発達障害 入試

困難の例

発達障害がある場合、入学試験で「集団の中で試験が受けられない」「試験中に答えを口に出してしまう」「試験問題を読むのに時間がかかる」「解答を書くのに時間がかかる」「マークシートをうまく塗りつぶせない」などの困難を示す場合があります。

受験上の配慮の例

ある大学では、受験生の保護者から、「試験中に独り言のように答えを言ってしまうので、別室での受験をお願いしたい」と相談がありました。確認したところ、受験生にはASDの診断があったため、診断書を大学の入試課に提出してもらい、別室受験を許可した例があります。また、別の大学では、「人が多いところでは周囲の目が気になり落ち着いて試験を受けられないので、別室での受験をお願いしたい」という相談に対して、別室受験を許可した例もあります。このような入学試験における別室受験は、発達障害のある受験生に対する一つの配慮として、これまでにも実施してきた大学がありました。
このような状況に加えて、大学入試センターが実施しているセンター入試(平成27年度入学者選抜試験)では、発達障害のある受験生に対して下記のような受験上の配慮の例が設定されています。

【センター入試における特別措置の事項
すべての科目において配慮する事項(例)

  • 試験時間の延長(1.3倍)
  • チェック解答
  • 拡大文字問題冊子の配付(一般問題冊子と併用)
  • 注意事項等の文書による伝達
  • 別室の設定
  • 試験室入口までの付添者の同伴

リスニングにおいて配慮する事項(例)

  • 1.3倍に延長(連続方式)
  • 1.3倍に延長(音止め方式)

このような受験上の配慮が認められるためには、受験上の配慮申請書の他に、所定の診断書および状況報告・意見書の提出が必要です。なお、診断書には、診断名の他に、志願者が希望する受験上の配慮が必要な理由および心理・認知検査や行動評定等を記入する欄が設けられています。また、状況報告・意見書には、配慮事項を必要とする理由の他に、高等学校等で行なった配慮の有無を記入する欄が設けられています。受験生に受験上の配慮が認められるためには、審査があります。これらの書類を提出し、審査で許可されることにより、受験上の配慮が受けられることになります。センター試験における受験上の配慮の申請は、(1)出願に先立って申請する方法、(2)出願時に申請する方法の2通りがありますが、審査に時間がかかる場合があるため、大学入試センターはできるだけ出願前に申請することを勧めています。
また、平成25年度に日本学生支援機構(JASSO)が実施した全国調査の結果をみると、同様の受験上の配慮が、センター試験だけでなく、各大学の入試でも実施されてきています。このような受験上の配慮も、合理的配慮としての対応です。文部科学省による「障がいのある学生の修学支援に関する検討会報告(第一次まとめ)」によれば、入試や単位認定等のための試験では、評価基準の変更や及第点を下げる等は合理的配慮ではなく、障害のある学生の能力・適正等を適切に判定するために、障害のない学生と公平に試験を受けられるよう配慮することが合理的配慮であると指摘しています。
なお、教員や職員、もしくは相談担当が必要に応じて実施する教育的な配慮や指導、保健センターや学生相談室での相談対応には、必ずしも根拠資料は必要ではありません。

  • チェック解答の例、状況報告書の例については以下のウェブサイトをご参照ください。

その他の配慮と今後の検討課題

以上のような受験上の配慮の他に、「試験と試験の間の待ち時間を過ごす場所や昼食をとる場所に悩む」「校内で迷う」といった相談がある場合には、実際の試験教室の下見や、試験日程のシミュレーションを許可することも必要な配慮となります。また、「電車やバスに乗ることができない」という訴えと根拠資料がある場合には、自動車による入構を許可することが必要です。
また、海外の状況を見ると、以下の配慮が行われています。
(1)小論文作成のため、スペルチェッカー、ワープロ、メモ用紙等の使用
(2)間違いをチェックするために、試験官が書かれた内容を読み上げる
(3)試験官がマークシート用紙に答えを書き写す
(4)口頭による回答を認め、それを筆記する代筆者を利用する
日本においても、例としては多くありませんが、書字に障害があると認定されて、「パソコンによる回答」が認められた例もあります。これらの合理的配慮について、本人や保護者からの申し出があった場合には、配慮の必要性や合理性について慎重に検討し、適切であると認められるなら配慮を提供することが求められます。

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