4.肢体不自由(4)ニーズ一覧・(時間別)

1.入学まで

入学試験前の困難と支援

困難
自分の学びたいことを明確にする。(将来変更することがあっても、進学希望をするとき「何を学びたいか」、「どの分野を学ぶか」を明らかにする。)
【支援】
オープンキャンパスなどで、助言・アドバイスをする。保護者、高校の担任・進路指導担当者と連携をとり、必要な助言をする。学ぶことを主としつつ、サークル活動、アルバイトなどを含めた学生生活をイメージできるアドバイスをする。
【支援例】
オープンキャンパスなどで、障害学生対応ブースを設けて相談活動をする。

困難
自分の障害について認識を深め、他の人に説明できるようにする。
【支援】
自分の障害について、改めて学び直し、「自分でできること」、「支援を得てできること」、「自分のニーズ」がどのようなことか、周囲の人々や学習環境も視野に入れて、入学までに説明できる力を育てるようにアドバイスする。
【支援例】
入学相談活動の中で、情報提供する。

困難
自分の障害の程度で、自宅通学か、下宿生活か、それぞれの場合の学校までの移動手段を確認する。
【支援】
実際に移動して(ヘルパー同伴も含めて)、自分で確認すること、公共交通機関を利用する場合は、その方法を確認しておくようにアドバイスする。

困難
受験上の配慮が可能か、また受験上の配慮の内容を確認する。
【支援】
受験上の配慮の情報を提供する。受験配慮願い等の提出を求める学校であれば、提出するよう伝える。
【支援例】
合否判定に不利になることはないことを伝える。

入学試験時の困難と支援

困難
ア.所定時間内での解答困難
イ.鉛筆などによる書字解答困難
ウ.所定の試験場所での受験困難

【支援】
上肢の障害で答案筆記に時間がかかる場合は、時間延長を配慮する(※1)
パソコンを使用したり、代筆やチェック解答を認めたりする場合もあり、別室受験を認める場合もある。大学入試センター試験における受験上の配慮を参考にすると良い。

(※1)試験時間は、肢体不自由の状況に応じて延長する。または、大学入試センター試験の基準に準じて延長時間を決定する。

合格から入学までの困難と支援

困難
入学後、下宿生活や通学に、障害者自立支援法等、自分の居住する市区町村で自分の所持手帳でどのような支援制度が活用できるか確認し、志望校のある地域で利用できるか確かめる。

【支援】
支援制度活用について情報を提供する。

困難
入学後の移動手段は、手動車いす、電動車いす、または杖等のどの方法にするかを、合格した学校を見学して選ぶ。学習することを最優先して移動手段を検討する。
【支援】
障害の程度によって、日常の移動が筋力の衰えや萎縮などを防ぐことにつながっている場合もあるが、学習することを優先に考え、筋力トレーニング・矯正は別に計画することが必要であることなどをアドバイスする。

困難
学内移動がどの程度可能か、教室・図書館・研究室・食堂・トイレ等での支援はどの程度必要か確認する。
【支援】
学内移動がどの程度可能かは、実際に移動して確かめることをアドバイスする。学内移動に困難があることを確認した後、物理的なバリアがあり修学等に困難な場合は、施設設備の改修を検討する必要がある。

困難
ア.学生生活を自分なりに具体的にプランニングする。
イ.自分に必要な支援について自分で説明できるようにする。
ウ.学校の中で地震や火災などが発生したとき、どのように避難するか考えておく。

【支援例】
合格後、障害学生支援について面談を行ない、高校までと違った学生生活、学習スタイル、学校が行なっている支援について情報を伝え、障害の種類、程度に応じて、当人の状況に応じた学生生活について話し合う。

2.学習支援

授業全般における困難と支援

困難
実験室で実験台を使用しての実験、設計図の製図作成実技、調理室での実習等で、車いす利用ではその授業に参加しにくいことがある。

【支援】
室内の机や実験台等を調整したり、車いすの動線交差が少ない配慮を検討したりして改善する。グループで実験する際にはそれぞれのポジションを相談したり、車いす学生の役割を明確にするなどして、共同の実験を実感できるよう配慮する。

困難
紙の取扱いが困難。
【支援】
レジュメ・資料をデータで送付する。
       
困難
ノートをとることが困難。
【支援】
ポイントテイカー(※2)、ノートテイカーを配置する。

困難
講義中に、感想文やレポートを書くことが困難。
【支援】
担当教員と相談して、レポートをEメールに添付して、後ほど提出する。

困難
学外の学習においては、移動の際の交通手段、エレベーターの有無、段差などがバリアになることがある。教育実習、福祉実習等で、車いす学生が活動に参加できない場面がある。
【支援】
あらかじめ移動の手段を確保しておく。必要な場面において介助者の配置をする。資格取得の実習においては、実習先と事前に綿密な連絡相談を行ない、車いす学生本人主体の学習内容を確認して臨むようにする。

困難
通院時の欠席。
【支援】
障害があることに起因する通院に対する特別な配慮をする。
【支援例】
合格後の面談後、必要に応じて、担当者が相談活動を行ない、本人がセルフコーディネイトできるようにアドバイスする。

※2:ポイントテイカーは、支援を受ける学生の指示により板書や講義の要点を書き取る他、教員がテキストやレジュメを読み上げるときに、ページをめくる等の支援を行なう。( 日本福祉大学 障害学生支援センター「障害学生とサポート学生のためのキャンパスガイド」より)

試験時の困難と支援

困難】
筆記による解答に時間がかかる。
【支援】
時間延長も配慮する。(※1

困難
個室など必要な場合がある。
【支援】
別室受験を可能とする。
困難
論文形式試験
【支援】
パソコンによる出題・解答、口述筆記、録音テープでの提出等を可能にする。

3.就職

就職時の困難と支援

困難
情報収集すること。
【支援】
情報提供する。

困難
自分の力量と障害の程度と就職希望先とのマッチング。
【支援】
相談活動をする。
【支援例】
キャリア開発部、学生生活相談等の部署で相談活動をしている学校がある。外部の障害学生就職支援組織との連携を進めて成果を上げている例もある。

卒業後の困難と支援

困難】
継続して働くことや、障害があることによる職場でのトラブル。
【支援】
職業相談所などとの連携のとり方をアドバイスする。
【支援例】
卒業生との連携の中で、部分的に支援を行なっている例はある。

4.災害時の支援

授業時間内の災害時における困難と支援

困難
即座に一人で避難する。
【支援】
・避難の際、周囲への支援依頼に用いるため、どのような支援が必要か記載したものを常に身につけておくよう指導する。
・緊急時にその場で支援方法を伝える準備をしておく。
・車いすで避難するか、担架などを使うか等、計画を立て、避難 訓練を実施しておく。

授業時間外の災害時における困難と支援

困難】
・一人住まいの学生が避難する。
・避難情報が得にくい。

【支援】
・家主、隣の住人、学友等との連携をとれる体制を整えておく。
・携帯メール他、各種ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)等学生が利用しやすいツールを活用した連絡体制を整え、大学と学生相互の連絡を可能にしておく。
・ヘルパーとの連携を常にとっておく。
・学生の居住する自治体と災害時避難体制の連携をとっておく。