障害の捉え方

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(1)社会モデル

筑波大学の校庭(イメージ)

大学等において障害学生支援を行なう上で、どのような学生を障害のある学生として捉えるかという観点は極めて重要です。
1980年(昭和55年)の世界保健機関(WHO)における国際障害分類(International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps:ICIDH)において、障害は疾患や傷害を発端とし、それが、機能・形態障害(Impairment)、能力障害(Disability)と連鎖し、結果として社会的不利(Handicap)を引き起こすという考え方であり、障害という現象を、疾病、外傷、若しくはその他の健康状態により直接生じた「個人的な」問題として捉え、専門職による個別治療といった形での医療を必要とするものとみなされていました(医学モデル:medical model)。

これに対し、2001年(平成13年)のWHOにおける国際生活機能分類(International Classification of Functioning,Disability and Health :ICF)においては、障害は人間の個性の一つであると捉え、社会的不利(handicap)軽減の手段を、原因となった疾患や傷害ではなく、社会の側の環境の改善に求めるいわゆる「社会モデル(social model)」の考え方を取り入れ、医学モデルとの統合を目指しました。この考え方では障害は「ある」か「ない」かではなく、人の生活機能を健康状態と背景因子(環境因子と個人因子)の相互作用の相対的な関係性の中で捉える点が大きな特徴です。

この考え方は、以後の世界における障害者政策の理念的なメインストリームとなり、人の健康状態をこのように関係する様々な個人因子や環境因子の相互のベクトルの結果としての相対的なものとして捉えることで、社会において「障害」や「障害者」と一括りにはできない多様な状況があることが認識できるようになりました。2006年(平成18年)の国連の「障害者の権利に関する条約(Convention on the Rights of Persons with Disabilities)」、その批准に向けた、障害者基本法(平成23年8月 改正法施行)、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」(平成28年4月施行)はいずれも、この「社会モデル」の考え方に基づいている点は極めて重要なポイントです。

(2)障害のある学生とは

「第二次まとめ」においては、「第一次まとめ」と同じく、改正障害者基本法(平成23年8月 改正法施行)にのっとり、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある学生」を障害のある学生として捉えています。すなわち、単に障害者手帳や診断書の有無によって決められるものではなく、また精神障害や発達障害、慢性疾患等による内部障害等のように、場合によって外見上は気が付くことが困難な場合も多いことに留意する必要があります。また、同法では、「社会的障壁」について、「障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会生活における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」としています。したがって、大学等においては、大学等における事物、制度、慣行、観念等により、キャンパス内での移動、施設利用、修学、資格取得、その他の様々なプログラムへの参加等の全ての場面において、配慮を求められる場合が想定されます。

(3)支援が必要とされる学生の活動の範囲

また、「第二次まとめ」においては、大学等における支援が必要とされる学生の活動の範囲として、入学、学級編成、転学、除籍、復学、卒業に加え、授業、課外授業、学校行事、課外活動(サークル活動等を含む)への参加等、教育に関する全ての事項とし、加えて「第一次まとめ」では十分に議論されなかった通学、学内介助(食事、トイレ等)、寮生活等に関する事項等の、「大学等での教育には直接には関与はしない学生の活動や生活面への配慮」についても検討の対象とされ、好事例の紹介という形で取りまとめられています。詳しくは、リンク『障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第二次まとめ)』「別紙3」*を御参照ください。

  • *文部科学省 障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第二次まとめ)のページ下段にあるPDFファイルに含まれています。

執筆者:竹田 一則

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