聴覚障害 学生生活支援

聴覚障害のある学生の場合、授業以外の生活面で支援が必要となるケースは比較的少なく、大学としては特に支援を行なわない例も多く見られます。ただ、学生によってはコミュニケーションの苦手さから集団に入ることができなかったり、周りに理解を求めるために費やす労力の大きさから、学生生活そのものに無気力になってしまったりする場合もあるので心配りが必要です。

学生理解の視点  「聴覚障害による二次的障害」について

聴覚に障害があると、周りで話されている内容がわからないため、コミュニケーションの苦手さを持ちがちです。この結果、相手の話がわからないのにわかった ふりをしてしまったり、情報がないまま判断をしてしまい、周りの人とのずれが生じがちです。また、言語習得前にきこえなくなった学生の場合、耳から入って くる情報が少ないため、どうしてもことばの獲得に時間がかかります。そのため、大学生になっても日本語が不自然だったり、文脈に沿ったことばの使い分けが できず周りに失礼な印象を与えてしまうケースもあるようです。

支援のポイント

(1)安心して相談できる体制
聴覚障害のある学生が学生生活に上記のような困難さを抱えていたら、まずその困難さを低減させるためにどのようなことができるのかを共に考えられる人が大学内にいることが重要です。障害学生担当の教職員やゼミ担当教員などが普段から学生の様子に心配りができる体制があると良いでしょう。プライバシーに配慮した、安心して話のできるスペースが学内に確保されていることも必要です。

(2)当事者同士の出会いを支える
「周りにどのように理解を求めれば良いのか」「自分のきこえや必要な支援についてどうすればうまく伝わるのか」ということを友人やサークルのメンバー、支援スタッフ、あるいは、アルバイト先の関係者などとの関係のなかで悩んでいる学生は少なくありません。障害学生担当の教職員がしっかりと相談を受けとめることも大切ですが、おそらく最も力になるのは、同じようなきこえの程度の聴覚障害のある学生と出会い、不安や葛藤や悩みを共有する時間をもつことです。 適当な学生がいなければ、他大学の聴覚障害のある学生と引き合わせたり、聴覚障害学生懇談会や地域の障害者自立生活センターをはじめ、当事者同士が出会える場を案内することも、大きな力になります。

(3)手話で話せる場をつくる
聴覚障害のある学生が音声言語の世界しか知らない場合、手話を学習する機会の提供は、学生の自信を高めることにつながることがあります。手話で話せる場があり、またその仲間がいれば、コミュニケーション上の安心感を得ることができ、そこから自らの考えを相手に伝えたり、相手の意見を受け止めたりといった経験を重ねることができるからです。社会的な交渉スキルを養うための基盤づくりになるとも考えられます。手話の習得が進めば、ゆくゆくは聴覚障害のある学生 に手話学習会の講師を担ってもらっても良いでしょう

  • なんらかの支援を受けること自体が、その学生が聴覚障害と向き合い、自分と向き合うための一歩となり、学生自身のエンパワーメントにもつながります。学内の支援者がこのことを理解した上で、聴覚障害のある学生のもつ不安や葛藤にできる限 り寄り添うことが、学生生活の充実に寄与するはずです。在学期間中をかけて自らに必要な支援の内容を学内外の人たちに明確に伝えられるようになれるよう、 その学生にとって必要な手立てをタイミングよく提供することが大切です。

手話で話す学生グループイメージ

セルフアドボカシーイメージ

情報が入らないと・・・

情報が入らないとわからない・・・

わかったふりをしてしまう
独りよがりな判断をしてしまう
空気が読めず周りから浮く
集団にうまく入り込めない
指示されるまで動けない
社会的な力が身につきづらい
あきらめや失望感を持ちやすい

さらに・・・
ことばの獲得に時間がかかる
ことば遣いがなんとなく不自然
ことばをあまり知らない
漢字の読み方を間違える
英単語の読み方がわからない
気づかずに失礼な言い方をしてしまう

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