4.肢体不自由(2) 損傷部位・病名

  • 運動機能障害についてのみ示します。また、合併症などについては関連する障害の章を参照してください(例えば「てんかん」→病弱・虚弱の章を参照)。
  • 部位別の参照については、対象となる学生の状態に応じて参照してください。
  • 障害が重度の場合は、特定の部位だけでなく全身に注意してください。
  • 肢体不自由はビジブル(visible)であり外見的にわかりやすい障害に思えますが、かえってわかりにくいこともあります。例えば上肢はあるのに十分力が入らない、持てない、あるいは上がらない、力のコントロールができない、などです。少し歩けても長距離は移動できないこともあります。また、運動機能以外に障害を併せ有することもあります。以下の説明を参考としつつ、具体的な困難やニーズは学生本人に確認することとしてください。

【病名】

【病名】

【病名】

【病名】

損傷部位:脳

脳血管障害

脳血管が破れたり(→出血)、詰まったり(→虚血)することで脳の細胞に栄養や酸素が供給されなくなり、脳の細胞が壊れてしまいます(脳損傷)。いわゆる脳卒中が典型ですが、一般に中高年にみられるものであることから、ここではモヤモヤ病(※1)や急性小児片麻痺(※2)などを想定しています。脳細胞が損傷を受けると筋がつっぱる痙性運動麻痺(※3)などになります。自分で歩ける状態から車いすが必要な状態までといったように、移動機能や手指機能の障害には幅があります。

頭部外傷の後遺症

交通事故、スポーツなどで頭部に著しい衝撃を受け、脳細胞が壊れる(脳損傷)ことで、筋がつっぱる痙性運動麻痺(※3)などの後遺症を残します。自分で歩ける状態から車いすが必要な状態までといったように、移動機能や手指機能の障害には幅があります。

脳性まひ

受胎から新生児期(生後4週以内)の間になんらかの原因で受けた脳損傷の結果、姿勢・運動面に異常をきたしたものをいいます。いくつかの型に分けられます。筋がつっぱる痙性運動麻痺(※3)を示す「痙直型」や、ゆっくりねじるような、あるいはふらふらする不随意運動を示す「アテトーゼ型」が一般的です。自分で歩ける状態から車いすが必要な状態までといったように、移動機能や手指機能の障害には幅があります。

  • ※1 モヤモヤ病:脳の大きな動脈がうまく機能せず、それを補うために異常に毛細血管が発達した状態。そのため出血等が起こりやすい。
  • ※2 急性小児片麻痺:健康な6歳以前の乳幼児が突然に半身に痙攣などを起こし、原因不明のまま片麻痺を残す疾患群を総称していう。
  • ※3 痙性運動麻痺:からだの動き、すなわち筋肉の緊張の調節を司る神経(脳の細胞など)の損傷によって筋肉の強い緊張(または筋緊張の低下)とそれによる運動の困難が生じた状態。典型的には、脳卒中によって生ずる片麻痺があり、からだの半分が麻痺して、見た目には、腕は曲がった状態で、足はつっぱった状態で固まってしまう(見た目にはわかりにくいが、口の動きや胴体の動きなども実際には制限されていたりする)。

部位別参照

損傷部位:脊髄・末梢神経

脊髄損傷

スポーツでの事故や交通事故などによって、脊髄が損傷を受け、損傷部位から下の脊髄機能が失われた状態で、腕や足を動かせなかったり姿勢を保てなかったりします。脊髄のどの位置で損傷を受けたかによって、自分で歩ける状態から車いすが必要な状態までといったように、移動機能や手指機能の障害には幅があります。

二分脊椎

胎児期における器官発生障害で、主に腰の脊椎の癒合不全(※4)によって、脊髄が腰から突出するなどした状態です。その結果、そこから下の脊髄機能が失われます(脊髄損傷と同様の状態)。主に下肢機能が失われます。膀胱直腸障害もみられます。

シャルコー・マリー・トゥース病

遺伝性の末梢神経疾患で、手足などの末端から運動及び感覚神経の機能が障害されます。自分で歩ける状態から車いすまでといったように、移動機能や手指機能の障害には幅があります。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)

筋肉を働かせる神経機能が失われるために、動いたり、呼吸したりすることができなくなる原因不明の疾患です。多くの場合は、手指の使いにくさや話しにくさといった症状で始まり、進行していき、要全介助で人工呼吸器使用となります。

部位別参照

損傷部位:筋

筋ジストロフィー

筋そのものが衰え萎縮していきます。いくつかの型があります。最も多い「デュシェンヌ型」は、症状が進んで15歳頃には要全介助となり、さらには人工呼吸器が必要になります。デュシェンヌ型の軽度のタイプで15歳を過ぎても歩行可能な「ベッカー型」は、下腿の筋が萎縮します。

部位別参照

損傷部位:骨

骨形成不全症

生まれつき骨が著しくもろく、成人までは骨折が多かったりします。

変形性股関節症

股関節の軟骨がすり減って、関節の可動域制限や、筋萎縮による筋力低下、患側下肢の短縮、それらによる跛行(※5)といった症状がみられます。日常生活上の注意として、いす・洋式トイレ等の洋式生活が望ましい、激しい運動や長時間の立位・歩行等は避ける、といったことがあります。

四肢における欠損・形成不全

先天奇形、指や腕の欠損などがある場合です。

切断

事故などで四肢を切断した場合です。

  • ※1 モヤモヤ病:脳の大きな動脈がうまく機能せず、それを補うために異常に毛細血管が発達した状態。そのため出血等が起こりやすい。
  • ※2 急性小児片麻痺:健康な6歳以前の乳幼児が突然に半身に痙攣などを起こし、原因不明のまま片麻痺を残す疾患群を総称していう。
  • ※3 痙性運動麻痺:からだの動き、すなわち筋肉の緊張の調節を司る神経(脳の細胞など)の損傷によって筋肉の強い緊張(または筋緊張の低下)とそれによる運動の困難が生じた状態。典型的には、脳卒中によって生ずる片麻痺があり、からだの半分が麻痺して、見た目には、腕は曲がった状態で、足はつっぱった状態で固まってしまう(見た目にはわかりにくいが、口の動きや胴体の動きなども実際には制限されていたりする)。
  • ※4 脊椎の癒合(ゆごう)不全:脊椎(脊髄を覆う骨)は、胎児期において脊髄を覆うように背中側が閉じるようにして形成される。このとき、うまく閉じる(癒合)ことができない(不全)と、そこから脊髄が脱出してしまったりして、二分脊椎となる。
  • ※5 跛行(はこう):患側の足を出そうとしたとき、同側の骨盤が下がってしまい、代償的に上半身が反対側へ傾く歩き方。

部位別参照