精神障害 就職への支援

学生が示す困難の例

気分障害や統合失調症などの精神疾患で治療を受けた学生が就職活動を行なうにあたり、「どのような職種が良いのか」といったことが問題となることがあります。
卒業後も治療を継続する必要性があると考えている学生は、体調管理が難しい労働環境を選ぶことに不安を示すことがあります。たしかに、生活リズムが不安定になりやすい職場では、疾病の再発や悪化のリスクが高くなると考えられます。恒常的な残業や、深夜勤務を伴う業務、シフト制など不規則な生活を避けにくい職務はあまり勧められません。また、営業などの業務を遂行するため自動車の運転が業務に含まれる職種も、服薬の影響や体調不良時のリスクを考える必要があります。
近年、「一般枠と障害者枠 の雇用の違い」についても精神障害のある学生の関心が高まっています。一般枠の場合、正規雇用で給与水準が安定していると期待される一方、業務内容や就業時間について精神障害のある学生にとって、負担となる場合があります。また、障害者枠の場合、障害を開示して得意なことと不得意なことについて当初から雇用者側に理解を求めることができますので、業務の質と量について現場での配慮を依頼しやすくなることがメリットといえます。

就職に向けた支援の例

キャリア支援室などが、就職の内定が決まった学生に依頼して、応募準備中の学生に随時助言してもらう仕組みづくりや、就職支援セミナー等のイベントで助言してもらう機会をつくることも有用と考えられます。
精神障害のある学生は、就職活動をするにあたり、できれば一般枠の募集に応募したいと考える傾向があります。実際に履歴書やエントリーシートを記載するようになると、「就職活動がうまく行かない」と悩む学生がいます。悩みは様々ですが、たとえば、自己PR欄に何をどのように記載すれば良いのか、健康状態のところに精神障害について記載すべきかどうか、といったことです。
学生相談のカウンセリングで面接時にも使える不安感のコントロールや面談に必要なスキルを教えてもらうことも役に立ちます。職種の選定に迷うようなら、まずアルバイトをしてみて、その経験について得意な作業を振り返ってみると、学生の気づきや自覚を促すことができます。また、GATB(一般職業適性検査)を行なってみると、学生自身の就業能力についての自己理解を促すことが可能です。

障害者保健福祉手帳の取得

精神障害者保健福祉手帳を取得するにあたり、学生が医療機関や大学の教職員から勧められて検討することがありますが、学生時代に症状を認定されて手帳を取得することについて懸念する学生や家族もいます。手帳の取得によるメリットと、将来も手帳を使い続けるかどうかは卒業後に選ぶことができる点を理解してもらうことが大切です。
学生が障害者枠を希望する場合には、障害者職業訓練センターのイベントに参加したり、説明会などで職業準備支援への参加を検討したりすることで、有用な情報を得ることができます。ある学生は職業準備支援に参加して、履歴書の書き方や面接を受ける場合の注意点を教えてもらいました。この機会から、さらに適性を生かした就労のために有効な助言を得て就職した例もあります。

精神障害者の雇用に関する現状と利用

精神障害者の企業における雇用について、改正障害者雇用促進法(平成28年4月(一部公布日又は平成30年4月施行)では、法定雇用率の算定基礎の見直しが行なわれ、法定雇用率の算定基礎に精神障害者が加えられる予定です。すでに障害者職業訓練センターでは、大学生を含めて気分障害や統合失調症その他の精神障害がある人々を対象に雇用促進支援を行なっており、そのニーズは年々高まっています。これには社会生活技能等の向上のための支援(精神障害者自立支援カリキュラム)および職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援などが含まれます。
なお、就労準備のためのリソースなど、精神障害についても発達障害のある学生のための情報が参考になりますので、障害者雇用については発達障害の章を参照してください。

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