発達障害 災害時の支援

学生が示す困難例

発達障害のある学生の多くが、予期せぬ事柄の理解と対応、緊急時に求められるとっさの判断、他者とのコミュニケーションが必要なパーソナルな情報へのアクセスなど、災害時に必要となる基本的な対応が苦手です。そのため、安全な場所に避難することが遅くなったり、安否の確認がとりにくい場合があります。それ以外にも、「直接的な被害を受けていなくても、災害の様子が頭から離れず、学業や日常生活に困難をきたす」「被災のストレスからこだわりが一層強くなり、行動上の問題が頻発する」「周囲が忙しくしていても、何度も同じ質問をするなどにより、周囲を苛立たせる」などの場合があります。

留意すべき事柄

発達障害があってもなくても、災害などで見通しが持てなくなったり、周囲全体が落ち着かなくなったりした場合には、心理的ストレスを感じ、イライラし、パニックになりやすくなります。発達障害がある場合にはこのような状況にとても敏感で、一層の混乱や、困惑が生じます。まずは、落ち着いて行動できるように、可能であれば安心感を与えること、これから何をするのかに対して見通しが持てるように説明すること、落ち着いて行動するように促すことが必要です。
ASDのように、日頃から周囲とのコミュニケーションを円滑にはかれない場合には、適切な状況把握が難しく、どのように行動する必要があるのかを考えて実行することがとても困難になります。そのため、被災時の行動の仕方をあらかじめ決めておくこと、所在や安否、被災状況を確認するための体制を構築し、本人に手順を確認しておくことが重要になります。
また、避難した後や直接被害に遭わなかった場合でも、強いストレスから普段以上に不適切な行動が多くなる、こだわりが強くなる、フラッシュバックを起こすといった場合があります。このようなストレスに対する反応は、一般の学生よりも顕著にみられます。
発達障害、とりわけASDの特徴について理解することは大事だと思いますが、このような場合に「自閉症だからしょうがない」と片付けてしまうと、益々混乱させることになりかねません。安心できるように話を聞くことや見通しが持てるように説明することが必要です。
その他にも、集団の中で生活することが困難で落ち着けないということや、周囲の状況が理解できずに不適切な言動を行ない、周囲から迷惑がられて、所定の避難所を利用できない、あるいは利用しにくくなることがあるかもしれません。このような場合、自治体によっては福祉避難所を設置している場合があることを知っておくと良いでしょう。あらかじめそのような情報を収集しておけば、学生の状況に合わせて情報を提供することが可能です。
比較的親しい知り合いが避難している場所について情報を得ておき、状況を伝えて支援してもらえるように依頼し、了解が得られれば、「△△には○○くんたちも避難しているよ」などと伝えることによって、周囲の学生がそれとなく支援することが可能となると考えられます。
また、一斉メールなどでの問い合わせや連絡では情報が伝わっていないことがあります。このような際には、個別の電話連絡で伝える、もしくは電話連絡した際に送付したメールを確認するように促すことで解決することができるでしょう。

災害時の支援のポイント

  • 日頃から被災時の行動の仕方を確認しておくこと、所在や、安否、被災状況を確認したりするための体制を構築し、本人に手順を確認しておく。
  • 落ち着いて行動できるように、安心感を与え、これからの見通しについて説明する。
  • ASDの特徴として片付けてしまわずに、被災のストレスによって混乱していることを理解し、話を聞いたり、丁寧に説明することを心がける。
  • 福祉避難所の有無や場所について情報を得ておく。
  • 親しい知り合いが避難している場所について情報を収集して本人に伝える。
  • 個別に電話で伝える。もしくは電話連絡した際に送付したメールを確認するよう促す。
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