事例No.1021(難聴)他学生や教員に聴覚障害理解がなく疎外感を感じるとの不服申し立て

【事例紹介】

事例が起きた時期

平成29年度
発生時期:授業開始後

事例が起きた学校

私立大学、学校規模:500から999人

対象学生

学科(専攻):保健(医・歯学を除く)、1年次

支援の申し出

1.支援の申し出の受付

  • 支援の申し出があった
  • 支援の申し出に関する申請書(様式)がある
  • ニーズの聞き取りのための面談を実施した

2.支援が必要とされた場面:受験・入学、授業・研究指導、実習、フィールドワーク等、式典、行事、説明会、シンポジウム等への参加、 キャリア教育、就職活動

申し出への対応

1.支援の申し出の受付

  • 配慮の提供について、学内の関係部署による検討・協議を行なった
  • 協議に参加した部署(者) :障害学生支援部署、入試担当部署、教務担当部署、教育部門
  • 配慮内容の決定は建設的対話を通じて学生との合意の上で行なった
  • 決定した配慮内容について学内関係部署に配慮依頼書を配付した

2.配慮内容決定後のモニタリング・フォローアップ

  • 当該学生に対して、感想・不満等の聞き取りを行なった
  • 当該学生に対して、定期面談を行なっている
  • その後の状況に関して、関係部署(者)に聞き取り、情報共有等を行なっている

申し出内容と配慮の提供

申し出内容1:全ての学内生活場面に手話通訳を配置してほしい

(当事者学生は、中途失聴の社会人学生である)

決定した配慮内容:学校が提案した配慮の提供を決定した=当事者学生が個人的に問い合わせた地域社協の手話通訳派遣は、先方の制度上希望1)には沿えないため、補聴器と連動した会話保障機器システムの新規導入(本学が購入)と音声認識ソフトの併用を試行しながら、その後の情報保障の微調整を具体的に相談していくことを提案し、一度は合意した
配慮内容決定時点での合意形成:できた
合意形成できたと考える根拠:こちらの提案を受け入れた
事後評価:ニーズは満たせず、学生は納得していないと思われる
事後評価の理由・詳細:学生が思う方法が実現しなかったため、大学提案提供のことがらを不服と感じるに至ったようである
※次項申し出内容2以下で述べることが大いに関係しているように思われる


申し出内容2:周囲の学生・教員の聴覚障害特性理解を十分にしてほしい

決定した配慮内容:学校が提案した配慮の提供を決定した=所属学部の支援コーディネーター教員を窓口に、クラスアドバイザー教員と連携して、同期学生に特性理解を求めるか、学内生活場面都度に当事者学生に確認しながら、配慮工夫を具体的に行なった。教員に対しては、合理的配慮願(文書)で授業中等での情報保障の工夫を具体例を挙げながら説明し、対応を求め、必要に応じて支援コーディネーター教員が口頭でも説明・依頼した
配慮内容決定時点での合意形成:できた
合意形成できたと考える根拠:こちらの提案を受け入れた
事後評価:ニーズは満たせず、学生は納得していないと思われる
事後評価の理由・詳細:グループワークの事前準備や日常の清掃活動等での他の学生との関わりがまだら的に疎遠傾向にあり、疎外感を訴えてきたため

配慮内容決定後の不服、不満、苦情の申し立て

  • 不服、不満、苦情等の申し立てがあった

申し立てを受けた部署(者):障害学生支援部署
当事者学生曰く「これまでの職場では周囲からの配慮が当たり前であり、一度もこのような疎外感は感じたことはなかった。状況的に聴覚障害理解が共有されていないので、十分にそれをしてほしい。」
申し立てへの対応に関わった部署(者):障害学生支援部署、教育部門(学部、担当教員等)

申し立てへの対応手順及び対応内容

  • 引き続き協議中
  • 学外の相談機関等に相談した

学生の反応の具体的内容:支援コーディネーター教員が自分のために実働していることは理解しているが、“入学前は思ってもみなかった”疎外感に困惑し、何をどうすればことが落ち着くのか、まだ困惑している。
県障害福祉課へ本人が直接相談した。

学外機関との連携

  • 連絡、問い合わせがあった

連携・協議の具体的内容:先方から相談があった旨の連絡が本学学生支援センター長宛てに入った。タイミングとしては、申し立てへの対応手順及び対応内容での対応途上。先方担当者は、具体的な介入等の意向はなく、本学側に打診した旨の返答は本人にするとのことだった。

その後の経過、課題等

継続した当事者学生との面談から、現状は、訴訟等まで発展する紛糾状態ではないと相互に覚知しているが、当事者学生を取り巻く様子は質的に改善しているとは言い難く、引き続き丁寧に対応を図っているところである。ただ、「周囲の配慮は当たり前」という本人のメッセージは、既に各所で複数の相手(他の学生、教員)に度あるごとに伝わってしまっており、合理的配慮の調整提供実践はもちろん必要だが、情緒的な関係修正には時間を要すると考えている。

【参照】