一緒に考えよう!合理的配慮の提供とは
「障害者差別解消法」施行に伴い、全ての大学等についても、不当な差別的取扱いが禁止され、合理的配慮の提供が求められています。では、どんなことが不当な差別的取扱いにあたるのか、合理的配慮とは何なのか、その基本的な考え方について、わかりやすく解説します。
第4回過重な負担とは
ファシリテーター |
第4回は、合理的配慮の提供における「過重な負担」の考え方について取り上げます。過重な負担の程度は、学校規模や設置者によっても違ってきます。また、大学による合理的配慮提供の範囲はどこまでなのか、予算はどのように調整すればよいかについて等、ワークショップ形式で意見交換していきます。ワークショップの参加者は、いずれも、大学の障害学生支援の実務担当者です。
検討課題
- 提供すべき合理的配慮の範囲
- 学校規模、設置者等による違い
- 予算調整
- 建設的対話
参加者紹介
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提供すべき合理的配慮の範囲
Bさん:うちの大学では、ちょうど昨年度、やはり視覚障害の学生が半年間の海外留学をした事例があります。支援者の手配は先方の大学にしてもらいましたが、費用についてはうちの大学で負担しました。
ファシリーター:ありがとうございます。基本的には、大学のカリキュラムの中にあるものですから、障害のない学生と「同等の機会」の提供として、海外留学中の支援も、合理的配慮提供の範囲であると考えるべきではないかと思います。ただし、Cさんのご指摘にあった「過重な負担」に当たるかどうかというのも、大きな判断基準になりますね。では、負担がどの程度なら「過重な負担」なのでしょうか。
学校規模、設置者による違い
Cさん:うちは、学生数1,000人にも満たない小規模校ですし、合理的配慮の提供については、私立は努力義務ということになっているので、費用のかかりすぎるものについては、学内の合意を得ることがかなり難しいです。
予算調整
Bさん:費用については、やはり障害学生支援に関する予算だけで支出するのは難しかったので、留学中の情報保障に関する費用を、海外留学を支援する部署と学生が所属する学部が負担し、ガイドヘルプの人件費を障害学生支援課が負担するという形で分担しました。
建設的対話
ファシリテーター:文部科学省の対応指針は、「個別の事案ごとに具体的な検討を行った上で過重な負担に当たると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい」としています。ここで重要なのが「建設的対話」です。修学に向けた建設的な話し合いによって、学生との間に信頼関係を醸成することができれば、妥協点は変化するものです。配慮が提供できない場合には、学生が理解し納得できるような説明をするとともに、今後の修学についても視野に入れて見守る姿勢が大切です。
では、同様の観点から、もう一つ別の事例についても検討してみましょう。Bさん、お願いします。
提供すべき合理的配慮の範囲
ファシリテーター:ありがとうございます。では、まず、このケースが合理的配慮提供の範囲にあたるかどうかについては、いかがでしょう。
Aさん:本学の場合は、授業を別の教室にリアルタイムでビデオ配信する設備はあるのですが、学生の自宅へ配信となると全く話は変わります。費用の面ももちろんですが、そうした設備を設置すること自体にも時間がかかりますので、学期の途中からとなると、設置できたときにはその学期が終わってしまっているというようなことにもなりかねないですね。
学校規模、設置者等による違い、予算調整
建設的対話
ファシリテーター:では、学生との建設的対話についてはいかがでしょうか。
Bさん:この学生には、配慮の提供を検討するにあたって、病状について主治医の先生からお話を聞きたいと言ったのですが、学生は、大学が主治医と連絡を取ることにはどうしても抵抗があったようです。そこのところで、学生とのやりとりにつまずいてしまって、その後、病状がさらに悪化してしまったので、学生本人とは話し合いの機会を持てないままになっています。
Aさん:うちの大学でも、できるだけ保護者の方も含めて話し合いをするようにしているのですが、中には保護者の方のほうがナーバスになっていらっしゃる場合もあって、なかなか難しいです。
ファシリテーター:皆さん、ご苦労されているようですね。学生は修学の意志があって、その修学に困難や不安を感じているために支援の申し出をしてきます。前半の事例でも触れましたが「今後の修学に関して、一緒に考えていきましょう」という姿勢が重要です。学生に、単に配慮の提供、不提供を判断するという観点で話し合いに臨んでいると感じさせてしまうと、いわゆる建設的対話にはなりにくいでしょう。学生の話をよく聞いて、その困難や不安を理解することからスタートすることが重要です。例えばカウンセラーにも話し合いのメンバーとして参加してもらうといったことも有効かと思います。配慮を必要としている学生の状況も様々ですが、配慮を提供する側の大学等の規模、設置者、環境なども様々です。文部科学省の対応指針では、「合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、(中略)過重な負担の基本的な考え方に掲げた要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである」としています。建設的対話を通じて、「過重な負担」という時点で思考停止してしまうのではない、柔軟な対応を行なうことが求められていると言えるでしょう。
以上の点について、詳細は、以下の「紛争の防止・解決等のための基礎知識(1)大学等における基本的な考え方」でも解説していますので、ご参照ください。
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