視覚障害 講義・ゼミ

(1)履修登録

視覚障害学生は、教科書等の教材の準備に時間がかかるため、学期開始前のできるだけ早い時期に履修科目を決定することが必要です。また、シラバス等の情報や登録システムのアクセシビリティが確保されていなければなりません。

必要な支援・配慮事項

  • シラバス等の履修決定に必要な情報を、電子データやウェブサイト等で提供する。
  • 他の学生よりも早い時期の履修登録(確定)を認める。
  • 履修登録システムのアクセシビリティが確保されていない場合は、間違いなく登録できるように教職員が補助を行なう。

(2)教科書・配付資料等

視覚障害学生は通常の文字を読むことが困難であるため、教科書や配付資料などは、授業の前に視覚障害学生が読める形で提供する必要があります。電子データについては、出版社に問い合わせて取り寄せる、OCRを用いてテキストデータ化する等の方法が有効です。
具体的には、下記の方法があります。

必要な支援・配慮事項

ア.教科書

  • 教科書の書誌情報を早めに提供する(点訳、拡大、テキストデータ化、録音、対面朗読には時間がかかるため)。
  • 語学の教科書など授業で必ず使用する教材の点訳・拡大は、大学の責任で行なう(点訳は専門点訳組織等に依頼する)。
  • 必要性があまり高くない参考文献など大学で情報保障が困難な場合には、人的支援体制を構築してテキストデータ化や対面朗読等を行なう、または学生の自助努力により点訳・音訳等を依頼するように勧める。
  • 教科書の中で優先的に点訳・拡大する部分を決められるよう、授業担当者は授業の進行予定を学生や支援担当者に事前に伝える。
  • テキストデータ化、対面朗読等を行なう支援者を配置する。なお、図表や写真等のビジュアルな表現が重要な役割を果たす教科では、人的支援は必須である。
  • テキストファイルがあれば読みこなせる教材については、学内でOCRソフト等を用いてテキストデータ化する体制を作る。
  • 専門性が求められる分野では、高い専門知識のある支援者(大学院生等)が図の説明や対面朗読を行なうようにする。

イ.配付資料

  • ワープロソフトで作成した配付資料の電子データを、Eメールに添付して授業の前に学生へ送る(添付ファイルの形式等については学生の希望を確認する)。
  • 書籍の切り貼りや図表で構成された資料など、電子データのないものは、印刷物を事前に学生に渡す(学生はそれをテキストデータ化または朗読してもらい、資料のおおよその内容を把握してから授業に参加する)。
  • テキストデータ化、対面朗読等を行なう支援者を配置する。
  • 専門性が求められる分野では、高い専門知識のある支援者(大学院生等)が図の説明や対面朗読を行なうようにする。

テキストデータ化の流れ

  • 鳥山由子・竹田一則(編) 『障害学生支援入門 誰もが輝くキャンパスを』(ジアース教育新社)P.36より作成

<参考>
テキストデータは、パソコンやタブレットPCでの音声読み上げや拡大表示に適しており、視覚障害学生が利用しやすい媒体です。特に、いくつかの文献の中から学生が選んで読むような課題の場合、すべてを点訳することに比較し、テキストデータで提供するほうが効率的です。現在、各大学の図書館を中心に、視覚障害学生向けにテキストデータの提供を行なう事例が増えています。今後は、アクセシブルな教科書や参考書が大学間で利用できるようになることが期待されます。

(3)板書・視聴覚教材

視覚障害学生は、黒板に書かれた文字やスクリーンに投影されたパワーポイントのスライド、ビデオの画面などを見ることができません。話を聞くだけでおおよその内容を理解できることも多い一方で、言葉による説明が省略されたり指示語が多用されたりすると、授業の内容が理解できず、一人だけ取り残されてしまうことがあります。また、近年、タブレットPCで板書やスライド等を拡大して確認するケースが増えていますので、利用に関する理解が必要です。

必要な支援・配慮事項

  • 板書やスライドなどの内容はできる限り読み上げる(ただし、言葉による説明と板書・スライド等の内容が重複している場合はその限りではない)。なお、教員による読み上げが困難な場合には、ノートテイカ―等の配置を考える。
  • 板書を行なう場合には、弱視学生の見やすい色に配慮し、黒板であれば白や黄色のチョークを使用する。
  • 弱視学生の見え方に応じて、ホワイトボードを黒板に変更する、見やすいチョークやマーカーを本人に渡しておき、適宜授業担当者に依頼して使ってもらう、レーザーポインタの色を工夫するなどの配慮を行なう。
  • 板書やスライドなどを指差しながら話す時は、指示語を使わず、具体的な言葉で説明する。
  • パワーポイントの電子データを事前に提供する(写真や個人情報などが含まれていてデータの提供が難しい場合は、事前にスライドの内容を印刷して提供する)。
  • 弱視学生が、板書やスライド等を確認するためにデジタルカメラやタブレットPCを利用することは、私的利用の範囲に留める等のルールを順守させた上で、許可する。また、撮影して、自宅学習に利用する弱視学生がいる場合は、板書を消す前に「消します」と告げて、撮影の完了を待つことが望ましい。
  • 字幕つきビデオの視聴時に支援者を配置する。

(4)その他

視覚障害学生が主体的に講義やゼミに参加し、効率的に学習するために、以下のような配慮が必要な場合があります。

必要な支援・配慮事項

ア.パソコン・支援機器等の持ち込み許可

  • 以下のような機器類の持ち込みを許可し、それに関連した配慮を行なう。

イ.録音の許可

  • 視覚障害学生、特に中途失明の学生や重度の弱視学生は、筆記に時間がかかり授業中にノートを取り終えることが難しいため、復習の目的で講義内容の録音を許可する。

ウ.優先座席の確保

  • 視力や視野、明るさの希望、教室に持ち込む支援機器の状況等、本人のニーズに応じて適宜優先座席を設ける(ただし、座席指定を希望しない学生も多い)。

エ.その他の配慮事項の例

  • 休講や教室変更の情報をEメールで伝える。
  • 授業終了時に集めるコメントカードなどを、後からEメールで提出することを認める。
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