政策企画委員会(第9回) 議事録

1.日時

平成19年12月4日(火曜日) 13時~14時30分

2.場所

アルカディア市ヶ谷 4階 鳳凰の間

3.出席者

(委員)荻野アンナ委員、小林陽太郎委員、中津井泉委員、福田誠委員、松尾稔委員、牟田泰三委員、矢野眞和委員
(機構)北原理事長、矢野理事、長谷川理事、簑島理事、大貫理事、佐藤監事、赤木参与、清水参与、桒原政策企画部長、和氣学生生活部長、柴政策調査研究課長ほか関係職員

4.議題

(1)日本学生支援機構が行う学生生活支援事業に関する意見について

5.議事

資料に基づき機構側から説明を行った後、意見交換が行われた。主な意見は次のとおり。

(1)日本学生支援機構が行う学生生活支援事業に関する意見について

(日本学生支援機構が行う学生生活支援事業に関する意見(案)を柴政策調査研究課長が読上げ)

(委員)障害学生への修学支援については、教育基本法に教育の機会均等を講ずべきことを掲げているが、現実としては、まだまだ十分ではない。これは重要な問題である。具体的な取組は、大学側の判断に委ねられている部分が多く、そういった意味ではネットワークの構築や情報提供は大事である。また、障害学生の情報、データ及び活動においては、NPO団体に支えられている部分が多く、政府としての取組が遅れているのが現状であると実感している。
奨学金などの経済的支援についても遅れていて、大学の現場では、障害学生の修学支援が一部の熱心な教師やボランティアに頼っているのが現状である。障害学生の受入れに対しては、日本私立学校振興・共済事業団が補助金の助成を行っているが、決して十分なものとは言えない。障害学生を支援するためには、経済的な支援が重要で、それがないと障害学生を支援するボランティア学生の資金が足らない。
 奨学金については、障害学生のための特別奨学金制度というものを導入する必要があると思う。現在の奨学金は健常者と障害者が同じ条件になっているので、障害学生は経済的にも苦労している場合が多く、学生生活を送る上で厳しい状況に置かれている。機構だけでできるものではないが、教育の機会を均等化する上では必要なものであると考えている。
 障害学生の修学支援は、政府や様々な機関を含めて、総合的に取り組まなければならない大きな問題であると思うので、機構としては他の省庁やNPOが行っていることも含めて、全体を見渡した上で支援基盤の充実に向けた積極的な要望を文部科学省に行う必要があると感じている。ネットワークの促進や調査研究といった間接的な支援だけでなく、直接的な支援についても積極的に取り組んでいただきたい。障害学生に対する支援体制が、国としても極めて弱いという状況を踏まえた上で、機構が支援体制をオーガナイズするようなことをしていただきたい。

(機構)障害学生に対する奨学金の現状としては、特別奨学金というような特別の枠を設けた奨学金の仕組みはない。奨学金は学生の家計、健康、人物、学力の4つの要素によって、学校からの推薦に基づいて機構で奨学生を採用している。その際に、家計基準の中で、学生本人が障害者である、又は家族の中に障害者がいるといった場合には、家計の収入源を算定するに当たって、控除という形で、障害者を持っていない家計に比較して優遇している。また、学校においても、本人の状況を十分に考慮した上で、推薦順位を高めて推薦をするといった取扱いをしているところもあると承知している。
 このように、障害学生に対しての特段の優遇とまでは言えないが、総合的な基準の運用の中で、その要素を考慮した形での推薦及び採用という手順をとっている。現時点では特別奨学金というような障害学生に対して優遇するような奨学金制度という枠組みがないのはご指摘のとおりであり、ひとつの課題として受け止めたいと思う。

(機構)文言として入れるということでしょうか。

(委員)障害学生の修学支援は、非常に重要なものであると理解している。教育の機会均等ということについては、これまでの支援だけではあまりにも貧困であると理解する。障害学生の修学支援の重要性とこれまでの支援の遅れを考えた場合、ネットワークの促進や調査研究よりも、もう少し重要なことがあるのではないかと思う。今後は現在の機構の事業を超えた議論を、政策企画委員会等で行っていかなければならないのではないかと思う。文部科学省、日本私立学校振興・共済事業団等で障害学生への修学支援の問題を議論する際に、機構は全体的な視点に立ってリードしていただきたい。

(機構)この意見(案)は機構が行う事業についてということで、機構の事業の枠を超えない範囲で作成していただいている。これまでに取りまとめた学資金貸与事業、留学生支援事業に続いて、これが3つ目の学生生活支援事業についての意見の取りまとめである。
 障害学生の修学支援については、最近になって取り上げられることが多くなり、大学においても整備されてきてはいるが、まだまだ十分に対応できてないのが現実である。

(委員)3つのことについて意見を述べさせていただく。1つ目は意見(案)の中でも使われている学生の多様化・複雑化についてである。これは大学の高校化とも言われており、それに対して大学では組織を分離融合するなど多様な対応が行われている。しかし、全大学を視野に入れる必要があることは理解するが、意見(案)は網羅的、平均的なものとなっているので、次の段階では、より具体的な方策とか、示唆が必要である。
 2つ目は、ユニバーサルアクセスという言葉についてである。意見(案)では、ユニバーサルアクセスという言葉が健常者と障害者の物理的な問題に使われているが、ユニバーサルとはもっと違った問題である。ユニバーサルアクセスとユニバーサルとの整合を整理しておかなければ、相反することを記述していることになりかねない。
 3つ目は、「学生中心の大学等づくり」とある一方で、企業などを活用しようとする視点も必要であると書いてあり、これも網羅的、平均的な主張となっているので、将来、工夫していただきたい。

(機構)機構の役割の一つには、大学等に情報を提供し、全体の底上げを図ることがある。ユニバーサルには「いつでも、どこでも」という意味があり、つまり入ってくる学生がいろいろで、多様化、複雑化しているということである。

(委員)ユニバーサルアクセスという言葉は、アメリカの研究者の言葉である。障害学生の修学支援のところで、ユニバーサルアクセスという言葉が、障害学生の修学支援の範疇にあるように使われているが、これはユニバーサルアクセスではなく、ユニバーサルデザインのことである。高等教育のユニバーサルデザインという問題が、障害学生の教育の機会均等のなかで使われている言葉で、ユニバーサルデザインはアメリカにおいて、障害学生に対して学ぶ機会をどう保障するか、どうバリアフリーするかということで使われた言葉である。障害学生の問題はユニバーサルデザインの問題であるので、ユニバーサルデザインという言葉とユニバーサルアクセスという言葉と混用しないようにする必要がある。

(機構)「ユニバーサルアクセスの実現」については削除したい。

(委員)機構が行う学生等に対する支援というのは、非常に重要なインセンティブである。単なるサポートということだけで、日本の高等教育が抱えている一つの大きな問題である国際的な視野というものが入っていない。日本の高等教育というものは、国際比較からすると大きな問題を抱えたまま推移をしているのではないかと思う。ゆとり教育、学力アップなど初等中等教育の話がよく言われるが、どちらかと言えば、国際的には初等中等教育の日本のレベルは高くて、むしろ高等教育に非常に大きな問題がある。そのことを機構として触れおく必要があるのではないか。
 新たな社会的ニーズという言葉があるが、具体的に、高等教育機関及び他の教育機関として認識しなければならない新しい社会的ニーズというものをはっきり認識しているのか。機構の支援事業の在り方としては、具体的に新しい社会的ニーズ、実際の高等教育機関の現状での問題点を指摘して、それに答える必要があるにもかかわらず、そのような具体的なことが何も書いていないので、総花的なものとなっている。やろうとしていることの方向性やその方向性の理由をはっきり出した方が良い。
 結果的には、初等中等教育が良くても、最後の高等教育のところで、国際的なレベルで非常に大きな問題を残したままでは、最終のアウトプットのところで優れた人が出てこない。ユニバーサルといった点では問題があるかもしれないが、限られたリソースを思い切って使うという方向に少しシフトすることを考えても良いのではないか。

(機構)機構の役割は、日本人学生と外国人留学生を一元的、総合的に支援すること。国際的な視点というのは必要である。

(機構)この意見(案)では、現在行っている機構の事業について、どう改善すべきかを記述している。事業としては研修事業と情報提供事業があり、これらの事業をいかに時代にあったものにするのかという観点から考え、その結果、学生の多様化に対応する研修や情報提供をやるべきであるという考えから意見をとりまとめた。そのような趣旨で作っている。

(委員)委員会のひとつの区切りとしては、この意見(案)で良いと思う。「日本学生支援機構が行う」学生生活支援事業に関する意見ということなので、学生支援担当教職員に対する研修と情報提供を充実することを柱として記述している。情報提供においては、情報の質的な充実と量的な充実の両方が必要であるとし、そして提供についても、可能な限り様々な手段を使って、提供するとしているので、これで良いと思う。各論については、やや不足しているように思うが、それはこれからこの意見(案)の柱に沿って、機構が進めて行くということである。あえて言うと情報の受け手である学生支援を直接行っている大学等に対して、委員会として注文・要望すべきことを書いても良かったのかもしれない。

(委員)いろいろな制約の中でのまとめとしては、この意見(案)で良いと思う。ただ、何か宣言のような意欲的な言葉の結語があっても良いのではないかと思う。その結語としては、具体的に何かをするということではなく、例えば大学等の学生等に対する支援業務をリード・サポートする中核機関としての役割・機能を果たすため、全体に目配りすると同時に、各大学がやれなかったこと、民間にはできないこと、国としてやらなければならないことを行うことを記述する。ユニバーサル化して、これからどうのような学生支援の問題が出てくるのか予見不可能な面もあるが、それをいち早く予見・察知して、その問題が重要であることを提起していくとか、今はできなくても今後に向けて、機構の役割として行っていかなければならないというような文言があると良い。具体的なものでなくても、そのような文面を入れたら力強さがでる。

(機構)今の意見を反映させる。

(委員)総花的すぎて、具体性に乏しいように感じるが、議論したことは全部記述しているので、この意見(案)で良いと思う。この意見(案)は、政策企画委員会で議論したことをまとめたものであるが、これは誰に対しての文書なのか。また、独立行政法人の評価の際に、有力な支援材料になると考えて良いのか。

(機構)機構向けに、政策企画委員会としてまとめていただいた意見という形である。今後、機構がこの意見を踏まえながら、来年、再来年、そして2年後の新中期計画の際に、具体的な事業として活かしていくための助言、意見として受けとめさせていただくものである。

(機構)政策企画委員会から北原理事長に意見をいただき、それを機構として具体化する。機構の学生生活支援事業は、学生個々に対して直接支援するのではなく、学生生活支援をしている大学等、特に学生支援を担当している教職員を支援するものである。教職員のレベルアップ、スキルアップを図ることで、間接的に学生を支援するといったものである。つまり、学生支援の在り方についての指針等を考え、研修会などを通して伝える。

(委員)文部科学省が実施する「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」は、まさに学生生活支援事業の一環である。これとのかかわりについての記述は、意見の中に取り込む必要がある。

(機構)機構としては「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」の実務のサポートをしていることを記述している。

(委員)具体的なことを記述しないと、非常に網羅的な意見になる。大学等では多様な学生に対して、様々な対応をしている。機構としては、平均的に対応しなければならないというのは理解するが、もっと現状を見て、内部的にいろいろ議論し良い工夫をする必要がある。いろいろな問題が起こるかもしれないが、それらを斟酌して、次のステップで具体的なことを考えていただきたい。

(機構)多様化というのは、一つひとつを見れば個性的であると言える。それに対応するような支援がなければ、抽象的支援は意味がないということでもある。

(委員)これまでの流れがきれいに取り込まれた過不足のない意見(案)だと思う。この意見(案)を改めて読むと、今の大学の現状がくっきりと見えたような気がする。クラブ、サークル活動などの集団生活を避け、趣味やアルバイトなどの個人的活動を重視する学生、また、メンタルな問題を抱えて休学に至る学生などは確かに増えている。大学の高校生化がかなり進んでるという印象がある。以前の委員会で、アメリカの場合は、親が参加して大学生の生活までいろいろと支援するという話があった。つまり、これは日本の感覚からすると、ひと昔前の高校生という感想を大学関係の方は持つと思うが、ある意味で日本の大学はアメリカ型の大学に近くなってきていて、それに対応しているということである。
 また、一方でドクターの学生の問題等がある。これからプロの研究職をめざす学生たちが、いろいろと悩んでいるのを目の当たりにする。
 学生が楽しく、目的意識を持って学生生活を送れるよう支援するという大筋に加えて、研究者養成・プロ養成、いわばヨーロッパ型の大学の側面に対しても、今後、意見を具体化する中では、生かされていくと良いのではないかと思う。


以上