視覚障害 入学前後の支援

入学試験に合格し、実際に入学式を迎えるまでに、通学路や学内のオリエンテーション、支援機器の選定等、できる限りの準備をしておくことで、スムーズに学生生活を開始できます。
また、障害学生と大学関係者が顔合わせをし、支援機器や情報環境の整備、人的支援体制等について「支援計画」を作成することが必要です。

(1)入学前相談

視覚障害学生の入学が決まったら、できるだけ早い時期に学生のニーズを把握し、関係者間の連携を促進するために、当該学生と関係者が一堂に会して打ち合わせをする必要があります。
なお、特に弱視学生は視覚特別支援学校の出身でないことが多く、大学でどのような支援が受けられるのかという知識が浅い場合もあります。そのような場合には、障害学生支援担当者によるガイダンスや、先輩の視覚障害学生によるピア・サポートが有効です。

必要な支援・配慮事項

  • 当該学生の障害の程度や状況を確認する。
  • 学習上の支援に関する当該学生の希望を確認する。
  • 学生生活上の支援に関する当該学生の希望を確認する。
  • 点字ディスプレイ・画面音声化ソフトなど、当該学生が利用してきた支援機器と入学後利用を希望している支援機器について確認する。
  • 点字ブロックや教室の点字表示など、移動に必要な環境整備について確認する。
  • 体育、情報処理実習、実験、フィールドワークなど、通常の講義における支援に加えてさらに支援や配慮が必要な授業がどの程度あるかを確認する。
  • 当該学生に対し、学習・学生生活・健康管理などに関する各相談担当者を紹介し、スムーズに連絡が取れるようにする。
  • 通学路や学内の歩行指導、履修科目の検討、教科書の点訳など、入学式までに行なうべきこととその手順について確認する。
  • 上記の事項を整理し、「支援計画」を作成する。

(2)学生寮・アパート

視覚障害学生は自動車の運転ができず、自転車の運転も困難です。また、交通量が多い所などは徒歩で通うことにも危険が伴い、十分な安全が確保できません。そのような場合には、学生寮や大学近隣のアパートなどへの入居が望ましいと考えられます。
実際に、視覚障害学生の多くが、学生寮や大学近隣のアパートに一人で住んでいます。視覚障害者も、室内のレイアウトを工夫したり、使いやすい日用品を選んだりすることで、基本的には一人で問題なく生活できます。ただし、本人の工夫では解決できない問題もいくつかあり、大学の支援が必要となる場合もあります。
例えば、障害を理由にアパートの契約を断られることがあります。また、学生寮などで、共用のキッチンや浴室などは、物の配置が頻繁に変わって探せない、使用中か否かを確認できない等の問題があり、視覚障害学生にとっては利用しにくい場所です。さらに、ドアや郵便受けの鍵が視覚障害学生には使いにくい設計になっているケースも増えており、そのような場合には、個別の鍵を取り付けるなどの配慮が必要となります。

必要な支援・配慮事項

  • 学生寮があれば、優先的に入居できるようにする。
  • 学生寮に入居させる際には、風呂(またはシャワー)やキッチン、トイレ等を備えた居室を割り当てる。それらの共用が必要な場合には、物の配置を変えないなどのルールを他の学生に周知する。
  • 視覚障害学生が個人的にアパートなどの契約をしようとすると、障害を理由に入居を断られることがあるため、大学が近隣のアパート経営者などに障害学生の受け入れについて積極的に働きかけを行なう。

(3)通学・キャンパス内の移動

視覚障害学生は、あらかじめオリエンテーションを受けて道順を覚えれば、通学や学内の移動、その他日常生活に必要な外出も単独でできます。ただし不慣れな場所や、普段と様子の違う場所の移動は極めて困難です。校外活動、実習、キャンパス間の移動等を行なう際には、教職員や学生が人的な支援を行なったり、歩行訓練や同行援護などの福祉サービスを活用したりする必要があります。

必要な支援・配慮事項

ア.移動に関わるオリエンテーション

  • 入学前に、出身の視覚特別支援学校(盲学校)や社会福祉施設等と連携し、通学・学内の移動に関するオリエンテーションを行なう。
  • 学内で入学当初必要な場所のオリエンテーションは大学教職員が行なう。

イ.関係者に対する注意喚起

  • 歩行者用の通路、特に点字ブロックの上に駐輪・駐車をしないよう、一般の学生や教職員に周知する。
  • 工事などで近隣の通学路・学内の道路、校舎内の廊下などの状況が変わる際には、事前に視覚障害学生に伝える。
  • 視覚障害学生が公共交通機関を利用して通学する場合には、最寄駅やバス会社などに視覚障害学生の利用状況を伝える。

(4)履修科目の検討・教科書の点訳等

視覚障害学生は、通常の教科書をそのまま読むことができません。そのため、点訳、拡大、テキストデータ化をする必要がありますが、それらの作業には多くの時間がかかります。したがって、入学が決まったらすぐにでも履修科目の検討を行ない、外部組織と連携しながら点訳やテキストデータ化を早めに進めなければなりません。なお、すべての教科書や参考書等が点訳、拡大、テキストデータ化できない場合には、学習補助者やティーチング・アシスタント等による人的支援を行なう方法も有効です。

必要な支援・配慮事項

  • 入学式の前であっても、できるだけ早く履修科目を検討し、可能であれば決定する。
  • おおよその履修科目が決まったら、すみやかに教科書の入手方法を視覚障害学生に伝える。
  • 語学の教科書など授業で必ず使用する教材の点訳・拡大は、大学の責任で行なう(点訳は専門点訳組織等に依頼する)。
  • テキストファイルがあれば読みこなせる教材については、学内でOCRソフト等を用いてテキストデータ化する体制を作る。
  • 必要性があまり高くない参考文献など大学で情報保障が困難な場合には、人的支援体制を構築してテキストデータ化や対面朗読等を行なう、または学生の自助努力により点訳・音訳等を依頼するように勧める。
  • 履修登録に際しては、コンピュータシステムや書類の書式が複雑で、視覚障害学生が自力で手続きをすることができない場合がよくある。したがって、間違いなく確実に登録できるよう、教職員が手続きのサポート等を行なう。

(5)支援機器の選定

必要な支援・配慮事項

  • 点字プリンタ、画面音声化ソフト、拡大読書器等については、本人や出身の視覚特別支援学校(盲学校)の教員、その他の専門家と協議し、必要な設備や設置場所等を決定し、準備する。
  • 点字ブロックやエレベーターの音声案内、階数の点字表示などについては、本人や出身の視覚特別支援学校(盲学校)の教員、歩行訓練士等の専門家と協議し、必要な設備を決定し、準備する。

(6)教職員への周知

視覚に障害のある学生が入学してくること、及びその学生のニーズや必要な配慮事項等についてすべての教職員が知っておくことで、必要な対応がスムーズにできるようになります。

必要な支援・配慮事項

  • 学生の視覚障害の状況や必要な支援内容をまとめ、教職員に文書で周知する。特に、実際に視覚障害学生との関わりが多くなる授業担当者、事務担当者、学生食堂・売店などの業者等には必ず周知を行なう。

(7)入学時オリエンテーション

オリエンテーションでは、大量の資料が配られ、初めての場所での移動も多いため、視覚障害学生には支援が必要です。

必要な支援・配慮事項

  • 事前に資料の概要を説明したり、重要な部分については電子データを提供する。
  • 当日は、資料の読み上げや移動の補助を行なうために、教職員や支援員を配置する。
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