政策企画委員会(第16回) 議事録

1.日時

平成26年1月28日(火曜日)14時~16時10分

2.場所

ホテルグランドヒル市ヶ谷 3階瑠璃東の間

3.出席者

(委員) 沖清豪委員、小塩隆士委員、小林雅之委員、濵口道成委員、福田誠委員、前原 金一委員、 南砂委員、横田雅弘委員、吉岡知哉委員、和田義博委員
(JASSO) 遠藤勝裕理事長、德久治彦理事長代理、月岡英人理事、 山内兼六理事、米川英樹理事、嶋倉剛政策企画部長、 石矢正幸奨学事業本部長、鈴木美智子留学生事業部長、山田総一郎学生生活部長 ほか関係職員
(文部科学省)渡辺正実学生・留学生課長

4.議題

次期中期計画に向けたJASSO事業の取組みと今後の展開

5.議事次第

6.配付資料

7.議事

資料に基づきJASSO側から説明を行った後、意見交換が行われた。概要は次のとおりである。 
 (○=委員、●=JASSO、■=文部科学省)

○JASSOの学生生活調査及び大学等における学生支援取組状況調査に関わっていることから3点申し上げたい。1点目はJASSOの事業内容や調査の結果を積極的に情報発信し、JASSOの重要性をより世間に周知していただきたい。2点目はJASSOが実施する調査の回収率は極めて高く、他機関では取れない重要なデータであるため、今後も継続的に調査を実施するとともに2次分析により特徴・属性を把握していただきたい。これらが学生生活支援を重点化する際の基礎になると思う。3点目は大学等における学生生活支援取組状況調査の結果、国公私立別の差だけではなく、学校規模による差があることも判明したことから、小規模校への配慮を検討いただきたい。小規模校は学生支援に対して人も財源も充てるのが難しいことから、JASSOが実施する研修事業のニーズが安定してある。

●1点目のJASSOのホームページについては世の中にわかりやすく広報する仕組みを策定しているところである。また、雑誌等で誤解に基づく記事が掲載された場合は、適宜、公表資料に基づいて、事実を正確にお知らせすることが重要だと考えている。2点目の学生支援に関する基礎データは、国の基礎となる非常に重要なものであり、引き続き継続していきたい。3点目については、行政改革の流れがあり難しいかもしれないが、小規模校への支援をどのように行うか検討してまいりたい。

●文部科学省からJASSOへ移管された調査は今後も継続的に実施するとともに、調査の分析については、研究者の方々に、署名入りで書いていただくことを考えている。

●学生支援に関する大学間格差が生じていると実感している。今までの情報発信では、全ての大学において学生支援が充実してきたかのように受けとられるかもしれないため、今後、外部への的確な情報発信を充実してまいりたい。

○4点申し上げたい。1点目は返還金の総回収率は年々改善されておりすばらしいが、金融機関では通常用いない指標であるため、総回収率82%は低い印象を受ける。学校間の回収率の差も相当あると思うが、頑張っている学校に対してプラスになる方策を考えていただきたい。2点目は給付型奨学金の財源について、国からの財源だけではなく、奨学金返還完了後の者から寄付を募ったり、遺言信託等の仕組みも活用してはどうか。3点目は就職についてのミスマッチを防ぐため、東京と地方、大学と企業の架け橋をJASSOに担ってもらえないかと思う。また、インターンシップが活発になれば正規職員も増えるため、現行の会社見学ではなく海外のように本格的なインターンシップをJASSOも経済界と一緒に提供していただけないだろうか。4点目は、外国人留学生の受入れ施策については、文部科学省で策定した方針に沿ってJASSOに適確な実施をお願いしたい。

●1点目の総回収率82%の指標は、長期延滞者の回収率も含んでいるため、一見すると回収率が低く見えてしまう。総回収率のうち当年度分は95.6%であり、ほぼ回収している。総回収率の指標は金融機関では使用しない指標であることから、第3期中期計画においては、金融機関が不良債権を表す指標と同様のものをJASSOも使用することを考えている。世間では延滞ばかりが強調されるが、新規返還者の回収率は96.8%であり、ほとんどの者がきちんと返還していることを周知したい。2点目の寄付金については、現在も多くの方からいただいている。給付型奨学金の財源や新たな仕組みについては、担当部署と相談してまいりたい。

○平成26年度予算に関する説明において有利子奨学金の財源を実態に合わせ縮小したと説明があったが、大学の学生数が減少したのか。貸与基準を見直したため、基準に合致する者が減少したのか。

■18歳人口は、平成20年頃から120万人前後で推移しているが、平成29年頃から120万人を割り徐々に減少し、平成40年頃には100万人となる見込みである。奨学金の貸与割合は約4割で、昨今有利子奨学金貸与の増加に伴い増加している。貸与基準は、無利子、私立大学、自宅通学であれば年収955万円以下くらいであれば貸与できることとなっており、来年度は、より年収が低い者に対して手厚くするため見直す。一方、下村文部科学大臣からは、奨学金を希望する者全員に貸与できるようにすべきと指示されている。総務省からは、現行の貸与基準は30年近く前の考え方に基づいているため、現状に即したものへ見直すよう指摘されている。今後もきめ細かく対応した貸与基準にしてまいりたい。

○イスラム諸国では、生活費が安い上、生活様式が似ていることから、イスラム圏内で相互留学が増えている。またASEAN諸国では、タイ等が奨学金を充実させミャンマーやベトナム等からの留学生を集めている。インドネシア、ミャンマーは、イギリス、オーストラリアへの留学が増加している。海外の学生は、日本語研修のために1年間余分に修学期間を要することから、英語で日本へ留学できるようにする等の大胆な政策推進をしないと、日本から離れつつある留学生を取り戻すことはできないと思う。アジアの中流層は経済的にも豊かになってきており、学費等の経済的支援よりも留学により得られるものを重視している。その結果として英語圏への留学に魅力や利点を感じているのだろう。これに代わる日本の魅力について調査研究が必要な時期になっていると思う。

●状況については承知しているが、文部科学省、JASSO、大学の役割を区別して考える必要がある。JASSOはブラジルから工学系の学生を英語コースに受け入れる事業を展開する等、間接的な支援を実施しているが、英語コースによる学部を設置する大学は少ないため苦労している。日本語を用いない留学生の受入れ策の充実については、大学の取組みに頼る部分が大きい。

●ブラジル、アフリカ諸国からは、日本の教育に対する期待を強く寄せられている。日本語を習得することにより日本で就職する利点もある。これら新興の国々に新たに対応しつつ、ASEAN諸国の若者に日本への理解をより深めてもらい引き続き留学生政策を実施してまいりたい。

○自分の子供に日本の高等教育を受けさせるのも経済的に難しいのに、留学生の支援がなぜ必要なのかと考える人もいることから、留学生政策は安保外交政策に類する国家的戦略であることを国民にしっかりと理解してもらう必要があるだろう。また、より多くの留学生を招き、日本社会に参画してもらう工夫をする必要がある。一例としてJETプログラム(語学学習等を行う外国青年招致事業)で来日した参加者は、日本への定着率が非常に高い。当該プログラムをそのまま留学生政策に応用すれば良いというものではないが、現在の留学生政策には一層の工夫が必要だと思う。

○3点申し上げたい。1点目は、総回収率の向上について、どのような方策が効いたのか教えていただきたい。2点目は、第3期中期計画では総回収率以外の指標を検討しているようだが、総回収率には既に長期延滞している分の回収状況も反映される良い面もあるため、従来どおり指標として使用することも重要と思う。3点目は、スカラネットパーソナルの普及状況を教えていただきたい。社会保障審議会年金部会において国民年金未納問題について議論を行っているが、行動経済学の観点から、若者は制度の仕組みを理解し納得すれば支払率が増えることが実証されている。JASSOも学生が理解し納得するよう工夫し、丁寧に説明していけば、回収率は一層改善されるのではないか。スカラネットパーソナルのような仕組みは若者に身近であり、理解を促進させるものと期待できる。

●総回収率の改善は当年度分回収率の向上によるところが大きい。当年度分回収率向上のための方策として、延滞を出させない、また延滞してもすぐに解消するよう早い段階での対応に努めた。そのため返還開始前の案内通知をわかりやすい内容に改善したり、延滞者への架電や文書送付、コールセンター開設による相談受付、回収委託等を実施等、様々な対応を徹底した。スカラネットパーソナルの登録状況は、現在対象者400万人に対して20数万人だが、今後、年1回の継続願提出時にスカラネットパーソナルを経由させることを検討しており、これが実現すると奨学金貸与者は登録が必須になるので、来年度末には100万人超になると予想している。

○2点申し上げたい。1点目は、一般の学生が障害学生についてどのように考えているのか調査をしていただきたい。自分のゼミの学生が、身近に障害学生がいたらどうか100人の学生にアンケートをとったところ、9割以上の学生が歓迎すると回答した。身近に障害学生がいることにより、ノートテイクのボランティア経験や、勉学に励んでいる姿勢が周囲に好影響を与えるという回答が得られており、教育効果が明らかにあると思う。2点目は、ゼミの学生が2,000人近い日本人学生に国際志向性に関するアンケートをとったところ、1年生から4年生にかけて徐々に低くなる傾向が見られた。このことから1年生の海外に憧れている時期に、留学とのギャップを埋め国際化へつなげるためのカリキュラム、すなわち反転授業、ディスカッション及びプロジェクトベースの学びのカリキュラムが必要であり、この学びの先に留学があると思う。

○3点申し上げたい。1点目は、奨学金の返還金回収は大学にとって非常に負担が大きいことである。当然、学校も協力しているが、卒業後に大学とのつながりがなくなった者に対しては、大学として対応が難しい。私立大学では、奨学金の回収に係る人件費等の経費が高いため、貸与型の自前の奨学金は概ね実施していない状況であり、国としての給付型奨学金が必要だと考える。2点目は、最近の学生や親は、将来の就職への不安に伴い奨学金返還の不安もあるため、有利子奨学金の貸与者が減っているのではないかということ。3点目は、真に奨学金が必要な者へ支援を絞るために貸与基準を厳しくするのは財源の面からは正論に見える一方、現在貸与を受けている人数のうち10%は貸与を受けられなくなることから、奨学金の持つ育英の要素に大きな影響を及ぼすことになると思う。特に、私立大学理科系の学費は高額であり、JASSOの意義は非常に大きいことから、貸与基準の見直しの際には是非ご検討いただきたい。

○10年前と比較し、奨学金事業予算及び留学生数が増大している中で、一般管理費や、職員数が削減されている。経営管理面からは頑張っていると言えるが、このまま削減するのみでは国民のニーズに見合うサービスを本当に実施していけるのか心配である。

●大変な面もあるが、システムの大幅転換等により業務の改善に努めている。今後も国民のニーズに見合うサービスを提供してまいりたい。

○5点申し上げたい。1点目は、世間では調査データ等に基づくことが重視されているため、各事業に関する調査分析については今後も力を入れていただきたい。2点目は、学生生活支援において小規模校への配慮のご意見が出たが、奨学生の推薦内示数についても小規模校等に不利になっている場合は見直しが必要ではないかと思う。3点目は、実質給付型を導入しているイギリス、アメリカ、オーストラリアでは、所得情報はプライベートなものであるため国税庁を説得し情報を得ることが大変だったことから、JASSOも給付型奨学金を検討するのであればそろそろ本格的な設計について考えるべきだと思う。4点目は、JASSOの事業拡大に反し一般管理費及び職員数が削減する中、JASSO職員も大学も色々と頑張っているが、それでも回収が不十分等と外部から指摘されるため、利子の増や手数料徴収等により自己収入を得て事業に活用するなど、新たな取り組みによる経営の検討や努力が今後は必要になるのではないだろうか。5点目は、アメリカが寄付金を活用して事業を拡大しているように、寄付金を活用してJASSOと学生の間を取り持つ中間法人を作り、JASSO事業を支援させてはどうか。

●今後も色々な経営努力が必要になるかもしれない。委員の先生方からは多くの有意義なご意見を頂戴した。ご質問に対してすべてお答えできていない部分もあるが、今後もこれを糧として事業の推進に邁進してまいりたい。

以上