精神障害 学生生活の支援

対人関係の困難さの理解と支援例

精神障害の中には、日常生活における対人関係の悩みが発病時の症状に影響する場合があります。たとえば統合失調症などは、些細なコミュニケーションのずれに異常な意味を見出したように感じることがあり、そこから妄想的な観念にも関連して発展する場合があります。また、聴覚体験の異常として幻覚を体験することがあり、悪口や批判を言われたと思い込んで対人関係がぎこちなくなることもあります。こうした症状の治療としては、薬物治療に加え、カウンセリングとして、被害的に捉えがちな思考パターンを修正する認知行動療法などが用いられます。
気分障害のうつ症状が重症になると、貧困妄想、罪責妄想、心気妄想が語られることもあり、日常生活に相当の支障をきたします。経済的な不安から人づきあいを極端に避けたり、特定の出来事にとらわれて過剰に反省したり悲観したり、健康を喪失する不安で身動きができなくなったりします。これらの症状があれば、刺激の少ない静かな環境で、しばらくは重要な決断を先送りすることが大切です。
カウンセラーや教職員との定期的な面談を継続する体制を整え、対人関係などの日常生活上の悩みや困難について相談しやすい態勢を用意するとともに、悩みごとの背景に症状が隠れていないか、支援を見直すことで環境を改善できないか、といった視点をもつことが有用です。

学生生活上の支援における留意点

障害学生のための窓口から支援を申請した学生については、「個別支援会議」などを定期的に開催するなどして、関係する教職員が情報を共有し、支援を円滑に進めることが望ましいと考えられます。ここで関係する教職員とは、障害学生支援室の相談員、ゼミの指導教員、クラス担任、授業担当教員、所属学部の事務職員や教員等が該当します。
さらに、障害学生支援委員会などの全学的な組織によって、個別の支援内容の承認や障害学生支援の位置づけ、学内の障害学生支援に関する規則やその解釈のあり方について議論することが期待されます。このような委員会には、教育担当副学長、学部長、学務の事務職員、学生相談カウンセラー、学校医などが参加することが考えられます。
精神障害のある学生が修学関係や人間関係でトラブルや葛藤を抱えている時は、カウンセリングを受けることでしばしば気持ちが安定し、適切な行動をとることができるようになります。大学でのカウンセリングでは、生活指導面の確認や助言も重要で、十分な睡眠、生活リズムの見直し、食生活の改善、アルコールを控えること、運動を取り入れる工夫、解決すべき課題に優先順位をつけること、などが話題として考えられます。薬物治療が定着して症状が安定した段階で、認知行動療法などカウンセリングを併用することも有用です。
なお、不安障害や発達障害などがある学生は、キャンパス内で他の学生の存在が気になって不安が高まることがあり、日常生活に影響が出ることもあります。不安が強くなったり休息が必要になったりするときもありうると考えるようにして、刺激の少ない場所が身近な距離のところに用意されていると良いでしょう。保健センターや学生相談室などにある小さい個室は気持ちを落ち着ける場所として向いているようです。
親元から離れて下宿している学生の中には、食生活や身辺の清潔など、基本的な生活行動に十分な注意を払うことができない学生もいます。学生寮での生活には、ルームメイトや先輩学生や教職員による無理のない範囲でのサポートが有用です。また、不安障害などにより、一人で電車に乗ることが困難で通学に支障をきたす学生の場合は、通学直前の頓服薬使用、家族や友人の同伴、自転車通学、家族などによる自動車送迎など、通学方法を検討することも有用です。

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