今まで以上に役割を果たしていけるのではないかと思う。

●奨学金事業も含め、広報の問題は常に課題である。大学入学時または高等学校3年生の段階で奨学金についての説明をしているが、特に経済的に苦しい層の方々はもっと早い段階で諦めてしまって、奨学金の制度自体に気付かないということもありえるため、できるだけ早い段階に広報の枠を広げていきたい。また、他の諸団体との連携もこれからますます必要になると考えている。

○コロナ禍を受けて整備したオンライン等の様々なシステムを、JASSO全体で恒常的に発展させていけるとよい。例えば、留学生支援においては、オンライン化により柔軟かつ利便性のある制度が整備されると、日本への留学を希望する学生も海外への留学を希望する日本人学生もより動きやすくなる。日本留学試験においても、難しい点もあるとは思うが、上手く活用していってもらえればと思う。

●ここ1、2年で培ったオンラインによる事業実施のノウハウ等はポストコロナにおいても活かしていきたいと考えており、日本留学フェアでもハイブリッド方式による開催を試みる等、オンライン方式も活かしながらの事業展開をにらんで、工夫しつつ徐々に進めているところである。来年度以降も引き続き対応したい。

○コロナ禍で留学、特に日本では水際対策により海外からの留学生の受入れが非常に低調になっている。他の国は留学生の獲得にもっと動いている印象があり、この状況を放置すると、日本で優秀な人材を受け入れることが困難になるのではないかと懸念している。また、海外の大学と連携交渉する際、奨学金はあるのかという話をよく伺うが、海外の大学からJASSOという言葉をほとんど聞かない。個別の大学がそれぞれの交渉でJASSOの奨学金制度を説明するようなやり方では、優秀な学生が集まらなくなってしまう可能性があるため、海外の大学に対する広報も考えていただきたい。

○グローバル人材の育成を掲げ、高校生のうちから海外へ目を向けて社会に貢献する人材を育てるということを推進しているが、例えば留学した学生が海外で就職して日本に帰ってこず、人材流出につながっているという意見も耳にしたことがある。世界へ目を向け、グローバル人材を育てることも大事だが、それが日本の社会にどう還元されるのかという視点も必要だと感じている。留学の支援を行った学生の追跡調査や効果検証を行ってもよいのではないか。

●海外の大学でJASSOがあまり知られていない点について、ここ数年はコロナ禍の影響で海外出張もほとんどできておらず、海外との接点が少なくなっていたところではあるが、北米で行われるNAFSAやヨーロッパで行われるEAIEといった多数の大学が参加する国際会議に例年参加しているため、そういったところで積極的にJASSOのアピールをするなどして認知度を高めていきたい。留学生への追跡調査については、JASSOの奨学金を受給している学生に対し、可能な範囲で実施しているところである。

●コロナ禍のため、海外で日本留学フェアが開けなくなったということはあるが、逆にオンライン化したことで、より多くの、あるいは地域的に離れた日本留学希望者に対する対応ができるようになったという側面があるため、そのような利点をこれからも伸ばしていきたい。

○学生生活支援事業が初めてA評定となったことは、大変よいことだと思う。年度評価における学生生活支援事業のA評定について、どのような点がよかったと考えているか、また、今後その点についてどのような対応をする予定かご説明いただきたい。

●学生生活調査について、例年よりも半年以上早く学部(昼間部)学生の生活状況や収入支出を公表したこと、また、コロナ禍により学生同士の交流が減少する中でのメンタルヘルスの問題について、積極的に課題をとり上げ、有識者の先生方からのご意見や支援の取組事例について情報提供したことにより、各大学においてその情報に基づいた対応をしていただくことができたことが挙げられる。更に、コロナ禍における学生同士の交流をサポートする各大学の取組について、24大学に協力いただいてGood Practice(優れた取組)を調査して公表するなど取り組んでいる。今後の対応については、今まで紙媒体で実施していた学生生活調査を令和4年度からオンライン調査に変更したが、更に学生にとっての利便性を高めると同時に、早期の調査結果の開示を可能にしたい。加えて、障害学生支援において、特に発達障害については調査すべき事項が多いため、大学等及び有識者の先生方のご協力を得ながら進めていき、その結果をしっかりと各大学等へ還元していければと思う。

○令和3年度に障害者差別解消法が改正され、この施行を待っている段階。JASSOでいち早く障害学生支援のための理解啓発セミナーを開催されたことは非常に意義がある。特に令和3年度は専修学校という経営規模が小さく、なかなか合理的配慮を進めていくことが困難な基盤のところに、啓発を進めたということは非常にありがたい。令和4年度も専修学校等を含むオンラインセミナーを開催されているが、ホームページでもわかりやすく障害学生支援をアピールしている姿勢はすばらしい。セミナー等をJASSOと共催する、またはJASSOのセミナーに協力する形をとると、大学側の反応がよく、JASSOのセミナーであればと参加してもらえることが多いように感じる。このような利点を活かして、なかなか手が届いていない通信教育課程での障害学生支援や大学の経営層等への更なる理解啓発にも取り組んでいただきたい。一方、障害学生支援の広がりに伴って、問合せ事例も非常にデリケートなものになっており、今まで以上に専門的な視点を持って取り組まなければならないことが増えている。もし可能であれば、JASSO内部に専門的知見を持った人材を配置してもらえると、JASSOが一層頼りがいのある組織として広まっていくのではないか。

●通信教育課程への支援やJASSOの中に専門的な人材を配置することについては、大きな課題であると認識している。デリケートな話も多いため、個別の大学に対して、JASSOで専門性の高い回答をすることは非常に難しいが、合理的配慮に係る事例集等を広めたり、各大学等で連携していただけるようJASSOが間に入るといった取組は今後も継続していきたい。種々な課題については専門の先生方のご協力も得ながら進めていきたいと考えている。

●JASSO単独で、というよりも色々な機関との連携を強めて、メディア的な機能を強めていければと思う。

○事例の取りまとめにおいてもかなりの専門性が要求される段階になってきており、例えば事例を編集し、集めて何かしらのコンテンツにしていくというところでも、一つ一つの言葉の使い方等にかなりのセンスが必要になってくる。そういったところで常に専門の方の目が通るような体制があるとよいと感じている。

●大変重要なことだと思う。

○JASSOの事業の3つの柱はいずれもSDGs(持続可能な開発目標)に直結するもので、誰一人取り残すことなく包括的で、しかも多様性を実現するというのはまさにこの3つの柱にぴったり合致すると思う。事業内容の意義をもっと醸成して広報を行うというお話があったが、SDGsとも絡めながら事業を位置付けていけるとよいのではないか。

以上