EJU創設の経緯

日本留学のための新たな試験について -渡日前入学許可の実現に向けて-

シラバスは含まれていません。

平成12年8月 「日本留学のための新たな試験」調査研究協力者会議

目次

はじめに


我が国は,昭和58年以来,「留学生受入れ10万人計画」に基づき,留学生受入れのための関連諸施策を総合的に推進し,留学生受入れの拡充に努めてきており,この十数年間に我が国の大学等に学ぶ留学生数は約5倍に増加した。

しかしながら,世界各国から多くの優れた留学生を我が国に一層引きつけるためには,我が国の社会全体が国際社会に対し,より開かれたものとなることはもとより,留学生に対する大学等の入学選考,教育及び奨学金,宿舎など留学生の学習・生活面に直接係わる課題を早急に改善・充実していくことが必要である。

これらの課題のうち,大学等の入学選考は,我が国に留学するに当たって,留学生が最初に直面するハードルであり,我が国への留学に極めて大きく影響を与えるものである。

我が国への留学希望者に対する入学選考の手続や方法は,欧米諸国に比し,必ずしも分かりやすいものではなく,留学希望者に過度に負担を強いており,このことが我が国への留学を躊躇させる要因の一つであるとの指摘が,従来よりなされているところである。さらに,平成11年3月の「留学生政策懇談会」(文部大臣裁定,平成8年12月27日発足)の提言「知的国際貢献の発展と新たな留学生政策の展開を目指して」においても留学生の入学選考の改善が指摘されたところである。

このような状況を踏まえ,本協力者会議では,優れた留学生を世界各国からこれまで以上に我が国に引きつけるために,留学生に対する入学選考について,その改善方向と選考試験の在り方等について議論を行い,平成11年9月に,中間報告を取りまとめた。このたび,中間報告に対する各方面の意見等を参考にしつつ,「日本留学のための新たな試験」について,その内容,実施方法,実施体制等について,具体的な検討を重ね,「日本留学のための新たな試験について -渡日前入学許可の実現に向けて- 」として取りまとめを行った。

今後,本報告書を踏まえ,「日本留学のための新たな試験」が広く国内外において実施され,留学希望者,大学等によって積極的に活用されることが望まれる。

1. 留学生の入学選考

2. 「新たな試験」の開発

今後いかに優秀な留学生を多数引きつけていくかということが,我が国の知的国際貢献の根幹となるところであるが,留学の入口である入学選考の段階で,欧米諸国への留学に比べ留学希望者にとって上述のような大きな負担がある。
さらに,私費外国人留学生統一試験及び日本語能力試験については,前述のように様々な課題や問題点も指摘されているところであり,今後,留学生としての適性をより的確に評価しうる統一的な「新たな試験」の開発・実施に早急に取り組む必要がある。

また,「新たな試験」は渡日前の入学許可を想定したものとする必要があることから,各大学における自発的かつ積極的な利用が何より不可欠となる。
なお,各大学の入学選考の現状等から,「新たな試験」を利用した入学選考システムを幾つかの大学においてパイロット的な形で始めることも有効と考えられる。

3. 「新たな試験」の基本的な内容

4. 「新たな試験」の実施体制と実施方法

  1. 1. 実施体制
    (1) シラバス及び試験問題の開発
    「新たな試験」のシラバスについては,日本語教育,基礎学力,教育測定等の専門家による研究・開発を行ったが,引き続き,試験問題について,大学等関係機関の協力を得ながら,開発,作成,評価等を進める。
    また,年複数回実施を行うことから,得点の等化を行うとともに,複数年度を通して,素点ではなく,共通の尺度上で成績を表示することによって,受験者の成績評価に公平を期すものとする。
    なお,「新たな試験」のシラバス及び問題例については,「6. シラバス及び問題例」のとおりである。
    (2) 試験の実施
    試験問題の作成・評価及び試験の国内実施については,財団法人日本国際教育協会が文部省,大学及び関係機関並びに各分野の専門家の協力を得て行うこととする。
    また,海外実施については,外務省が国際交流基金及び現地の関係機関等の協力を得て,実施することを検討する。

  1. 2. 基本的な内容,実施方法
    (1) 名称
    「新たな試験」の名称は,「日本留学試験」とする。
    (2) 目的
    外国人留学生として,我が国の大学(学部)等に入学を希望する者について,日本語力及び基礎学力の評価を行う。
    (3) 対象
    外国人留学生として,我が国の大学等に入学を希望する者
    (4) 実施時期及び実施回数
    国内外ともに,平成14年(2002年)から,毎年,6月と11月の2回実施する。
    (5) 実施地
    国内 : 北海道,東北,関東,中部,近畿,中国,九州,沖縄の各都市で実施する。
    海外 : アジア地域を中心に,当面,10都市程度で実施する。
    (6) 試験科目等
    ア 試験科目,試験時間
    文系 : 日本語(120分),総合科目(80分),数学(80分)
    理系 : 日本語(120分),理科(物理・化学・生物から2科目選択,80分),数学(80分)
    イ 各試験科目の目的
    ○ 日本語:日本の大学での勉学に対応できる日本語力(アカデミック・ジャパニーズ)を測定する。
    ○ 基礎学力    
      ・ 数学:日本の大学での勉学に必要な数学(文系・理系)の基礎的な学力を測定する。
      ・ 理科:日本の大学の理系学部での勉学に必要な理科(物理・化学・生物)の基礎的な学力を測定する。
      ・ 総合科目:日本の大学での勉学に必要な文系の基礎的な学力,特に思考力,論理的能力を測定する。
    ウ 各試験科目の配点の比重
    文系において,日本語・総合科目・数学の配点の比重は,4:2:2とする。
    理系において,日本語・理科・数学の配点の比重は,4:2:2とする。
    エ 大学等による試験科目の選択
    大学等が,「新たな試験」を留学生の入学選考に利用する場合,当該大学等は,入学選考に必要とする特定の試験科目を,アの試験科目の中から指定し,その特定の試験科目のみを留学生に受験させることができるものとする。
    * 大学等は,理科3科目のうち2科目を指定する。
    * 数学は,文系学部及び数学を必要とする程度が比較的少ない理系学部用をコース1,数学を高度に必要とする学部用をコース2とし,大学等は,どちらかを指定する。
    (7) 出題言語
    日本語及び英語により出題する(日本語の科目は日本語による出題のみ)。日本語による出題においては,外国人名,専門用語等に英語を付記する。
    なお,試験問題冊子は,日本語,英語とで,それぞれ別の冊子とする。受験者は,出願の際にどちらを選択するか申請するものとする。
    (8) 解答方法
      ・日本語:多肢選択方式(マークシート)及び記述式とする。
      ・基礎学力:多肢選択方式(マークシート)とする。
    (9) 試行試験
    平成13年(2001年)11月,国内外において,日本留学希望者等を対象に,試行試験を実施する。
    (10) 試験問題の公開
    試験問題は,原則として,公開とするが,公開の時期・方法等については,今後,更に検討する。
    また,試行試験の問題は,原則として,公開とする。
    (11) 受験料,出願方法,成績通知
    受験料,出願方法,成績通知については,現行の私費外国人留学生統一試験及び日本語能力試験を参考に,今後,検討を行う。
    (12) その他
    「新たな試験」の内容,実施方法,構成等については,今後の実施状況を踏まえ,必要に応じて見直していくものとする。

5. その他

日本留学新旧試験フローチャート

新旧試験フローチャート