肢体不自由 場面別 1 移動

移動全体

困難さ・考えられる支援の観点

車いす使用の場合、または杖使用の場合によって、困難の内容や程度は異なってきます。屋外の道路では、幅は十分か、段差、舗装のでこぼこ、両側の斜面、坂道、階段、横断歩道の段差の有無、駐車や駐輪の状態等々の多様な観点からチェックする必要があります。もちろん、学内の施設等で行けない場所はないかの確認も必要です。そのため、車いすで実際に移動してみて確認すると良いです。さらに、杖の場合には両手での杖使用及び片手での杖使用で実際に移動してみることが大事です。
意外に気がつかないことですが、点字ブロックが車いすの移動困難の一因になることもあるので、点字ブロックの敷設の仕方を工夫することが必要です。

屋内においても上記と同様の確認が必要です。屋内の場合には、通路に荷物が置いてあって通りにくくないか・机やテーブルやいすが移動の邪魔にならないか・出入り口に段差はないか・建物にアクセスするスロープはあるか、さらに複数階の建物では、エレベーターや階段昇降機が設置されていて使いやすいか、各ドアは開けやすいか(車いす使用時、杖使用時には両手がふさがって開けにくさが増すことがある)についての確認が必要です。

屋外

困難さ・考えられる支援の観点

a.道路―段差

困難
小さな段差でも、車いすや杖の場合には動きが困難になることが多いです。
支援
道路の段差、建物の入り口やドア付近の段差をチェックします。

b.道路―溝

困難
溝のふたが鉄柵の場合、その隙間に車いすの前輪がはまって動けなくなる恐れがあります。車いすの前輪は小さいことに留意して下さい。
支援
コンクリート製のふたにします。あるいは、鉄柵の幅を狭くして、車いすの前輪がはまらないようにします。

c.道路―舗装道路と未舗装道路

困難・支援
道路はでこぼこでなく、滑らかで水平な舗装にします。マンホールなどがあって、くぼんでいると車いすを動かしにくいです。チャッターバー(道路鋲)も障害となります。

d.道路―車止めのある道路

困難
車止めをよけて通るときに、「端に溝があって落ちそうで危ない、車いすで通れる広さの幅がない」などの困難があります。チャッターバー(道路鋲)も同様です。

バリカータイプの車止めイメージ

チャッターバーを避けようとして溝に落ちそうになる車いすのイメージ

e.坂道

困難・支援
車いすでの登りは大変であるので、傾斜を緩やかなものにし、途中にフラットで小休止できる場所を設置します。杖使用者についても同様に考えます。
【参照】

f.階段

困難
車いすや杖を使用している場合には、階段の利用は著しく困難になります。車いすや杖を使用しない肢体不自由学生では、階段に手すりがあると昇降の助けになります。階段の段の端に滑り止めのゴムがついている階段がありますが、この滑り止めゴムが厚い場合には、足が引っかかって転倒などが起こりやすいので注意が必要です。階段は、すれ違うときに余裕があるように十分な横幅がほしいです。また、急な階段は望ましくありません。また、壁が鉄柵などで向こう側が見えると怖いといった主観的な困難がある場合も認められるので本人に確認が必要です。
支援
スロープを設置することが求められます。
【参照】

g.スロープ

困難・支援
車いすでの登りは大変であるので、以下の配慮が求められます。

  • 傾斜を緩やかなものにします。
  • 車いす操作のために、幅を十分にとります。
  • カーブや曲がり角では特に幅を広くします。
  • 長い距離のスロープでは、途中にフラットで小休止できる場所を設置します。

【参照】

h.障害者向けの入構許可証、駐車スペースとその表示

困難・支援
車の利用が必要であることが多いです。そのために、優先的に駐車できるスペースと許可証が必要となります。車への乗降や車から車いすや杖を出す作業には広いスペースが必要です。車の前後左右にゆったりとしたスペースの確保が望ましいです。障害者専用駐車スペースの標示も欠かせません。また、学内規則で障害学生の優先使用を規定しておくことも大事です。

屋内

困難さ・考えられる支援の観点

a.建物・部屋への出入り

困難
出入り口やドア付近に段差があるとドアを開けながら、あるいは、手でドアを開けた状態を保ちながら、車いす操作を同時にしなければならなくなり、移動が困難になります。
支援
ドアの真下の床面をフラットにしておくことが良いです。
【参照】

b.ドア

困難・支援
開閉が一方向のドア(入るときは「押す」、出るときは「引く」というドア)は出入りが困難です。車いすを使用している場合、ドアの前まで行ってドアを引こうとすると、車いすがあるためにドアが引けないので、ドアは両方向開きのものが良いです。ドアが両方向開きであっても、重いドアは押して開けることが困難です。さらに、軽いドアであっても、押して開いた状態で固定できるドアでないと、開けた状態で車いすを前に進めながらドアが閉まらないように片手で固定しなければならず、両手で車いすの車輪を操作できません。
スライド式のドアでは上記の「押す」と「引く」の問題はないですが、たとえスライド式ドアであっても、重くて車いすに座った状態や両手で杖を使用しているときには開けにくいドアもあるので、軽い力で開けられるものが良いです。
ドアの取手も通常のノブ式のものは使いにくいです。レバー式で軽くカチャッと押し下げると開くものが良いです。なおかつ、開けた後で開いた状態が固定できるものが良いです。

【参照】

スライド式開閉ドア

スライド式ドアの例

レバー式開閉ドア

レバー式ドアの例

c.ドア-自動扉

支援
自動扉の設置が望まれます。
【参照】

d.廊下

困難
手すりがあると車いす移動の妨げになることがあります。
支援
手すりがあっても車いすでの通行に十分な広さにします。また、手すりの前に物を置かないようにします。通路に荷物が置いてあって通りにくくないか確認します。

e.階段

困難・支援
車いすや杖を使用している場合には、階段の利用は著しく困難になります。車いすや杖を使用しない肢体不自由の学生では、階段に手すりがあると昇降の助けになります。滑り止めのゴムがついている階段があるが、この滑り止めゴムが厚い場合には、足に引っかかって転倒などが起こりやすいので注意が必要です。階段はすれ違う時に余裕があるように十分な横幅がほしいです。また、急な階段は望ましくないです。階段のみでは車いす等を利用する学生は上階に移動できないためエレベーター等の設置が必要です。
【参照】

f.スロープ

支援

屋内・建物の中にもスロープが設置できるのであれば、設置した方が望ましいです。ただし、既存の建物に新しくスロープを設置する工事は、費用が多大なものとなる点、工事中に大学の業務に支障をきたす場合もあることや、建物の構造がスロープ設置に耐えられるかなどの多くの点を考慮した上で、実現に向けての検討が必要です。
【参照】

g.エレベーター

困難
障害者用エレベーターが普及してきています。障害者用エレベーターにも幅が狭いものがあり、入る時にスムーズに入れないことがあります。また、入り口に少しの段差があると入りにくいです。エレベーター内の広さは、方向転換が余裕を持ってできるぐらいに十分な広さのあるものが望ましいです。障害者用エレベーター内には手すりがついていることが多いですが、エレベーター内の広さが十分でない場合には、この手すりが車いすの出入りや方向転換に差し支えることがあります。
支援
事務棟、図書館、共通講義棟、学生センター等、利用頻度の高い建物には障害者用のエレベーターを設置します。ドアが閉まるまでの時間は、30秒程度は必要です。普通の開閉ボタンは手が届きにくいので、車いす用の開閉ボタンがあると良いです。なお、車いす用の開閉ボタンには「閉」のボタンがないものがありますが、利用の便を考えると開ボタンと閉ボタンの両方があると良いです。さらに、車いす用の緊急時用呼び出しボタンがあると良いです。
【参照】

h.室内移動

困難・支援
教室、研究室、事務室等の室内においても様々な困難があり、注意が必要です。机といすなどの配置は車いす移動に十分か確認が必要です。また、床に電気関係などの配線があると車いす移動の妨げになったり、杖が引っかかって転倒する危険があります。事務室では学生に対応するためのカウンターがある場合には、カウンターの学生の側のスペースが十分であるかどうかについても注意する必要があります。
【参照】

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