政策企画委員会(第10回) 議事録

1.日時

平成20年3月19日(水曜日) 15時30分~17時

2.場所

日本学生支援機構 駒場事務所 4階会議室

3.出席者

(委員)荻野アンナ委員、小林陽太郎委員、中津井泉委員、 福田誠委員、矢野眞和委員
(機構)北原理事長、矢野理事、長谷川理事、簑島理事、大貫理事、佐藤監事、赤木参与、清水参与、桒原政策企画部長、吉澤財務部長、柴政策調査研究課長ほか関係職員

4.議題

5.議事

資料に基づき機構側から説明を行った後、意見交換が行われた。主な意見は次のとおり。

(1)日本学生支援機構が行う学生生活支援事業に関する意見について

(日本学生支援機構が行う学生生活支援事業に関する意見について、桒原政策企画部長から説明)

(2)日本学生支援機構の平成20年度予算案等について

(日本学生支援機構の平成20年度予算案及び独立行政法人整理合理化計画の概要について、吉澤財務部長及び桒原政策企画部長からそれぞれ説明)

(委員)市場化テストで民間競争入札を導入する場合、価格面と内容面のウエイトをどう考えるかは非常に難しい問題である。機構としては価格本位でも、コスト軽視でもない形で考察し決定する必要があると思うが、機構として決定に関する基準が定まっているのか。

(機構)今回は、プラザ平成と広島国際交流会館の2件の民間競争入札を実施し、落札者を決定した。決定に際しては内容面と価格面からの評価を行い、内容については企画書を作成させ、その中にある運営方法、管理体制などを点数化し、それと価格の点数を合算して、一番評価の高かったものを落札者とした。民間競争入札を導入することによって、サービス内容は落とすことなく現状よりも価格を抑えることができた。

(委員)半年又は1年後に民間競争入札の結果を検証するために、利用者である留学生から、本当に良くなっているのかどうかの評価を受けることが必要である。安易な随意契約というのは問題があるが、随意契約を否定してすべて競争入札というのも問題があるのではないか。機構はこのことを十分に考慮し、慎重に市場化テストを行う必要がある。

(機構)機構では外部の専門家に依頼して、業者を選考する上での仕様書を作成し、それに基づいて点数化している。プラザ平成については、立地的に運営し難い部分もあるが、利用状況等しっかりと監視し評価する。また、広島国際交流会館については、留学生に対するサービス・便宜が図られているかどうかを、価格面も考慮しながら評価する必要があると考えている。

(委員)奨学金貸与事業の回収率については、これまでに政策企画委員会でも議論を行ったこともあり、整理合理化計画において指摘を受けるのはやむを得ない事柄だと思う。平成20年度中に回収率の向上を図るような抜本的な対策があるのか。また、民間の業者を活用するとは、具体的にどういうことを行うのか。さらに、公共上の見地から学生生活事業を行うとは、どのようなことを意味するのか。

(機構)奨学金貸与事業の回収については大きな課題であり、これまでもずっと機構として取り組んできている。平成18年10月に機構の奨学金貸与事業は政策金融に類似する事業ということで、中期目標期間終了前にレビューが行われ具体的な指摘を受け、今回の閣議決定でも同様に指摘を受けている。それを受けて、機構内に金融関係の方を含めた有識者会議を設け、回収率の向上に向けた抜本的な取組の検討を進めており、まもなく議論がまとまる段階にある。そして平成20年度より取り掛かれるものから実施に移したいと考えている。具体的には、民間のさまざまな債権についての取組を参考にしながら、延滞になった場合の督促のプロセスを、短期集中的に頻度を高めたスケジューリングに強化する。また、延滞を未然に防ぐという意味では、貸与の段階から学校との連携を強化しながら、返還に関する一連の流れを改善したい。

(機構)公共上の見地から学生生活事業を行うことの主旨としては、現在、機構が行っている大学の教職員の方を対象にした学生相談、メンタルヘルス、留学生対応等の研修会を、各大学独自ではできないものを、全国的な規模で実施するという見地から行うということであると受け止めている。

(委員)有識者会議の専門家とはどのような方なのか。また、3%の貸付上限金利の見直しとは具体的にどのようなことなのか、学部学生と大学院学生が一律なのか、大学院学生に対する配慮はあるのか。

(機構)有識者会議は、銀行の融資関係の責任者、信用保証機関の役員、大学関係の方など10名程度のメンバーで構成している。大学院に対する支援としては、有利子貸与事業の新たな貸与月額の創設ということで、来年度は上限13万円を2万円増額し、15万円を上限とする。また、大学等についても上限を10万円から12万円に増額する。そのほか大学院学生については、業績優秀者に対する奨学金返還免除制度を設け運用している。具体的には、当該年度に貸与が終了する大学院学生のうちの1割については全額免除、2割については半額免除、トータルで3割が何らかの形で免除を受けられるような仕組みである。これは学生の修学上においてモチベーショーンを高める役割も果たしていると考えている。

(委員)大学院学生の業績優秀者に対する奨学金免除の基準が明確である必要があると思うが、どのようになっているのか。

(機構)免除の基準は、国、本機構そして各大学の三段階で作成されている。大学に対しては、基準が整備されているかを審査した上で、整備されていると判断した場合のみ免除枠が与えられる。

(委員)整理合理化計画に、延滞債権の回収率向上を図るための抜本的な対策を講ずるべき、と書いてあるということは、極端に言えば抜本的な対策を講じてよいという意味に考えられる。例えば、連帯保証人による保証債務、担保、給料差し押さえなども考えられる。今回はそれくらい極端なことまで検討してよいという意味で受け取った方がよいのではないか。少し督促を強化するというのでは解決しようがない。次の財源を確保するためにも、かなり強力なことを考えないといけないのではないか。

(機構)今まで、必ずしも強力な形での推進・取組というものではなかったかもしれない。貸与から返還終了、また延滞に入った場合の取扱などの制度的な見直しを含めて、保証の在り方、信用保証機関の活用についての検討を進める。また、効率的な回収を図るために、民間機関のより一層の活用を検討する。

(委員)抜本的に考えなければいけないのは、回収率の問題もさることながら、奨学金制度そのものについてである。例えば、貸付額別の未回収率ついて考えた場合、金額が多くなると未回収率が上がるということが想定できるが、今回、大学等の貸与月額を上限12万円に増額したことが、本当に良いのか、悪いのかついても回収率の問題と絡んでいるので、考える必要がある。また、大学院の返還免除者を専門分野が全く違う学生の中で判定するということは非常に困難であるという現状を考えると、免除職というものを廃止して、成績優秀に代えるということが良かったのかを考える必要がある。これは大学院の博士課程における研究者養成をどのように考えるかという基本的でかつ大きな問題でもある。
 つまり、奨学金の内容について、長期的に検討する場を設けることを考える必要がある。

(機構)奨学金政策全体の見直しについては、機構だけでは取り組めない面があるが、今後、可能な限り政策企画委員会からの意見を運営において生かしていきたい。貸付の債権額に応じた返還状況、延滞年数別回収率、延滞理由別の分類などの延滞者又は返還者の属性を十分把握した上で、属性に適合したきめ細かな取組が必要であると考えている。有識者会議のメンバーである奨学金を専門分野とする先生方には、会議の中だけでなく機構の客員研究員という形でも返還者の属性分析を依頼している。
 貸与月額の上限を引き上げたことについては、従来から最高月額を選択して貸与を受けている方にアンケートを実施し、上限の引き上げを望んでいるといった結果を踏まえて文部科学省で決定されたという経過がある。もちろん上限の引き上げと併せて、新しい最高月額を選択される方には、貸与総額、返還期間、一回の返済額などの返還計画について、学校を通じて指導していく。
 大学院学生の業績優秀者に対する奨学金返還免除については、大学関係者で構成している「業績優秀者免除認定委員会」において、学校の動向も把握しながら、より適切な形で運用できるよう取り組んでいく。

(委員)奨学金新規返還者の返還率は高くなっているのか。つまり最近、色々な施策をとられているが、そのことによる効果がでているのか。
 また、広島国際交流会館の管理運営の競争入札に応募してくるのは、どのような業種なのか。

(機構)平成18年度の債権も含めたトータルの回収率は78.5%、平成17年度は78.2%である。さまざまな取組を行った結果、徐々にではあるが改善されているものと考えている。新規の返還者については、中期目標の95%という値に近づいてきている。

(機構)今回、広島国際交流会館に応募してきたのは3社で、1社は財団法人日本国際教育支援協会を中心とした共同事業体、あと2社はビル管理会社である。結果的には、企画書も価格面も優れていた財団法人日本国際教育支援協会を選定した。

(委員)奨学金の貸付年度ごとに累積返還額のグラフをつくればよいのではないか。例えば、10年前に貸し付けたものと、5年前に貸し付けたもののグラフを比較して見ればよい。

(委員)最近のさまざまな奨学金回収の取組が効果を生んでいるかどうかを確認する必要があると考える。

(3)日本学生支援機構が行う3事業に関する意見の取組状況について

(日本学生支援機構が行う3事業に関する意見の取組状況について、桒原政策企画部長から説明)

(委員)学生支援事業に対しての取組については、高等教育を広く浅く考えるか、狭く深く考えるかという問題にも関わってくると思われる。広く浅くがアメリカ型、狭く深くがヨーロッパ型と思われる。メンタルケアや障害者のケアといったこれまでの機構のさまざまな取組状況を見ると、アメリカ教育の良い点を取り入れようとしている印象を受ける。一方で専門職養成という点では、狭く深くというヨーロッパ型の視点も必要なのではないかという印象を持った。アメリカで実施されているような給付型の奨学金を広く浅く実施するのは、日本ではとても無理だと思われので、狭く深く導入することを考えてみてはどうかと思う。例えば、フランスでは、日本では想像もつかないような厳しい選抜試験があり、合格者は将来、教員になる。フランスの場合、すべて公教育なので、そこから公務員という身分になり、早い人は18歳ぐらいから給与としてかなりの金額が給付される。日本の場合は全くシステムが違うが、唯一それに相当するのが大学院学生の業績優秀者に対する奨学金返還免除に当たるのではないかと思われるので、有効に活用してほしい。この免除制度がうまく活用されれば、良い意味でのエリートの育成に貢献すると思われる。

(委員)付け加えるとフランスの場合、教職以外の職業に就くと、当然、全額返済しなければならない。
 返還免除ではなく、むしろ給付型にするという場合には、非常に厳しい試験なり、認定資格なりを設定する必要がある。

(委員)留学生の受け入れに際しては、日本のカルチャーや歴史への理解、認識、共有などについても必要ではないか。もう少し深みのある留学生受け入れというものができないものか。


以上