政策企画委員会(第1回)議事録

1.日時

平成16年11月2日(火曜日) 14時~16時

2.場所

アルカディア市ヶ谷 伊吹の間

3.出席者

(委員)小林陽太郎委員、柴崎信三委員、鈴木正人委員、曽野綾子委員、長田豊臣委員、中津井泉委員、福田誠委員、松尾稔委員
(文部科学省)栗山学生支援課長
(機構)北原理事長、沖吉理事、板橋理事、藤田理事、大浦理事、安江監事、櫻井参与、菊地参与、芝田政策・広報室長ほか関係職員

4.議題

5.議事

理事長からの挨拶の後、資料に基づき、沖吉理事、芝田室長から説明があり、引き続き意見交換が行われた。
主な意見は次のとおり。

[委員]
 今、フリーター、ニートという注目を集めている問題があるが、これについて機構として具体的に取り組む計画はあるのか。

[機構]
 学生生活部において文部科学省等の関係機関と協力して取組みを行っている。例えば、「全国就職指導ガイダンス」を年2回開催しており、日本経済団体連合会、大学、企業による講演や情報交換の場となっている。就職問題は切り口が多様なので、その対応について今後とも検討していくこととしている。

[機構]
 ニート問題などについてもより踏み込んだ研究をしながら、それを活かすような事業を行っていくこととしたい。

[委員]
 外国人留学生と日本人学生に対する奨学の内容が統一されていないのではないか。日本人学生に対する貸与と外国人留学生に対する給付が逆差別となっていないか。留学生数の多い大学では、このことを疑問視する学生や教官は少なくない。10万人受入れという目標があったことは分かるが、根本的なところから考えるべきではないか。

[機構]
 ご指摘のようなアンバランスは認識している。機構の設立趣旨は学生支援を一元的、総合的に行うことなので、あまり日本人、外国人と区別しないことが大切とは考えている。

[委員]
 今出された問題は、差があることにもともと理由があったものではあるが、複数の法人が統合された以上、機構は具体的なスケジュールと基本的な方針を決めて、差のないようにしていくべきである。また、留学生の質の向上にも関係するが、このような差があって、かつこのように多くの留学生が日本にいることについて、奨学金政策の観点からもきちんと考えていくことが重要である。

[委員]
 留学生の優遇には、おそらくODA援助的発想があったと思うが、結果として、圧倒的に中国からの留学生が多い。中国では貧富の差が大きくなっていて、お金持ちも多いことから、今後は留学生受入れにおける各種アンバランスというものについても検証すべきである。

[委員]
 質のよい留学生確保のための検討はされているが、例えばアフリカの学生が日本に来て、何を勉強して、卒業後はどうなるのかという視点が欠けているのではないか。留学の動機には個人的なものもあるが、留学後の外国人がどうなるのかという外側から見た議論はされているのか。

[機構]
 現状では不十分な面があるが、留学生のフォローアップ事業の一環として、帰国した外国人留学生の活躍を把握するためのデータベース化を進めている。機構の海外事務所の機能を充実して元留学生の方たちと連携を強めることも大事と考えている。

[委員]
 奨学金の給付制については、学生に対する強いインセンティブが期待できるものであるので、何か将来的に機構として工夫することはできないか。回収率の問題は、返すべき人たちの意識改革も必要であり、機構がリーダーシップをとっていくことが大切である。免除については、すでにやっておられるが、明確な厳しい基準によるきちんとした評価でお願いしたい。留学生宿舎については、できるだけ日本人学生と混住にすることが必要である。すでに地方の大学において、地域とのネットワークを作って支援活動を進めている例がたくさんある。機構は、まずそういうところから学ぶ姿勢があってもいいのではないか。災害が発生した際には、既にやっているかも知れないが被災者への迅速な対応をしていただけるとありがたい。

[機構]
 回収率については、難しい面もあるが、努力していきたい。留学生宿舎については、機構は国際交流会館と位置付けているが、実態は留学生の入居が中心となっており、ご指摘の日本人学生への開放の可能性も考えていきたい。災害に関しては、緊急・応急対応の奨学金の募集など機構としてできる限りの対応をしているところである。

[委員]
 財投機関債については、将来的に財政投融資資金の縮減の可能性もある。そうした中で事業規模の拡大に伴って機関債の発行が今後も増加することとなるのか。もしそうだとすると、返還が最長20年、調達資金の返還が5年という期間のミスマッチによる金利リスク、あるいは調達額が平準化されていないことによるリスクが生じると思うが、独立行政法人としての経営責任の観点からどのような対応を考えているのか。

[機構]
 ご指摘のように、将来的に債券依存率が高まる可能性もある。5年ものの財投機関債の期間を長くする余地があるのかないのか研究が必要と考えている。本機構に限ったことではないが、市場では、財投機関債の発行主体に暗黙の政府保証があるとみなしている状況もあり、この点についても政府全体での検討が必要であると考えている。

[機構]
 財投機関債の発行額については独立行政法人としての経営責任があることから、発行額について機構として十分検討する必要がある。

[委員]
 期間を長くするというのも一つの方法ではあるが、金利も高くなるし、高度な技術が求められる。まず機構が実施する事業の規模が認められて、それから必要な資金調達のために機構が尽力するという順番でいいのかどうか、これを調整する仕組みは必要ないのか。

[機構]
 機関債の発行のためには手数料が必要であり、運営費交付金から手当てしているが、発行額が増えるほど機構の事業費が圧迫されるという問題もある。

[委員]
 返還率については、過年度延滞分の悪化、すなわちモラルハザードの問題が大きいと思う。奨学金の適正規模についても考える必要がある。第二種については、家計基準がかなり高く、かなりの家庭が該当してしまう。この中で本当に奨学金というもので支援をしていくべき方々がはたしてどれくらいいるのか。これをしっかりと把握して、第二種奨学金について検討する必要があるのではないか。

[機構]
 学生生活調査のデータからも返済を嫌って奨学金を申請しない層があることが読み取れる。真に奨学金を必要とする人たちのケアをどうするか、先生方からご意見をいただきながら検討していきたい。

[機構]
 私立大学で、大学独自の奨学金を出す例があるが、基準が厳しいと同時に評価も得ている。機構の奨学金についても、そういう評価が得られるようにするべきという考え方もある。

[委員]
 私立大学の学生の受給比率が相対的に低いように感じるが、どのように考えているのか。

[機構]
 国立より私立の方が家庭の所得が高いため、所得格差による採用率の差が説明できると考えている。機会均等の観点からは、予約採用を増やすことで国公私立間の公平性を高める上で効果があり、実際にも予約採用が増えてきている。所得の関係でやむを得ない部分もあるが、できるだけ公平性の担保を図っていきたい。

[機構]
 奨学金の配分は、学生定員などを基準としており、国立と私立に差がでない仕組みとなっている。

[機構]
 分析したデータはないが、過去において第一種を中心としていた長い期間の実績部分というものが若干あるため、委員ご指摘のような結果になっている可能性もある。

[委員]
 アルバイトをしていることと奨学金の受給資格は関係ないと思うが、勉強を犠牲にしてアルバイトをして、さらに奨学金を受けているような実態がどのくらいあるかといった調査はあるのか。

[機構]
 調べてみることとする。

[委員]
 学種別採用率は、他の学種と比べて専修学校が低くなっているが、過去の実績が関係しているのか。

[機構]
 予算枠があって、これを各学校に割り振る際には、それぞれウェイトは異なるが、1)定員、2)過去3ヶ年の実績、3))滞納率、4)リレー口座加入率の4要素があるので、これらが関係しているものと考えられる。

[委員]
 奨学金について議論する際には、授業料と私学助成の3つを総合して考える必要があると思うが、そういうことはどこで議論されていくのか。機構としての考えをまとめることはしているのか。

[機構]
 国の施策全体に関わるものは、文部科学省を中心に議論されることとなる。しかし、独立行政法人としての経営主体の観点から、事業規模や原資の調達コストについて機構が議論することは必要であり、この委員会でご議論いただいて、意見をとりまとめていただき、機構がそれを発信していくこともあり得ると考えている。

[委員]
 高等教育全体としてもう少し財政投入が必要だという点については、意見の一致を見るが、それを個人補助に充てるのか、私学助成とか国立大学法人の運営費交付金のような機関補助に重点を置くのかという点については、意見が分かれているように思われる。多くの意見をいただいて合意形成を図っていくべきものと考える。

[機構]
 個人補助と機関補助のバランスをどのように考えるか、たいへん重要な課題であり、機構としてもしっかりと議論していかなければならないと考えている。この委員会で先生方から多くのご意見、ご助言をいただくことを期待している。


次回の日程については、事務局からおって連絡することとなった。

以上