6.発達障害(4)支援を行なう場合の注意点

大学が変更・調整を行なう「合理的配慮」は、学生本人からの要望に基づいて行なわれます。合理的配慮の決定にあたっては、学生に対し根拠資料(障害者手帳、診断書、心理的検査の結果、学内外の専門家の所見、高等学校等の大学入学前の支援状況に関する資料等)の提供を求めることができます。配慮内容の妥当性を確認するため、公平性が求められる場面で多くの人の納得を得られやすくするために、根拠資料は有効ですが、どういった資料を求めるかは大学としての判断になります。また、大学にとって負担にならないような配慮であれば、特別な資料を求めなくてよい場合もあるでしょう。教育的な配慮や指導、保健センターや学生相談室での相談対応なども、根拠資料を必要とするものではありません。また、相談対応では、学生自身が配慮の必要性などを意思表明できるようになることを支援することも重要になります。
本ガイドブックでは、根拠資料と提供可能な配慮について、以下のように分類しています。分類は絶対的なものではありませんが、判断の参考にしていただければと思います。

1.根拠資料が提出された場合の配慮・支援

場面一覧の全ての支援について検討できます。障害者手帳や診断書を取得していなくても、本人の要望と手帳や診断書以外の根拠資料がある場合には、配慮や支援を検討することが望まれます。

2.根拠資料が提出されていない場合の配慮・支援

本人からの要望があり、配慮や支援の必要性を感じる場合には場面一覧に示した「有」以外の配慮や支援を検討することが可能です。また、本人から自主的な申し出はないが、周囲から見て心配な状況がある場合、教職員からの声かけや、学生相談の利用を勧めるなどの対応が望まれます。

支援の際は、まず支援の窓口・支援担当者を明確にすることが大切です。学内に障害学生支援の専門部署があればそこのスタッフが、そのような部署がない場合は学生相談室の相談員、保健室のスタッフ、学生支援関係教職員等が、適切な研修を受けた上で支援者となることができます。支援担当者は、学生本人への直接的な助言だけでなく、コーディネーターとして学生本人と指導教員、各学部・学科の窓口、就職課、学外の支援機関や保護者など、関係者との連携を進めながら、支援策を考え実行していくことが求められます。また必要によっては教職員だけでなく、学生や大学院生の中からピア・サポーターやメンターを頼んで支援を行なうことも考えられます。
合理的配慮の内容の決定過程は、他の障害カテゴリーと同様に、学内の規定に則った組織的な対応ができるようにします。発達障害の場合、学生のニーズが多様で、診断名だけでは配慮内容が決まらないことも多くあります。心理検査の結果、高校時代までの記録など、機能障害の状態を示す根拠資料も用いながら、配慮の妥当性を検討することが求められます。
教職員が本人に接する場合のポイントとして、まず否定的な物言いは避けて、肯定的に話すようにしましょう。どんな学生でもそうですが、特に発達障害の学生は様々なトラブルから自分への評価や自尊心が傷ついていることが多いので、叱責よりも賞賛するような言い方を心がけます。(例:「××ができなかったら単位が取れないよ」ではなく「××ができたら単位が取れるから、頑張ろうよ!」)また抽象的な言葉や比喩は用いずに、正確で具体的な表現を心がけてください。