精神障害 入学

入学試験における支援

困難の例

不安障害などがある学生では、緊張や不安にさらされて比較的長い時間を過ごす場合、通常なら服薬で抑えられている症状が出現しやすくなります。たとえば、手の震え、口渇、呼吸困難、動悸、嘔気、下痢、腹痛、めまい、気が遠くなりそうな感じなどの症状が再燃します。入学試験に伴う不安や緊張が、こうした症状の誘発因になることがしばしばあります。
不安症状のためバスや電車に乗ることが困難な場合に、乗用車での試験場に入構を認めることが必要な支援とされることもあります。
精神障害の治療を受けている場合は、内服している薬の影響で不注意になることも考えられます。事前に申請があれば、試験に関する指示事項を黒板や紙に書いて確実に伝達してもらう支援も考えられます。
また、薬物治療の副作用で手指や体幹に不随意運動(意思とは無関係に生じる細かい震えや揺れ、姿勢保持困難)が出現している場合は、動作が緩慢になっていて作業をするのに時間が長めにかかることが多く、動作の際のぎこちなさのために物音や振動が発生して周囲の受験生に影響を与える可能性があります。

支援の例

主治医の診断書に基づいて対応をすることが前提ですが、不安や緊張に由来する症状について配慮する、ということが考えられます。すなわち、試験中の頓服薬の服用を認める、試験中のトイレ使用を認める、入試のときの座席を最前列や最後列、もしくは通路側などの退席しやすいところに変更する、もしくは別室での試験を許可する、などです。何が合理的な配慮に見合う対応であるのかは、病状の個人差や入試時点での症状によっても変わるため、主治医に診断書への詳細な記載(例:「○○症状により△△に支障があるので、入学試験にあたっては、◇◇が必要である」)を依頼するか、大学側から受験生や主治医に確認をとることが望ましいでしょう。
薬物治療の副作用で手指や体幹に不随意運動が出現している場合、それらの症状がかなり目立つようであれば、別室での受験や試験時間の延長を検討すると良いでしょう。

今後の検討課題

発達障害と精神障害の併存や、精神障害の重複がある受験生からの配慮要請も可能性として考えられます。それぞれの特性に対する配慮内容を検討した上で、具体的な対応を決定すると良いでしょう。

入学から授業開始までの対応

入学前の相談

オープンキャンパスの開催時に障害のある入学希望者の質問に答えるなど、入試の前から相談に応じている大学もあります。

窓口を明確にしておくこと

精神障害のある学生は、どこに相談をすれば良いかわからず、相談をしても部署によって対応が異なることも多いため不安を感じることがあります。大学側は健康管理に関わる窓口を明確にし、入学時のオリエンテーションで説明する機会を設けたり、教務や学生支援の担当者が窓口を紹介しておくと、後々の相談へつながります。また、精神障害に関する相談は、個人情報を扱う部門で限定して扱うことにすると学生は安心して相談できます。情報の共有は、本人の同意が前提となりますが、大学としての安全配慮のために情報共有を優先すべきだと判断される場合(自傷や他害のリスクがある場合)は、その限りでないと考えられます。自傷や他害のリスクがある場合、学内の専門家に相談し、迅速な対応を行なうように心がけてください。

入学後の健康診断

入学時の健康調査票やメンタルヘルスのスクリーニングなどの問診や、身体検査で既往歴や持病について個別に質問した際に、初めて過去の受診状況などが明らかになることがあります。貴重な機会といえますが、健診会場でゆっくり時間をかけて現病歴などを細かく聞き取ることは難しいと考えられるので、静かな面接室を健診会場とは別に用意したり、後日、面談を設定すると良いでしょう。

支援組織の設置

障害学生支援のための統一された組織(障害学生支援センター、障害学生支援室、障害学生支援委員会など)を設置し、関係者、関係機関との連携を図り、支援の内容、支援依頼の方法や相談体制を充実させることが重要です。身体障害の支援がすでに定着している大学でも、精神障害については、十分な対応がまだ定着していないことが多いため、障害者差別解消法の施行等による法的な整備が急速に進む今後数年間での、各大学のポリシーの発信が重要です。

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