第45回 日本語スピーチコンテスト 入賞者スピーチ全文

大阪市長賞(上級の部 最優秀賞)

《そもそも生きている意味は何ですか》

上級の部受賞者
大阪市長賞

皆さんは自分のことが好きですか?自分を好きになることは意外と難しいとは思ませんか?私は難しいと思います。昔はそうではなかったのに、成長すればするほど自分のいいところが見つかりにくくなったのはなぜなんでしょう。
「自分のことが嫌い」という気持ちは誰にでも少なくとも生きている間に一回か二回は感じたことがあるのではないでしょうか?私は一回どころか、毎日といってもいいぐらいよく感じます。自分が嫌になった時はよく「何のために生きているんだろう」とか「私の生きている意味は何だろう」と思ってしまいます。どうしても自分の存在を否定してしまう私に何か生きている理由を見つければ自分を否定せずに前に進めると思うからです。
しかし、そもそも生きている意味とは何でしょうか。実際のところ私達が生きていることに意味は必要でしょうか。正直に言うと私は人生に意味なんて必要ないと思います。こういうことが考えられるようになったのはつい最近でした。昔の私は人生には意味や目的が必要だと絶対に言います。高校生の時のスピーチコンテストで発表した題も「人生の目的」でした。でもそういう考えはストレスになってしまいました。もちろん、意味や目的を持って生きているのはとてもいいことだと今でも思います。「愛しい人を幸せにするため」とか「夢のため」とか、どれも素敵な人生の目的です。でも、それに集中しすぎたらプレッシャーにもなります。その目的が達成できなければもう人生は失敗だと思いがちです。
よく考えてください。人生の意味や目的を決めたのは誰でしょうか?それは自分自身です。社会からいろいろの影響を受けてきたかもしれませんが結局自分が考え出したことです。それがもう出来ない、したくない時が来たらどうなりますか?体が自動的に爆発して死にますか?いいえ、死にません。人間は何かのためだけに作られたロボットじゃないですから。たとえ意味や目的がなくても生きられます。誰かからの生きていてもいいという許しは必要ありません。
他の生き物に「お前の生きている意味は何だ」という質問をしても答えは出ないでしょう。なのになぜ人間には答えを求めるのでしょう。人間が他の生物と違って理性を持っているからでしょうか? しかし、結局人間も他の生物と同じで生まれた時は自分で決めたわけじゃない。ただただ生まれただけで、自分の見た目も才能も家族も生まれる環境も選ぶことができません。それでも生きています。精一杯生きています。それはすごいとは思いませんか?私は皆さんはすごいと思います。生きていてすごいです!生活で苦しんでいる人も、難しいことや悲しいことをたくさん抱えながら辛い日々を乗り越えた人も、みんなえらいです。
最後に、生きている意味や目的についての考え方は一人一人違うと思います。人生の意味を探すことは決して悪いことではないと私は思います。ただ、プレッシャーにならないように、自分自身を嫌いにならないように、意味がなくても自分を許す方法を忘れないでください。意味のない人生を楽しむことができたら、世界がより美しく見えるようになるかもしれません。

理事長賞(中級の部 最優秀賞)

《好きなこととできること》

中級の部受賞者
理事長賞

皆さんは未来にどんな仕事をして、どんな人生をおくりたいですか?その将来の希望は何を理由に、どんな基準で選びますか?そして、将来の仕事を選ぶ時、重要なことは何ですか?好きなことをすること?それとも自分が持っている才能を生かすこと?
私は幼い時、絵を描くのが好きでした。美術の塾にも熱心に通って時間があればいつも絵を描くほど好きでした。小学校4年生の時までは画家という1つだけの目標をめざして、画家になった未来を想像したりしていました。でも悲しいことに私の絵の実力はあまり高くありませんでした。練習しても結果を出すことができませんでした。すなわち才能がないということを知ったのです。それで長年の夢だった画家という夢をあきらめてしまいました。
でも絵を描くことの次に何かを作ることが好きだった私に両親はパティシエという職業を教えてくれました。見ためが美しくておいしいデザートが作れるパティシエという職業は、作ることも食べることも好きな私にぴったりの仕事だと思いました。優れた素質を持っているといえませんでしたが、こつこつと練習した結果、手先は器用になりました。そして職業にしてもいいと思えるようになりました。しかし、もっと練習が必要だと思いましたので、製菓の勉強をするために日本に留学したわけです。
私は好きなことを職業にするより、得意なことを職業にした方が良いという話を聞いたことがあります。好きなことが仕事になってしまうと、もう楽しむことができないし、好きでもうまくできなければやる気がなくなり、結局失敗につながるというのです。 しかし、私はそうは思いません。職業を決める上で一番大事なことは好きなことを探すことだと思います。どんなことでも初めから上手にできることはないと思います。しかし、好きなことは見つけることができます。そして、見つけたいくつかの好きなことの中で練習と努力を通じて上手くできそうなものを探せば、自分にぴったりの職業を見つけることができると思います。
皆さんはどう思いますか?
ご清聴ありがとうございました。

センター長賞(初級の部 最優秀賞)

《出会い》

初級受賞者
センター長賞

日本に留学できるとわかった時、私は本当にうれしかったです。夢見ていたことが、本当になるのですから。しかし、同時に大きな不安もありました。誰かと友達になれるのか、日本でうまくやっていけるのか、全く分かりませんでした。
日本に来て最初の数日は、2.3人のクラスメートと出かけてばかりいました。ある夜、他の学生と話していると、その人が帰ってきました。留学生かと思って、どこの国から来たのか聞いてみました。日本人には見えなかったからです。実は日本人だと知ってびっくりしました。彼は学校のレジデント・アシスタントでした。この出会いをきっかけに、私の世界は広がりました。私がとっても下手な日本語で話しかけても、彼は私が言いたいことをわかろうと努力してくれました。
彼のおかげで、他の日本人とも友達になれました。
一人だったら到底できないいろいろな経験もできました。有馬温泉へ行って温泉に入りました。恥ずかしかったです。居酒屋へも行きました。大丈夫、私は23さいですし、お酒はそれほど飲みませんでした。初めてお好み焼きも作りました。神戸の中華街へ行って、有名な小龍包を食べました。とてもおいしかったです。奈良では、大きくてりっぱな大仏を見ました。かわいい鹿があちらこちら歩いていて、鹿のふんもいっぱいおちていました。京都へ行って伝統的な町並みとお寺を見ました。たった3か月の経験ですが、すべてが夢のようでとても楽しかったです。ただただ、人と人との出会いに感謝です。
誰も知り合いのいない日本へ来たからこそ、改めて人と人との出会いの大切さを学ぶことができたのだと思います。これからも出会いを大切にするとともに、今度はそのお返しとして、私が他の人のためにいろいろな出会いを作り出していきたいと思っています。