第46回 日本語スピーチコンテスト 入賞者スピーチ全文

大阪市長賞(上級の部 最優秀賞)

《貴重な発見》

上級の部受賞者
大阪市長賞

私たちは毎日いったいだれのために頑張っているのでしょうか。自分のために?家族のために?好きな人のため?その答えは人それぞれだと思います。私はずっと自分のために頑張ってきましたが、ある経験を通して、自分のためより、他の人のために頑張った方がより効率的であることを知りました。それは日本語の先生として働くようになってからです。私にとって日本語の勉強はとても楽しいです。でも難しい言葉などを見たら、「こんな難しい言葉、日本人でも使わないだろう」と勝手に思って、しっかり覚えようとしませんでした。いつもいろいろサボっていました。
そんな私が、コロナでロックダウンになった時、オンラインで日本語を教えるバイトを始めることになりました。そこでわかったのは自分のために勉強することと他の人に教えるために勉強することは、全く違うということです。私は前のようにサボれなくなったのはもちろん、生徒さんがわかりやすいように、時間をかけて面白いパワーポイントを作ったり、言葉の使い分けを調べたりして、頑張って教えました。私は日本人ではなく、ただの日本語学習者の一人にすぎないので、全ての日本語を熟知しているわけではありません。しかも、もともと忘れっぽい性格で、何回覚えてもすぐ忘れる始末です。でも言葉の違いなどを生徒さんに質問されたら、すぐに説明したいので、授業の前は必ずメモしておいたりして、いろいろ準備しました。毎日の準備が大変で、ストレスも溜まってきました。そのあと、来日することになったので、仕事は辞めることにしましたが、後々分かったのは私の日本語力が格段に上達していたことです。もし私がその仕事をしていなかったとしたら、いつも通りマイペースに勉強していたかもしれません。いろいろサボっていたかもしれません。でも他の人に教えることになったので、責任を持って、サボることなく、全力を尽くしました。だからこそ、私にとっては他の人のために頑張る方がより効率的だと思ったのです。
それは勉強だけではありません。例えば、料理を作ることも同じです。自分のために料理する時は、あまり味を気にしません。塩からいなと思ったらご飯多めで食べたり、少し焦げてしまった時も気にせずそのまま食べたりしています。でも家族のために作る時は気をつけて作ります。ある日、母の代わりに料理をしたら、「今日はおいしくないね」と父に文句を言われました。だから料理の作り方を変えたり、材料の量を変えてみたりして、頑張って何度も作ってみたら、やっと父に褒めてもらえました。自分も上達して、みんなも美味しく食べられたので、お互いハッピーになれました。
このような経験から、私は自分を上達させるのは自分じゃなくて、他の人かもしれないと思うようになりました。以前の私ならそれがわからなかったかもしれません。自分と他の人なんて関係ないと思っていたかもしれません。
でも今は、「情けは人の為ならず」ということわざの示す通り、人のために頑張ることは回り巡って自分に返ってくるということがよーく理解できました。みなさん、ためらわずに他の人のために頑張りましょう。きっと回り巡って自分のところに返ってきますから。

理事長賞(中級の部 最優秀賞)

《可能性の先へ》

中級の部受賞者
理事長賞

みなさんは自分を疑ったことがありますか。私は子供の頃、人間の可能性は無限だと思い、どんなことでも頑張れば負けるはずがないと信じていました。実際、小学生の頃はみんなからよく褒められていました。そんなに勉強しなくてもほかの子よりいい点数を取り、周りの人から感心されました。そして、周りの期待も高くなり、自分でも「僕はすごいんだ。」と調子に乗っていました。
ところが、中学生になり、学校の授業が難しくなってくると、私の成績は徐々に下がっていきました。それもそのはずです。私は自分がすごい人間だと思ってまったく努力をしなくなっていたのです。そんな状況に焦り始めた私は、以前のように周りから認められたくて、真剣に勉強に取り組みました。
しかし、どれだけ努力をしても、まったく成績は上がりませんでした。やってもできないという現実を知った私は、逃げることを選びました。その結果、言うまでもなく、どんどん自信を失っていきました。
私は何とかしようと、新たなことを見つけては努力をしてみましたが、その度にいつも自分より優れた人が現れて私の未熟さを思い知らされました。そして、ついに自覚することになりました。そう、私は特別な人間などではなく、ただ平凡で普通の人間だったのです。
時間が経ち、高校生になっても状況は少しも変わっていませんでした。その中で、暇つぶしに物語を作ってノートに書くようになったのです。
ある日の昼休み、私は物語を書きためたノートを机の上に置いたまま、お昼ご飯を食べに行っていました。その間に、ある友達が来て私の机に置いてあったノートが気になり、勝手に読んでしまったのです。その物語は、私が自分の妄想をただ書いただけのものだったので、絶対には人に見られたくありませんでした。教室に戻ってきた私は、彼女を見ると慌ててノートを取り返そうとしましたが、もう手遅れでした。
私はきっと笑われるに違いないと思ってびくびくしていました。ところが、彼女はいつまでたっても何も言わずにじっとしていました。なんと彼女は泣いていたのです。そして、「本当にいい物語ね。」と褒めてくれました。
心の底から嬉しくなりました。それ以上に、意外でした。私は自分に自信がなく、物語もつまらないものだと思っていたのに、相手に感動を与え、褒められることになるとは思ってもみませんでした。私は彼女の言葉で救われました。
自信とはいったい何なのでしょうか。成績が悪いという現実を見て、自信を失っていました。でも、友達から褒められたことで自信を取り戻していきました。実は、どちらの場合も私自身は何も変わっていません。人は自分がいる環境に影響されやすいものです、それは私達の弱さを表しています。要するに、自信を持つかどうかは、私がどう考えるかにかかっているのです。
発明王エジソンは、かつて「失敗すればするほど、我々は成功に近づいている。」と言ったそうです。
可能性は、目の前の現実の中からは見つけにくいものです。でも、自信は外側にあるのではなく、あなたの中にあります。可能性はあなた自身が自由に作り出すことができるのです。私は間違っていませんでした。やはり人間の可能性は無限だったのです。幸せのカギはいつだって自分の中にあります。

センター長賞(初級の部 最優秀賞)

《笑顔の大切さ》

初級受賞者
センター長賞

笑顔は言葉や言語を超えたコミュニケーションの手段です。たとえ、同じ言語を話さなくても笑顔は暖かい感情を伝えることができます。この力は自分自身だけでなく周囲の人達にも素晴らしい影響を与えます。赤ちゃんが生まれて泣き始めた時お母さんが最初に行なうコミュニケーションは何だと思いますか、皆さん?それはもちろん笑顔です。生まれたばかりの赤ちゃんでも笑顔と笑いを理解します。お母さんが赤ちゃんを笑顔にするのと同じように、私達は困っている人達に幸せと笑顔を広げる責任を負わなければなりません。実は皆さん、私達の小さな笑顔には他の人の心に暖かさをもたらし命を救う力があります。さらに、笑顔は私達の健康に良い影響を与えます。有名なことわざにあるように、笑いは最良の薬なのです。私は日本に来て留学の輪に加わった後、笑顔とポジティブな性格がいかに人々を惹きつけるかに気づきました。笑顔は私達と周囲の人々を結びつけ、感情を共有する架け橋として機能します。今日はここにいる皆さんに一つ質問したいのですが、今朝起きた時、あなたは自分を見つめて、人生で直面していることがなんであれ、なんとか乗り越えられるだろうと笑顔で思いましたか?子供の頃に母が教えてくれた習慣を共有したいと思います。それは私の人生における幸福、自信、前向きさ、充実感の秘訣です。今日朝目が覚めた時、鏡に映る自分を見て微笑んで、この美しい人生とチャンスに満ちた新しい一日を見せてくれたことを感謝し、結果がどうであれ、今日は全力を尽くすと自分に言い聞かせました。ぜひ、皆さんも生活の中で一度試してみてください。そしてそれがあなたの人生を変えることを約束します。これからも皆んな笑顔で輝いてください。ご清聴ありがとうございました。