令和6年度運営評議会(令和6年12月11日開催)

1.日時

令和6年12月11日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

日本学生支援機構東銀座事務所8階 第1会議室

3.出席者

(委員)

内田 隆志 委員、小原 芳明 委員、清水 裕 委員、白澤 麻弓 委員、杉村 美紀 委員、田中 愛治 委員、田名部 智之 委員、仁科 弘重 委員、古沢 由紀子 委員、村上 明美 委員

(JASSO)

吉岡 知哉 理事長、蝦名 喜之 理事長代理、石川 和則 理事、吉野 利雄 理事、谷合 俊一 理事、竹内 俊郎 監事
(以下、陪席)西川 由香 政策企画部長、内藤 秀人 財務部長、頼本 維樹 奨学事業戦略部審議役、吉村 務 奨学事業戦略部長、田村 真一 グローバル人材育成本部審議役、丸山 敬司 留学生事業部長、山本 有香 学生生活部長

(文部科学省(オブザーバー))

佐藤 有正 高等教育局学生支援課高等教育修学支援室長、保坂 孝 同参事官(国際担当)付留学生交流室長、松本 向貴 同学生支援課 専門官

4.議題

JASSOの第5期中期目標期間の取組について

5.議事次第

6.配付資料

7.議事概要

資料に基づきJASSO側から説明を行った後、意見交換が行われた。概要は次のとおりである。
(○=委員、●=JASSO、■=文部科学省)

○授業料後払い制度は先進的だと思うが、従来から実施している貸与型の奨学金はいつまでになくせると考えているのか。OECD諸国では国や大学からの奨学金は給付型が多い。世代間の不公平感が生じるとは思うが、長い目で見ると貸与型の奨学金をなくすことが必要だと思う。もし残すなら授業料後払い制度が有効ではないか。

●JASSOとしては、貸与奨学金は今後も残っていくものと認識している。返還が困難な方に対しては、返還期限猶予制度や減額返還制度などセーフティネットを引き続き用意して対応していきたい。いわゆる授業料後払い制度については、令和6年度は大学院に対象を限定した先行実施であり、令和7年度から制度が本格化するため、今後については実施状況を見ながら文部科学省で検討されることになる。

■授業料後払い制度は、まず大学院修士段階で導入している。その状況を見ながら学部段階での導入について検討しつつ、貸与型奨学金の在り方を含めて全体的に検討していくことになる。また、減額返還制度等の話があったが、自治体や企業も返還支援を行っているため、関係省庁と協力しながら支援が広がっていくよう取り組んでいきたい。

○給付奨学金の創設以来、奨学金制度の認知度が高まっていると感じている。文部科学省の調査でも、有意に経済的困窮層の進学率が高まっているという結果で、給付型奨学金の効果が表れている。一方で、中間層については、各国立大学で授業料を減免していた頃に比べると、減免の割合や対象が十分でないと思う。JASSOだけでは限界があると思うが、色々な形で支援を広げていくことが必要だと思っている。

●令和6年度から、多子世帯及び私立の理工農系の学生を支援する形で一部の中間層に支援を拡大しており、令和7年度からは、多子世帯について所得制限なしでの授業料無償化を予定している。JASSOの立場で決められるものではないが、国策として段階を追って支援が拡充されている。

○4年前に修学支援新制度が始まり、非課税世帯の進学率が上昇したのは素晴らしいが、中間層への支援の拡充については、周知が不十分なのではないか。制度が複雑になったこともあると思うが、高校生の保護者の中には制度自体を十分にご理解いただいていない方もいることが気がかりである。高校の先生もなかなか全てを説明できないので、JASSOで周知の方法を考えていただけるとありがたい。

●高校生はこれから奨学金を受給する一番大事な層になるので、高校生への周知は最優先と考えている。JASSOの取組としては、スカラシップ・アドバイザーの派遣事業がある。派遣の件数はコロナ禍をきっかけに減ったまま増えていない状態なので、活動を立て直したいと考えている。具体的には、民間の教育事業者が高校等で進路ガイダンスを行っているため、そこでJASSOの奨学金の説明をしたり、質問を受け付けたりする時間を設けてもらう等により、事業を活性化していきたい。

○商工会議所などで中小企業の方々に話を聞くと、代理返還制度に関してはあまり知らないという人が多いと感じる。中小企業の人材採用が厳しい中で、素晴らしい制度であるにも関わらず、周知が行き届いていないというのはもったいないので、周知の方法を考えていただけないか。

●代理返還制度の利用企業は増えており、足元の実績は約2,500社である。そのうち9割は中小企業だが、もともとの企業数からすると1%にも満たないので、周知の余地はまだあると思っている。周知については非常に重要なポイントだと認識しており、マスコミなどへ協力を求めるなど、色々な方策を考えていきたい。

○今の制度の基準、例えば給付奨学金の評定平均値が5段階評価の3.5以上という学力基準や、収入基準を更に広げていただき、子どもたちがボランティア、スポーツといった多岐にわたる活動にも取り組めるようサポートしていただきたい。

○元奨学生とのつながりの維持・構築のために実施する意識調査については、今後の制度設計の参考になるような、意義ある内容にしていただきたい。
事例調査の説明における「成功者」という言葉については、何をもって「成功」とするかという定義の問題もあるので、「奨学金を通じた支援を受けて社会へ貢献している人」、「社会で活躍している人」といった用語を使った方が良いと思う。
また、元奨学生同士のネットワークの対象者は膨大な人数だと思うので、ネットワークをどのように作っていくかのイメージが湧きにくい。どの様な相互のつながりを作っていく考えなのか。

●元奨学生の調査の用語については、適切に対応したい。
ネットワークづくりについて、従来の取組の一つである育英友の会は、対面でのイベントを行うなどアットホーム的な活動を展開していたが、時代を考えると、SNSでつながるなどといった形もあると考えている。

○「成功者」という言葉に関しては気になった。奨学金を利用して活躍している人を取り上げると、そうでない人も出てくるので、バランスを考えないと一部の誤解が助長されてしまう。活躍している人だけではなく、全体をどう捉えるかという視点も忘れないでいただきたい。

●「成功者」についてはご指摘のとおり。奨学金の重要性を正しく社会にアピールする上では、エビデンスとエピソードの両面が必要だと思っており、全体の視点は調査によるエビデンスで裏打ちし、個別の事例をエピソードベースで見ていくことで理解を得られるのではないかと考えている。

○元奨学生とのつながりについては、かつて奨学金を受けた先輩から、どのように奨学金を活用したか、逆にどう利用できたらより学びやすかったかなどを聞き出すことによって、奨学金制度をより良いものにしていただければと思っている。人脈・ネットワークを作る上でも非常に重要だと思うので、ぜひ取り組んでいただきたいと思う反面、個人情報や悪意のある第三者などには留意しながら取り組んでほしい。

●これから大学等に進学しようという高校生に、正確に奨学金の情報を伝えていくことが大事だと考えている。奨学金制度は年々拡充されている反面、メニューが増えすぎて分かりにくくなってしまっている。JASSOでは、奨学金に詳しいファイナンシャルプランナーの方を高校に派遣し、今後の資金計画についてのアドバイスをするというスカラシップ・アドバイザー派遣事業を実施しているが、コロナ禍をきっかけに派遣件数が減少しており、回復していない状態である。そのため、スカラシップ・アドバイザーの更なる活用を含め、高校の先生とJASSOの連携を強くして、高校生に対する情報提供をしっかりしていきたい。

○元奨学生同士のつながりが必要と考えるのであれば、奨学金を利用する段階からアピールしないと、つながりは出来ていかないのではないか。つながりの具体的なイメージができないので、どんな良いことがあるか想像しづらいが、つながっていく最初のきっかけがあると良いと思った。

●つながりには、縦のつながりである「JASSOと元奨学生のつながり」と、横のつながりである「元奨学生同士のつながり」がある。縦のつながりはこれからも維持していく必要があると思うが、横のつながりは自発的なものかもしれず、何らかの組織ができるイメージを持っている。組織ができてきたら、奨学金利用段階から周知していくように検討したい。

○元奨学生の立場としては、奨学生同士でつながりを持つというのがどういうことなのかイメージしづらいが、例えば、奨学金を維持、発展させるために元奨学生の皆さんの力が必要だとか、後輩たちを応援するとか、何らかの形でこれからの学生、奨学金制度を応援することができると思えるような、役割を与えていただいているような呼びかけがあれば、何かしようと思えるのではないか。呼びかけ方の工夫があると良い。

○育英奨学金は学びのバトンを渡すという意義があったと思う。学びを通して育てるとともに、学んだら次の世代を育てていくという意識を持ってもらうためにも、奨学金受給者にスタート時点で先輩からのエールを受ける機会を設けると良いと思う。

●現状で言うと、大学等に入学すると採用時説明会が必ずある。例えばそういうところで、奨学生としてどうやって過ごしていくかについて、先輩から後輩にエールを送ってもらうなどはあり得るのではないか。色々な形でのつながりは確かに大事だと思った。

○奨学金関係の論点である元奨学生とのつながりの維持・構築に関しては、同じことが外国人留学生にも当てはまるのではないかと考えている。日本がこれまで行ってきた留学生支援事業のプレゼンスを今改めて確認する意味でも、調査をして今後の予算編成の時に効果を見せていくのは大事ではないかと思う。一例を挙げると、東南アジア主要国では、かつて国費留学生として日本に留学していた者が、現在、各国の省の中心的な存在として活躍しており、日本へ留学生を送り込む時のキーパーソンになってきている。しかし、この状況が10年先まで続くかは分からない。そういった意味でも、今調査をして、元奨学生のフォローアップを図ってみるというのはとても意味があると思った。

●海外で実施している日本留学フェアや日本留学試験においては、東南アジアを中心に多くの地域で、元留学生会の協力を得て、連携しながら実施している。元留学生会については、新規卒業者の組織化が課題と聞いているので協力していきたいと考えており、JASSOでは、現在留学中の外国人留学生の国ごとの留学生会への支援を行っている。在日中の留学生活動が、帰国後の組織化につながることを期待しているところである。
学習奨励費については現在もフォローアップ調査を行っているところであり、今後の取組についても考えていきたい。日本人留学生については、YouTube動画で現在留学中の方、留学経験者の方に留学経験談を語っていただくなど、元留学生との連携はある程度行っているが、奨学金事業での取組も参考にしながら、検討していきたいと考えている。

○学生たちは、留学を考える際に就職への影響を非常に気にしており、留学経験が企業での採用においてあまり有利に働かないのではという考えがある。私自身の感覚としても、長期の学位授与になってくると、企業側にあまり評価いただけていないことがあると思っている。そういう意味では、企業との連携や企業へのヒアリングを踏まえながら方策を考えていくべきと考えている。

●現在文部科学省で行っているGlobal×Innovation人材育成フォーラムなどでは企業の方からも話を聞いており、ご指摘のような提言がなされている。また、「トビタテ!留学JAPAN」では、企業からの寄附を奨学金の原資としているが、運営についても企業に多くの協力をいただいている。そういった理解をいただいている企業を中心としながら、留学した学生が就職しやすくなるような取組を行っていきたい。

○日本への留学を考えている学生からは、インターンシップの状況が必ず質問される。例えば、シンガポールで留学生の獲得交渉をしようとする時、普通のプログラムでは前向きな姿勢を示されない。ところが、日本でインターンシップを組んでくれるなら、ぜひ日本への留学を考えたいという話になる。日本の企業が今後世界の人材を採っていくためにも、G&Iフォーラムの資料で紹介されているダイキン工業のケースのように、インターンシップの積極的な活用があると良い。

●海外で日本留学フェアを行った際も、日本に留学するに当たっては、大学でどの様な勉強をするかだけでなく、その大学で卒業した留学生の就職はどうなっているか質問される時代になっている。このように就職のことは日本に留学する前から大きな関心事項となっているため、日本での就職について更に案内ができるようにしていきたい。インターンシップの活用についても、外国人留学生、日本人留学生のいずれも関心を持っていて、説明会などを行うと質問が多く出る事項であるので、積極的に情報提供を行っていきたい。

○資料にある海外留学支援制度の出身高校所在地別採用者は、なぜ東京、大阪、兵庫に偏っているのか、原因を調査した方が良いのではないか。大学進学率に比例しているのか、大学の数、高校の数など、色々な要因があってばらつきがあると思う。機運を高めるかどうかという前に、なぜ偏りがあるかもう少し調べてから、その上で各県の教育委員会などに広報したほうが良いのではないか。

●海外の学部に進学を希望する高校3年生が応募したものだが、実態として東京都が多い。これは、私立高校がたくさんあり、海外の大学への進学指導を学校として行うなど、学校をあげて取り組んでいるためである。また、先輩が合格して留学しているために先輩からの情報も豊富で、指導教員もそうした指導の経験を積んでいることも影響している。この状況を受けて、文部科学省とも相談し、昨年度から都道府県推薦枠を設け、都道府県から推薦があったものについても採用する試みを始めている。できるだけ一定地域への偏りをなくすように取り組んでいきたいと考えている。

○留学生の偏りについて、経済的な面だけでなく、地方では情報が不足している状況がある。地方の学生にも留学のハードルが高くないことをアドバイザーの派遣などを通じて説明いただければ、留学する学生が増えるのではないか。

○大学入試の早期化により高校生の留学がしにくくなっている状況があると思う。今は、高校2年生からの留学が学校で止められるケースもあると聞く。大学入試を考えると、高校入学前から準備して、高校1年生から留学するのが一番良いということになり、ためらってしまったり、あるいは推薦の条件を満たさなかったりするケースもあるということである。日本では、海外からの留学生の受入れが以前から少ないが、高校課程で受入れを増やすことで留学への機運が広がった例は地方でもあるので、受入れの支援も更に充実させていただけると良いと思う。

●JASSOは大学生の留学を業務の範囲としているが、「トビタテ!留学JAPAN」の第2ステージでは、早い段階から留学に馴染んでいただきたいという思いから、大学生コースを縮小して、高校生コースを拡大した経緯がある。第2ステージにおいては、新高校1年生を対象にした枠も設けて、中学の段階で準備をして高校1年生の枠で採用することも行っている。
高校段階における交換留学での外国人留学生の受入れについては、JASSOの事業としては実施していない。

■留学生交流室においても大学生等の留学などを業務の中心としており、高校生は別の局の所管となるが、日本人の海外留学促進という全体の流れの中で、「トビタテ!留学JAPAN」を含め、より早期からの日本人の海外留学を支援している。外国人留学生の受入れに関しては、アジアの架け橋となるような受入れ事業を実施しており、日本人の留学と併せて、できる限り取り組んでいくことになると考えている。大規模な実施が難しい状況と承知しているが、一定程度対応させていただいている。

○自校では米国短期滞在プログラムを設け、高校生が現地留学中の日本人大学生とも交流した。こうした現地での体験は、その後のモチベーションを上げたりハードルを下げたり、イメージを持たせる上でも大切であるため、短期のプレ留学のような取組も導入していただけるとありがたい。海外での生活は、経済面、安全面、学びに対してのイメージや、語学面など様々なハードルがあるが、実際に行くことによって解消する部分はあると思う。

●プレ留学ついては貴重なご提案として受け止めたい。高校生の留学でJASSOが行っているのは「トビタテ!留学JAPAN」の取組のみになるが、高校生については14日以上の留学を対象としている。こういったものを利用いただければと思っている。

○為替の影響もあり、海外での修学旅行は厳しいという状況が全国的に広がっているかと思うが、一方で、海外大学ではお金をいろいろなところから出して、日本人を受け入れる動きもある。こうしたものも含めて、総合的に情報を案内できるシステムをより拡充していただければと思う。

○保健・医療系の大学では、ほぼ100%資格取得を目的とした学生が入学してくる。4年間のカリキュラムはそれをどうクリアできるかという形で組み込まれている。海外に目を向けて様々な活動をしたいとか、自分自身もいずれは海外で活動してみたいという学生も中にはいるが、カリキュラムをリカバリーするのに時間と労力がかかるので、留学に対してネガティブなイメージを持っている教員もいる。大学の特性ごとの、留学後の活躍の先行事例を教員側にアピールすることで、教員からも留学を支えても良いと思われるようになるのではないか。

●留学の経験談や事例紹介はある程度領域ごとに分けて案内しているが、教員に案内するという視点は現時点では欠けていると思う。どう工夫していったら良いか、留学に関わっている教員の方と相談しながら方策を考えていきたい。

○日本の学生の気質がここ2、30年で相当変わってきていて、内向きな学生が増えている。また、先行きの見えない世の中で、海外留学への心理的ハードルが上がっており、企業としても、留学経験の評価は高くならない。日本の学生、日本人全体の気質が変わってしまったことに対して、JASSOとして、これからどうしていけば良いのか、2、30年先にどうなるかといった中長期の戦略について議論をしたことはあるか。本質的なところで、どう理解してどの様な戦略を立てるかを考えていくべきだと思っている。

●高度成長の勢いがずっと残っていたが、バブル崩壊以降、先が見えない状態が続いていて、これをどうすれば良いのかというのはなかなか難しいとは思う。一方で、コロナ禍が一段落してからは、短期でも一度は留学したいだとか、できれば長く行きたいという学生がいると思われ、学生が外に出たいという機運が少しは高まっている。それを大学でエンカレッジすることが大事だと思う。企業も、トップは留学が大事だとおっしゃるが、採用の担当者レベルの意識は依然としてあまり変わらない。なお、円安をはじめとして経済的な問題については、JASSOである程度対応できるところかと思う。教育現場で留学プログラムを当然にして、いったん外に出てみることを続けていけば、少しずつ変わっていくのではないか。海外留学した学生は、短期であったとしても大いに変わって帰ってくるし、海外留学でなく、国内の内地留学やボランティアであっても、大学のキャンパス外に出る経験は学生に非常に大きな影響を与えるので、学生の視野を広げるような仕組みを作っていくと良いと考えている。

○私の大学ではジェンダー・セクシュアリティセンターを設けて、LGBTQの学生で、カミングアウトしたい学生はカミングアウトできるように、また、カミングアウトしたくない学生は守っていけるようにしている。例えば、学生の登録に関して、男女以外で「その他」の枠を設け、更に空欄とすることも認めるようにしている。また、センターでセミナーを実施しながら、どういう問題があるのかについて調べている。就職に関しても、まだまだ企業側の理解が十分でないと思う。大学から働きかけることで、ダイバーシティを受け入れてもらうことが大事だと思っている。

○コロナ禍の後、小学校から高校にかけて、不登校の生徒が大きく増えている。大学でも同じ傾向があるのではないか。学業に対しての様々な支障が出た場合に、直接の電話相談以外でも、悩みを持つ学生に対してケアをするシステムができたら良いのではないか。

●大学においての不登校の実態は把握できていないが、コロナ禍において、カウンセリングを利用したことのある学生が増加しており、悩みを抱えている学生が増えてきていることが理由かと思う。

○障害者差別解消法の理解・啓発セミナーは毎年、多くの大学関係者が参加しており、対象に専門学校(専修学校専門課程)も加わるなど、全国隅々まで行き届いているセミナーになっていると思う。調査等についても、悉皆の全国調査は障害学生支援の実態を把握する上で貴重な情報になっている。合理的配慮の義務化に関しては、例えば私立大学は形態が多様だが、通信制教育課程、短期、単科等の小規模大学では、一般的に求められるような支援体制が作りづらく、体制の構築に苦労している現状があると思う。実態を把握するとともに、そのような対象向けのセミナーを実施していけると、より幅広い範囲にJASSOが普段行っている理解・啓発という試みが届くのではないか。

●JASSOの取組としては、障害のある学生のキャリア教育・就職支援の講演、セッションや事例紹介を行っている。卒業後を見据えた障害学生支援で就職支援企画の実践報告を行ったり、これからの修学支援の体制と支援制度についてのセミナー等も開催したりしている。また、「障害者差別解消法に関する理解・啓発セミナー」では、専門学校(専修学校専門課程)が参加しやすくなるよう配慮を実施している。

○精神障害や発達障害を持つ方について、学内では専門のカウンセラーを雇いながら対応しているが、就職に関しては十分な経験が蓄積されていない。しかし、例えば発達障害の方も、コンピュータープログラミングなどのスキルを持っていると、比較的仕事を続けやすかったり、就職しやすかったりすると聞いているので、企業と大学との協調のもと、就職支援の取組を進めていただければと思っている。

○障害のある学生のキャリア支援について、今どういった点に取り組みたいと考えているのか教えていただきたい。例えば、就職ガイダンスにおいては、講義形式の研修に加えて、ワークショップ等の形式で事例検討を行ったり、ロールプレイで精神障害、発達障害の学生などを対象とした面接技術など、具体的な関わり方の技術を身につけられる研修があると良いのではないか。障害学生支援全般と同じように、キャリア支援についても事例ごとの具体的な助言を得られるような体制を作っていくのも重要ではないかと思う。本学の経験では、障害のある学生の就労支援でインターンシップが重要な役割を果たしていると感じている。インターンシップの充実に目を向けて、何か取組ができると良いのではないか。

●キャリア教育・就職支援ガイダンスについては、今後、内容を検討していきたいと考えている。インターンシップの充実について、令和5年度からインターンシップの類型が変わり、就業体験を必須とするタイプ3からがインターンシップと名乗れる実施形態となっている。そのような状況の中で障害のある学生へのインターンシップの充実について具体的に取り組めているかというとまだ難しいところであり、何ができるか検討していきたい。

以上