令和2年度運営評議会(令和2年11月30日開催)

1.日時

令和2年11月30日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議

3.出席者

(委員)

泉 満 委員、岡 正朗 委員、小田中 直樹 委員、鬼頭 宏 委員、杉村 美紀 委員、高柳 元明 委員、田中 愛治 委員、萩原 聡 委員、南 砂 委員

(JASSO)

吉岡 知哉 理事長、永山 賀久 理事長代理、吉田 真 理事、大谷 圭介 理事、吉野 利雄 理事、新木 聡 政策企画部長、佐藤 俊明 財務部長、石川 和則 奨学事業戦略部長、小山 国男 留学生事業部長、井上 示恩 学生生活部長 ほか関係職員

(文部科学省)

西條 正明 学生・留学生課長、佐藤 邦明 高等教育国際戦略PTリーダー、櫻井 康仁 留学生交流室長、杉野 可愛 学生・留学生課視学官

4.議題

WITH/AFTERコロナにおける学生支援について

5.議事次第

6.配付資料

7.議事要旨

資料に基づきJASSO側から説明を行った後、意見交換が行われた。概要は次のとおりである。
(○=委員、●=JASSO、■=文部科学省)

○令和2年度上半期は、奨学金の延滞者は増加していないとのことだが、今後、新型コロナウイルス感染症の影響による就職内定率の悪化や、就職できたとしても不安定な収入しか得られない就業形態になることが考えられる。今年度の後半以降、楽観的な予想でいいか懸念されるが、JASSOではどのように考えているか。

●上半期にあまり延滞者数が増えなかった理由は、政府の特別定額給付金の支給や、夏のボーナス等に比較的減額がなかったことが考えられる。しかし、下半期は冬のボーナスの減額のような形で新型コロナウイルス感染症による経済への影響が大きくなれば、延滞者数が増加することが見込まれる。事務体制を整え、適切に対応したい。

○民間企業から募った寄付を活用できるのかは分からないが、卒業後に就職できない者等が増えてくる状況において、的確な判断をお願いしたい。

○本学でも独自に10万円の緊急支援金を創設して支給していたが、それに加えて、学生支援緊急給付金の支援により、令和2年度前期は経済的困窮を理由とする退学者数を極めて少なく抑えることができた(経済的困窮を理由とする者1名、他の理由と合わせても退学者は4名のみ)。学生の卒業後の負担を減らすため、貸与奨学金を全て給付奨学金に切り替えることを長期的な課題として検討いただきたい。本学では卒業生の寄附等を活用し、奨学金を全て給付型としている。

●令和2年度から高等教育の修学支援新制度が開始されたが、制度の定着度合を確認しながら一定期間後に制度見直しを行うこととされている。高等教育の修学支援新制度の開始前には、中間所得層への対応や支援額については政府において議論されたと理解している。JASSOとしては国の方針に従って事業を実施したい。

○貸与奨学金の総回収率について、令和元年度計画の目標を達成したが、どのような施策によるものか。

●回収は民間の債権回収会社にも委託しており、民間のノウハウを活かしながら回収に努めているところ。JASSOの予算は、返還金の回収をある程度見込んで成り立っているため、引き続き着実な回収が必要である。

●一定数の延滞者が存在し続ける一方、若い世代の回収率は上昇している。奨学金を貸与する段階で制度の仕組みを広報することが重要であり、大学や高等学校にご協力いただきながら、様々な形で学生に説明する啓発活動を今後も強めていく必要があると考えている。

○経済状況の影響により、学校、JASSOに対する奨学金の問合せが非常に増えていると思う。対応する教職員やコールセンターでの受電業務の負担を減らすため、的確な情報発信方法の構築が必要だと考えている。ホームページの内容充実やスマートフォンへの対応等について、今後どのような広報活動を行う予定なのか。

●奨学金事業に限らず、JASSOの情報発信は非常に重要だと認識している。ホームページは年間で約1億回のページビューがあるが、利便性に改善の余地があるとご意見をいただいており、令和3年半ば目途の刷新に向け、現在作業中である。利便性を向上させるため、スマートフォン対応や、情報を見つけやすい構造、利用者からの質問に適切に回答する体制の構築を併せて検討している。ホームページ以外の広報活動についても可能な限りの改善を図りたい。

○本学は学部生の44%が奨学金の貸与を受けている状況であるが、大学独自の支援と学生支援緊急給付金により経済的理由による退学者は出ていない。しかしながら、今後、学生が再び困窮するのではないかと心配している。こういった学生への今後の支援について、方針等を教えていただきたい。学生支援緊急給付金は有り難かったが、申請書類が複雑だったため手続きに時間を要した。今後はスムーズに手続きできることを希望している。

●JASSOはあくまでも執行機関のため、必要な手続き等事業内容自体の変更は難しいが、大学等の実情を文部科学省に伝えることは引き続き続けていきたい。

■今後の支援については具体的に申し上げられる状況ではないが、現在は、新型コロナウイルス感染症の影響や学生の修学状況等の大学等への調査結果等を踏まえ、どのような支援策を講じていくか検討している。

○回収率の上昇は、返還期限猶予制度等の救済制度の周知によって制度の利用が増え、分母となる要回収額が減少した影響もあると思う。引き続き回収率を維持できるか懸念している。また、救済制度を利用している者と利用していない者の公平性が懸念される。

○新型コロナウイルス感染症の影響により、現在は奨学金の貸与や給付金の支給等の緊急的な対応に取り組まれているが、貸与奨学金の返還については、長期的な対応が必要となることが考えられる。対応にあたっての今後の見通しを教えていただきたい。

●長期的な見通しについては、国とよく相談していく必要があると認識している。本年度より開始した給付奨学金は、消費税財源ということもあり、多くの学生へ支給可能という状況で、予算としてはまだ足りていると考えている。現在は政府の方針により、対象者は低所得世帯を中心としているが、中間所得層への支援をどのように拡大するかは国で検討中と聞いている。支援対象の拡大は財源面も含めて考えていく必要があるかと思う。第二種奨学金については、令和元年度貸与終了者の利率(利率固定方式)が0.07%(令和元年度3月時点)と低い状況であり、採用基準も緩やかなため、中間所得層へも経済的な支援は行えているという状況にはなっていると思う。奨学金については、手続きを分かりやすくすることで申込書類の不備等を減らし、迅速に支給・貸与することにも取り組む必要があると考える。今後はより一層、対象者が奨学金制度を利用できない事態を避けるための周知が重要である。保護者に対する周知や、福祉のような教育以外の分野にアプローチを広げることが必要になると考えている。

○経済状況が悪化している中で、奨学金による返還の負担のために都市部の大学から地元の大学へ志望を変える高校生や、大学進学そのものを躊躇する高校生や保護者がいるという状況があると考えている。今後、高校生が経済状況のために進学を断念することを防ぐため、可能な限り給付奨学金の割合を高くしていただきたいと考えている。

●高校生が返還への不安のために大学に進学しないという選択をすることのないように、JASSOが奨学金制度そのものを変えることは難しいが、返還が難しい場合のセーフティーネットや相談受付等について、広報も含めてしっかり取り組もうと考えているのでお力添えをいただきたい。

○本学は医学部、薬学部から成る医療系の大学なので他の大学よりも授業料が高いため、独自の奨学金を設けており、学生の約半数が利用している。その中に卒業後、定められた地域で一定期間勤務すれば返還免除となる貸与奨学金がある。まだ卒業生が出ていないが、成績要件等によって奨学生の資格を失う者もおり、制度の運用状況を注視している状況。本学の奨学金には給付型と貸与型があり、給付型の割合を増やしたいが難しい状況である。現在は新型コロナウイルス感染症の影響による家計急変で支援を申請している学生の数は少ないが、今後増えるのではないかと懸念している。

●学生への支援について、各大学の抱える課題は基本的には共通していると思う。JASSOは国の方針に基づいて奨学金事業を実施しているが、それぞれのステークホルダーが様々な形で発言していくことも重要だと考える。

○地方の保護者の立場から見ると、経済状況から大学進学を諦めている高校生がいる現状がある。様々な環境の者に支援に関する情報が行き渡るよう、広報も含めてJASSOの奨学金事業を充実させていただきたいと思っている。

○日本語教育センターの教育内容が卒業予定者から高い満足度を得られたことは、運営努力の結果だろう。また、大学の現場でも検討途中だが、対面とICTの活用を組み合わせて留学生支援業務を推進することが、業務効率化や非常事態への対応につながるのではないか。例えば、海外留学支援制度の面接審査のために海外在住の学生が日本に帰国しなければならなかったが、学生の安全性や利便性の向上のために、オンライン面接等のICTの活用を進めていただきたい。日本留学試験についても、渡日前入学許可の推進という観点からもCBT化を検討いただきたい。

●様々な事業のオンライン化は、着手できるものから進めている。例えば、これまで各国の現地で実施していた日本留学フェアは、オンラインでの実施を進めているところである。日本留学試験のCBT化については、国内実施分も含めて重要な課題であると認識しており、今後検討していきたい。

●海外留学支援制度について、面接のために帰国していただいた希望者にはご迷惑をおかけした。次回実施する選考については、海外からの応募も含めてオンライン面接を実施する予定で募集を行っている。

○日本は検疫が厳しく、留学生も含めて在留資格のある人でも一度帰国した場合の再入国は厳しく制限されている状況かと思う。外国人留学生の再入国状況を、文部科学省で把握されていたら教えていただきたい。

■国費外国人留学生については、現在約1,700人が入国している。私費外国人留学生については最新の人数が確認できていない状況である。

○国際交流館の入居率が低下しているとのことだが、どのくらい低下したのか。

●東京国際交流館の10月入居率については、昨年の91.9%に対し、今年は78.3%である。また、兵庫国際交流会館については、昨年の88.7%に対し、今年は66.7%である。

○留学生の受入れ状況について補足すると、文科省と大学とで、国費留学生から順次受入れを開始するということで準備している状況。他国が留学生の受入れや送り出しを規制しており、渡航して対面で講義を受けることが難しい外国人留学生、日本人留学生が多くいる。日本はこれまで留学生の受入れを推進してきたが、対面の講義だけでは新型コロナウイルス感染症の影響により来日できない留学生を切り捨てることになってしまう。また、日本人学生の中にも、都市部を避ける者がいる。大学ではオンライン講義の導入を進めているが、JASSOにおいても、様々な環境の学生が学ぶことのできるような施策に取り組んでいただきたいと考えている。日本全体で一体となって、世界や日本国内のニーズに対してどのような方法が一番適しているのか考えていく必要がある。

●個々の大学やJASSOだけで留学生支援全体について考えることは難しい場合もあるだろうが、可能な範囲で取り組んでいきたい。

○JASSOは、奨学生、留学生支援、学生生活支援という3事業によって、周辺化された立場に置かれた人々を支援しており、SDGsの「誰一人取り残さない」という目的に寄与するものである。JASSOはこれまでも「社会で活躍する障害学生支援プラットフォーム形成事業」等の支援を行っているが、今後は、SDGsへの貢献という視点をより前面に掲げながら、ナショナルセンターとして事業に取り組んでいただけると大学は心強く感じる。SDGsへ関与している民間企業との連携も視野に入れつつ、様々な立場の学生を支援していくことが重要だと考えている。

●JASSOの事業は学生支援のあらゆる面に関わっていると考えている。ナショナルセンターの役割として個人的に考えている取組の一例であるがJASSOのホームページを刷新する中で、各大学の実施する学生支援のグッドプラクティス等を連携させるようなことも考えられると思う。SDGsの「誰一人取り残さない」という目標に関連し、奨学金事業については、学校団体等で奨学金制度そのものについて議論されているところだと思うが、そういった議論も参考に大きな展望を考えながら、支援から取り残される学生がないように事業に取り組むことを心がけている。特に優秀な学生を育てる育英という奨学金制度の当初の目的に、学生生活全体を支援するという目的が加わったことは、良い面とともに奨学金制度の仕組みそのものが複雑化したという面もある。育英を主な目的としていた頃は大学を卒業した者の雇用や給与は安定しており、返還の問題等は大きくなかったが、生活支援にまで広げたことによって、返還の問題だけでなく学生支援の範囲に留まらない問題が生じてきた。また、度重なる制度改正が行われる一方、個々の奨学生には返還完了まで貸与時の制度が適用されるため、制度が何重にもなっている状態である。非常に複雑な制度なので、大学や高等学校の担当者が学生や生徒に説明することが難しく、JASSOへの問合せが増加してコールセンターで処理しきれなくなるリスクが常にある。そういった問合せに適切に対応できるよう取組んでいきたいと考えている。

●学生生活支援の中では、障害学生支援やLGBTに関する各大学等の取組について情報収集し、各大学等に共有している。従来もホームページや研修等で情報発信してきたが、今後この役割は更に大きくなるだろう。ナショナルセンターとして各大学等の教育機関を通じて様々な支援を行っていきたい。
また、SDGsに関する取組の例として、りそな銀行の「SDGs推進私募債」の寄附先にJASSOを含めていただいている。

●約20億円規模の「新型コロナウイルス感染症対策助成事業」は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により経済的に困窮した学生等を支援するための寄附金と、JASSOが従来から受け入れてきた「学生支援寄附金」のそれぞれ約10億円ずつを基に実施した。更に寄附を増やすため、ホームページのスマートフォン対応や振込の手続きをオンライン化する等の改善を行っている。

○新型コロナウイルス感染症対策分科会では、学生が講義の前後に友人とともに行動することや、寮で共同生活すること等が新型コロナウイルス感染症流行のリスクにつながる要因であると指摘されている。JASSOからも学生に対して、新型コロナウイルス感染症のリスクを意識しながら行動するよう、是非ホームページ等を通して呼びかけていただきたいと考えている。

○大学は、文部科学省による対面講義の割合を一定以上にするべきという方針への対応と、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止との板挟みになっている。学生は体調不良でも講義に出席しようとすることが考えられるため、一律に対面講義とすることはできない。地方から本学のある首都圏に出られない者、首都圏外に居住している者、留学先から帰国できない者等を合わせて、本学の学生の3分の1以上が対面での講義を受けることが難しい状況である。そのような学生のためにオンライン講義を実施していると対面講義が少ないとして大学名を公表され、対面講義の実施によってクラスターが発生しても大学名を公表されるというのは、求められる対応が矛盾しており、大学として苦慮している。

○新型コロナウイルス感染症が収まったとしても、従来の対面による講義をIoTを活用した教育も行われるという傾向は続くと考えられる。特に、渡航を伴う留学から、現地に行くことなくオンラインで海外大学の教育を受けるケースも増えると考えられる。このような変化を受けて、JASSOが学生のためにどのような支援を実施できるのか考えていただきたい。

●今後、オンライン講義等の拡大によって、例えば海外在住の学生が日本国内の大学の教育を受ける場合等に、学生の概念や支援対象についての考え方が変化する可能性があると思う。当面は新型コロナウイルス感染症の緊急対応で手一杯という状態だが、変化に対して柔軟に対応していきたいと考えている。

以上