病弱・虚弱 災害時の支援

平成23年3月11日に発生した東日本大震災においては、災害発生直後から数週間におよぶ水・電気などを始めとした基盤インフラの寸断や交通網の途絶、さらに、その後の燃料不足などにより、慢性疾患を持った被災者・避難者に対する医療の提供が長期間にわたりストップし、多くの慢性疾患を持つ方が症状の悪化や最悪の場合生命に関わる事態となり、大きな問題となりました。

災害時の大学キャンパスにおいては、いずれの障害学生においても同様の問題が発生しうると思われますが、とくに病弱・虚弱の学生は、薬物治療を継続的に行なう必要のある慢性の内部疾患を持っていることが多いため、必要な薬剤の確保は非常に重要な課題となります。病弱・虚弱の学生がどのような状況で災害に巻き込まれるかは予測できない面が多く、様々な場面が想定されますが、例えば、多くの学生がキャンパスや宿舎内にいる学期中などに今回のような大災害が起きれば、学生を数日間にわたりキャンパス内に留め置いたり、地域の避難所で過ごさざるを得ない状況になる可能性もあります。

主な疾患と困難

気管支喘息
避難所の低い気温やホコリっぽい劣悪な環境により、喘息発作をひき起こす可能性があり、悪化すれば呼吸不全になるので、最低限発作治療薬が必要となります。

てんかん
抗けいれん薬を内服しているので、内服薬の中断が長期化するとけいれん等のてんかん発作が起きてしまう危険性があります。

糖尿病
血糖コントロールのためのインスリン製剤の確保が緊急に必要となります。

慢性腎不全
透析の手配が必要となります。

食物アレルギー
アレルゲンに注意して非常食などを配給する必要があります。

Disaster Planning(災害対策)の重要性

大学の障害学生支援組織においては、常日頃より、障害学生本人の同意のもと、保健管理センターなどと該当学生の医療情報を共有しておくこと、災害時には各障害学生の医学的ニーズを把握し、各障害学生とコンタクトを可能とし、障害に応じた最低限の医薬品や非常用電源などを確保すること、必要に応じて災害拠点病院等との仲介などが可能となるような情報コントロールに努めることが求められます。これら障害学生を意識した行動プランを、各大学は事前にDisaster Planning(災害対策)の中に具体的に想定しておくことが望まれます。

緊急時連絡体制の構築

インターネットを利用したソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の活用や安否確認システムなどの導入により、緊急時の安否確認や医療情報等を障害学生向けに提供できるしくみを構築することも喫緊の検討課題と思われます。

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