入学試験・高大連携

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入学試験

大学等への進学に当たっては、何らかの形式で入学試験が行なわれます。昨今では、入学試験の方法や時期も多様化していますが、いずれの場合でも、入学試験において障害を理由とした不当な差別的取扱いは行ってはいけません。このことは、理念や価値観の問題ではなく、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」に基づく法的な義務となります。多くみられる誤った対応としては、「この大学では、○○障害のある方を受け入れたことがない」というような経験値を理由として、受験の拒否や他大学等への受験を促すといったことがあります。また、受験に当たって、他の受験生には求めない条件を障害のある受験生にだけ課すようなことも差別的取扱いになる場合があります。このような対応は、場合によっては悪意のないところから生じることもあるため、十分な理解が必要です。

さらに、受験者の障害等の状況に応じて合理的配慮等の対応が必要になることがあるでしょう。合理的配慮の提供についても各大学等の責任において実施する必要がありますので、誤った認識が生じないように、十分な理解が必要です。合理的配慮の提供に係る対応に当たっては、教職員個別のノウハウだけでなく、組織的なシステムとして構築されていることが望ましいでしょう。

一方で、入学試験における合理的配慮等について、その対応方法・内容は一律ではなく、各大学等の入学試験の形態等によって個別具体的な対応が求められます。専門的な情報やノウハウの蓄積・活用が必要になるため、入学試験を担当する部署は、必要に応じて障害のある学生の修学支援を担当する部署等と連携することも考えられます。ただし、入学後にどの程度の支援が必要になるかなどを、入学試験における対応と連動させて考えることは避ける必要があります。具体的には、入学後に想定されるような支援の見通しを背景に、入学試験で行なうべき合理的配慮の提供を少なく見積もるというような対応は避けるべきです。受験生の希望などによって修学上のことを事前に相談することはあり得ると思いますが、入学試験における合理的配慮について検討・実施することと、入学後に提供する配慮等とは棲み分けておくことが必要です。

また、各大学等においては、入学試験に関する情報を明示・発信する際に、あわせて合理的配慮に関する情報(申請方法や時期等)も公開する必要があるでしょう。障害のある受験希望者が必要な情報にアクセスできるよう、また、入学試験における合理的配慮等の対応がスムーズになるよう、積極的な情報公開が望まれます。どのような情報を公開すべきか、また、合理的配慮の例にはどのようなものがあるかについては、独立行政法人大学入試センターの大学入学共通テストにおける「受験上の配慮案内」などを参照していただければと思います。

さらに、その上で受験希望者との建設的対話には十分に留意する必要があります。入学試験における合理的配慮は、修学上(入学後)の合理的配慮の提供に比べて双方の事情等を十分に認識できていない状況から対話がはじまることが多いため、より丁寧な対応が必要になります。形式的・表面的な対応にとどまらず、各大学等から受験希望者に対して必要な働きかけができるよう、対応手順・内容には十分に留意してください。

なお、ここまで述べたような対応については、入学試験を担当する部署や各学部等の教務担当部署などでの対応が中心になると思いますが、その背景として各大学等における障害学生支援に関する基本的な理解・啓発が必要になるでしょう。各部署としての対応はもちろん、マネジメント層の理解と具体的な対応が可能になるようなシステムの構築が欠かせません。大学等の高等教育機関における重要な機会・機能の一つである入学試験において、障害による差別が生じないこと、また、障害のある受験生の権利が保障されることは必須要件であり、そのことを適切に認識した上で具体的な対応を行なえるようにしておくことが大切です。

高大連携

多くの進学希望者と同様に、障害のある進学希望者にとっても大学等の状況を的確に把握することは、志望する大学等の決定において重要な情報となります。そのため、一般的に公開している大学等の情報を様々なニーズのある進学希望者がアクセスできる状況にしておくことが必要です。また、オープンキャンパスや説明会等においても、必要な配慮の受付や実施が求められるでしょう。また、障害のある進学希望者にとっては、志望する大学等の障害学生支援の状況は重要な判断材料であることから、事前に相談等を行なうことは有効な情報源となります。

更に、障害のある学生の入学に当たっては、それまでの教育機関における支援の状況について、個別の教育支援計画等の支援に関する資料やヒアリングにより収集し、スムーズかつ効果的な支援を実施することが求められます。ただし、高等学校等と大学等における教育の方法や内容、教育環境の違い等により、支援の方法・内容も異なることがあるということに留意する必要があるでしょう。

  • 情報共有を行なう場合は、学生本人の了承を得ることが必要です。

大学等に求められる体制整備の内容

  • 相談窓口の明確化
  • 事前相談、見学等の受付
  • オープンキャンパス、説明会等における支援
  • 入学試験時の配慮に関する申請方法、時期等の明確化
  • 配慮の内容等を協議、決定するシステムの構築(対話的なプロセスを含む)
  • 配慮申請の受理から実施に至るまでのフローの作成、共有
  • 配慮に関する事例やノウハウの蓄積
  • 入学試験や入学後の支援について、高等学校等との連携

大学の校舎の風景(京都大学)


執筆者:村田 淳