1.日時
令和7年9月29日(月曜日)14時00分~15時40分
2.形式
WEB会議
3.出席者
(委員)
内田 隆志 委員、小原 芳明 委員、清水 裕 委員、杉村 美紀 委員、田名部 智之 委員、中尾根 康宏 委員、古沢 由紀子 委員、村上 明美 委員
(JASSO)
吉岡 知哉 理事長、榎本 剛 理事長代理、戸田 純子 理事、谷合 俊一 理事、吉野 利雄 理事、竹内 俊郎 監事
(以下、陪席)保坂 孝 政策企画部長、内藤 秀人 財務部長、吉村 務 奨学事業戦略部長、糸川 佳秀 返還部長、田村 真一 グローバル人材育成本部審議役、丸山 敬司 留学生事業部長、佐藤 稔晃 学生生活部長
(文部科学省(オブザーバー))
春山 浩康 高等教育局学生支援課長、浦田 晴香 同参事官(国際担当)付留学生交流室長
4.議題
日本学生支援機構の令和6年度業務実績及び令和7年度計画について
5.議事次第
6.配布資料
7.議事概要
事務局から、配付資料の説明及び欠席委員のコメントを紹介した後、意見交換が行われた。概要は次のとおりである。
(○=委員、●=JASSO、■=文部科学省)
<欠席委員からの事前コメント>
○「教員になった者に対する返還免除制度(教員免除)」は、現状、対象者が大学院修士課程等修了者限定となっている。昨今の教員志望者不足への対応にも資すると思われ、学士課程卒業者・博士課程修了者への拡充を検討してもよいのではないか。
○機構及び申請者や申請機関の更なる合理化・効率化を推進することが望ましい。具体的には、申請等に要する提出書類等の更なる電子化や申請手続きの簡素化、既存システム(スカラネット・パーソナル等)の充実などが考えられる。
<奨学金関係>
○給付奨学金の第1区分と第2区分の新規採用者数が減少している原因は何か。
●具体的なエビデンスがあるわけではないが、例えば、賃上げ等の影響で家計収入が増加したことにより、区分が変動したケースが考えられる。
○詳しい調査は実施しておらず、数字の把握にとどまるということか。それとも、ある程度増減の原因を調べているのか。
●JASSOでは、基本的に申請に対して、その収入等を元に審査を行い、該当する区分による支援を行っており、増減の原因等の掘り下げた分析までは行っていない。
○多子世帯の学生等への支援について、本学でも多くの申請があり、受給対象者の多さを改めて認識するとともに、関心の高さを実感した。それだけ必要に迫られている方々が多いということを意味していると考えられ、感謝の意を表したい。
○給付奨学金の利用拡大は、学生を支えるというJASSOの機能が十分に発揮されていることを示していると感じられるため、高く評価したい。財源の制約がある事業ではあるが、できる限り財政当局の理解をいただいて、引き続き学生を支えていただきたい。
●修学支援新制度については、年々拡充が図られており、令和7年度においても、新たに多子世帯向けの授業料等の無償化が導入された。このような新しい制度をしっかり皆様に理解いただき、活用していただけるように努めていきたい。
○減額返還・返還期限猶予制度について、どの時点で周知を行っているのか。利用者にとっては良い制度だと思うが、JASSOにとって、利用者を増やすことによるデメリットはないのか。
●毎年4月以降に各大学等の採用説明会等を通じて奨学金案内や奨学生のしおりを配布している。その中で、返還が困難になった際の救済制度として減額返還・返還期限猶予制度を案内している。また、大学等を卒業する年度の10月頃には、各大学等で返還説明会を開催し、その際にも案内を行っていただいている。さらに、返還中に延滞が発生した場合にも、督促の通知とともにセーフティネットを活用するよう、高い頻度で周知している。JASSOとして、最も困るのは延滞になり連絡もつかなくなることであるため、正式な手続きを通じて制度を利用していただくことは歓迎している。
○代理返還制度について、利用企業数が大幅に増えているのは良い傾向であり、ぜひこのまま拡大していってほしい。現状で、制度を利用している企業の業種や規模、あるいは地域的な特徴はあるか。
●令和6年度に実施した利用企業に関するアンケートによると、利用企業の地域割合はほぼ全国に満遍なく分布しているが、若干北海道が多い。業種別では、建設業が多い傾向にあり、人手不足が深刻になっている地域や業種で利用が多いのではないかと考えている。
○代理返還制度において、企業が就職者に代わって奨学金を返還することによるインセンティブはあるのか。資料説明の中で、広く寄附を募っていくという話があったが、免税等、企業経営上のプラスアルファがあると寄附にも発展するのではないかと思った。
●企業側の最大のメリットは、人材確保の方策として活用できることである。また、自治体によっては、代理返還制度を利用する企業に財政支援をしているケースもあり、その一例である長野県では地域での人材定着を目的に施策を取っていると考えられる。さらに、税制上の優遇措置が講じられており、企業が社員に代わって返還した場合、その金額が損金算入可能となり、賃上げ促進税制の対象となる可能性もある。なお、返還者にとっては、所得税が非課税になり得る、社会保険料の標準報酬月額の対象外となるといった優遇措置が講じられている。
○令和6年度運営評議会において、代理返還制度を利用している企業の規模について伺ったが、伸び率はどのような状況になっているか。また、専門人材が各分野で不足している現状において、例えば医療・福祉といった職能団体への周知は行っているのか。
●令和6年度に実施した利用企業へのアンケート結果では、大企業が9.5%、中小企業が90.5%となっているが、その後の追跡調査までは行っておらず、トレンドの把握には至っていない。職能団体への案内については、文部科学省を通じて経済産業省や中小企業にもご協力いただき、中小企業向けのメールマガジンやウェブサイト、ガイドブック等に掲載いただいている。職能団体ごとには詳細を把握していないが、日本経財団体連合会や商工会議所にも協力をお願いしている。
○日本経済はマクロ上、大変な人手不足であり、各企業とも新規の採用に苦慮している。奨学金を肩代わりしてでも学生を確保したいという動きが一段と高まっていると認識しており、こうした経済的な背景をうまく活用し、代理返還制度の普及を図ってもらいたい。
●特に中小企業からは、制度を知らなかったという声も聞いている。知らなかったからできなかったということはないよう、周知に努めていきたい。
○保健医療福祉系の領域においては、人材不足が著しい。他方で、保健医療福祉施設側の代理返還制度の認知度は、まだ十分ではないと感じられる。多くの大学では、学生の就職先となる施設についての説明会を開催しているため、そのような機会を利用しながら、施設に対して周知を行っていくことで制度の利用がより促進されるのではないか。
●制度の周知に関し、現在、文部科学省において、制度を利用している企業のリストを作って大学側に提供し、大学等において企業の情報を学生に提供いただくことが検討されている。まずは企業側に制度の存在を知っていただくことが大前提になるが、その上で制度を導入している企業の情報を学生側にも伝えていきたい。
○企業の立場として、代理返還制度の存在は会社に来ていただく動機づけになるので、非常にありがたいと考えている。一方で、長く勤務していただければ継続して支援できるが、離職されてしまうと最後まで支援することが難しくなる。心の健康も併せてしっかりサポートしていかなければならないと思う。
○教員不足は喫緊の課題となっている。教員になった者に対する返還免除制度は大学院修士課程が対象になっているが、教員確保のために、学部や博士課程への対象の拡充をお願いしたい。予算措置も含め、文部科学省にもぜひ配慮いただきたい。
■教員の返還免除は、修士課程における導入が始まってからまだ時間が経過しておらず、取組と成果の把握がまず重要だと考えている。その上で、今後、学部や博士課程への導入についても検討を重ねていきたい。
○奨学金のインターフェースを見たところ、分かりづらい部分があった。申請者の意見を踏まえて、分かりやすくしてもらいたい。
●JASSOにもそういった声が届いているため、必要な改善に努めて、使いやすいシステムを目指していきたい。
○奨学金について、在学中は学校への問合せになるが、卒業後は、電話での問合せになる。スカラネット・パーソナルが使いにくい、電話対応が分かりにくいといった話を聞いているが、どのように捉えているのか。
●コールセンター等の問合せ先に届いている声もあるため、そのような意見も踏まえ、今後も改善を図っていきたい。返還の意思があってご連絡いただいている方にネガティブな印象を与えないよう、十分気をつけて対応していきたい。
○元奨学生とのつながりの維持・構築について、資料の中ではヒアリングや意見交換を行っていると書かれていたが、具体的にどのような実施策を考えているのか。
●令和7年度においては予算を確保しており、具体的な取組を開始しているところ。つながりを構築する上で、まず情報収集から始めたいと思っており、元奨学生に対する大規模アンケート調査を予定している。調査結果を踏まえて具体的に構築方法を検討し、4~5年のスパンの中で取り組んでいきたい。
○不登校は教育の喫緊の課題の一つである。メンタルケアも大学側でかなり苦労されているが、ケアを受けつつ奨学金を受けている学生もいるところ、成績により奨学金の対象制限になる可能性もあると思われる。それぞれの学生の状況に応じて、奨学金の給付を行う等、配慮を行っていただきたい。
●基本的には支給する団体の最終的な判断になってくるかと思うが、大学等において、学生生活支援の中で学生が奨学金を受ける際の問題として意見があれば、それをまとめるのがJASSOとしての役割と受け止めている。
○支給団体とJASSOの間で互いにキャッチボールすることが大切だと思われる。寄附金についても同様だが、広く門戸は開いているものの、周知がままならないという点は、意見交換が十分でないという原因もあると思う。どうすれば改善できるかについて、支給団体も含めてより一層キャッチボールをしてもらいたい。
<留学関係>
○日本留学試験の渡日前入学許可実施校数について、高等専門学校が特に増加したという話があったが、非常に大事な点だと考える。今、海外では、その教育のスタイルや質の高さから、日本の「KOSEN」が注目を集めている。また、日本の大学も高等専門学校との連携を重視している中で、留学生が高等専門学校を目指してくるようになるのは、とても重要な点だと思う。
○JASSOの海外事務所がアジア中心にあるという話があったが、世界のどこに、どのように戦略を打っていくかは大変難しいところである。物理的にもイベントの実施等は簡単ではないので、日本留学試験の実施とともに戦略的に進めるべき点だと考える。今年は文部科学省の大学の世界展開力強化事業の対象国がグローバル・サウスであり、応募も多くあった。今後はアフリカ諸地域や南アジアが重要な地域になってくると思う。令和8年度の概算要求を見ると、アジアを中心に展開されるのではないかと予想しているが、他の事業との関連も考えながら、戦略的に展開できると良いだろう。
○外国人留学生については、アフリカや南アジアを強化していくとのことだが、特にニーズがある地域や国はどこか。
●JASSOの調査によると、ネパール、ミャンマー、スリランカ、バングラデシュ、インドネシア、モンゴルからの留学生が大幅に増加している。国内の大学等に進学しづらい、あるいは高等教育機関の数が少ない国や、日本留学が盛んになってきて増えている国等、各国の事情があると考えられる。また、最近では日本語教育機関への留学生数が非常に増えており、前述の国からも、まず日本語教育機関に入る方が多いのではないかと考えている。
○海外留学について、海外経験のない生徒が新たに参加するのは難しいのではないかと考える。高校段階でも、学校独自や自治体でオリジナルの短期留学制度を設定しているケースがあるが、費用が高いために参加できない生徒もいると聞いている。JASSOで支援する制度を設けることで、長期の留学に結びつくのではないか。
●高校は支援の対象になっていないが、JASSOが実施している海外留学支援制度の協定派遣と協定受入では、協定を結んでいる高等教育機関同士での交流で、短期のプログラムに参加する者に対し、奨学金という形で支援を行っている。
○海外の大学に留学予定の学生に対する支援で、留学フェアやイベントへの協力の回数が減少している。これは留学の機会が減っているためなのか、それとも円安等の影響で留学への機運が低下しているのか、背景を聞きたい。
●他機関実施イベントの協力回数について、令和5年度は41回、令和6年度は34回と減少しているが、JASSOとしては、イベントが実施される場合にはできるだけ協力している。令和5年度はコロナ禍明けであり、それまでほとんどのイベントを控えていた多くの機関が実施に踏み切った結果、イベントの回数が多かったのではないかと考えている。令和6年度はある程度平準化されたため、令和5年度と比べて回数が減ったと受け止めており、令和7年度以降も注視していきたい。
○アメリカのトランプ政権における、留学生受入れに係る措置の影響で、対応が求められた事例等があれば教えてほしい。
●トビタテ!留学JAPANでは、ビザの発行に時間がかかり、予定の時期に渡米できないことから、留学期間の変更についての相談や申請があった。また、海外留学支援制度においては、留学先の国を変更した学生もいた。文部科学省主導で、アメリカへの留学を諦めた学生や、留学していたが途中で変更したい学生の受入れを表明している日本の大学についての調査が行われ、その取りまとめ結果を海外留学情報サイトなどJASSOのホームページに掲載している。また、問合せ窓口も設けたが、ビザ関係の質問が非常に多く寄せられた。
■JASSOからの説明のとおり、アメリカ国土安全保障省が発表したハーバード大学の留学生受入れに関するプログラムの停止措置等を受け、日本からアメリカに留学をしようとしている学生から不安の声が上がっていた。これを踏まえ、JASSOに問合せ窓口を設置していただき、また、アメリカの大学に留学予定の学生の受入れ等の支援を表明した各大学の情報を取りまとめて、ホームページに掲載する等迅速に対応いただいた。文部科学省においても、引き続き関係機関や関係省庁とも連携しながら情報収集をしており、アップデート情報があれば、その都度ホームページへ反映できるようJASSOと連携して取組を行っている。
<学生生活支援関係>
○心の問題と成長支援ワークショップが行われているが、メンタルヘルスやウェルビーイングは、中央教育審議会の教育振興基本計画の中でも大きく取り上げられている。現場にいると、留学生も含めてメンタルケアについては大きな問題になってきており、JASSOで対応が行われているのは重要なことだと考える。
○不登校を経験している学生や通信制高校の生徒が増えていると思われる。大学での受入れや入学後の配慮が必要だと思うので、相談対応等についての検討状況を教えてほしい。
●通信制高校の生徒は不登校等との関連もあり、今年度は最多を更新したという記事も出ていることは確認している。JASSOでは、大学が抱える課題などを吸い上げ、学生生活にかかる喫緊の課題に関するセミナー等を実施している。大学から指摘の点に関して要望があれば、同セミナーなどの中で、問題や取組を共有していきたいと考えている。
○キャリア教育支援として外国人留学生や障害のある学生の就職についてのガイダンスを行っているとのことだが、どのような効果が出ているのか等、感覚的でも構わないのでJASSOで実感しているところを教えてほしい。
●全国キャリア教育・就職ガイダンスでは、各省庁から就職・採用活動関係の行政説明等のほか、大学からの要望を受け、外国人留学生と障害のある学生それぞれに対するキャリア教育・就職支援の2つのコーナーも設けている。参加者アンケートでは、最新の情報だけでなく、他大学の対応状況等も参考に聞くことができ、大変有益であったという声をいただいており、ニーズに合った情報提供ができていると捉えている。これらのコーナーは引き続き実施していきたい。
<その他>
○JASSOが行っている3つの事業はSDGsの柱とも密接に関わっており、包摂性や多様性を反映しているので、そこに関心を寄せてくれる企業を寄附につなげられると良いと考える。
以上
