平成30年度第1回運営評議会(平成30年11月20日開催)

1.日時

平成30年11月20日(火曜日)10時~11時55分

2.場所

アルカディア市ヶ谷(私学会館) 5階 大雪の間

3.出席者

(委員)

天羽 稔 委員、梅森 徹 委員、岡 正朗 委員、小田中 直樹 委員、笹 のぶえ 委員、杉村 美紀 委員、横尾 敬介 委員

(JASSO)

遠藤 勝裕 理事長、大木 高仁 理事長代理、米川 英樹 理事、吉田 真 理事、大谷 圭介 理事、御厩 祐司 政策企画部長、皆川 秀徳 財務部長、前畑 良幸 奨学事業戦略部長、小山 国男 留学生事業部長、頼本 維樹 学生生活部長 ほか関係役職員

(文部科学省)

塩崎 正晴 学生・留学生課長

4.議題

第3期中期目標期間実施事業の総括及び次期(第4期)中期目標期間の事業の方向性
・独立行政法人の業務実績評価の概要
・第3期中期目標期間見込実績及び年度業務実績評価のポイント
・独立行政法人日本学生支援機構の見直し内容

5.議事次第

6.配付資料

7.議事要旨

資料に基づきJASSO側から説明を行った後、意見交換が行われた。概要は次のとおりである。
 (○=委員、●=JASSO、■=文部科学省)

○貸与奨学金事業において、返還金回収率を上げるために大学等とも連携して返還意識を涵養し、延滞初期における督促や回収委託等を通じて指導されているとのことだが、具体的にどのような指導を行っているのか。また、この指導によって学生等に過度な負担がかかることはないか。

●まず奨学金を申し込む段階や進学時の手続の際に、貸与奨学金は返還する義務があるものであるということをしっかり認識してもらうようにしている。具体例としては、インターネット上での手続時に、返還する意思を確認するためのチェックボックスを設けており、チェックをしなければ次の手続に進めないようにしている。奨学生になってからも、年度ごとに次年度以降に奨学金が必要かどうか「奨学金継続願」を提出してもらっており、その際にも返還の意思を確認している。また、大学等において、申込み時の採用説明会や、貸与が終了する卒業段階での返還説明会を開いていただく等、様々な機会を捉えて、返還意識の涵養や確認を行っている。

○実施事業が良くなっているように思う。特に、スカラシップ・アドバイザーはすばらしい。今後更に増やすとよいだろう。

●入口となる高校生段階、真ん中となる大学等在学中、出口である返還中、という3段階において、返還意識を高めるための活動をしている。JASSOとしては入口となる採用段階にあたる高等学校との連携に力を入れており、その一環としてスカラシップ・アドバイザー派遣事業を導入している。出口である返還中の者に対しても、延滞の問題解決に力を入れている。貸与奨学金の原資の約8割が返還金、残りが公的資金で成り立っており、返還が滞ると、公的資金を増やす、あるいは貸与奨学金予算を減らすということになるため、延滞防止は切実な課題である。真ん中にあたる在学中には、大学と連携して奨学生としてふさわしいかどうかの判断を大学等に適格認定という形で行っていただいている。現在、在学生に対して、借り過ぎに注意するよう呼びかけ、貸与月額の減額や辞退が可能であることを伝えているが、今後、在学中の学生への対応を大学等との連携で具体的にどう強化していくか考える必要がある。JASSOの貸与奨学金の最大の特徴は、無審査、無担保で奨学金の貸与を受けられる点であるため、奨学生の返還意識を強めるためには、入口と出口に力を入れているが、真ん中についても大学等との連携を強化して取り組む必要がある。JASSOにとって大きな課題であるため、お力添えいただきたい。

○学生によると、奨学金を借りるときのキーパーソンは保護者である場合が多いという。スカラシップ・アドバイザーを活用し、保護者へ向けた広報を更に積極的に行ってほしい。

●JASSOでは生徒と同じく保護者への説明を重視している。スカラシップ・アドバイザー派遣事業を全国高等学校PTA連合会に周知する他、学校には、保護者と生徒、あるいは保護者だけに説明する場合にも派遣の対象になることを周知している。

○成年年齢が18歳に引き下げられるが、高校3年生から金銭消費貸借契約の申込を受けるにあたってJASSOとして特別に対応する方針はあるか。

●現在、未成年者には、親権者と一緒に応募内容について確認した上で奨学金の申込手続きを行っていただくようにお願いしている。成年年齢の引き下げにあたっては、よりわかりやすい申込書類等を作成し、しっかり理解した上で申し込んでもらえるよう工夫したい。

○延滞者にはどのような傾向があるのか。

●JASSOにおいて毎年度実施している奨学金の返還者に関する属性調査の結果によると、延滞者は、正社員・職員として就業している割合が低い傾向がある。また、延滞の理由に経済状況を挙げる者が多い。

○給付奨学金の導入により、貸与奨学金において新規の延滞者は減るかどうかぜひ調べていただきご教示願いたい。

●給付奨学金の導入後の延滞の傾向が分かるのは数年後だろう。必ずしも経済的な困窮の度合いと、返還意識というモラルの問題が連動するという単純なものではなく、数字が出てみないと分からないだろう。

○定額返還方式に加え、所得連動返還方式が導入されたことは評価できる取組である。例えばボーナスが出た時など、返還者のその時の経済状況によって任意に返還額を増やせる制度はあるのか。

●毎月返還する金額の整数倍の額での繰上返還を、手数料無料にて受付けている。任意の返還額を受付けるところまでは行っていない。なお、繰上返還を希望する場合には、事前に、スカラネット・パーソナル(Web申込み)、電話、または申込書の郵送、FAXにより、申し出る必要がある。

○日本留学試験の応募者数が増えているが、量だけでなく質の向上についてはどのようにお考えか。何らかの方法で留学生の質を上げ、それを見える形にできればよいのではないだろうか。

●日本留学試験は、学習指導要領を踏まえ作問しており、科目ごとの委員会で議論を重ね、その質を確保している。また今年度より受験者が申請しやすいよう、国内ではオンライン申請を開始するなどの工夫もしている。

●日本留学試験受験者は、日本の高等教育機関への進学を志すレベルの高い資質を持つと思われる。また、JASSOが支援している国費外国人留学生は非常に質が高い。来日留学生の全体数が増加しており、今回の国会で議論されていることも含め、留学生の質についても今後精査する必要がある。

■今国会で外国人労働者の受入れ拡大を目的とする法案が審議されており、留学生に限らず外国人への日本語教育の質の保証をどう確保するかが議論されている。特に、日本語教育機関に在籍する外国人への教育の質の確保が焦点となっており、文部科学省と法務省を中心に検討している。日本語教育機関については、法務省の告示に掲載される必要があり、文部科学省も教育の観点から審査に協力をしているが、受け入れた留学生が、認められた上限を超えてアルバイトをしているのではないかといった懸念もあり、各機関がきちんと勉強させるよう質の保証のための対応を議論しているところである。

○留学生の質については、国立大学協会でも議論している。国立大学全体で試験を実施する将来構想があるのだが、国立大学協会だけでシステムを作るのは大変難しいので、文部科学省や関係機関と協働することも考えられる。

○日本留学試験の応募者が東日本大震災後に大幅に減ったがV字回復したことについてはJASSOの努力に感謝している。各科目ともに試験問題が丹念に作られており、質が高く、大学としても日本留学試験の成績を重視している。日本への留学生の多い中国本土やネパールで日本留学試験が実施されていないが、実施の可能性はないのか。
数の上では留学生30万人計画は達成目前ではあるが、留学生の質の問題は非常に重要である。日本では、渡日前入学の決定ができていない現状がある。世界の大学では英語で進学できるプログラムが増えている中、日本留学試験では日本語力を求められる点はあるものの、質の高さなどアピールできる点や実施体制の改善を図ってはどうか。日本語の質の担保という側面からも日本留学試験をうまく活用することができるのではないか。

○本学も東日本大震災直後は留学生数が大幅に減少したが、回復して大変うれしく思う。中国のように現地で日本留学試験を行っていない場合は、来日して語学学校に入り、その後大学の研究生になるというように、大学に入るまでに何段階も経なければならない。そのような状況では、経済的に厳しい者は、大学に入り奨学金を受けるまでの間、アルバイトをせざるを得ないという事実はある。大学に入るまでのシステムについては何らかの形での対応が必要なのではないだろうか。大学では英語だけで留学生が学位を取得できるシステムを作っている場合もあるが、最終的には、優秀な留学生には日本語を学んで日本の企業に入ってほしいというのが本音だ。JASSOとも協力しながら、どのような取組ができるのか考えていきたい。

●中国本土では、日本留学試験だけではなく、他国の学力試験も行われていない。一方、中国の唯一の試験開催地である香港では、約700人の受験生のうち中国本土からの出願も多く見受けられる。中国本土での日本留学試験のニーズはあり、実施したいところではあるが難しいのが現状である。留学生30万人計画はおそらく達成されるだろうと予想しており、次段階として、どのようにして量だけではなくて質を充実させるかが課題だろう。

○JASSOはこれまで国際交流会館を売却してきたが、留学生の宿舎は充足しているのか。売却後は留学生のための住居として運営されているのか。

●売却した会館については、留学生受入れ目的で使用するよう、自治体や大学に売却・譲渡しており、宿舎としての数の心配はないと考えている。

○海外に行く日本人留学生がどんどん減っている。「トビタテ!留学JAPAN」を更に積極的に活用して、日本人学生が海外に行けるようにしてほしい。

●「トビタテ!留学JAPAN」は2020年までの期限付きの事業であり、その資金を民間からの寄附で賄っている。現在の寄附見込み額は総額110億円を超えている。

■「トビタテ!留学JAPAN」は民間の企業の方々の寄附金を使って、学力よりもむしろ意欲を評価することとし、学生自身が立てた留学計画を審査している。企業に評判がいいということもあり、これまでの実施状況の検証を行い、2020年度以降も企業にサポートいただき、何らかの形でぜひ続けていきたいと考えている。

○日本では障害学生支援の取組が諸外国と比べて遅れているが、大学だけの問題としてとらえるのではなく、初等中等教育から高等教育への接続や連携を行い、底上げする必要があるように思う。JASSOには、底上げの支援をぜひお願いしたい。

●大学等においては、障害者差別解消法が平成28年4月に施行され、さまざまな障害学生をできるだけ受け入れようと積極的に動いており、JASSOとしても諸外国に劣らない配慮を実践するため、底上げを図っているところである。一方で、障害のある生徒が高等学校から大学に進学するときに、サポート体制を不安視する声もあがっている。JASSOは、障害者差別解消法が施行された平成28年4月よりも前から障害学生の対応については、各大学等での対応や専門人材の育成に資するよう、文部科学省とともにセミナーを開き、幅広く事例の情報提供を行うなど、さまざまな形での情報提供を行ってきたが、これをさらに加速していかなくてはいけない。繰り返しになるが、高大接続についても力を入れて、高等学校等や大学等のご意見を取り入れ、両者の連携を密にした障害学生支援を行っていくことを課題としている。

○障害者差別解消法施行以降、大学においてもセンター試験から始まり講義において合理的配慮を試行錯誤しながら対応している。対応は個々に異なり、情報が足りないため、他大学での有益な取組の情報があれば、非常に力になるので、JASSOが持っている具体的な事例についてパンフレット等の報告書にまとめていただきたい。

●特に障害者差別解消法施行後の紛争を防止するための事例については、積極的に集めてJASSOのホームページに公開している。また、障害学生支援についての基本的な考え方から障害学生支援の場面ごとの対応についてまとめた「合理的配慮ハンドブック」も作成し、各大学等に配布する他、市販も行う予定である。各大学の参考になるようこれからも情報提供に力を注いでまいりたい。

○大学では、発達障害のある学生も増えており、きめ細かい支援を行っている。その中で障害学生支援のための経費が拡大しており、限られた予算の中で対応を工夫するためにも情報共有をしていただけるのは大変ありがたい。大学によって国から与えられる予算が異なるため対応を一律にするというのは難しいのが現状だが、各大学ができるだけの対応をしているということは間違いない。

●法的には、国公立大学は障害者に対する合理的配慮が絶対義務であるのに対して、私立大学は努力義務とされている。東京都の教育委員として特別支援学校の先生方と話をすると、国公立大学と私立大学とでは受験時の配慮に差があるようだ。障害者の立場に立てば、高等教育機関として対応を揃えるべきではないかと思う。

■障害者支援は非常に重要である。国立大学に対しては運営費交付金、私立大学については、私学助成において予算的な措置をしている。セミナーでも予算状況が厳しいという意見が出るが、全体に行き渡るような予算措置は難しい。各大学で効率的に工夫している事例を紹介していただいているので、費用を抑えつつ支援内容の充実が図れるようJASSOや文部科学省が周知、広報に取り組むことが重要だろう。

●高大連携については2年ほど前からセミナーを開催しているが、高等学校と大学の立場の違いが徐々にあらわになり、そのことが分かったこと自体、前進だと思っている。「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第二次まとめ)」の中でも、高大連携は重要な課題として指摘されており、障害のある子供たちの個別教育指導計画が、幼稚園から大学に至るまで受け継がれることの重要性も示唆されて連携する学校が増えてきている。大学における合理的配慮措置について、私立大学は努力義務だからといって何もやらなくてもいいということではないことについても「合理的配慮ハンドブック」に書かせていただいた。

○障害学生の在籍率が急上昇しているということは、大学で障害学生が学ぶ条件が整えられていること、進学を後押ししたいという動き、学生の学習意欲のあらわれであると思う。特に高大接続について、センター試験、将来的に実施される大学入学共通テストの作問などには、非常に合理的配慮が行き届いていると個人的には思っている。確かに英語の民間試験導入にあたり「合理的配慮」措置がされるか不透明な面はあり、そのことで不信感があると発言されたのかもしれない。全体として、高等学校は大学に生徒を預けても大丈夫だと信頼している。

○私立大学においても、入試における個別対応や、学生ボランティアによるノートテイカー、バリアフリー等の対応を行っているかと思う。現在、教育分野では、障害学生対応だけでなくジェンダー、少数者を含めて幅広く「インクルーシブ教育」と称されている。日本政府も取り組んでいるSDGsと合致するので、政策の面でのアピールをするためにも、今後の事業目標にインクルーシブ教育を取り入れると良いのではないか。また、ダイバーシティという観点からも、障害を持つ外国人や留学生についても多言語による対応が必要となっている。すでに障害のある留学生を受入れており、担当者が個別に対応している。障害者だけでなく多様性を尊重した支援が学生生活支援という意味で必要となってくるのではないか。

●現在、LGBTについての差別を解消するための取組として、文部科学省とハンドブックを作成しているところであり、ホームページへの掲載や関係機関への通知を予定している。そもそもLGBTとは何かということから始まり、差別的な取扱いが行われないための各高等教育機関での対応のノウハウを紹介するものである。文部科学省の初等中等教育局では既に教職員向けのパンフレットを公表していたが、高等教育に対応するものはなかった。そこで学生支援を行っているJASSOにおいてもLGBTについての対応策を公表することになり、準備をしているところである。また、留学生や外国人学生の中にも障害学生が在籍していると思われる。まずは日本人学生等の障害について、それに対するケア等の取組状況について実態調査を行っているところだが、今後は、情報を持つ各大学等の力を借りて、留学生の障害に関する支援状況の調査も行いたい。

○各大学の担当者は現場で悩みながら障害学生の対応を行っている。そこで、ダイバーシティ対応のためのセミナーといった各大学の担当者が集まる機会があるとお互いに悩みや情報を共有でき、励みになるだろう。また、異文化対応のカウンセリングといったものも今後必要になるのではないか。

○教育効果が非常に高いインターンシップを産学連携でさらに行うべきだ。JASSOの次期中期目標に、ぜひ企業と大学の連携を促す取組を積極的に取り入れていただきたい。

●インターンシップ推進に向けての取組については、学生生活支援事業の重要な仕事として、2年前、文部科学省からの受託事業として行い、その後JASSOの事業として、インターンシップ専門人材セミナーの開催や企業と大学との連携を促す取組を行っている。次期中期目標でも、インターンシップは重要なJASSOの事業の一つになるだろう。

○JASSOでは年間約1,200万件の郵便物を発送する等、大量の事務を処理しているようだが、定型的で単純な事務についてRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入や検討をしているか。

●現在、試行的にRPA導入に向けた準備を始めたところである。

○JASSOが扱っている個人情報は非常にレアなものなので個人情報漏えいの件数は少なくするのではなく、事故をゼロにするよう対応を行ってほしい。

●JASSOの過失によらず郵便事故等による個人情報漏えいの典型的なパターンは、本人からJASSOに転居届が提出されていないために、後に入居した人が名前を確認せずに開封してしまうというものである。このような郵便事故に関しては、何度も日本郵政に申し入れを行っている。一方で、JASSOに起因する事故はあってはならず、理事長以下、職員全員が気を配っているところ。事故がないよう努力したい。

○日本におけるサイバーセキュリティ体制は欧米諸国と比較して人数も少なく、貧弱と言わざるを得ない状況であるが、JASSOはサイバーアタックに遭ったことがあるのか。

●JASSOは致命的なサイバー攻撃を受けたことはないが、標的型メールのような不審なメールは日々送られてきている。奨学金の情報は非常に重要かつレアなので、個人情報等の漏えいを食い止めるために、様々な対策を講じている。また、日々進化、巧妙化するサイバー攻撃への防御を図るため、講習を受ける等、最新の知見を取り入れている。

以上